2015/01/29 - 2015/01/31
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オーヤシクタンさん
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第12部-60冊目
プロローグ
「やられた…」
僕は駅のベンチに座りこんでしまった。
ここはタイ.ラオス国境、タイ側の街‥ノンカーイの駅。
旅も終わりに近い7日目の事である。
バンコクから急行列車に12時間揺られてやって来た。
事件は、列車がノンカーイ駅に着く時に起きた。
スマホがない!
車内で充電をしていて、そろそろノンカーイに着く頃なので、プラグを抜いて荷物をまとめていたら列車はノンカーイ駅に到着し、乗客がバタバタと降り始めた時だった。
ん? 今まで、ここにあったスマホはどこに…
ポケットにもカバンにもない。
顔が一瞬で青ざめた。
列車はノンカーイ駅に着いて他の乗客はすでに降り、僕一人が慌てふためいていた。
車掌が「ノンカーイに着いているよ」と教えてくれている。
そんな事はわかっている。
カバンを広げててもない。
座席の隙間や床なども見たがない。
そんな馬鹿な…
今さっきまで、ここにあったのだ。
それが何故ないのだ。
車内清掃のオバチャン達が作業を始めていた。
とりあえず、荷物を持ってホームに降りる。
落ち着け!落ち着くんだ… と自分に言い聞かせ、ベンチの上にカバンの中身を一つ一つ並べていく姿は、これから露店でも開くかのようにも見える。
やっぱりない…
再び車内へ。
しかし、ない物はなかった。
列車がノンカーイに着いてから30分ほどが過ぎていただろうか。
やられた…
乗客が降り始め、荷物をまとめているわずかの隙に盗まれたのだ。
…そうとしか考えられなかった。
実は旅の2日目に、ミャンマーのヤンゴン駅でデジカメをなくすと言う失態もやらかしてしまい、スマホで写真を撮り続けて来たのだ。
スマホを無くしたらブログに載せる写真が全て台無しになってしまう。
自分の中では細心の注意を払っているつもりでいたのだが、こんな事になってしまうなんて…
もう、自分が情けなくて、悔しくてたまらない。
デジカメにスマホ… ダブルパンチだ。
機械本体より撮り続けてきた写真データを一瞬にして失ってしまったショックが大きく、駅のベンチに座りこんでしまった。
駅のベンチにへたこれてしまった僕の姿を駅員や乗務員がたむろして心配そう見る。
だが、彼らにもどうする事もできない。
僕は「マイペンライ.クラップ」‥日本語に訳すと「大丈夫です」と言うのがやっとだった。
それから、どれくらいの時間が過ぎたのだろうか…
静かな駅のホームには、僕とトゥクトゥクのおじさんが一人。
もう、何もする気が起きない。
しかし、前に進むしかない。
おじさんに「国境までいくら?」と聞く。
おじさんは、客になりそうな僕をずっと待っていたのだ。
体を引きずってトゥクトゥクに乗り込み、国境に向かう…。
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皆様、こんにちは。
オーヤシクタンでございます。
第37回海外放浪…今回は、タイ~ミャンマー~ラオスを9日間で周りました。
プロローグで述べましたが、今回の旅の写真は、パァ!になってしまいました。
写真は、過去の記録写真や合成写真をイメージとして掲載している事をご了承願います。
表紙写真‥メコン川の夕日とラオスビール。
※イメージ
旅行期日‥2015年1月25日(土)~2月1日(月) 8泊9日
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1月29日(木)第6日目 (晴)
↓
★バンコク市バス35番
カオサン通り→ファランポーン駅
↓
★急行第69号列車.ノンカーイ行
バンコク20:00→(車中泊)
☆宿泊‥急行第69号列車:2等エアコン寝台下段
※アンコールサワディツアー(急行寝台券)‥3360円
※バンコク市バス35番‥12バーツ(46円)
※ファランポーン駅内シャワー‥20バーツ(76円)
※駅前屋台(焼鳥50B・ソーセージ10B・餅米20B×2)‥80バーツ(304円)
※コンビニ(ビール49B・コーラ14B・水7B)‥70バーツ(266円)
----------------------------------
1月30日(金)第7日目 (晴れ)
↓
★急行第69号列車.ノンカーイ行
(車中泊)→ノンカーイ9:00
↓
★トゥクトゥク
ノンカーイ駅→タイ側出国審査場
↓
★国境バス
タイ側出国審査場→ラオス側入国審査場
↓
★ビエンチャン市内バス14番
ラオス側入国審査場→タラートサオバスターミナル
☆宿泊‥ビエンチャン市内:RDゲストハウス
※食堂車.お粥セット‥110バーツ(418円)
※食堂車.ホットコーヒー‥30バーツ(114円)
※トゥクトゥク‥40バーツ(152円)
※タイ・ラオス国境バス‥15バーツ(57円)
※ラオス入国税‥10バーツ(38円)
※ビェンチャン市内バス14番‥6000キップ(88円)
※RDゲストハウス‥140000キップ(2094円)
※ノート‥15000キップ(225円)
※昼食(ラオスうどん・コーラ)‥16000キップ(240円)
※アイスコーヒー10000キップ(150円)
※フランスパンサンドイッチ‥5000キップ(75円)
※薬草サウナ‥20000キップ(300円)
※ビアラオ(小)‥8000キップ(120円)
※夕食屋台.鶏肉ラープ‥30000キップ(450円)
※夕食屋台.餅米‥5000キップ(75円)
※夕食屋台.ビアラオ(大瓶)‥10000キップ(150円)
※水‥3000キップ(45円)
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1月29日(水)第5日目 (晴れ)
★ビエンチャン市内バス14番
タラートサオBT→ラオス出国審査場
↓
★国境バス
ラオス出国審査場→タイ入国審査場
↓
※ビエンチャン市内バス14番‥6000キップ(88円)
※ラオス出国税‥10000キップ(150円)
※国境バス‥4000キップ(60円)
-
発車を待つ急行第69号列車。
バンコクからラオス国境ノンカーイまで約12時間の列車の旅だ。
※イメージ。
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①
バンコク市バス35番に乗って、ファランポーン駅に向かった。
ファランポーン駅はタイ国鉄起点の駅で、バンコク発の長距離列車は全てこの駅の発着となっている。
駅に着いたのは夜7時をまわった頃だった。
ファランポーン駅は丸屋根ドームに覆われ、構内は行き止まりの櫛形プラットフォームにこれから出発する長距離列車が並んでいる。
その風景は、一昔前の上野駅地上ホームに似ていて、旅立ちと言う文字が脳裏にかすむ。
大きな荷物を持った人々。
電源車のうなるディーゼル音。
線路にはゴミや排泄物が散乱している。
この光景を見ると、僕はストンと30年前の上野駅に来たような錯角に落ちてしまう。
その中で、ひときわ賑わっているホームがあった。
チェンマイ行特急第15号列車の発車ホームである。
子供がスッポリ入ってしまいそうな大きいバックパックを持った欧米人バックパッカーが列車に乗りこんでいる。
欧米人のタフさはいつもすごいと思う。
若い女性でも巨大なバックパックを背負って旅をしているのは珍しくない。
中には巨大バックパックを背負い、ベビーカーを引いて旅をする夫婦もいる。
彼らは最低でも1ヶ月は旅をするそうだ。
それと比較すると日本人は長期休暇をとる事にまだまだ抵抗がある。
今回、会社にお伺いをたててとれた休みは9日間。
「えっ?又、どこかに行くの」と言われるのは毎度の事だ。
「いやいや欧米人はですね‥」と言い訳をした所で回りが理解してくれる訳もなく、旅を趣味とする僕には辛い所である。
この原稿を書いている時、テレビで寝台特急北斗星ラストラン!と盛んに報道していた。
日本の高度成長期に一斉風靡したブルートレイン。
走るホテルと呼ばれ、日本全国各地を走っていたが、新幹線開業や乗客数の減少、車体の老朽化などで姿を消していく事になる。
そして日本で役目を終えたブルートレインの車両はタイに渡り活躍する事になった。
欧米人バックパッカーで賑わう特急第15号列車チェンマイ行はJR西日本で活躍した24系25型と言う車両で運行されている。
過去に、僕はこの列車に乗る為にタイに行った事がある。
車体はブルーから紫色に塗り替えられていたが、車内に「センヌキ」とか「寝台中は禁煙」とかの表示がJR時代のまま残っていた。
僕のトラベラーページの表紙写真はその時に撮影したものである。
チェンマイ行きの隣に僕が乗る急行第69号列車.ノンカーイ行が停まっていた。
こちらは旧JRの車両ではなく韓国製車両を中心とした堂々たる13両編成。
3等車はボックスシートが並び、昭和時代の急行や鈍行列車の普通車の風情が漂い、運賃103バーツ(390円)+急行料金150バーツ(570円)で合計253バーツ(960円)と安く行けるが、冷房はなく直立した座席に長時間耐えなければならない。
2等座席車は、JRで活躍した12系と言う多客時の臨時列車用に製作された急行用客車を大改造した車両‥2+1列のビジネスクラスのようなゆったりとしたシートが並び、車椅子でも乗車できるようにトイレの大型化とリフト化が施されていた。
2等寝台車は、昼は向かい合わせの座席が夜は2段ベッドに変身する。
2等寝台車には、今までなかった女性専用車両が連結されていた。
タイにも女性の時代が到来か‥と感じたのだが、この女性専用車設置の裏にはとんでもない背景があった事を後に知る事になる。
一番後ろに1両だけ連結されている1等寝台車は、2人用個室寝台だ。
そして日本では見られなくなった食堂車が編成の中間に連結されていた。
いよいよ列車の旅が始まる‥
わくわくする気持ちを抑えながら列車に乗りこんだ。ファランポーン駅 (国鉄 ) 駅
-
2等寝台の車内。
向かい合わせの座席が夜は2段ベッドになる。
※イメージ。
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②
僕が乗ったのは2等寝台車。
昼はボックスシートだが、夜は2段ベッドになる。
上段は下段より安いが、窓がなく棺桶に入っている感じがするので、前述の通り前もって下段寝台を予約しておいた。
下段は窓があり、若干であるが寝台幅があるので快適だ。
発車まで30分ほどあった。
ベトついた体をさっぱりさせようと向かった先は、駅構内にあるシャワー室。
おせじにも綺麗とは言えず、冷水だが20バーツ(76円)で浴びれるシャワー室は、汗を流すのに重宝している。
体をスッキリさせ、夕食の買い出しに駅の外に出た。
ファランポーン駅周辺にはイサーンと呼ばれるタイ東北部の郷土料理‥ソムタムと言う辛いサラダやガイヤーン(鶏の炙り焼き)などを売る屋台が出ている。
タイではバンコクと地方の所得格差が大きい。
その中でも東北部にあたるイサーンは所得が最も低く、収入を求めバンコクにやって来る人が多く、出稼ぎの人達はファランポーン駅前の屋台に敷かれたゴザに座り、ソムタムを肴にクワントンと言う安酒を飲みながら遠く離れた故郷を思い出すのである。
屋台を出している人々も大半が出稼ぎであり、ソムタム屋台は若い女性が多い。
ガイヤーン屋台からは炭火で焼く鶏肉の香ばしい匂いが食欲を増進させる。
1本買っていこう‥50バーツ(190円)。
それから10バーツ(38円)のカオニャオ(餅米)をふたつ買った。
コンビニで500mlの缶ビールと、氷入りジュース、水を買って急いで列車に戻った。
定刻19:30をまわっているのに、特急第15号列車チェンマイ行がまだ発車していない。
どうやら遅れているらしい。
タイ国鉄の列車は遅れるのが当たり前。
僕の乗った急行第69号列車ノンカーイ行も遅れるだろうと思っていたら、こちらは珍しく20:00‥定刻に発車した。
ノンカーイまで624キロの鉄道の旅が始まった。
列車はゆっくりとバンコクの街中を走る。
その風景を眺めながら夕食にしよう。
氷入りのカップジュースを飲み干して、そこにビールを入れる‥
信じられないかもしれないが、タイではビールに氷を入れて飲む。
暑い国にいるせいなのか、タイでこの飲み方をするとなかなか旨いのだ。
大きな竹串に鶏の半身がついているガイヤーンは1本でもボリュームがある。
そのガイヤーンを豪快にかぶりつき、ビールを飲む。
うまい!。
僕の向かいには中国系か韓国人らしき青年二人組がいた。
二人は会話することなくスマホいじりに夢中だ。
しばらくすると、二人はスマホをいじる手を止め、瓶ビールを出し、栓ヌキ無しで栓をぬき始めた。
なかなか器用な青年だ。
僕は感心しながら見ている所に、検札がやって来た。
すると、車掌は二人に向かって「ビールはダメだ」らしき事を言い始めた。
横で聞いていた僕も「えっ?」と思いながらビールを隠した。
前回、7月にタイを訪問した時に仏教の日と重なってアルコール類の販売をしない日があったのだが、今日はその日ではなく、普通にビールが買えた。
タイ国鉄には何度も乗っているが、車内でビールを飲んでも注意される事はなく、車窓を眺めながら、ガイヤーンを片手に飲むビールの味は鉄道の旅の醍醐味でもあった。
僕は見つからないように、氷の入ったカップでビールを飲んでいたから、その後は何も言われなかったが、青年二人組のビールは、ベッドメイクの時に没収されてしまった。
列車は世界遺産の街、アユタヤに到着した。
駅にはたくさんの人達が列車を待っていて、
先に到着するはずのチェンマイ行きが遅延しているので、誤乗しないように「この列車はチェンマイ行ではありません」と盛んに放送している。
僕の乗っている急行第69号列車は、ファランポーンを定刻に出発したのだが、この時点で30分ほど遅れている‥と言う事はチェンマイ行きの列車を待っている人は1時間以上待っている事になるので、そろそろシビレを切らしているのでなかろうか。
すると、隣の番線に遅れている特急第15号列車チェンマイ行が入線してきた。
アユタヤは我々の急行第69号列車が先発したが、次の駅で、特急第15号列車に道を譲る。
こっちは急行、あちらは特急。
特急の方が走りが力強い。
かつてJRで活躍したブルートレイン車両.24系25型は異国タイでも勇姿を見せてくれた。
車内ではベッドメイクが始まった。
朝からバイクで走り、カンチャナブリーから移動してきたので眠い。
そろそろ寝ることにしようか‥ -
アジアの夜明け。
1月のタイ東北地方は朝晩寒い。
※イメージ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
③
目が覚めた。
今、どの辺りを走っているのかわからないが、イサーンの赤茶けた大地が車窓に広がっている。
外はうっすらと明るくなっていた。
タイの列車のドアは今も大半が手動式。
デッキに出てドアを開けると冷たい空気が入ってきた。
気持ちのいいアジアの風だ。
1月のイサーンは朝晩、かなり冷えこむ。
湿気をたっぷりと含んだねっとりとした暑さが定番の東南アジアにいる事を忘れてしまうようなヒンヤリとした空気に包まれ、列車はその中を快走していた。
しばらくデッキで風に当たっていると、1枚の貼り紙に目がとまった。
「車内での飲酒禁止」‥とある。
そう言うことだったのか‥
昨夜、なぜ、青年達のビールが没収されてしまったのか。
規則で車内は飲酒禁止になっていたのだ。
そう言えば、他の乗客は誰も酒を口にしている様子はなかった。
いつもビールをラッパ飲みしているファラン(欧米人)もアルコールを飲んでいなかった気がする。
でも、いつからそうなってしまったのか?
昨年7月にもタイ国鉄を利用したが、そんな規則はなかった。
日本でたとえると‥通勤電車で飲むのは気が引けるが、新幹線や特急、中長距離列車の中でまで酒を飲んではいけないと言われたら旅の楽しさが半減し反乱をおこしたくなる。
常識の範囲で飲むくらいなら許されるのではないのか。
タイはいつからそんな国になってしまったのだ。
帰国後、タイ国鉄飲酒禁酒令について調べてみると、昨年(2014年)7月‥タイ南部からバンコクに向かう長距離列車内で、寝台車を担当するタイ国鉄の臨時職員(男22才)が乗務中に飲酒をし、覚醒剤を服用した。
その作用によって起きたムラムラ感を抑えられず乗客の13才の少女をレイプして殺害。
更に遺体を列車から投げ捨てると言う悪質な事件が起きた事から、タイ国鉄は車内飲酒を禁止し、守れない者は強制下車させる事とした。
女性専用寝台車両が設置されたのもこの事件が背景にあったからとしている。
それにしても、臨時職員とは言えタイ国鉄の職員に問題があったのに、乗客に対して飲酒禁酒とはおかしな話しではなかろうか。
乗務中に飲酒と覚醒剤服用をさせるタイ国鉄の管理体制に問題があるのではないか。
とんでもない話しである。
お腹がすいた。
食事は注文すれば席まで運んでくれるサービスがあるのだが食堂車に行ってみよう。
タイ国鉄の食堂車は日本の列車食堂と同じく依託営業で値段は少し高め。
食堂車内に冷房はなく、全ての窓が全開していて、タイホップスが大音響で流れていた。
お粥にフルーツ:オレンジジュースがつく
お粥セット110バーツ(418円)を注文した。
食堂車でアジアの風にあたりながら、イサーンの景色を眺めての朝食‥これも列車旅の醍醐味だ。
日本では食堂車で食事をする事が一部の豪華列車を除いてできなくなってしまったが、タイでは食堂車がまだまだ健在なのはとてもうれしい。
しかし、飲酒禁止は食堂車も例外ではなくなってしまったのは残念でならない。 -
ラオス国境の街‥ノンカーイ駅。
スマホを盗まれて駅のベンチにへたれこんでしまった。
※イメージ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
④
食堂車から戻ると、列車はウドンタニーに到着した。
定刻より30分遅れての到着である。
ウドンタニーまで来れば、ラオス国境の街‥ノンカーイまで残り1時間の距離である。
スマホの電池が残り少なくなって来た。
ヤンゴン駅でデジカメを紛失して以来、スマホでずっと写真を撮り続けて来た。
電池がきれてしまっては写真が撮れなくなってしまう‥
嬉しいことに車内で充電ができた。
車掌が「ノンカーイ、ノンカーイ」と車内をまわり始めた。
そろそろ終点、ノンカーイに着く。
スマホをコンセントから抜き、荷物をまとめている間に列車はノンカーイ駅に到着し、乗客が降り始めた。
さて、降りるか‥
「アレ? ここにあったスマホはどこに‥」
悲劇の幕開けだった。
ノンカーイ駅での顛末はプロローグで紹介した。
もう何もしたくなかった。
かと言っていつまでも駅のベンチでへたこれる訳にはいかない。
荷物を背負うと体がよろけそうになる。
よろよろになった体に鞭を打ってトゥクトゥクに乗った。
空がとても爽やかで青い。
その下を僕を乗せたトゥクトゥクはコトコトと走る。
駅から国境までは5分ほどで着いた。
パスポートをとりだして出国審査場に向かう。
気持ちが放心状態のままで、このままだとパスポートまでなくしてしまいそうな勢いだ。
いかんいかん‥と言い聞かせているのだが、なかなか気持ちはおさまらない。
出国審査は何事もなくタイ出国のスタンプが押され、バスに乗って国境を越えた。 -
ノンカーイのトゥクトゥク。
ノンカーイ駅から国境まで乗った。
40バーツ(152円)
※イメージ。 -
タイとラオスの国境バス。
メコン川友好橋のタイ側ノンカーイとラオス側タナレーンを往復している。
※イメージ。 -
メコン川を渡る。
対岸はラオスだ。
※イメージ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
⑥
国境バスはメコン川を渡る。
メコン川の中間付近が国境である。
橋の欄干に並んでいたタイの国旗がラオス旗に変わった。
橋を渡りきるとラオス側の入国審査場に着く。
以前、ラオス入国にはビザが必要であった。
ノンカーイの代理店に依頼して発給までに数日かかるか、下手したらビザ発給が急に中止になるなど、ラオスへへの入国は容易ではなかったらしい。
その後、ビザが国境で即日発給されるようになり、現在は日本人は14日以内の滞在なら、ビザが不要になった。
入国審査はあっさりと終わると、以前はもう一度、パスポートチェックを受けて入国となっていたのだが、新しく駅の自動改札のようなものが設置されていた。
そこを通過するには、イミグレ内にあるATMのような建物にある窓口に行ってパスポートを出し、入国税?らしき物を払うとカードを渡されるので、そのカードを自動改札に入れて入国‥と言うシステムに変わっていた。
入国すると、タクシーやトゥクトゥクの客引きがやってくるが、放心状態の僕は彼らを無視して広場の隅に停まっている路線バスに乗ってラオスの首都‥ビエンチャンに向かった。
僕が初めてラオスを訪れたのは2008年である。
まだ、バスに乗ると言う技を使う事が出来ず、客引きに言われるがままにタクシーに乗ってビエンチャンを目指した。
当時は走っている車が少なく、道路脇を水牛が堂々と歩くノンビリとした光景が眺められた。
あれから7年‥
車やバイクが増え、渋滞もするようになってしまった。
タナレーンから約40分ほどで、ビエンチャンのタラートサオに着く。
タラートサオはビエンチャンの中心的な役割を果たす場所で近郊バスのターミナルがあり、タラートは市場を意味する。
その規模、商品の量とあらゆる面でラオス最大のマーケットである。
近年、ショッピングモールが完成し、雑貨、時計、家電、寝具や工芸品、衣類などが並ぶが、最近の売れ筋はスマートフォンのようだ。タイ ラオス友好橋 建造物
-
韓国人オーナー経営のRDゲストハウス。
メコン川に近い。
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⑦
今夜は宿無し。
宿を探さなくてはならない。
メコン川沿いのファグーム通りの界隈には安宿が多い。
そこにRDゲストハウスと言う、韓国人が経営している宿がある。
昔、泊まった事があるのだがなかなかよかったので、まずはそこに向かった。
タラートサオから15分歩いた。
2年前にビエンチャンに行った時、RDゲストハウスは満室だった。
今回は空室があるようだ。
前に泊まった最上階の部屋にしてもらった。
1泊‥14万キップ(2084円)。
この宿で一番高い部屋だが、温水シャワー、トイレ、テレビに冷蔵庫。
そして大きな窓があって明るい室内であった。
気分は相変わらず落ち込んでいたが、希望していた宿がとれたので、わずかながら落ち着きを取り戻した。
しかし、部屋に入ると再び奈落の底に落とされる事になる。
テレビと冷蔵庫が部屋から消えていた。
変わりに2段ベッドが置かれている。
「前に来た時と違う‥」
ドアにドミトリーと書いてあった。
ドミトリーとは相部屋の事である。
そう言う事か…
僕が前に泊まったのは3年前。
その後にテレビと冷蔵庫を外して2段ベッドを入れてドミトリーにしたのだ。
つまり、僕はドミトリー部屋をルームチャージした訳だ。
僕はなんて馬鹿な奴なんだ‥
もうフロントに行って部屋を変えてもらう気力もない。
そのまま、ベッドに倒れこんでしまった。RD ゲストハウス ホテル
-
昔のRDゲストハウス401号室。
今はテレビと冷蔵庫がなくなり、2段ベッドのドミトリールームに‥
そうとは知らずに、僕はこの部屋をチャージしてしまった。
お馬鹿な奴だ。 -
タラートサオに隣接した市場‥タラートクアディン。
タラートサオにはない生鮮食品や雑貨、衣料品を扱う。
こちらはぐっと庶民的な市場である。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
⑧
しばらく眠ってしまった。
夢の中でスマホが戻って来る夢を見た。
しかし、現実は盗まれた物は出てこない‥
殺風景な部屋にいても仕方ないし、落ち込んでいても腹は減る。
街に出てみた。
タラートサオにはたくさんのスマホショップがある。
たくさん並んでいるスマホのある1台73万キップ‥と表示されていた。日本円にしたら10650円ほどである。
少し悩んだ。
しかし、日本で使えるのか?
色々と悩んだ末、今回はやめる事にする。
タラートサオの向かいにある市場がタラートクアディン。
未舗装の道沿いにバラック建ての建物が並び、その中は迷路のようになっている。
タラートサオはショッピングモール化されて近代化されたが、こちらは昔からのラオスの市場の風景が残っていた。
写真データを失ってしまったので、今回の旅の記録をノートに書こうと文具店でノートを買った。
少し洒落たノートが1冊‥15000キップ(225円)
高い!
安い普通のノートもあったのだが、「10冊の束売りしかない」と言われたので15000キップの高級ノートを購入。
そして、市場の食堂でラオス風うどん‥カオピャックセンを食べた。
テーブルの上にある付け合わせの生野菜をちぎって麺に入れて食べる。
衛生的な食堂と言えないが、なかなか旨い。
買い物のついでに食べていく主婦が多いようだ。
カオピャツクセンだけでは物足りないので、フランスパンのサンドイッチ‥カオチーサイクアンを購入。
ラオスはフランスの植民地だったので、その置き土産としてフランスパンが残った。
これはカンボジアやベトナムでも同じ。
僕の個人的な感想だが、日本で食べるフランスパンより、これらの国で食べるフランスパンの方が美味しく感じる。
長さ30センチほどのフランスパンにハム・キューリ・香草などを挟み、チリソースをトッピングされていてボリュームがあるものが5000キップ(75円)と安い。
そして、あまり知られていないのだが、ラオスはコーヒーの産地でもある。
街のいたる所にコーヒー屋台があるので、アイスコーヒーを買った。
これらの屋台では黙っていると、コーヒーに練乳をドボドボと入れられる。
最近は減ってきたが、少し前まではアジアのコーヒーと言ったら、この激甘コーヒーが主流だった。
僕は日本ではコーヒーをあまり飲まないのだが、東南アジアに来るとこの激甘コーヒーのとりこになってしまう。
ホテルに戻るとしよう。タラート クアディン (クアディン市場) 市場
-
タラートクディアンの安食堂で食べた、ラオスうどん‥カオピヤックセン。
鶏などのダシでトロトロになるまで煮込んだスープに米製の麺が入っている。 -
バーンチャンタブリーサウナ
ラオスには入浴の習慣はないが、薬草を燻したサウナがある。ワットチャンタブリー 寺院・教会
-
メコンの夕日。
これを見る為にここまでやって来た。
落ち込んでいた自分を少しだけ癒してくれた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
⑨
宿に戻り、今回の旅の記録をノートに書き始めた。
これが思ったより時間がかかる。
つい数日前の事なのに、忘れてしまっている事が結構多い。
こんな事になるならもっとメモをちゃんととって置けばよかった…
なんて言っても後の祭り。
ない頭をふりしぼって記憶をノートに記した。
ふと気付いたら、もう夕方ではないか。
疲れを癒そうと近くのサウナに行った。
ラオスでは植物を治療に活かす伝統的な医療法のひとつとして薬草サウナがある。
メコン川沿いにあるワットチャンタブリー(寺)の脇道を入った場所にある、バーンチャンタブリーサウナに行ってみた。
入浴料は20000キップ(約300円)。
ロッカーキーと体に巻く布、お茶を飲むためのカップを受け取る。
サウナ小屋は男女別になっていて、中に入るとハーブの香りが漂う。
なんだか癒される感じがする。
サウナ小屋の外にオープンエアなスペースがあり、ベンチに座って火照った体を冷まし、テーブル上にお茶が置いてあるので、渡されたコップを使って水分の補給ができるようになっていた。
ラオス人の他に欧米人も多く、昔、ここに来た時、オカマちゃんを目撃した。
女性達は、蜂蜜やヨーグルトなどの天然素材のパックを体に塗りまくってサウナに入っていた。
なんでも美容に良いらしい。
布一枚を身に纏う女性はなんだか色っぽく見え、目の保養になった。
サウナでさっぱりした。
ビアラオを1本買ってメコン川に向かう。
メコン川の夕日を見る為に、ここまでやって来た。
昔、メコン川沿いには座敷の屋台食堂が並んでいて、そこでビールを飲みながら三角枕を頭にゴロゴロしながら、まったりと夕日を眺める事ができた。
しかし、それも過去の話し。
メコン川沿いに整備された公園ができてから屋台食堂は営業できなくなってしまった。
今はコンクリートの護岸に腰を下ろして夕日を見る。
この日は撤去させられたはずの屋台が公園に並んでいるので、復活したのかと思いきや‥ラオス料理フェスティバルなるイベントであり、周りは大盛況。
ステージではラオス民謡ショーが開かれている。
ここ数年でビエンチャンは変わってしまった。
何もないけど、静かにビールを飲みながら眺めたメコンの夕日が懐かしい。
それでも、夕日そのものは昔と変わらない。
ゆっくりゆっくりと赤い夕日がメコンに落ちていく。
落ちこみ度200%で眺めた夕日は少しだけ僕の心を癒してくれた。
夕食は、ラオスの郷土料理‥ラープにした。
ミンチ状にした肉や魚をレモンやライム汁などをふり、香草などと炒めた料理でラオスに行った時、これを食べずには帰れない。
カオニャオと呼ばれる餅米を蒸した物を手で丸め、ラープをのせて食べる。
ラオスの味だ‥
そして、ビアラオ。
これだけあれば後は何もいらない。
ラオスの味を堪能し、ほろ酔い気分で宿に帰った。 -
ラオス料理を代表するラープ。
ミンチ状の肉や魚にレモンやライム汁、香草などを混ぜて炒めたもの。
これにカオニャオ(餅米)とビアラオがあれば、あとは何もいらない。
つづく。
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第12部.第37回海外放浪・タイ~ミャンマー~ラオス。
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旅行記グループ 第12部.第37回海外放浪・タイ~ミャンマー~ラオス。
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