2013/01/11 - 2013/01/11
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ちびのぱぱさん
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奈良県というのは、学のないよそ者には、ちょっと分かりづらい県です。
いにしえの、修学旅行の時の記憶が強くて、京都とごっちゃになっているなかで、かろうじて大仏や鹿のイメージ、それに最近は「せんとくん」。
今回、旅をして気づいたのは、その、京都でも大阪でもないような独特の雰囲気。
一日で3万歩もあるき回り、思いもよらず長時間ならまち界隈を彷徨してしまったのは、
京都よりも深い歴史が、高度経済成長という津波から運良く逃れ、
何気なく古書店で手にした、忘れ去られた古い書物の匂いのように、ふいに、不用心なわたしの心を捕えて、時間の海に飲みこまれてしまったからのような気がしました。
- 同行者
- カップル・夫婦
- 交通手段
- JRローカル 徒歩 Peach
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大仏殿奥の二月堂から、右手の方に下ってゆくと、美しい土塀の続く石畳の道になります。
奈良公園に、ひっそりとある、蟻塚のような破れ土塀と違い、現役です。 -
誰かの旅行記で見た写真の景色、こんなとこにあったのかと、しばらく感激していると、
「へえ〜、かにがいるんだ。」
と、妻がつぶやくのが聞こえます。
見ると、石畳の脇を流れる小さな水路に、20センチ角ほどの控えめなサインに、水路にサワガニがいること、それをこの辺りの人が大切にしていること、ゆえに、見かけても、そっとしておいてほしいこと、が優しげな文字で記されていました。 -
地味な地鳴きを発しながら、あざやかな鶯色のメジロが、土塀の上の梢にとまったかと思うと、忙しそうに、また去ってゆきました。
「あっ、メジロ。」
美しい鳥です。
花の蜜を吸いに来たのでしょうか。
今は、山茶花の花くらいしか咲いていないようですが。
この辺りは、梅の里ですから、もう間もなく、満開の梅が花を咲かせることでしょう。
梅の木には、たくさんのつぼみが付き、気の早いのがたまに綻びかけていました。
たぶんイカルか、もしくはシメではないかと思うのですが、その蕾をついばんでいました。
北国を逃げるようにして旅に出た身には、なんとうらやましい光景でしょう。 -
餅飯殿(もちいどの)センター街というアーケード街の入り口には、高速餅つきで有名になった餅屋さんがあって、
店内で巨大な炊飯器が、シュ−シューいって蒸気をあげていたので、もしかしたら、もうしばらくすると、例の高速餅つきをするかも知れないと思いましたが、そのまま通り過ぎました。
餅飯殿町にあるお餅屋さんとは、いかにもふさわしいですが、聞いた話では、奈良県の南部にある上北山村に昔からある餅のつき方だとか。
上北山村は、後ほど偶然通りかかりましたが、実に興味深いところでした。
それはさておき、奈良町の細い路地をぐるぐる歩いているうちに、十輪院という寺の前に出ました。 -
「十輪院の本堂は、単層寄せ棟の、手の上にでも乗りそうなかわいらしい建物である。しかし、じっと見ていると、だんだん大きく、やがて威圧するように見えてくる。やはり時代というものの魔力であろうか。」
松本清張が、奈良を紹介した本の中で言っていた言葉です。
清張は、その他にも、この寺にまつわるおもしろい話を紹介していますが、弘法大師の師である朝野魚養(あさのなかい)が魚に養われた逸話が出色です。 -
本堂は、鎌倉時代の建物で、当時のやんごとなき人々の住居を彷彿とさせる国宝です。
かのブルーノ タウトも絶賛したとか。 -
がらんは、けして広くはない境内にひしめき合っている風。 -
古き良き時代の町屋があります。 -
その界隈を、さらにあてどなく彷徨いました。
-
-
細い、迷路のような道を、あてもなく歩いているうちに、「ならまち 格子の家」に出ました。 -
人の気配はなく、そっと覗くと、
「どうぞ、おはいりください。」
という女性の声が、どこからとも無く聞こえてきます。
よく見ると、切符売り場のような狭い受付があって、その中に若い女性がいたのです。
その声に励まされるように、ひんやりとした玄関に足を踏み入れて、財布を取り出すと、
「入場無料になっています。どうぞ、ご自由にご覧ください。」
と、言われたのでした。 -
あがりかまちの石の上には、すでに、二足のサンダルのような靴が乱雑に乗っていて、先客がいることを知りました。
それを避けるように、私たちも靴を脱いで、冷たい畳の上にあがりました。
こういう長年月を経た家どくとくの、不思議な、懐かしいようなニオイが漂っております。 -
「ガタン」と後ろで音がして、振り向くと、くだんの受付の女性が、何かの用を足すために、外に出て行くところでした。 -
先客は、外国人の女性二人連れで、私たちと入れ違うように出て行ってしまいました。 -
もはや、この家には、私たち夫婦の二人しか、いないようです。 -
誰もいなくなった「格子の家」 -
しんとした部屋は、かえって誰かの息づかいが聞こえてきそうです。 -
-
妻と二人で、たわむれに、サントリーのお茶、伊右衛門のコマーシャルを演じてみました。
どこからともなく、久石譲のOriental Windが聞こえてきそうな…… -
玄関に戻って靴を履き、外に出ようとすると、いつの間に戻っていたのか、受付から
「ご来場ありがとうございました。」
と、声がします。
なぜかこの女性、気配がしないんです。
二度とも、小心なわたしを飛び上がらせるほど驚かせたとは、当の本人は夢にも思っていないだろうな。
「いえいえ、こちらこそ、けっこうなものを見せていただきました。」
ふだんは、ここでいろいろ無駄話をするのですが、すっかり毒気を抜かれて、すごすごと「格子の家」を後にしました。 -
目の前に、りっぱな煙突が見えたのでそちらの方に行ってみると、お風呂屋さんがありました。
すっかり体が冷えて、お風呂をいただいてゆこうかと、本気で考えてしまうのでした。
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この旅行記へのコメント (2)
-
- nakamasananiwaさん 2013/02/01 11:52:40
- ♪
- な、なつかし〜〜♪
郡山の工場通ってたとき、あまりにも遅刻、休みが多いのを見かねて社長からなかば強制的に、もちいどの商店街を抜けたとこにある古びた寮に放り込まれ、しばらく暮らしたことがあります。
ヤマザキパンのおねーさん、元気かなぁ? 狭いカウンタで啜るクラムチャウダが旨かった。
- ちびのぱぱさん からの返信 2013/02/01 20:27:26
- RE: ♪
- もちいどの商店街、狭くてごちゃごちゃしていて、いいですね。
真ん中あたりに大きなスーパーがあって、そこで買ったお総菜を昼食代わりにしました。
商店街をぬけた辺りもウロウロしましたが、nakamasaさんがおっしゃるような雰囲気の、生活感あふれる町並みでした。
きっと、あまり変わっていないんだと思います。
ジャカルタ訪問の延長戦で、行ってみちゃったらいかがでしょう。
あと、ジャワ島の列車の旅、良さそうですね。
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