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新成人大学生と、0系の小窓食堂車

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1990/01/07 - 1990/01/07

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与方 藤士朗

与方 藤士朗さん

当時私は大学生で、ちょうど20歳。成人式のある前の週でした。

時は1990年1月初旬。
何かの折で東京に出かけたその帰り、東京18時前後発の0系新幹線「ひかり」某号に乗りました。
もちろん、自由席でした。

なぜ自由席か?
もちろん、食堂車に直行して、大いに飲んで、食べるためです。

ちょうど夕食時で、少し並びはしましたが、何とか席にありつけました。
こういう時の通例として、もちろん、相席ですが。


さて食堂車に行って、懐具合を心配しつつ、たしか、カキフライとビールを注文しました。

当時のカキフライ(単品)は、8個ほど入っていて、1000円前後。まあ、居酒屋並の単価でした(2人前という気もするが…苦笑)。

食堂車の料理というのは、高くてまずいという声が昔から結構ありました。

新幹線の100系2階建て食堂車がなくなるまで、その前も後も、何度となく利用しましたが、私に言わせれば、そのあたりの外食店とそう変わるものでもなかったと思います。

なにより、列車内でそれなり以上食事がいただけるということが、実に、ありがたいことでした。


さて、ビールを飲みつつカキフライをつまみます。
こういう時のビールって、美味いんですよ。
気分よくビールを飲んでおりました。
確か2本か3本飲んだと思います。

時間は夕食時です。その日の食堂車も、いつものように満員でした。
入れ替わり立ち代わり、食事客がやってきては去っていきます。
ウエイトレスが、ひっきりなしに厨房と客席を往復しています。

0系の食堂車(35型)は、通路側から富士山が見えるように、このころすでにガラス窓をつける改造が施されていました。
しかし、冬のこの時間、富士山はもう見えません。

私の席は2人席。
目の前には、60代前後の、スーツ姿の年配の男性がいらっしゃいました。
眼鏡をかけ、いかにも温厚そうなおじさんでした。

特に会話をするでもなく、見ず知らずのおじさんと20歳になったばかりの大学生が、向かい合って、食事をとっていました。

私から見て席の斜め前の4人席にも、4人組のおじさんたちが食事をとっていらっしゃいました。おそらく、一杯飲まれていたのでしょう。私のように一人ならまだしも、人と一緒であれば、話も弾もうというものです。
それは別に、悪いことじゃない。

しかし、おじさんたちの声が、やや大きくなって、周囲に迷惑がかかるような状況になりつつあったようです。
私は、ビールを2本ばかり飲んでおりまして、気分がよかったので、そんなこと、特に気にしていなかったのですけど・・・・・

目の前の男性が、突如、おじさんたちに向かって、何やら言い始めました。

「ちょっとみなさんよろしいですか。ここは食堂車です。公共の場です。後ろからこうして拝見しておりますと、みなさん、紳士でいらっしゃるようですから、どうぞ、もう少しお静かに願えませんでしょうか?」

と、それは丁寧に、しかし毅然と、注意されました。

おじさんたちも、恐縮して、男性に一礼し、その後は幾分、声の音量を落として会話をされていました。

目の前の男性は、おじさんたちを注意された後、目の前の私に軽く一礼されました。私も、軽く会釈をお返ししました。

ふと見ると、その男性は、北陸本線の武生か鯖江までの乗車券を持たれていました。
おそらく、名古屋で降りて、「しらさぎ」号でその日のうちにか、翌日にはお帰りになられたのでしょう。

その時、少し窓側に目をやりました。
そこで私は、気づきました。
その食堂車の窓は、小窓だったのです。

新幹線の小窓の食堂車はわずか3両ほどだったと思います(35型1000番台)。
まさに、大型のガラス窓が開発される以前の戦前の客車と同じような、小窓でした。

かねて昔の国鉄の車両に興味を持ち、その手の写真集や本を読みあさっていたほどの私が、そのことに気づかぬはずがありません(でなければ、小学生で大学の鉄道研究会から「スカウト」などされようもなかったでしょう)。
戦前の洋食堂車にでもいるようで、なんだか、得した気分になりました。

そのあと、大して金もなかっただろうに、何を思ってかこの生意気な若造学生は、国産ウイスキーを一杯頼み(確か600円でした)、水割りで飲みつつ、名古屋を過ぎたあたりまで、食堂車で気分よく飲み、食べていました。

当時私たちがコンパで飲むものと言えば、一次会ではビール、二次会あたりでは、ウイスキーかブランデー。
日本酒はなぜかあまり飲む機会がありませんでしたし、私も、日本酒はあまり得意ではありませんでした。
ですからこういうところでも、飲むと言えばまずビール。それからあとは、高いけど(苦笑)、ウイスキー。
さすがに生意気な若造とはいえ、今でこそ相当安くなりましたが、高価な輸入物を飲むほどの甲斐性も根性もありませんでした(いやはや)。

会計を済ませたあとは、ようやく自由席に行き、岡山までの時間を過ごして帰りました。
会計は確か、3500円だったと思います。大学生にしては、大散財です。
でも決して、無駄だったとは思いません。


成人式? そんなもの、出ていません。
まあ、当時の大学生なら、そんなものでしょ。

しかし私にとっては、この食堂車での出来事が、実は、私にとっての成人式のようなものだったのだと、今も思っております。

旅行の満足度
5.0
グルメ
5.0
交通
5.0
同行者
一人旅
一人あたり費用
1万円 - 3万円
交通手段
新幹線

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