アフガンは歌わない（１）　カイバル峠

2002/09/02 - 2002/09/13

９．１１からちょうど１年後の９月。
たまたま知人から、アフガニスタンのカブールに病院を建設し、その記念式典に行くツアーに空きができたので、行ってみないかと声がかかった。後から考えれば、きわめて危険な時期であるため希望者が少なかったということなのだが、アフガニスタンは２０００年になくなった私の恩人がずっと心にかけていた場所であり、彼の見た国がどうなっているのかをどうしても見たくなり、二つ返事で行くことにした。アフガニスタンは通常の旅行保険ではなく、戦地保険をかけていかなければならないような場所だったが、多少は若かったこともあり、あまり危機感もなかったというのが正直なところだった。

アフガニスタンへのアプローチは、パキスタンのイスラマバードから陸路でペシャワールを通り、カイバル峠を越えてカブールに至るというコースだった。

エリア カブール(アフガニスタン)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 4.0
• ホテル: 3.0
• グルメ: 3.0

• 同行者: 社員・団体旅行
• 旅行の手配内容: 団体旅行

アフガンに入る前日はパキスタンのペシャワールに宿泊。
９月５日、５：３０起床。６時から朝食。
７時には出発の予定が、車が遅れる。
７：５０、やっとバスが到着し、出発。
すわカイバル峠、と思いきや、市街の方向へ。ポリスのところに行くとのこと。
カイバル峠に行くにはトライバルエリアという地域を通る。部族の自治地域とでもいえば聞こえはいいが、要するに、政府の支配の及ばない地域のこと。武装ポリスをバスに乗せてやっと通れるかという感じだった。この武装ポリスというのも、非番の警察官を日雇いするもの。
さらに、今日はトライバルエリア内でデモが起こって、国境閉鎖中とのこと。
迂回していけば大丈夫とのことでおそるおそる出発した。

途中はトラックの大行列。難民キャンプ閉鎖に伴う帰還の人々だということだった。

ヤギを連れている人も多い。

市街地を離れると、一気に貧しい家が多くなる。

デモが行われている地域を迂回して、かなり遠回りしていくことになった。
「カイバル峠」というのはある一つの峠をさすのではなく、国境の山脈の峠のことをいうらしい。
乾燥して、標高も高いため、山にはほとんど木がない。

その山道を縫うようにゆっくりと進む。

振り返っても、ほとんど家らしきものは見えない。

何もなさそうな山にも、へばりつくように集落がある。

集落の入り口には必ずといっていいほどお墓がある。さらに、集落の近辺には野犬がうろうろしている。イスラームでは犬は不浄の動物であるため、飼っている人はほとんど見ない。

濁った川では、女性や子どもたちが洗濯や水くみをしている。

おそらくカブール川だと思うが、ここらでは川にも山にもほとんど名前がない。日本とは大違いだった。

町も砂に埋もれたように見える。

１２時頃、やっと国境の街、トルハムに到着した。
ここは基本的に撮影禁止なのでおそるおそる隠し撮りしている。海外の多くの国が、軍事施設の周辺はもちろんのこと、空港、橋などを撮影禁止にしている。海外で現地の地図を見るとよく分かるが、多くの場所が、軍事機密、未調査などとして記載されていない。日本ほどしっかりした地図のある国は珍しい。
１時間ほどバスの中で待たされる。待っている人相手にこうしたお店がずらりと並んでいる。ちょっとのぞいてみたかったが、外には強引な物売りと物乞いとスリがうろうろしていて、怖くて出られなかった。
ペシャワールから来たポリスは、アフガンからパキスタンの方に行く家族の自動車と交渉して、帰りのガードとして車に乗って帰って行った。

見ていると、子どもたちは大きな荷物を背負って、自由に国境を行き来している。持っているものなどを良く見てみると中古の自動車の部品のようだ。子どもは警備の人たちが見逃しているという話と、特別な許可証を持っているという話があって、どちらが正しいかは結局分からなかった。
写真の子もそうだが、ペシャワールのキャンプの子どもたちと比べてすら、非常に粗末な服を着ているのが印象的だった。

車内でカバブーのサンドイッチなどぱくついているとやっと動き出した。
途中の緩衝地帯でまたしばらくかかったが、パスポートも無事戻っていよいよアフガニスタンに入る。
アフガニスタンの道路は、パキスタンと違い右側通行。国境を越えると急にきれいな日本車が増える。
国境近くにならぶ商店。様々なコンテナを利用して店舗にしている。気温はかなり高いが、大丈夫なのだろうか？

国境を過ぎても相変わらず単調な風景が続く。
すべてを見てやろうと意気込んでいたが、さすがに退屈でうとうとし始めた。