2013/06/12 - 2013/06/13
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鯨の味噌汁さん
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いったんフィレンツェまで戻り、ユーロスターで一気に南下。
ローマも通り過ぎ、ナポリに一泊。翌日はポンペイをめざすことにする。
最終日にはローマに戻るんだから、効率の悪い移動だが、ユーロスターを使うと案外早い。
500キロを3時間、というところだから、ちょうど「東京-新大阪を新幹線」の感覚ですね。
運賃は時間帯によって異なる。午後イチの便だと59ユーロで、8000円ほど。
早期予約だと29ユーロ、なんて料金もある。
それって東京から大阪まで、新幹線に乗って4000円ということか。日本の3分の1やんか。
イタリアが安いというよりは、日本の新幹線が高すぎるんだ。
責任者出てこいコラっ。(⇒突然発火)
- 旅行の満足度
- 4.5
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 鉄道 徒歩
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-
席は車両中央、向かい合わせのシートだ。wi-fiも使える。快適快適。
社内はすいていて、ワシの後ろの席には、若いイタリア人カップルが座っていた。
定刻、フィレンツェの駅を出て、しばらくすると。
ワシの背後で、
「すっぽぉぉぉぉぉーーーーーーーん、すっぽぉぉぉぉぉーーーーーーーん」
と、不思議な連続音が響き渡った。 -
おお。この音はひょっとして、いつか聞いたあの音では。
鯨は遠い記憶を呼び覚ます。
30年前。
学生だった鯨は、リュックひとつでヨーロッパを旅していた。
ユーレイルパスを頼りに、電車を乗り継ぎ、ドイツ・オーストリア・イタリア・フランス・スペインを歩き回ったのである。
で、イタリアにおけるもっとも衝撃的な光景が、「すっぽぉぉぉぉぉーーーーーーーん」であった。
最初に目撃したのは、確か、ウィーンからヴェネツィアへの夜行列車の中だったと思う。
お隣の席のカップルが、ものすごい音を立てて、キスをしていたのである。
若かった鯨は、当時の旅日記に以下のごとく記述している。(⇒本当)
「この国の住民は、ところかまわず、音を立ててキスをする。そのたびにビールの栓を抜く音がする」
フランスでもスペインでも、そんなキスはなかった。
ワシの中で、キスとゆうのはあくまで「チュッ」であって。
かような
「うぐうぐうぐうぐ。むおむおむお」
と呼吸困難を伴うがごとき、あるいは便所づまり解消棒のごときキスは、見たことも聞いたこともなかった。
が、30年たっても、イタリア人は、相変わらずビールの栓を抜く音みたいなキスをしているのであった。
経済危機も失業率も乗り越えて、イタリア人は音を立ててキスし続けるであろう。
このろくでもない、素晴らしい世界。 -
午後7時、ナポリ・セントラル駅に到着。タクシーで卵城の近くの海岸線まで行き、宿泊。
翌日、カンカン照りの朝日の中を、ポンペイを目指して出発する。
ポンペイへの列車は、国鉄ではなく、SFSMというローカル線を使った。
日本では「ベスビオス周遊鉄道」という名前で紹介されているらしい。
その名の通り、秀峰ベスビオ山の山麓を海沿いにぐるっとまわる鉄道だ。
ナポリ中央駅で車両とご対面すると、落書きてんこ盛り、ボロボロの車両がわれわれを出迎える。
が、案外乗車率はよくて、午前9時のナポリ発ソレント行はほぼ満席だ。
ポンペイへの観光客が主力と思いきや、けっこう地元の足としてがんばてっるらしい。 -
ふたつ目の駅で、地元の中学生らしい集団が乗り込んできた。男が4人、女が2人。
ワシらを取り囲むようにボックスに座り込み、ギャーギャーピーピー、全員がツバメみたいに騒ぐ。
コラコラ、お前らものすげ〜うるさいぞ。
話すとゆうよりは「怒鳴り、かつ歌う」感じであって、出来の悪いオペラでも聞かされてる気分だ。
でもってこのガキどもは、ワシと配偶者のこともオカズにしているらしい。(⇒そのときだけ視線がワシらに集まるから、なんとなく判る)
眼の前の「ケツ150センチ女」が、ワシのアタマをチラ見して、隣の「ピアスだらけ男」に何かゆう。
すると、男はチラとワシのアタマをやはり見て何かゆう。
きっとこんなコトをしゃべってるに違いない。
「こういうのマダラハゲってゆうのよ」
「ちげーよ、ザビエルハゲだって」
で、二人でゲラゲラ笑う。
失礼だ失礼だ失礼だ、と思うものの、言葉が分からんのでツッコミようがない。 -
30分ばかりベスビオス火山のふもとを走り、ポンペイまであと二駅、とゆうところで、開けっ放しの窓から珍客が飛び込んできた。
大きめのバッタである。ワシの目の前の窓にしがみついた。
すると、この男女の集団、なぜかとつぜん、パニックを起こした。
どうやらイタリアにおいては、バッタは嫌われる生き物らしい。
なんとなくてあるが、日本におけるゴキブリの待遇と似ている雰囲気である。
奇声、悲鳴とともに、ドドドっとワシらの周りの席が空く。
窓にバッタが止まっているだけなのに。
「あんたが取りなさいよ!」
ケツ150センチ女がピアス男に迫る。言われた男は、ティッシュを手に、恐る恐るバッタに近づく。
が、バッタがひと睨みすると、男はヘタレで、さっさと退散してしまう。
でもって周囲はコレデモカとゆうくらい大騒ぎだ。
なんだこいつら。
鯨はメンドー臭くなってしまい。
素手で目の前のバッタをむんずとつかみ。
そのまま、窓の外に放り投げた。
「おおおおおーーーーーーーー」
ガキどもは狂喜乱舞、拍手喝采。
そのままむしゃむしゃ食ってやったら、もっとウケたに違いない。(やらんけど) -
ポンペイ遺跡の入り口で、キャッシュディスペンサーを見つける。
われわれは国際キャッシュカードで旅をしているので、現金を下ろすことにする。
が、前に並んだ一組の東洋人夫婦が、なかなか終わらない。何度も繰り返しているので、声をかけてみる。
「日本人のかたですか」
ナポリから日帰りでやってきたという。ご主人が無念そうに言う。
「ナポリ駅でスリにあって、現金を盗られたんです」
なるほど、それでクレジットカードでキャッシングしているわけか。
「初めて使うので、どうしていいのか」
後ろにほかの観光客も並んでいるので「じゃー、貸してください」と、さっさとカードを取り上げる(VISAのゴールドだった)。
ピンコードは入力してもらい、VISAのキャッシングを選択し、金額を指定。ツルツルと現金が出てくる。
「これはキャッシングですから、手数料の他にも金利が掛かりますよー」
と念を押し、カードと現金を返した。
が、夫婦はあくまで不安そうに、ワシの手元をじっと見ているのであった。
ははあ。
ワシが何か、不正をやってるんではないかと思われたらしい。
しょーがないよね、スリにあった直後じゃあね。
それにワシは、全世界的な悪人顔である。
ムリもないムリもない、とおもいつつも。
ヒトは見かけで判断しちゃーいけないよ、とココロにつぶやく鯨の味噌汁であった。 -
ちなみに、ポンペイ遺跡は、ガイド付きのツアーをオススメしたい。
なぜかと言えば、シロートが歩き回っても、延々と続く古代の町の中で、迷子になること必至だからである。
炎天下、行けども行けどもブチ壊れた「××跡」が続くので、遺跡で遭難、なんてことになりかねない。
万が一、時空に穴が開いていた場合、ウッカリ2000年前の町に迷い出てしまい、配偶者は娼婦、ワシはドレイになる恐れなしとしない。 -
ポンペイを見学し終えると、午後2時。
日差しは真上にある。暑い日だ。
ソレントまで列車で移動する。
ソレントに泊まるのを決めたのは旅に出てからなので、予備知識はほとんどない。
ガイドブックを覗くと、海辺のリゾートであるらしい。
30分で終点、ソレントに到着。
駅を出て、前日予約したホテルを目指す。
トントンと階段を下りると駅前広場。左に曲がると駅前商店街だ。 -
町は白っぽく、静かで、リタイア組のお年寄りカップルが多い。
手をつないで、仲良くお散歩している。
ヨーロッパのサラリーマンが、退職したら移り住む町なんだろう。
そんな大きい町ではないが、駅前通りだけで2軒の不動産屋さんがあった。
どれどれ、と価格をのぞく。
中古のコンドミニアムが200,000なんて出ていた。20万ユーロ、2600万円か。
「今の家を売れば、買えんことないなー」
なんてことを配偶者にゆってみる。ゆってみただけだけど。 -
たどりついたホテルは、星四つ、リゾートのツクリであった。
前日ネットに「直前・バーゲン価格」で出ていた。108ユーロ。
部屋に通されると、バルコニー付きのオーシャンビューだ。
ドアに貼ってある価格表はハイシーズン270、ローシーズン180とあるから、われわれはオキテ破りのド安め客らしい。 -
さっそく、町に出かける。
町はガケの上の高台にあり、ホテルの前の道を歩くと、すぐに広場に出る。どうやらここが町の中心らしい。
その広場から急な階段が海辺へ続いている。観光客がゾロゾロとその階段を下りていくので、われわれも従う。 -
船着き場があった。どうやらカプリ島へ渡る観光船の拠点になっているらしい。
クルーズの看板が出ている。
なるほどなー。ガイドブックでは、青の洞窟ってゆってたなー。
「行ってみる? 青の洞窟」
配偶者に問うと、彼女は90〜120ユーロ、なんていう価格表をチラっ見て
「歩きましょう」
とひとこと。
うんうん、とワシも頷き、海岸線を歩く。
すると、海辺を囲った、「イタリア版浜茶屋」みたいな一群があらわれる。
これも看板が出ている。
ビーチパラソル:8ユーロ
チェア:5ユーロ
なるほどなるほど。浜茶屋の「席料」ですな。
海岸線は塀に囲まれ、老若男女、みなさん水着でリラックスしておられる。 -
ちなみに、リゾートのビーチ、といえば、トップレスである。
なにはなくとも江戸むらさき、じゃなくてトップレスである。
ヨーロッパのお約束である。(うそ)
というわけで、チチを出している女性を探してみたが、どうやら庶民的ツクリであって、そうゆう一帯ではないらしく。
若いムスメも樽みたいなオバーチャンも、みなさまちゃんとチチバンドを着用しておられるのであった。無念である。
「幾山川 越えさりゆけど トップレス 見果てぬ国ぞ きょうも旅ゆく」牧水鯨の味噌汁 -
半分洞窟のような階段を上がっていくと、市民広場に出た。
それから路地を歩く。小さな海鮮レストラン、バル、お土産物屋さん。
町を一回りして、ホテルへ戻り、例によってお昼寝してしまう。
何しに来てるのかねまったく。 -
午後9時、日没とともに起き出し、ふたたび町へ。
夜を待って通りに出てきた人たちで、通りはにぎわっている。
広場に面したカフェでは、ミニライブが開かれていた。
立ち上がって踊り出す人もいる。
いいなぁ。
イタリアは経済危機の最中だけど。若者の失業率40%、なんてかなしい数字もあるけれど。
金曜日の週末は、みんな町に出て、歩いて、おしゃべりして、楽しむんだな。
第二次大戦、ドイツ軍とイタリア軍がアフリカで軍事行動をとった時。
ドイツ軍は兵士一人の水の補給量を厳格に守り。
イタリア軍は、パスタを茹でてあっさり水を使ってしまったという。
ネタ話だろうけど、ラテンの国のケセラセラ精神、悪くない。ぜんぜん悪くない。
…そんな話を配偶者としつつ、ゆっくりと町を歩いた。
配偶者は今回の旅で、イタリアの印象が変わったという。
「いい加減なイメージがあったけど、実際は違うね」
確かに、電車・バスの時間は正確だったし、窓口で待たされることもなかった。
「観光が産業だから、一生懸命なのよ。おもてなしして、また来てほしいから」
「また来たい?」
「うん、また来たい」
旅の終わりがづいてきた。そして彼女はこの国が気に入ったようであった。
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旅行記グループ
フィレンツェからソレントまで
この旅行記へのコメント (6)
-
- 56さん 2014/12/06 08:51:00
- 「すっぽぉぉぉぉぉーーーーーーーん」の正体が気になって
- 鯨の味噌汁さま
はじめまして。
前回お邪魔したときにローマ編と
「すっぽぉぉぉぉぉーーーーーーーん」編
との間でどちらを読もうか悩み、ローマ編。
やっぱりどうしても、
「すっぽぉぉぉぉぉーーーーーーーん」
の正体が気になって、戻ってまいりました。
愉快な旅行記につい引き込まれました。
今度イタリアに行く際に耳をすませて
みます♪
56
- 鯨の味噌汁さん からの返信 2014/12/18 10:57:15
- RE: 「すっぽぉぉぉぉぉーーーーーーーん」の正体が気になって
- 56さま、
どーもどーも、鯨の味噌汁でございます。お立ち寄りありがとうございます。
(年に1回の長旅から帰りたてでご返事遅れました。すみません。)
あの音は、ビールの栓を抜く音かと最初は思いました。
かれらの口は、みんなタコみたいになってるに違いありません。
> 鯨の味噌汁さま
>
> はじめまして。
>
> 前回お邪魔したときにローマ編と
> 「すっぽぉぉぉぉぉーーーーーーーん」編
> との間でどちらを読もうか悩み、ローマ編。
>
> やっぱりどうしても、
> 「すっぽぉぉぉぉぉーーーーーーーん」
> の正体が気になって、戻ってまいりました。
>
> 愉快な旅行記につい引き込まれました。
>
>
> 今度イタリアに行く際に耳をすませて
> みます♪
>
>
> 56
>
>
>
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-
- tabinakanotaekoさん 2013/07/04 06:54:31
- タイトルで気を惹くの、お上手です!
- 鯨の味噌汁さん、
すっぽーーーんって何の音だろうと、先を急いで読ませていただきました。本でも映画でもタイトルが大事だよね と常々思っているので
してやられた 感じです。
鯨さん達もお昼寝されるんですね。同じです。
朝っぱらから一日中では電池の切れたお猿がシンバルをならす
玩具のようになっちゃいます。
うっかり長い昼寝をしてしまって、夕ご飯を食べに
街へ出るだけの一日になってしまうこともありますわ。
tabinakanotaeko
- 鯨の味噌汁さん からの返信 2013/07/04 09:16:08
- ホントにそんなふうに聞こえますもんね。
- taekoさん、
最初に聞いたときはビックリします。
なんとゆうか、迫力が違う。
ベタベタとゆうより、「ほとんどホンバン」じゃないかと。
若かりし頃の鯨は驚いたものでございます。
30年ぶりに行って、ちーともかわっとらんなと思いましたの。
> 鯨さん達もお昼寝されるんですね。同じです。
> 朝っぱらから一日中では電池の切れたお猿がシンバルをならす
> 玩具のようになっちゃいます。
夏の旅は体力消耗しますよね〜。
ツアーだとバスの中で休めるけど、ガチの個人だと、休む場所がないし。
だから移動のない日は、ホテルでお昼寝がお約束です。
そもそもポンペイとかで歩き回った後で、続いて観光なんてできないですものねぇ。
-
- さすらいの食いしんぼうさん 2013/06/26 12:47:57
- いつもながらに楽しく鋭い人間観察ぶりです。
- 鯨の味噌汁さん、こんにちは、
やりましたね!ひっさびさのヨーロッパ!それもちょっと手強いイタリア!
あいかわらず楽しい鯨の味噌汁さんの人間観察ぶりでした。でも今回は鯨の味噌汁さんご夫婦も逆観察されていたようです。(笑)そして「虫に弱い白人」これは大いにうなずくところがありますね。
さすらい
- 鯨の味噌汁さん からの返信 2013/06/27 10:40:24
- RE: いつもながらに楽しく鋭い人間観察ぶりです。
- さすらいの食いしんぼうさん、
ご無沙汰してます〜。
といっても年に一度の旅行ですから「ご無沙汰」もトーゼンなんですが・・・
> やりましたね!ひっさびさのヨーロッパ!それもちょっと手強いイタリア!
去年はトルコでしたものねー。
でもあそこも、ちょっとヨーロッパですよきっと。パツキンのおねいさんも多数生息しておられましたし。
>今回は鯨の味噌汁さんご夫婦も逆観察されていたようです。
ぷぷぷ。そーなんです、どうやら怪しい旅行者として見られていたらしい。
ローカル列車で旅をすると、ジモピーの兄ちゃんなんかがじっとこっちを見てることがありますよねー。
昔、スペインの田舎の駅で、日本へのおてがみを書いていたら、そこいらへんのガキどもが、
「おー、こいつ、おもろし字ぃ書いてるがなー」
とワラワラ集まってきたこともありましたっけ。
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