2014/10/18 - 2014/10/19
92位(同エリア264件中)
naoさん
岡山県倉敷市下津井は、本州と四国を結ぶ連絡橋の中で最も早く開通した瀬戸大橋の、本州側のたもとにある小さな港町で、近世には下津井城の城下町として、また、江戸時代には西国大名の参勤交代の御座船、西回り航路を経由する北前船、四国のお遍路さんや金毘羅参りの客船の渡航地など、様々な顔を持っていました。
下津井の後背地の備中や備前の干拓地では、塩分を含んだ土壌のため稲作には不向きで、水と肥料さえあれば容易に栽培できる綿花などの作物が多く作られていました。
このため、北海道の函館、江差、小樽、釧路、根室などで肥料のニシン粕や干鰯を大量に積みこんだ北前船が、年間50〜60隻、多いときで80隻も下津井に来港し、大変な賑わいをみせるようになります。
ちなみに、こうして収穫された綿花は綿糸に加工され、これを原料として製品化された反物、衣服、帯、紐、足袋などを北前船に載せて売り捌いたのは云うまでもありません。
さらに、讃岐の金毘羅参りが盛んになった江戸時代後期には、下津井から船で四国へ渡る旅人が増加するとともに、旅籠や飲食店などが建ち並ぶようになり、北前船とともに下津井に活況をもたらす要因になりました。
これにより下津井の商人達は大きな富を蓄積するところとなり、白漆喰塗にナマコ壁、虫籠窓、ベンガラ格子、卯建など、狭い道沿いに工夫を凝らした町家やニシン蔵を競い合って建てていきます。
しかし、明治の中頃になり交通機関の近代化が進むと、船舶の大型化とともに四国航路や北前船の廃止などの変革があり、その後は漁業の町として時を刻み現在に至っています。
下津井を代表する豪商「荻野屋」は、下津井の海岸沿いに数多くの蔵(倉庫)を所有し、北前船で運ばれてきたニシン粕や干鰯を預かる貸倉庫業で財を成した家で、現在、一般に公開されている「むかし下津井回船問屋」はこの西荻野家が所有していた建物で、当時荻野屋が収集した品々を展示しています。
現在、当時の風情を今に伝える町家が狭い道なりに点在しており、かつて北前船や四国へ渡航地として賑わった下津井の面影を垣間見ることができます。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 自家用車 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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下津井へやって来ました。
漁港沿いの公民館に車を停めさせてもらって、町歩きを始めます。 -
下津井は、漁港沿いの広い道を、一本北側に入った狭い道沿いに、港町の面影を残す町並みが続いています。
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2階の出格子が特徴の町家。
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大きな建物の谷間に挟まれ、遠慮がちにたたずむ町家です。
両側の建物に引けをとらないたたずまいで、自己主張しています。 -
讃岐の金比羅山の参道入口にある、造り酒屋「金陵」の木製の看板を掲げる酒屋さん。
お遍路さんや金毘羅参りなど、四国への客船の渡航地だった下津井の歴史を物語っています。 -
2階黒壁の一部にナマコ壁をあしらった町家。
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西日のあたる窓に吊られた簾が、日除け効果を発揮しています。
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2階大屋根の前に、一段下がった下屋を架けている町家。
増築したようには見えないんですが・・・。 -
虫籠窓にナマコ壁の伝統的な町家が・・・
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隣り合っています。
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かつては、こんな町家が連なっていたんでしょうね。
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狭い道が曲がりながら続いています。
右手には、「むかし下津井回船問屋」の建物が見えています。 -
「むかし下津井回船問屋」です。
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この施設は、北前船で運ばれてきた積荷を預かる貸倉庫業で財を成した、下津井を代表する豪商、西荻野家が所有していた建物を再生したものです。
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1階は、店の間、座敷、茶の間、台所などが当時の姿に再現され、また、2階には、江戸時代以降使われていた、日常生活用品や北前船交易ゆかりの品々が展示されています。
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母屋の玄関を入ったところです。
通り庭が、奥の中庭まで通じています。 -
右手には、帳場を備えた店の間があります。
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2階へ上がる箱階段。
その奥には座敷や茶の間が見えています。 -
通り庭に面して台所が設けられています。
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通り庭を抜けて中庭に出ました。
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中庭の外の海側には、来場者用に駐車場が設けられています。
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中庭と駐車場との間にある裏門です。
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北前船が運んできたニシン粕や干鰯などを保管していた蔵を再生した、「蔵ほーる」が中庭に面して建っています。
ここは、レストランやイベントスペースとして利用されています。 -
母屋の左手には庭がしつらえられています。
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庭から見た座敷。
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モミジの青葉が清々しい雰囲気を醸し出しています。
では、建物内部を見せていただきます。 -
座敷からみた庭の様子です。
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小ぶりな春日灯籠が庭を引き締めています。
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庭に面する座敷には縁側が廻っています。
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座敷に置かれた火鉢に、懐かしさがこみ上げてきます。
私の子供の頃は、冬の暖をとるのに火鉢を使っていましたが、今から思えば、よくこれで冬を過ごせたな〜と思います。
でも、火鉢で焼いたお餅の美味しさは忘れられません。 -
こちらは、衣装蔵を再生した「蔵さろん」です。
休憩や会合の場として使用されています。 -
庭の修景に置かれた石。
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縁側から見た庭の様子です。
右手が「蔵さろん」で、奥に見える背の高い建物は「蔵ほーる」です。 -
2階の展示スペースには、当時、西荻野家が収集した品々を展示しています。
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2階から見た「蔵ほーる」。
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虫食いの梁が、良い景色をつくっています。
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では、「むかし下津井回船問屋」はこれくらいにして町歩きへ戻ります。
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町並みの向こうに吊り橋の主塔が見えてきました。
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それもそのはずで、下津井は瀬戸大橋の本州側のたもとに位置する町なんです。
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こちらも小さな町家ですが、虫籠窓や出格子をしつらえておられます。
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この町家のナマコ壁は、繋ぎ目を漆喰で押さえていませんが、何か工夫されてるんでしょうか・・・。
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妻側はちゃんと漆喰で押さえてあるんですがね〜・・・。
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こちらの町家には立派な卯建が上がっています。
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奥に向かって曲線状に変化をつけておられますが、あまり見ない形ですね。
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漆喰塗で立体的に浮きあげて仕上げられた、虫籠窓の枠の鏝さばきが見事です。
これを仕上げた左官屋さんの技量の高さが窺えます。 -
ナマコ壁の配置に工夫を凝らした町家です。
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こちらの町家は、正面と側面で・・・
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意図的に高さを変えるなど、デザイン的な配慮が見られます。
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こちらの町家は、さらに斜めと垂直のナマコ壁を使い分けておられます。
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しかも、アーチ型の開き窓で洋風を意識しておられるようです。
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瀬戸大橋の主塔がすぐそこに見える所までやって来ました。
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それにしてもこの町家、ナマコ壁に見るべきものがあるだけではなく、袖卯建までしつらえてあります。
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さらに、屋根の形状も複雑です。
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そろそろこの辺りで風情ある町並みも終わりのようです。
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こちらは町並みの外れにある和菓子屋さんです。
では、町並みを抜けて、先ほど主塔が見えていた瀬戸大橋を見に行きましょう。 -
瀬戸大橋が望める下津井漁港にやって来ました。
本州の児島ICから四国の坂出北ICに至る、約16kmの間に架けられた6つの巨大な吊橋などを総称して瀬戸大橋と呼ばれています。
下津井は、瀬戸大橋の本州側のたもとにある港町です。 -
本州側に架かる下津井瀬戸大橋(1447m)です。
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下津井と、海を隔てた櫃石島を結んでいます。
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巨大なアンカーレージの向こうに、櫃石島橋の塔が見えています。
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下津井瀬戸大橋の下を貨物船がくぐり抜けて行きます。
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下津井漁港からは漁船が出港して行きます。
瀬戸大橋はこの後も見所があるので、町並みに戻ります。 -
駒寄せの柵のある町家。
かつては牛馬が行き交っていたんでしょうね。 -
歩いてきた道を引き返しながら、あらためて下津井の町並みを見てみると・・・
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一言で「ナマコ壁」とは片づけられない・・・
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意匠を凝らした、いろんなナマコ壁が見られる町と云う印象が強く残っています。
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港町だった下津井には、土地の人々の飲料水とともに、寄港する船に水を供給するために掘られた共同井戸が、町角のあちこちに残っています。
これらの井戸は、水道のない時代に人々の生活を潤した証しとして、貴重な文化遺産だと云えるものです。 -
こちらは亀井戸です。
花崗岩で組まれた井戸側には、享保3年の文字が見えます。 -
亀井戸の手前にある鶴井戸です。
こちらは寛文10年の開削だそうです。 -
町並みで見つけた猫ちゃん。
シャム猫との混血のようです。 -
次の目的地へ向かう途中、瀬戸大橋の真下を通ったので、ちょっと車を停めて観察しました。
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技術屋の端くれとして、このメカニカルな姿に魅力を感じていたので、間近で見ることができて感激しました。
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主塔の下は漁船溜りになっており・・・
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この日はたくさんの漁船が係留されています。
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次に、少し離れた所につくられた小さな公園があったので、ここにも寄って行きます。
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ここからは、瀬戸大橋のほとんどが見渡せます。
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斜張橋が美しい櫃石島橋(792m)と岩黒島橋(792m)です。
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トラス橋の与島橋(854m)の向こうに、北備讃瀬戸大橋(1611m)と南備讃瀬戸大橋(1723m)の姿がぼんやりと見えています。
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西の空でお日さまが輝いているので、良い夕焼けが期待できそうです。
では、夕焼けを見に次の目的地へ向かいます。
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