2013/09/21 - 2013/09/21
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ヌールッディーンさん
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小樽の港や運河からは少し離れた住宅地・潮見台に和光荘という大正時代の豪華な邸宅があります。
「北の誉酒造」の創業者野口家(二代目・野口喜一郎氏)が大正11年(1922年)に建てたもので、現在もその子孫の方が所有する個人所有の邸宅であるため、普段は一般公開されていません。しかし、今回、NPO小樽ワークスさんが主催するイベント「小樽アートプロジェクト2013 和光荘」で内部を見せてもらうことができ、建築に関しても解説していただいたので、ここでも紹介してみたいと思います。
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イチオシ
ファサードでは、1階の石造風のアーチが並ぶロッジア風の部分と2階の白い柱で軽やかに支えられたバルコニー、3階部分の突き出た部屋、三角屋根とその庇を支える装飾的な柱といったものが目に留まります。
かなり大きな邸宅ですが、重厚さをあまり感じさせず、軽やかで洒落た建物という印象でした。
素材的には1階部分は鉄筋コンクリート造(個人邸宅としてはかなり早い時期に使われていると思われます)で、2階から上が木造となっています。
また、ファサードは洋風の意匠が目立ちますが、写真の向かって左側には和風の庭園があり、内部も応接室などを除くと和室が多く。奥には昭和6年に増築された仏間の建物があるなど、実はかなり和洋折衷の邸宅になっています。
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1階のロッジアですが、アーチは石造ではなく、表面に軟石っぽい石を貼った構造となっていました。アーチには要石があったりして、石積みのアーチに見えるようなデザインになっているなど、なかなか凝っているな、と感心してしまいました。
この奥には60人くらいの宴会ができるほどの大食堂が広がっています。大食堂は北の誉酒造の社員の方の結婚式などでも使われることがあったそうですが、天井とその付近に漆喰でアールデコ調の装飾が施されており、壁や柱頭(?)にも金属に見えるように銀色に塗られた木製の装飾が施されているなど、かなり凝ったデザインとなっており、小樽にこのような建築があったということに驚かされました。
また、大食堂の奥にはタイル張りの空間があり、その上部の窓から採光し、その空間内で光を鏡とタイルで反射させることで食堂の明るさを増すようにできており、細部までかなり凝った造りになっていました。
野口喜一郎氏は建築が好きだったとは聞いたことがありますが、それが頷けるものがありました。
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表面の軟石らしき石にも、こんな感じでこっそり(?)とアールデコ風のデザインが彫られたりしており、遊び心が随所に感じられる風流な建物でした。
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2階のバルコニーの柱は4本の柱を一組にして支えており、これが柱の量感を減らし、ファサードの軽やかな感じを生み出しているようです。
2階だけでなく3階の窓やバルコニーの柵なども幾何学的な模様になっており、アールデコ風になっています。
バルコニーに面した部屋はVIP用の応接室になっており、昭和天皇が昭和29年に宿泊した際にも使用されたとのことです。
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バルコニーの床はタイルで装飾されています。どこまでも豪華というか、華やかな建築という感じですね。
玄関に繋がる階段を登るとそこからバルコニーが続き、向こうには庭園があるという構成になっています。
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バルコニーを照らす照明は象さん。
本当に細部まで遊び心に満ちていますね!この建物が建てられた大正11年というと、小樽の経済が絶好調だった時期にあたります。お金のことはあまり気にせず、思いのままに建てられた建築だったのだろうな、という感じがします。
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玄関に繋がる階段の下から見上げるとこんな感じです。2階の玄関と3階の張り出した部屋、そして1階の半円アーチの窓が縦に一繋がりになっており、向かって左側(写真奥側)の部分は、横方向の繋がりが強調されています。このあたりもファサードが単調にならないようにデザインされているのかな、という感じがします。
出っ張った部屋がある3階は、この建物がホテルとして使われていた時に客室が多くあった階で、展望室は3面に上げ下げ窓が配されており、小高い丘に建っていることもあって小樽の海から山までの景色を一望できるようになっています。(北の誉酒造の工場なども見えるとのこと。)
ただ、現在は近くの樹木がかなり大きく成長しているせいもあって海側などは全部は見渡せないようです。この部屋や2階のバルコニーから市街を眺めると、ちょっとセレブな気分に浸ることができそうです。
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バルコニーではありませんが、こちらは玄関前から天狗山の方面を望んだところです。
今回のイベントでも、前庭側以外の部分での撮影は許可されていなかったので、残念ながら庭や庭に面した和風の部分、建物内部の様子などは撮影できませんでした。
例えば、和風の屋根の瓦には○で囲まれた「ヨ」の印があり、これは北の誉酒造(1901年創業)の前身「丸ヨ野口商店」(1890年創業で醤油の製造販売業)の屋号でしょう。
また、今回内部を見せてもらい一番驚いたことの一つは、建物の後ろ側の3階にある第二ホールとサンルームでした。建物の背面で庭に面した部分に12角形くらいの張り出した部分があり、そこがサンルームになっているのですが、部屋の中に噴水があることに驚かされました!
第二ホールやサンルームは昭和5年(1930年)に増築された部分ですが、野口家の人びとは当時、その部屋で朝食をとっていたとの話を聞くと、これだけ豪華に装飾された邸宅は、避暑地の別荘のような印象とのギャップに驚かされます。第二ホールには洋室であるにもかかわらず床の間のような飾り棚があり、そこは他の部分とは異なる木材を使って装飾するなど、細かいところまで手が込んでいます。
他にも、4階への隠し階段、3階大広間の高橋是清が書いたという書、随所に隠されたスチーム暖房など、見どころが満載の建築でした。
さらに、建築好きの野口喜一郎氏のほか、この建物の設計には佐立忠雄が関わったとされており、この方は工部大学校第一期生(辰野金吾らの同級生であり、日本国内で西洋建築を学んだ最初のグループに属する人)であった佐立七次郎の息子であることも特筆に値するように思います。というのは、佐立七次郎は重要文化財に指定されている日本郵船小樽支店を設計した人で、親子二代に渡って小樽にゆかりがあることがわかるからです。
こうした文化遺産がきちんと保存され、将来、一般にも公開されるようになればいいな、と思いました。
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