2014/11/21 - 2014/11/21
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montsaintmichelさん
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比叡山の南西麓に佇む曼殊院門跡は、竹内門跡とも称する洛北屈指の名刹でもあり、天台宗五箇室門跡のひとつでもあります。阿弥陀如来を本尊とし、開基は是算(ぜさん)国師です。
他の天台門跡寺院と同様、最澄が比叡山に草創した一宇が起源とされます。その後、天暦年間、是算国師の時に比叡山西塔北渓に移り、「東尾坊」と号しました。また、この国師が菅原道真に所縁のある家系出身であったことから、北野天満宮が造営されると初代別当職に補され、以後明治維新まで北野別当職を歴任していました。天仁年間、八代忠尋大僧正が寺号を「曼殊院」と改め、北山に別院を建立しました。そして1656年に29代良尚親王が入寺し、現在の地に堂宇を造営したのが今日の曼殊院となっています。
明治に入り宸殿を失った以外は、当時の門跡寺院の様子がそのまま残されており、本堂・書院・庫裏が国の重要文化財、また、庭園を含む境内全体が1954年に国の名勝に指定されています。
因みに、曼殊院の「曼殊」とは、サンスクリット語の「妙薬」「愛楽」の意味があり、また、天上花を意味する曼珠沙華に由来するとも言われています。江戸時代初期の代表的書院建築で、間仕切りの卍くずしの欄間の意匠や雁行型の書院、インテリアのデザインなど桂離宮のセンスが感じられ「「小桂」」とも称されています。それは、江戸時代の中興の祖 良尚法親王の2歳上の兄が桂離宮を完成させた八条宮智忠親王であり、当院の建立に際しても関わったとみられているからです。さしずめ兄弟のコラボといったところでしょうか。稀代の創造者が今に残す数々のアートを、このお寺の随所に観ることができます。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦
- 交通手段
- 私鉄 徒歩
-
曼殊院門跡 石碑
参道入口にある石碑の周囲の紅葉が色鮮やかに染まっています。
ここから先はなだらかな長い登り坂となり、突き当りが勅使門です。
曼殊院門跡の「門跡(もんぜき)」とは、寺院の格を表す呼び名で、貴族や皇室が住職を務めるお寺のことです。
右隣の門構えは、武田薬品 京都薬用植物園への入口です。 -
曼殊院門跡 参道
このようにグラデーションが美しい紅葉のトンネルが曼殊院へのプロローグとなります。 -
曼殊院門跡 弁天島
勅使門の手前の境外西側に開ける弁天島には、弁財天と並んで菅原道真を祀る祠 天満宮も祀られています。何故かと言うと、曼殊院を開基した是算というお坊さんは菅原家出身の方なのだそうです。
弁天池に映り込んだ逆さ紅葉がとてもきれいです。
弁天島辺りは、紅葉の盛りとなっています。 -
曼殊院門跡 勅使門
勅使門は、江戸時代の1656年頃に建立された薬医門形式の門です。手前には、15段の急峻な石段があります。勿論、天皇の勅使(使い)の方しか入れない格調高い門ですので、普段は閉鎖されています。
石段の上に立つ曼殊院の正門 勅使門に架かる紅葉は絶好の撮影ポイントです。
この勅使門の紅葉が、2006年のJR東海のポスターに使われていました。しかし、ポスターの構図で撮るには、かなり上空から撮る必要があります。
http://recommend.jr-central.co.jp/others/museum/kyoto/autumn_2006_02.html -
曼殊院門跡 勅使門
勅使門の両脇に控える楓が紅葉の見頃を迎えていました。 -
曼殊院門跡 勅使門
下から仰ぎ見ると、とても鮮やかな朱色に輝いていました。 -
曼殊院門跡 勅使門
こちらも右側に引けを取らない巨木の楓です。
やや紅色が濃い種類です。 -
曼殊院門跡 勅使門
観る位置を変えると色々な表情を見せてくれます。 -
曼殊院門跡 築地塀
勅使門の両側の白い築地塀に残る5本の定規筋は、皇室一門所縁の五門跡の最高位の寺格を伝えています。
白壁に映える紅葉の朱色とウマスギゴケの深緑色が、コントラストを豊かにしています。 -
曼殊院門跡 築地塀
勅使門に続く白壁と石垣の間に連なる紅葉の美しさもよく知られています。
また、院を取り囲む白壁の斜面には、ウマスギゴケの大群落が生育しており、これも圧巻です。
ここでは敷紅葉が堪能できそうな雰囲気です。 -
曼殊院門跡 北通用門
拝観者はこの門から出入りします。 -
曼殊院門跡 庫裡(くり)
庫裡(重要文化財)から拝観が始まります。
因みに、庫裡とはお坊さんたちの食事を用意するためのお堂のことです。つまり、唐破風の台所通用口から入場します。
庫裡からは大玄関と呼ばれる建物へと進みます。
大玄関は「虎の間」「竹の間」「孔雀の間」に分かれ、各部屋の襖にはそれぞれ「虎」「竹」「孔雀」が描かれています。中でも、虎の襖絵は重要文化財に指定され、狩野派の中でも代表的な画人「永徳」のものだと言われています。 -
曼殊院門跡 庫裡
唐破風の上には燦然と輝く菊の紋章がこんなに…。 -
曼殊院門跡 庫裏玄関
庫裏玄関には、竹筆の隷書で良尚法親王筆「媚竈(びそう)」の扁額が掛かります。論語八佾編にある「権力者に媚びず、竈(かまど)で働く人々に感謝する」、つまり働く人々への労りを表したものと伝わります。しかし、権臣にへつらう例えの意味から、良尚が江戸幕府に媚びざるを得ない立場であったことを自虐的に表したものとも詮索されています。
親王といえども苦労が絶えなかったのでしょうね。 -
曼殊院門跡 坪庭
「庫裏」と「大玄関」の建物の間には小さな庭が設けられています。
水面の幻影が美しい、花の間にある一文字手水鉢です。
この坪庭は最近造られたもので、数年前は何も無かったようです。 -
曼殊院門跡 大書院(おおしょいん)
大玄関を出て長い渡り廊下を先へ進むと大書院へと繋がっています。
大書院は、江戸時代初期の書院建築で、部屋は「滝の間」から「十雪(じゅっせつ)の間」「仏間」「控えの間」と分かれています。「十雪の間」にはおみくじを考案したお坊さんである元三大師(がんざんだいし)の坐像や狩野探幽の襖絵も拝見できます。また、違い棚は桂離宮のものと同じ造りで、同じ時期に造られたものだそうです。
因みに、大書院が曼殊院の本堂に相当します。 -
曼殊院門跡 枯山水庭園 鶴島
大書院前には小堀遠州好み(遠州没後に造られたためこのような表現をしています)の枯山水庭園が広がり、深山と水の流れを表現しています。枯山水と言えば、禅宗寺院に見られる狭い空間に滝石を組んだ庭を思い浮かべますが、曼殊院は門跡寺院のため、宮廷風の意匠を取り込んだ独特の作風です。中心に庭の構成の起点となる滝石組を作り、その水の流れに見立てた白砂の中には鶴島と亀島の2島と蓬莱山、石橋が配され、小書院は静かに水面を遡る屋形舟に見立てられています。因みに、小書院の天井もまた舟底天井となっています。
鶴島にある樹齢400年の五葉松は、鶴の長い首を表現しています。一説には、元は五葉松は2本あって鶴の両翼を現わしていたが、台風で片方が折れたために今のような形になったとも言われています。また。宝船を表現しているとも言われています。
このように禅的なものと宮廷風のものとが調和した日本独特の庭園として知られ、国の名勝に指定され、秋には白砂と霧島つつじの緑に鮮やかな紅葉が映え、優雅な空間を造ります。 -
曼殊院門跡 枯山水庭園 鶴島
五葉の根元には一基の曼殊院型キリシタン燈篭が立てられ、公家風で趣味豊かな良尚親王の趣向を反映していていると言われています。 -
曼殊院門跡 枯山水庭園 鶴島 曼殊院型キリシタン燈篭
竿の部分の十字架を象っている意匠が独特です。良尚法親王の母上が若狭丹後の京極家で、クリスチャンだったことから、忍びつつこうした燈籠が置かれたようです。
書院庭園の五基八燈の燈籠のひとつ。天台宗の教義により、釈迦の説法五時(華厳、鹿苑、方等、般若、法華涅槃)、八教(頓、漸、不定、秘密、蔵、通、別、円)に因むそうです。 -
曼殊院門跡 大書院
10弁の菊と短冊の釘隠し。
大書院の釘隠しは、この意匠で統一されています。 -
曼殊院門跡 大書院 扁額「塵慮尽(じんりょじん)」
「よこしまな心を払い、取り除け」。
大書院廊下の扁額には「塵慮尽」と書かれています。
この字を普通に読める人とは、いったいどんな人なのでしょうね。 -
曼殊院門跡 亀島と小書院
以前は亀島には、亀形の松が植わっていたそうです。
本来ならこの正面の紅葉が見所なのですが、盛りを過ぎてしまったのでしょうか?
宮元健二 著「京都名庭を歩く」には、小書院の空間構成に等差数列を駆使していると記されています。富士の間が2間、黄昏の間が1.5間そして上段の間が1間と奥に進むほど部屋の奥行きが小さくなっています。これらは遠近感を強調するために用いられた西欧手法で、これが遠州好みを造り出しているとされています。こんなところにも桂離宮の遠近法のコンセプトが垣間見られます。 -
曼殊院門跡 小書院 梟(ふくろう)の手水鉢
小書院の縁先には、名高い黄泉の守り神「梟の手水鉢」が置かれています。花崗岩製の円形の蹲の四方に梟の姿態をあしらっていることからこのように呼ばれています。
これは手水鉢として使うものではなく、中秋の名月の頃に月の光をこの手水鉢に反射させ、部屋の天井や白壁に月の揺らぐ姿を映しだして鑑賞するという手の込んだ趣向です。そのため手水鉢は少し傾けられています。 -
曼殊院門跡 小書院 梟の手水鉢
梟の由来を智慧者や学問の神と深読みしたくなりますが、それはヨーロッパから伝わった概念ですので、時代的に吊り合わないようです。夜光る目=月といったシンプルな発想でしょうか…。 -
曼殊院門跡 小書院 梟の手水鉢
下の石組みは霊亀に見立て、奥の立石(縦長石)は鶴を象っているそうです。
しかし、イマジネーションのキャパが不足しているためか、どう見ても立石は「亀の頭」にしか見えないのですが…。 -
曼殊院門跡 小書院 富士の間
客人が座して庭園を愛でる部屋です。
廊下から欄間越しに見るのではなく、座敷から坐って鑑賞すると、更に美しく落ち着いて観られるように作庭されています。
左側の黄色い紅葉の枝先の下の樹木の陰に3つの灯袋の燈籠があります。また、中央の紅葉の左脇には、石組「瀧石」が見えます。 -
曼殊院門跡 小書院 富士の間
「閑静亭(かんじょうてい)」と彫られた扁額。
この書は松花堂昭乗筆ですが、恥かしながら全く読めませんでした。 -
曼殊院門跡 小書院 廊下
欄干意匠のシルエットは派手な印象は無く、凛とした高貴な印象を受けます。影の中から光がふんわりと浮かび上がってくるようです。
そして広縁の欄干の目立たない所にも、菱形の釘隠しが施されています。 -
曼殊院門跡 小書院
「富士の間」と「黄昏の間」の仕切りにある長押には、富士山に架かる彩雲を象った洒落た七宝焼の釘隠が見られます。
驚くことに、全て彩雲の意匠が異なっています。 -
曼殊院門跡 富士の間
格子模様の中に表菊と裏菊を配した欄間は、表菊は浮き彫りで写実的に表現し、裏菊は透かし彫りで格子と同じように透けた感じを演出しています。 -
曼殊院門跡 お抹茶接待処
秋のシーズン限定で、庭を眺めながらの抹茶の接待を受けることができます。 -
曼殊院門跡 お抹茶接待処
夜間拝観がメインなのか、お客さんの姿はひとりも見られませんでした。 -
曼殊院門跡 梵鐘
谷崎潤一郎寄贈の梵鐘が吊るされています。
鐘には「あさゆふの かね能ひびきに 吹そへよ 我たつ杣乃 やまおろし能かせ」と刻まれています。鐘の音と山おろしの木々が擦れる音。鐘の響きが風に乗って山から街へと広がっていく…。詠まれた情景を思い浮かべてみました。
法要の合図に打ち鳴らされる半鐘だそうですが、谷崎流の匂い立つような甘美で妖しげな音色がするのであれば法要に影響が及ぶのではと気を揉んでしまいます。
余談ですが、谷崎潤一郎は若い頃のモダンな作風を嫌悪し、その後は京都を愛して日本の古典美を追求したことで知られています。こうして年を重ねて春と秋にせわしなく古都の寺院を巡っている自身の姿と照らし合わせてみると、人というのはそういうものなのかな〜と妙に納得したりしています。 -
曼殊院門跡
梵鐘の右手奥に掲げられている絵画です。
どなたの筆になるものか分かりませんが、ダイナミックに夜桜と篝火を描いています。右下には、「久代」と記されています。
因みに、曼殊院は2幅の「幽霊の掛け軸」でも有名です。
公式HPなどに紹介されてもいないのですが、口コミで伝わっているようです。何故ここに作者、年代共に不詳の掛け軸があるのかと言うと、人から人へ渡り、最終的に持ち主が怖くなり、ここへ納めたという曰く付きの掛け軸だそうです。曼殊院ではもう1幅、幽霊の掛け軸を保有していました。作者は、足の無い幽霊を描かせれば右に出る者はいない円山応挙だとも言われています。こちらは、暫くして持ち主へ戻されたそうです。
さて、幽霊の掛け軸は、ひとつは塔婆をバックに白い和服を着た髪の長い老女。もうひとつはそれよりも若い女性が描かれています。この掛け軸を撮った写真を持っているだけで不可解な現象が起こると噂されています。無断で写真を撮った方がそうした現象に耐え兼ね、お寺へ写真を送ってお祓いをしてもらうことも多いそうです。傍らには「撮影されても責任は負いかねます」との説明書が添えられています。ご注意なさってください。 -
曼殊院を後にして、徒歩15分強の距離にある赤山禅院へ向かいます。
途中、修学院離宮の南を流れている音羽川の傍らに立派な紅葉がありました。 -
修学院離宮
正面に見えるのは修学院離宮の一角を占める山です。
斑に紅葉が進み、山里の雰囲気を醸しています。 -
修学院山
修学院離宮は、柵が施され、内部は宮内庁の管轄となっています。
右手に広がるのが修学院山です。
正面に広がるのは農地で、3つの離宮の間にある8万平方mの農地を昭和39年に景観保持のため国が買い上げて付属農地としています。 -
修学院離宮
正門前の紅葉が、赤、朱、黄色ととてもきれいに色彩を違えています。深緑の松の葉もアクセントになっています。
17世紀中頃(1653〜1655年)に後水尾上皇の指示で造営された離宮(皇居以外に設けられた天皇や上皇の別邸)です。 -
修学院離宮
一段と紅色が目に鮮やかな紅葉をズームアップ。
曼殊院から15分強で赤山禅院に到着します。
この続きは④赤山禅院編でお届けします。
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