サンクトペテルブルク旅行記(ブログ) 一覧に戻る
今年5回目のサンクトペテルブルク滞在中の週末、木々が黄葉したミハイロフスキー城の周辺を散策した。「黄金の季節」と言われるように、サンクトペテルブルク市内のメープルの葉が落葉し、公園内は黄金の絨毯が敷かれたようだ。家族連れの市民や、結婚式のカップルとその友人家族が公園の散策を楽しんでいた。<br /><br />しかしその翌日曜日は朝から厚い雲が垂れ込め、天気予報通り午後には初雪が降り出した。この日は休養日に決めていたので、暖房の効いた室内で読書をして過ごしたが、食料の買い出しのついでにカメラを携えて、モスコフスキーヴァロータ(モスクワ凱旋門)の周辺で今年の初雪の風景を撮影した。<br /><br />さて、この街では9月の後半からフィルハーモニー、マリインスキー両方でシーズン開幕を迎えるのが常である。しかしフィルハーモニーの方は、シェフのテミルカーノフが開幕コンサートに登場して以降、ステージに登っていない。76歳の円熟の極みにあるテミルカーノフであるが、年齢による体力の衰えも噂に聞く。今回は彼の指揮ぶりに接することができなかったのは少々気がかりではある。<br /><br />一方のマリインスキーの方は、先週はゲルギエフとともに日本やカザフスタンなど長期の演奏旅行に出ており、今週本拠地に復帰した。帰国早々ゲルギエフは連日のように登場し、トロイ人、ジークフリート(1、2幕のコンサート上演)、スペードの女王など相変わらずの多忙振りだ。ほとんどのチケットがソールドアウトでやきもきしたが、一か八かワーグナーの公演だけは会場に出掛けたところ、すぐに年配の女性が声をかけてくれて、600ルーブル(約1,600円)の指揮者が見えるステージ裏側の席を、この値段で譲ってくれることになった。このところ不運続きの小生にも多少の運は残っていたということか。<br /><br />6ー7月の白夜祭でのゲルギエフの超人振りはすでにご紹介した。それもワーグナーやヴェルディの巨大なオペラを含む連日の上演は他にまず例を見ない。そしてこのハイレヴェルの上演のチケットの価格はリーズナブルであり、インターネットで容易にチケットが予約できることは彼に感謝すべきである。それにしてもロンドンやアムステルダム、ミュンヘンのオケを指揮した上に、手兵のマリインスキーのオケと長期の演奏旅行の直後に、重量級のプログラムで挑戦を続けていることには驚嘆の念を禁じ得ない。<br /><br />この日はインターネットでは「指環」からのアリアなどの抜粋とあり、当日受け取ったプログラムにはタンホイザー序曲と、ローエングリン前奏曲、ヴァルキューレの騎行に加えジークフリート1、2幕とあった。7時に開始したコンサートは深夜を過ぎるのか、と思ったが、実際に演奏されたのはジークフリートの1、2幕のみ、要は全くゲルギエフの気分で決められているとしか思えない。演奏の方はもちろん素晴らしい。しかしジークフリートのホルンの場面などリハーサル不足としか思えないミスが発生していた。<br /><br />この日のコンサートの後、サンクトペテルブルク在住の音楽ファンや指揮を勉強中の方々とお話しする機会があった。マリインスキーは常時3つの会場で同時に公演が行われることがあり、一軍、二軍どころか三軍部隊まで、時には言葉は悪いが寄せ集め的な演奏会を行うこともあるという。ゲルギエフの時は流石にそんなことはないと思うが、固定メンバーでない弱点を露呈することがある。また、最近のゲルギエフについて、重度のワーカホリック症状、又は連日巨大な作品を指揮していなくてはいけない、という強迫観念に襲われているのではないか、という意見まで耳にした。現代ロシアの誇る稀有なカリスマ指揮者だけに、今後の彼の動向には目が離せない。

冬間近のサンクトペテルブルク: 開幕したフィルハーモニーとマリインスキー劇場

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2014/10/13 - 2014/10/25

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ハンク

ハンクさん

今年5回目のサンクトペテルブルク滞在中の週末、木々が黄葉したミハイロフスキー城の周辺を散策した。「黄金の季節」と言われるように、サンクトペテルブルク市内のメープルの葉が落葉し、公園内は黄金の絨毯が敷かれたようだ。家族連れの市民や、結婚式のカップルとその友人家族が公園の散策を楽しんでいた。

しかしその翌日曜日は朝から厚い雲が垂れ込め、天気予報通り午後には初雪が降り出した。この日は休養日に決めていたので、暖房の効いた室内で読書をして過ごしたが、食料の買い出しのついでにカメラを携えて、モスコフスキーヴァロータ(モスクワ凱旋門)の周辺で今年の初雪の風景を撮影した。

さて、この街では9月の後半からフィルハーモニー、マリインスキー両方でシーズン開幕を迎えるのが常である。しかしフィルハーモニーの方は、シェフのテミルカーノフが開幕コンサートに登場して以降、ステージに登っていない。76歳の円熟の極みにあるテミルカーノフであるが、年齢による体力の衰えも噂に聞く。今回は彼の指揮ぶりに接することができなかったのは少々気がかりではある。

一方のマリインスキーの方は、先週はゲルギエフとともに日本やカザフスタンなど長期の演奏旅行に出ており、今週本拠地に復帰した。帰国早々ゲルギエフは連日のように登場し、トロイ人、ジークフリート(1、2幕のコンサート上演)、スペードの女王など相変わらずの多忙振りだ。ほとんどのチケットがソールドアウトでやきもきしたが、一か八かワーグナーの公演だけは会場に出掛けたところ、すぐに年配の女性が声をかけてくれて、600ルーブル(約1,600円)の指揮者が見えるステージ裏側の席を、この値段で譲ってくれることになった。このところ不運続きの小生にも多少の運は残っていたということか。

6ー7月の白夜祭でのゲルギエフの超人振りはすでにご紹介した。それもワーグナーやヴェルディの巨大なオペラを含む連日の上演は他にまず例を見ない。そしてこのハイレヴェルの上演のチケットの価格はリーズナブルであり、インターネットで容易にチケットが予約できることは彼に感謝すべきである。それにしてもロンドンやアムステルダム、ミュンヘンのオケを指揮した上に、手兵のマリインスキーのオケと長期の演奏旅行の直後に、重量級のプログラムで挑戦を続けていることには驚嘆の念を禁じ得ない。

この日はインターネットでは「指環」からのアリアなどの抜粋とあり、当日受け取ったプログラムにはタンホイザー序曲と、ローエングリン前奏曲、ヴァルキューレの騎行に加えジークフリート1、2幕とあった。7時に開始したコンサートは深夜を過ぎるのか、と思ったが、実際に演奏されたのはジークフリートの1、2幕のみ、要は全くゲルギエフの気分で決められているとしか思えない。演奏の方はもちろん素晴らしい。しかしジークフリートのホルンの場面などリハーサル不足としか思えないミスが発生していた。

この日のコンサートの後、サンクトペテルブルク在住の音楽ファンや指揮を勉強中の方々とお話しする機会があった。マリインスキーは常時3つの会場で同時に公演が行われることがあり、一軍、二軍どころか三軍部隊まで、時には言葉は悪いが寄せ集め的な演奏会を行うこともあるという。ゲルギエフの時は流石にそんなことはないと思うが、固定メンバーでない弱点を露呈することがある。また、最近のゲルギエフについて、重度のワーカホリック症状、又は連日巨大な作品を指揮していなくてはいけない、という強迫観念に襲われているのではないか、という意見まで耳にした。現代ロシアの誇る稀有なカリスマ指揮者だけに、今後の彼の動向には目が離せない。

旅行の満足度
4.5
観光
4.5
ホテル
4.5
グルメ
4.5
交通
4.5
同行者
一人旅
一人あたり費用
50万円 - 100万円
交通手段
タクシー 徒歩 飛行機
航空会社
ANA
旅行の手配内容
個別手配

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  • ミハイロフスキー城のファサード

    ミハイロフスキー城のファサード

  • 庭園の落葉した風景

    イチオシ

    庭園の落葉した風景

  • 白い花と落葉

    白い花と落葉

  • 落ち葉で遊ぶ人たち

    落ち葉で遊ぶ人たち

  • 落葉した広場の風景

    落葉した広場の風景

  • モスクワ凱旋門の雪景色

    モスクワ凱旋門の雪景色

  • 寒さに縮こまった鳩たち

    寒さに縮こまった鳩たち

  • ホテルの窓からの眺め

    ホテルの窓からの眺め

  • マリインスキーコンサートホールのファサード

    マリインスキーコンサートホールのファサード

  • マリインスキーコンサートホールの正面階段

    マリインスキーコンサートホールの正面階段

  • マリインスキーコンサートホールの吹き抜け

    マリインスキーコンサートホールの吹き抜け

  • ジークフリート第2幕を振り終えたゲルギエフ

    ジークフリート第2幕を振り終えたゲルギエフ

  • 聴衆に応えるゲルギエフとソリストたち

    聴衆に応えるゲルギエフとソリストたち

  • 花束を指揮台に置くゲルギエフ

    花束を指揮台に置くゲルギエフ

  • 今日のコントラバスは7台

    今日のコントラバスは7台

  • オーケストラのメンバーに合図をするゲルギエフ

    イチオシ

    オーケストラのメンバーに合図をするゲルギエフ

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この旅行記へのコメント (4)

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  • 砂布巾さん 2014/10/31 20:33:39
    懐かしく拝見しました
     1990年に訪問していましたので。名前は知りませんでしたが、モスクワ凱旋門も通った記憶があります。ゲルギエフ、砂布巾も聴いてみたいですね〜。彼は年はいくつですか? もしご存知なら教えてください。

     ところでお礼が遅くなりましたが、「国際連盟」に一票頂いていたのですね。最近になって投票してくださった人の履歴を知る術を知りましたので。言い訳めいてしまいましたが…

    ハンク

    ハンクさん からの返信 2014/11/06 00:13:43
    RE: 懐かしく拝見しました
    砂布巾さん、メッセージをありがとうございました。

    1990年と言えばソヴィエト崩壊直前でしょうか?暗い時代だったと想像します。今のサンクトペテルブルクは当時に比べれば格段に綺麗に華やかになっていると思います。マリインスキー新劇場も完成し、ぜひゲルギエフをお聴きになってください。彼は61歳、円熟の極にあります。

    それにしても、砂布巾さんの第2次対戦の関連の投稿は素晴らしいと思います。おいおいゆっくり読ませていただきます。

    それではまたの機会に、ハンク
  • tadさん 2014/10/27 21:40:52
    いいですね!
    ゲルギエフの連発ですね!羨ましいです。ところで、福岡で先月聞いたときは、爪楊枝のような指揮棒ではなく、もう少し長い焼き鳥の串くらいの長さの棒で指揮しているように見えましたが、そちらではどうでしたか?

    例のウィーンの話の追加ですが、12月15日のVPOのチケットがやっと発売になり、うまく取れました。アルプス交響曲とハイドンの太鼓連打などで、楽しみです。

    ハンク

    ハンクさん からの返信 2014/10/29 00:38:11
    RE: いいですね!
    tadさん、こんばんは!

    メッセージをありがとうございました。今回は幸運なことにゲルギエフの表情がよく見える席で、指揮ぶりを観察することができました。指揮棒はまさに爪楊枝のような短いものを使っていました。ジークフリート1、2幕のコンサート上演というのはちょっと中途半端で、本当に終わったの?という不思議な公演でした。それでも7時20分ぐらいに始まって、終わったのは11時近く、演奏者たちもお疲れのことと思います。

    ウィーンフィルのアルプス交響曲ですか!注目のネルソンスですね。そそられてしまいます。折も折、今回帰国の途中ミュンヘンからガルミッシュ・パルテンキルヒェンに立ち寄ってツークシュピッツェに登って来ました(もちろん登山鉄道とロープウェイで)。リヒャルト・シュトラウスのゆかりの地も巡って来ましたので、次回の旅行記で紹介したいと思います。

    それではまた、ハンク。

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