2014/02/21 - 2014/02/23
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nakaohidekiさん
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野村萬斎(狂言師)、近藤啓太郎(芥川賞作家)、青沼英二(ゲームデザイナー・任天堂)、箭内道彦(コピーライター)、石丸幹二(俳優)、岸洋子(歌手)、沼尾みゆき(劇団四季)、森瑤子(小説家)。
さて、以上の方々を見て、共通することがなにかお分かりだろうか。
「芸術家、ですか?」、と、言うかもしれない。
いやいや、それだけではないのです。
では、次の方々の名前を見れば、もうお分かりいただけると思う。
坂本龍一(作曲家)、岩城宏之(指揮者)、伊勢谷友介(俳優)。
そうなんです。もうお分かりいただけたかと思いますが、以上の方々はいずれも東京芸術大学の卒業生の皆様方なのです。
東京芸術大学といえば、日本を代表する芸術専門大学である。上記の方々以外にも多くの芸術家を輩出している芸術の総本山というべき大学である。美術学部と音楽学部の二学部ながら、こういう方々を輩出している、さすが一流は違うと云わざるを得ない大学なのである。以上の方々を見ても分かる通りこの大学は美術と音楽の分野に留まらず、多方面の芸術家を輩出している大学なのである。そこが真の芸術大学といえるこの大学の凄いところである。
先日、東京行のバレエ鑑賞の途中、上野にある東京芸大に立ち寄る機会を作ってみたのである。今日はその報告をしてみようと思うのです。
東京芸術大学といえば、前身の東京音楽学校が明治十二年、東京美術学校が明治十七年の創立である。
僕は学生時代を東京で過していたにもかかわらず、一度も東京芸大を訪ねたことがなかった。この大学は以前から無性に気になっていたのである。我が人生において、芸術を知る上に、是非にと訪れてみたいと思っていたのである。
アメリカン・バレエ・シアターの観劇を翌日に控えた金曜日、羽田に朝着いて渋谷のホテルでチェックインを済ませた午後上野に向かった。
山手線上野駅の公園前改札口を出ると上野恩賜公園である。目の前に東京文化会館の大ホールが広がっている。ここはクラシックのコンサートホールとしてあまりに有名なホールである。横手には西洋近代美術館が建っている。音楽芸術と美術芸術の二つを上野公園があたかも象徴するかのような威容を示している。
僕が東京文化会館の横を通り抜け、西洋近代美術館の通りに出ると、門越しに前庭のロダンの『地獄門』やブルーデル『弓を引くヘラクレス』の彫刻が空に突き上げるように見えてきた。田舎者にとってはこれを見ただけで、ここは芸術の森なんだと頭を殴られたような衝撃を覚える。田舎ではありえない光景だからである。
西洋近代美術館の前を通り過ぎ、上野動物園に向かう中央大通りをゆっくり歩いていくと、子供たちのにぎやかな声が聞こえてきた。平日にもかかわらず元気に走る少年や幼稚園の遠足に来た園児らが群がっている。どうやら大道芸人のパフォーマンスがあるようだ。また地方からの修学旅行生も集団で取り囲んで見ている。
僕が人混みの輪の中を覗くと、ブレイクダンスをする男女の集団がパフォーマンスを繰り広げている。これはなかなか見事なパフォーマンスで歓声が上がるのも最もだと思ったが、僕は、ストリートパフォーマンスには興味がないのでチラッと見ただけでやり過ごすことにした。
ちょうど昼時分でお腹が空いてきた。上野精養軒で空腹を満たそうと考えた。
上野精養軒の歴史は古い。明治五年にフランス料理の草分けとして築地に開業したのが始まりである。上野には公園の開設とともに明治九年に開業している。以来、内外の王侯貴族や各界の名士が集い、鹿鳴館時代の華やかな文化の一翼を担ったレストランである。
あらかじめネットで調べたメニューを思い浮かべると、フランス料理のコースで1万4千円から用意されているのだ。わが懐(ふところ)から考えるとこんなお高いものは手が出ない。アラカルトもなにかあるだろうと考えながら、まだ枯れ木のままの桜並木の下を歩いた。上野大仏を右手に見ながら桜シーズンにはここが満開になるのだろうと思った。上野公園の花見大会はよくニュースで取り上げられるが、これを見ているとそれも最もなことだと思った。
日本料亭の韻松亭が花園稲荷神社の裏手にあり、ここを右の曲がると上野精養軒である。
昼時なので少々混んでいて入り口には二、三人並んでいた。しばしメニューを見ながら待つことにした。
先ほど考えたようにコース料理には手が届かないのでランチメニューを探してみた。
ランチメニューのベルサイユというのが4、800円、モンマルトルが7、000円、エッフェルが8、000円とランチメニューでもなかなかの値段である。これも止めることにして、メニューのページをそそくさと繰って行くとやっとアラカルトメニューを見つけた。こんな態度が僕の庶民の卑しさであるがこれもいか仕方がないのである。
アラカルトは、ビーフシチューが1890円、ハヤシライス・サラダ付が1360円、ハンバーグステーキが1370円と出ていた。これはいい。喜び勇んで僕はハヤシライス・サラダ付を注文することにした。注文を決めると丁度席が空いたということで支配人に案内された。
レストランに入ると、室内は白一色に統一された清潔感に溢れた風情である。センスのいい調度品や美術品も置いてある。大きな窓からは不忍池が清々しく煌めいて見えた。美しいレストランである。そしてなによりボーイさんやウエイトレスさんのきびきびした動きが心地よかった。僕は心行くまで美味しいハヤシライスを堪能したのである。食後にコーヒーも注文したが、さすがファミレスとは違うと実感できた。何も言うことのない満足のいく昼食であった。
食事を堪能した後は、いよいよ東京芸術大学である。
上野公園の中央通りに出て国立博物館に向かった。
中央通りの大噴水の周りでは子供たちがはしゃぎまわっている。
昭和通りと言問通りを繋ぐ452号線に出て国立博物館の前を左に曲がると、木造りの古めかしい建物が見えてきた。元東京音楽学校のコンサートホール『奏楽堂』である。嗚呼、これが滝廉太郎や山田耕作も演奏したあのコンサートホールかと思うと、なにも関係ないのに懐かしさが込み上げてきた。これも東京芸術大学の魔力かもしれない。まるで自分が音楽家にでもなったような気分に勝手になってしまうのである。ミーハーな僕なら当然かも知れないが、そんな気分にさせる上野公園ではある。
奏楽堂を過ぎると、国道452号を挟んで東京芸術大学は音楽学部と美術学部が向かい合って建っている。
僕は音楽学部の校内に入った。校門には、明日から入学試験が始まると掲示が出ている。するといきなり守衛さんに引き止められてしまった。
「勝手に入らないでください。ちょっと待ってください。大学に御用の方なのですか?」
僕は不審者と思われたようだ。
「いえ、違います。そうじゃあないんですが、大学内を見学してみたいのですが」
怪しまれないように、丁寧に答えた。
「受験の下見ですか?。明日入試ですのでね」
そうなんだ、明日は入学試験があるのだ。僕はそれを口実にすることにした。
「ええ、そうです。明日、子供が受験するもので」
僕の家族は子供に限らず誰でも、どう考えても芸大受験できる学力はないのだが、多分ここでなくてもどこの国立大学の受験でも無理だと思うのであるが、僕は受験生の親を装うことにした。厚かましく答えたのである。
「分かりました。校舎内に入らなければ結構です。キャンパスだけでしたらご自由に歩いて見学してください」
守衛のおじさんは、僕のウソをまったく疑わなかった。笑顔で僕を校内に招き入れたのである。間違いなく僕は詐欺師だと思った。僕の詐欺師の素養は芸術家とはおよそ程遠いところにあるが、僕には校内見学で充分である。とうてい芸術家にはなれないから、まあ、いいとしよう。
校内に入り遊歩道を歩いた。この道を坂本龍一も歩いたのかな、と思うと、ワクワクして妙に嬉しかった。音楽の才能がまったくない音痴な僕であるが、なんだか音楽家になったような気がしてしまうのである。まあ、ミーハーとしてはこういうものだろう。
音楽学部のキャンパス内はそれほど広くない。木々の間から冬の陽が挿し込んで影が綺麗に映っている。静かに時間が流れる。ゆっくり歩いてもあっという間に校内を一周してしまった。俊英による少数精鋭だから広いキャンパスは必要ないのだろう。何枚かパチパチと写真を撮ってそそくさと退散することにした。音楽学部はこれで充分である。美術学部のキャンパスに向かった。
美術学部の中に入って、まず驚いたのは、校門の脇に教授たちの名札が掛けられていたことである。しかもその名前が木札に書かれている。こんなことはどこの大学にもないだろう。まるで、歌舞伎役者の出席盤のようではないか。
歌舞伎座では役者が劇場に入ると自分が劇場に入ったということを知らせるために、楽屋出入り口のところで自分の名前の札にピンを刺す。これと同じような木札が掲示されていたのである。教授の名前を校門の脇に示しておくというのも珍しいが、それが木札というのも明治に創設された美術大学ならではのことである。そんな木札に驚きながらもしずしずと校内に入った。今度は守衛のおじさんに止められることはなかった。
入ってみると音楽学部よりもさらに木々が鬱蒼としている。薄暗いのである。キャンパスの庭園は向こう側が見通せないほどの薄暗さである。そんな合間合間に黒い塊(かたまり)のような影がある。胸像やらなにやらがそこここに立っているのである。黒い塊のその一つに近づいてみると、歴代の教授らしいのであるが僕にはよく分からない。しかし芸術家の銅像のようで僕はまったく素人なので、たぶん偉い人なのだろうと思うだけで通り過ぎることにした。しかし、威厳溢れる佇まいには間違いなかった。音楽学部もそうであったが、ここから日本の芸術が生まれたのかと思うとなにか圧倒されるものがある。
キャンパス裏に回ってみるとコンクリートの石の塊や木材の破片がうずたかく積まれていた。芸術作品の材料だと思うのだが、これらを使えば彼等には、常人には思いもよらぬ芸術が生みだされるということになるのだろう。そう思うとこの瓦礫の山も、何か不思議な妖気が漂っているように思えてくるのである。
最後に、僕でも知っている安井曾太郎画伯の胸像があったので記念に写真を撮った。よく分からない胸像が多数あるなという印象だけが強く残ったが、これが東京芸術大学なのだ。
やはり東京芸大は、並の者を生みださない、不世出の芸術家だけを生む大学であるという雰囲気は充分伝えていると思った。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.5
- グルメ
- 4.5
- 交通
- 4.0
- 同行者
- カップル・夫婦
- 一人あたり費用
- 5万円 - 10万円
- 交通手段
- JALグループ JR特急 JRローカル 徒歩
- 旅行の手配内容
- ツアー(添乗員同行なし)
- 利用旅行会社
- JTB
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この旅行記へのコメント (1)
-
- ko-nomoriさん 2014/03/11 13:51:53
- 9月に是非!
- nakaohidekiさん、初めまして。
藝大の探訪記拝見しました。9月の2週頃の金土日に藝祭という学園祭があり、私のような門外漢でもとても楽しめるものです。機会が有りましたら是非いらしてみてはいかがでしょうか。
これを機に宜しくお願いいたします。
ko-nomori
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