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<br /><br />先日、TVを観ていたら、啖呵売と呼ばれる香具師の存在をあたかも伝統芸能の如く紹介していた。ちょっとビックリである。<フーテンの寅さん>の流れるような口上は大道芸ではなく、今では伝統芸能の範疇になってしまったのかという妙な思いである。その番組を観ながら、子供の頃の体験で昭和の息吹が伝わる<バナナの叩き売り>の啖呵売で蘇った記憶があった。<br /><br />・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<br /><br />東京の下町で生まれ育った私にとっては縁日の夜店で見かける啖呵売の香具師は余りにも身近な存在で、その口上の人を逸らさぬ面白さ、巧みさに小学生だった私は、すっかり夢中になり、聞き惚れたものだった。思い返せば、いつの間にかギャラリーの最前列で啖呵売の口上をニコニコ笑いながら聞いているような子供だったと思う。(#^.^#)<br /><br />私の住むエリアの近隣に毎月、3の日に縁日が立っていたのは小学生の頃だった。3日、13日、23日に商店街の通りを様々な20軒程ののテキヤの人達が屋台や店を出していた。綿あめや駄菓子だけでなく、金魚すくいや、ヒヨコも、ここの縁日で購入したものだった。<br /><br />私が縁日で購入したヒヨコは翌朝、箱の中で冷たくなってしまったが、一緒に購入した近所の友達のヒヨコは順調に育ち、やがて鶏に成長し毎朝、コケコッコー〜〜の鳴き声で子供だった私は目が覚めていた事を思い出す。今のように多様な愉しみと云うものが無い時代の子供にとって、縁日に出掛ける事は、たとえ小銭が僅かしか無くても、心躍る楽しみの一つだった。<br /><br />そんな縁日のある当日、バナナの叩き売りが縁日に出ていることを確認した私は、家人からバナナ購入資金として何とか150円を貰い、長屋に住む、一つ年上の友達と連れ立って喜び勇んで縁日のバナナの叩き売りに向かった。<br /><br />アセチレンランプの灯りの下で、バナナの叩き売りのオヤジは1メートル角のテーブルの上にバナナを乗せると、持ち手の部分を新聞紙で包んだ平べったいスチールの棒を片手にテーブルの上で激しく叩きながら、口上を述べながら次々とバナナを捌いていく。<br /><br />「2本が4本!4本が8本!8本が16本!さぁ16本入りのバナナだ!!よし!800円からスタートだ!800円!600円! オマケだ! 400円!! 400円いないのか? 今日の客は貧乏人ばかりだな! よし 一番最初に声を掛けた客に売るぞ!驚くなよ!いいか!300円!!!」  <買った!!> 複数のギャラリーから声が掛かった。 叩き売りのオヤジは約束通りに最初に声を掛けた客にバナナを売った。 私は子供心にタイミングと間合いが大事だなと、その遣り取りを見ながら思った。価格の相場とタイミングを推し量る為に私は、最前列に陣取って、様子見で売買の遣り取りを何度も確認しつつ、チャンスを待った。<br /><br />バナナの1本当たりの相場はバナナの出来とサイズにもよるが10円〜20円前後という事も確認できた。しかし、私の予算は僅か150円である(―_―)!!何しろ150円に価格が下がる前にバナナは、ほとんど売れてしまうのだ(―_―)!!<br />なかなかオークションに参加することが出来ずにギャラリーの大人たちの前で何度もジリジリと遣り過ごしていた。<br /><br />叩き売りのオヤジの前は白熱していく啖呵売の所為でギャラリーの数は増え、十数人は居たかと思う。勿論 そんなギャラリーの中で最前列に陣取っている面妖な子供は私達だけである。<br /><br />テーブルの下に置いたバナナの詰まった箱から新しいバナナを取り出し、テーブルに載せたオヤジが云う。 「さぁ、 今度の奴は小振りだけど、味は抜群だ!上に7本、下に8本、15本だ!600円からスタートだ! 600円いないか? 400円!! 300円!!」価格を下げる都度に、スチールの棒で、バッシーンとテーブルを叩く。私はもしや!?という気持ちで息を飲んだ。<br />「え〜えい!!もう最後だ! 最初に声を掛けたお客さんに売るよ!いいか!500円!!」オヤジの意表を突くフェイントに息を飲んで待ち構えていた客が間違えて「買っ!!わない」と慌てて言い換えると、ギャラリーもオヤジも大きく笑った。私は子供心にも次が勝負だ!という気持ちで再び大きく息を飲んでオヤジの次の一言を待った。<br /><br />「よし! 最後だ! これで買わなきゃ客じゃ無い! 200円!!」 ところが意外な事に誰もリアクションを起こさない。オヤジも困った表情を一瞬見せた。そして唐突にオヤジが叫ぶ。「よし! 150円だ!!!」 私はオヤジが云い終えると同時に、誰よりも速く、右手を高々と突き挙げ、自分でも驚くほどの大声で叫んでいた。「買った〜〜〜〜!!!」(#^.^#)<br /><br />ギャラリーは子供の声にどよめき、オヤジは一瞬、虚を突かれたような驚いた表情を浮かべながら子供の私に目を向けた。えっ!! お前が買うのか?というような眼と表情だった。やがて表情を緩めながら、「よし! 坊主に売ったぞ」と云うと 私は握り締めて汗ばんだ150円を差し出した。オヤジは私がゲットしたバナナを新聞紙に包みながら、笑いながらギャラリーに話し掛ける。「最近の小学校ではバナナの正しい買い方も教えているみたいだな」 ギャラリーがドッと笑いに包まれた事を覚えている。<br /><br />当時、9歳か、10歳の子供だった私は、150円で首尾よくバナナをゲット出来た嬉しさ、そして気恥ずかしさと妙な誇らしさが絡み合うような不思議な気持ちの中、小走りにバナナを抱えながら、帰途についたものである。 <br /><br /><昭和>を過ごした子供時代のまるでアセチレンの灯りのようなセピアな、とても懐かしい記憶である。<br /><br />

<キッズ リターン>下町&バナナの叩き売り 編

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2013/09/28 - 2013/09/28

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kio

kioさん



先日、TVを観ていたら、啖呵売と呼ばれる香具師の存在をあたかも伝統芸能の如く紹介していた。ちょっとビックリである。<フーテンの寅さん>の流れるような口上は大道芸ではなく、今では伝統芸能の範疇になってしまったのかという妙な思いである。その番組を観ながら、子供の頃の体験で昭和の息吹が伝わる<バナナの叩き売り>の啖呵売で蘇った記憶があった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

東京の下町で生まれ育った私にとっては縁日の夜店で見かける啖呵売の香具師は余りにも身近な存在で、その口上の人を逸らさぬ面白さ、巧みさに小学生だった私は、すっかり夢中になり、聞き惚れたものだった。思い返せば、いつの間にかギャラリーの最前列で啖呵売の口上をニコニコ笑いながら聞いているような子供だったと思う。(#^.^#)

私の住むエリアの近隣に毎月、3の日に縁日が立っていたのは小学生の頃だった。3日、13日、23日に商店街の通りを様々な20軒程ののテキヤの人達が屋台や店を出していた。綿あめや駄菓子だけでなく、金魚すくいや、ヒヨコも、ここの縁日で購入したものだった。

私が縁日で購入したヒヨコは翌朝、箱の中で冷たくなってしまったが、一緒に購入した近所の友達のヒヨコは順調に育ち、やがて鶏に成長し毎朝、コケコッコー〜〜の鳴き声で子供だった私は目が覚めていた事を思い出す。今のように多様な愉しみと云うものが無い時代の子供にとって、縁日に出掛ける事は、たとえ小銭が僅かしか無くても、心躍る楽しみの一つだった。

そんな縁日のある当日、バナナの叩き売りが縁日に出ていることを確認した私は、家人からバナナ購入資金として何とか150円を貰い、長屋に住む、一つ年上の友達と連れ立って喜び勇んで縁日のバナナの叩き売りに向かった。

アセチレンランプの灯りの下で、バナナの叩き売りのオヤジは1メートル角のテーブルの上にバナナを乗せると、持ち手の部分を新聞紙で包んだ平べったいスチールの棒を片手にテーブルの上で激しく叩きながら、口上を述べながら次々とバナナを捌いていく。

「2本が4本!4本が8本!8本が16本!さぁ16本入りのバナナだ!!よし!800円からスタートだ!800円!600円! オマケだ! 400円!! 400円いないのか? 今日の客は貧乏人ばかりだな! よし 一番最初に声を掛けた客に売るぞ!驚くなよ!いいか!300円!!!」  <買った!!> 複数のギャラリーから声が掛かった。 叩き売りのオヤジは約束通りに最初に声を掛けた客にバナナを売った。 私は子供心にタイミングと間合いが大事だなと、その遣り取りを見ながら思った。価格の相場とタイミングを推し量る為に私は、最前列に陣取って、様子見で売買の遣り取りを何度も確認しつつ、チャンスを待った。

バナナの1本当たりの相場はバナナの出来とサイズにもよるが10円〜20円前後という事も確認できた。しかし、私の予算は僅か150円である(―_―)!!何しろ150円に価格が下がる前にバナナは、ほとんど売れてしまうのだ(―_―)!!
なかなかオークションに参加することが出来ずにギャラリーの大人たちの前で何度もジリジリと遣り過ごしていた。

叩き売りのオヤジの前は白熱していく啖呵売の所為でギャラリーの数は増え、十数人は居たかと思う。勿論 そんなギャラリーの中で最前列に陣取っている面妖な子供は私達だけである。

テーブルの下に置いたバナナの詰まった箱から新しいバナナを取り出し、テーブルに載せたオヤジが云う。 「さぁ、 今度の奴は小振りだけど、味は抜群だ!上に7本、下に8本、15本だ!600円からスタートだ! 600円いないか? 400円!! 300円!!」価格を下げる都度に、スチールの棒で、バッシーンとテーブルを叩く。私はもしや!?という気持ちで息を飲んだ。
「え〜えい!!もう最後だ! 最初に声を掛けたお客さんに売るよ!いいか!500円!!」オヤジの意表を突くフェイントに息を飲んで待ち構えていた客が間違えて「買っ!!わない」と慌てて言い換えると、ギャラリーもオヤジも大きく笑った。私は子供心にも次が勝負だ!という気持ちで再び大きく息を飲んでオヤジの次の一言を待った。

「よし! 最後だ! これで買わなきゃ客じゃ無い! 200円!!」 ところが意外な事に誰もリアクションを起こさない。オヤジも困った表情を一瞬見せた。そして唐突にオヤジが叫ぶ。「よし! 150円だ!!!」 私はオヤジが云い終えると同時に、誰よりも速く、右手を高々と突き挙げ、自分でも驚くほどの大声で叫んでいた。「買った〜〜〜〜!!!」(#^.^#)

ギャラリーは子供の声にどよめき、オヤジは一瞬、虚を突かれたような驚いた表情を浮かべながら子供の私に目を向けた。えっ!! お前が買うのか?というような眼と表情だった。やがて表情を緩めながら、「よし! 坊主に売ったぞ」と云うと 私は握り締めて汗ばんだ150円を差し出した。オヤジは私がゲットしたバナナを新聞紙に包みながら、笑いながらギャラリーに話し掛ける。「最近の小学校ではバナナの正しい買い方も教えているみたいだな」 ギャラリーがドッと笑いに包まれた事を覚えている。

当時、9歳か、10歳の子供だった私は、150円で首尾よくバナナをゲット出来た嬉しさ、そして気恥ずかしさと妙な誇らしさが絡み合うような不思議な気持ちの中、小走りにバナナを抱えながら、帰途についたものである。 

<昭和>を過ごした子供時代のまるでアセチレンの灯りのようなセピアな、とても懐かしい記憶である。

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この旅行記へのコメント (6)

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  • josanさん 2013/11/05 23:31:47
    バナナの叩き売り、懐かしいですね〜。
    kioさん、私のバナナの叩き売りの思いでは、渋谷の
    駅のガード下のバナナの叩き売りです、香具師のタン
    カ売の、軽妙な響きが懐かしいですね。

    そうです昔はバナナは高級品で、病気にでも成らない
    と中々口には入りませんでした。

    それが今では、裏庭で食べ切れないほどにバナナが出
    来る国に、住むとは当時は考えもしませんでした。(笑)

    バナナは木から切り取り2〜3日すると、黄色く色付
    いて甘くなり、食べ頃に成ります。

    バナナを長く持たせるには、紐で空中に吊り保存する
    のがベストです、冷蔵庫に入れては駄目ですよ。(マジ)



    ウドンの会長

    kio

    kioさん からの返信 2013/11/05 23:57:01
    RE: バナナの叩き売り、懐かしいですね〜。
    josan会長 お久しぶりです

    キッズリターンバナナ編 に投票頂きありがとうございます。

    >それが今では、裏庭で食べ切れないほどにバナナが出
    来る国に、住むとは当時は考えもしませんでした

    いや〜〜 受けましたよ(笑)
    人生何処でどうなるか本当に判りませんよね ホントに・・・(*^_^*)


    > バナナを長く持たせるには、紐で空中に吊り保存する
    > のがベストです、冷蔵庫に入れては駄目ですよ。

    学生の頃、夏に信州を旅したころ、列車で購入したミカンが
    半冷凍で、そのシャーベット感が夏の暑さに気持ち良く、
    それ以後、ミカンを冷凍化するようになりました。
    んで バナナも皮を剥いてサランラップに包んで
    冷凍してみたら これも美味くて、、、
    んでブドウも冷凍にしてみたら、果汁100%のアイスボールという感じで
    美味かったっす。わたし、変でしょうか?(ー_ー)!!

    最近ラジオで知ったのですがブドウの皮にポリフェノールが沢山含まれて
    いるので皮ごと食べたほうが良いらしいですね
    赤ワインはブドウの皮ごと熟成して白ワインは皮を剥いた
    状態で作るということで赤ワインにポリフェノールは
    沢山含まれているらしいです


    ミカンも皮の方に数多くの食物繊維が含まれているそうな


    空中バナナ、こんどやってみます。つまりバナナそのものに負荷を
    かけないことが長持ちの秘訣なんですね?
    天井から吊るしてみます。
    気分はタイランド〜♪ (*^_^*)

  • SUR SHANGHAIさん 2013/10/10 22:15:23
    甘いバナナも
    …こういうストーリーで味付けされると、ショーワ・スパイスが効いてちょいと甘辛しょっぱくなりますね。( ̄ー ̄)

    いや〜、今はいつでもどこでも買えるバナナも、ショーワの或る時期までは結構高級品だったんですよね。
    バナナには、叩き売りも含めて演歌的背景が似合いそうです。(。・w・。) ププッ

    kio

    kioさん からの返信 2013/10/11 21:32:50
    昭和バナナの記憶
    > …こういうストーリーで味付けされると、ショーワ・スパイスが効いてちょいと甘辛しょっぱくなりますね。( ̄ー ̄)
    >
    > いや〜、今はいつでもどこでも買えるバナナも、ショーワの或る時期までは結構高級品だったんですよね。
    > バナナには、叩き売りも含めて演歌的背景が似合いそうです。(。・w・。)

    小学校に上がる前のバナナに纏わる記憶があります。

    家人が買ってきたバナナ一房、子供に勝手に食べられないように
    戸棚の裏とかに家人が隠すわけですね(笑) 
    それを幼稚園児の私は必死に探し出して見つけて、何本か食べてしまったんですが、もう 親に散々に怒られた記憶があります。幼稚園児の私はどんなに怒られても何というかぁ<食べたもん勝ち>という意識、はっきり有りましたね(爆)

    これが昭和バナナ編の一番最初の記憶ですねえ(*^_^*)

     妙なレスになってしまいました(ー_ー)!!

    SUR SHANGHAI

    SUR SHANGHAIさん からの返信 2013/10/11 23:03:39
    昭和バナナの記憶
    私の場合は、病気お見舞いに持って行く果物盛り合わせ籠(これもショーワですね。(;^ω^))の中のバナナ。

    こういう贈り物用のバナナは皮の色がきれいで、これを食べるのが小さい時の憧れだったんですが、( ´゚ω゚`):;*.':;ブッ  ある日皮のきれいなバナナはまだ熟れていなくてまずいというのに気付き、憧れの気持ちが冷め切ってしまいました。(´;ω;`)

    子どもが現実を知って幻滅する苦さを、昭和バナナは持っていたようです。

    kio

    kioさん からの返信 2013/10/11 23:27:55
    RE: 昭和バナナの記憶

    > 私の場合は、病気お見舞いに持って行く果物盛り合わせ籠(これもショーワですね。(;^ω^))の中のバナナ。

    熱を出して 病気になると果物のミカンの缶詰とか食べることが出来たなあ(*^_^*)

    > ある日皮のきれいなバナナはまだ熟れていなくてまずいというのに気付き、憧れの気持ちが冷め切ってしまいました。(´;ω;`)

    黒い斑点が出て初めて熟して糖度が上がっていくんですよねえ
    シュガースポットとかスィートスポットとか云うらしいですね
    万遍なく黒い斑点が出ているときが最高の食べ時とか・・
    最近 知りました(爆)

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