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時折強い雨が降るベルギー滞在の2日目、ブリュッセル市内の世界遺産を訪ね歩いた。この町にはグラン・プラスの他、「建築家ヴィクトル・オルタの主な都市邸宅群」と「ストックレー邸」というアール・ヌーヴォースタイルの2ヶ所のモダン住宅がユネスコ世界遺産に登録されている。ヨーロッパの荘厳な教会建築や、調和のとれた大規模な旧市街を巡ってきた後では、ガッカリ、とは言わないまでも拍子抜けするほど小規模な住宅建築だ、と正直に書いておこう。世界遺産の価値の軽重に物申すのもおこがましいが、ユネスコ関係者のモダン建築に関する評価には、あるこだわりを感ずる。ドイツのバウハウス関連建築についても感じられたことであるが、建築的価値について専門家のご意見を伺いたいところである。<br /><br />オルタ邸はブリュッセルの南部、トラムのJason駅の近くにある。住宅街でなかなか見つけにくい。なお開館は14時からで要注意である。私はうっかり午前に出かけ、再度出直すことになった。また参観者の人数制限を行っており、この日も雨の中、30分以上待たされた。<br /><br />オルタ邸は彼自身のアトリエと住宅を兼ねた邸宅であり、1898~1901年に建築された。現在はアール・ヌーヴォーに関する美術館として、一般に公開されている。設計の特徴としては、部屋の配置を工夫してガラスを効果的に利用、邸内に光をうまく取り込んだ。また、デザイン的には曲線を多用することで、美しく内部空間を演出している。<br /><br />ヴィクトル・オルタは19世紀末から20世紀初頭にアール・ヌーヴォーと建築を見事に融合させた建築家で、当時ブリュッセルで活動したアール・ヌーヴォー建築家たちのリーダー的存在であった。多くの邸宅を設計したが、世界遺産に登録された4件(オルタ邸、タッセル邸、ソルヴェー邸、ヴァン・エドヴェルド邸)には、彼の革新性が評価されたという。ただし、博物館となっているオルタ邸以外は私邸なので、一般観光客には公開されていない。<br /><br />一方のストックレー邸は、さらに不可思議だ。場所はブリュッセルの西部、メトロのMontgomery駅から徒歩で15分ほどのところの住宅街にある。ところが邸宅内の写真を撮るどころか、門扉は固く閉ざされており、塀の外から撮影することしかできない。<br /><br />たまたま15人ほどのアメリカ人の団体がガイド付きで訪れており、私もその中に加えてもらった。ガイドが強調していたのは、世界遺産に登録されたために所有権をめぐって相続者たちとブリュッセル当局と法廷闘争となり、現在売却中の価格は8000万ユーロに跳ね上がったという。<br /><br />この邸宅は1903年ころ、ベルギーの金融業者アドルフ・ストックレーの私邸とするために、オーストリアの建築家ヨーゼフ・ホフマンによって設計され、1911年に完成した。20世紀初頭の内装・外装、家具・日用品、庭園などを一体化する総合芸術運動を具現化した建物である。内装はグスタフ・クリムトが手がけており、内部を見ることができないのは返す返す残念である。<br /><br />アドルフ・ストックレーは1902年から1904年に仕事でウィーンを定期的に訪れ、その地でウィーン分離派の指導的立場の一人であった建築家ヨーゼフ・ホフマンと出会い、アバンギャルドな嗜好を共有した。ブリュッセルにウィーンで流行だった建築が建てられたのはこのような背景による。ホフマンはウィーン工房の職人たちを指揮し、照明や子供の玩具を始め、扉の取手や植木鉢などの細部まで考え抜かれたデザインが行われた。また建材にも配慮し、最高級の大理石や木材、上質の皮革などを選り抜いて建設された。<br /><br />この邸宅の常連客はホフマンによって記録されており、ジャン・コクトー、アナトール・フランス、ダリウス・ミヨー、セルゲイ・ディアギレフ、イーゴリ・ストラヴィンスキーという錚々たる芸術界の著名人が名を連ねており驚かされる。<br /><br />ストックレー邸を訪れた後、何とも満たされない気持ちでブリュッセルの中心部に戻った。実はこの日は、ネット販売でも数週間前から完売だったラ・モネ劇場の「椿姫」(15時開演)のチケットを手に入れようと再三窓口を尋ねたが、徒労に終わった。大野和士氏が2008年までシェフだったが、かなりの人気劇場である。悔しかったので、このオペラは「マリインスキーやベルリンほどではない」、「椿姫は私の好きなオペラではない」と呟きながら知人との夕食会に向かうことにした。

ベルギーの世界遺産⑤⑥:ブリュッセルのストックレー邸宅とオルタ邸宅

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2012/12/10 - 2012/12/11

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ハンク

ハンクさん

時折強い雨が降るベルギー滞在の2日目、ブリュッセル市内の世界遺産を訪ね歩いた。この町にはグラン・プラスの他、「建築家ヴィクトル・オルタの主な都市邸宅群」と「ストックレー邸」というアール・ヌーヴォースタイルの2ヶ所のモダン住宅がユネスコ世界遺産に登録されている。ヨーロッパの荘厳な教会建築や、調和のとれた大規模な旧市街を巡ってきた後では、ガッカリ、とは言わないまでも拍子抜けするほど小規模な住宅建築だ、と正直に書いておこう。世界遺産の価値の軽重に物申すのもおこがましいが、ユネスコ関係者のモダン建築に関する評価には、あるこだわりを感ずる。ドイツのバウハウス関連建築についても感じられたことであるが、建築的価値について専門家のご意見を伺いたいところである。

オルタ邸はブリュッセルの南部、トラムのJason駅の近くにある。住宅街でなかなか見つけにくい。なお開館は14時からで要注意である。私はうっかり午前に出かけ、再度出直すことになった。また参観者の人数制限を行っており、この日も雨の中、30分以上待たされた。

オルタ邸は彼自身のアトリエと住宅を兼ねた邸宅であり、1898~1901年に建築された。現在はアール・ヌーヴォーに関する美術館として、一般に公開されている。設計の特徴としては、部屋の配置を工夫してガラスを効果的に利用、邸内に光をうまく取り込んだ。また、デザイン的には曲線を多用することで、美しく内部空間を演出している。

ヴィクトル・オルタは19世紀末から20世紀初頭にアール・ヌーヴォーと建築を見事に融合させた建築家で、当時ブリュッセルで活動したアール・ヌーヴォー建築家たちのリーダー的存在であった。多くの邸宅を設計したが、世界遺産に登録された4件(オルタ邸、タッセル邸、ソルヴェー邸、ヴァン・エドヴェルド邸)には、彼の革新性が評価されたという。ただし、博物館となっているオルタ邸以外は私邸なので、一般観光客には公開されていない。

一方のストックレー邸は、さらに不可思議だ。場所はブリュッセルの西部、メトロのMontgomery駅から徒歩で15分ほどのところの住宅街にある。ところが邸宅内の写真を撮るどころか、門扉は固く閉ざされており、塀の外から撮影することしかできない。

たまたま15人ほどのアメリカ人の団体がガイド付きで訪れており、私もその中に加えてもらった。ガイドが強調していたのは、世界遺産に登録されたために所有権をめぐって相続者たちとブリュッセル当局と法廷闘争となり、現在売却中の価格は8000万ユーロに跳ね上がったという。

この邸宅は1903年ころ、ベルギーの金融業者アドルフ・ストックレーの私邸とするために、オーストリアの建築家ヨーゼフ・ホフマンによって設計され、1911年に完成した。20世紀初頭の内装・外装、家具・日用品、庭園などを一体化する総合芸術運動を具現化した建物である。内装はグスタフ・クリムトが手がけており、内部を見ることができないのは返す返す残念である。

アドルフ・ストックレーは1902年から1904年に仕事でウィーンを定期的に訪れ、その地でウィーン分離派の指導的立場の一人であった建築家ヨーゼフ・ホフマンと出会い、アバンギャルドな嗜好を共有した。ブリュッセルにウィーンで流行だった建築が建てられたのはこのような背景による。ホフマンはウィーン工房の職人たちを指揮し、照明や子供の玩具を始め、扉の取手や植木鉢などの細部まで考え抜かれたデザインが行われた。また建材にも配慮し、最高級の大理石や木材、上質の皮革などを選り抜いて建設された。

この邸宅の常連客はホフマンによって記録されており、ジャン・コクトー、アナトール・フランス、ダリウス・ミヨー、セルゲイ・ディアギレフ、イーゴリ・ストラヴィンスキーという錚々たる芸術界の著名人が名を連ねており驚かされる。

ストックレー邸を訪れた後、何とも満たされない気持ちでブリュッセルの中心部に戻った。実はこの日は、ネット販売でも数週間前から完売だったラ・モネ劇場の「椿姫」(15時開演)のチケットを手に入れようと再三窓口を尋ねたが、徒労に終わった。大野和士氏が2008年までシェフだったが、かなりの人気劇場である。悔しかったので、このオペラは「マリインスキーやベルリンほどではない」、「椿姫は私の好きなオペラではない」と呟きながら知人との夕食会に向かうことにした。

旅行の満足度
3.0
観光
3.0
ホテル
4.0
グルメ
4.0
交通
3.5
同行者
友人
一人あたり費用
10万円 - 15万円
交通手段
鉄道 高速・路線バス 徒歩 飛行機
航空会社
ルフトハンザドイツ航空
旅行の手配内容
個別手配
  • オルタ邸はブリュッセルの南部、トラムのJason駅の近くにある

    オルタ邸はブリュッセルの南部、トラムのJason駅の近くにある

  • オルタ邸は住宅街にありなかなか見つけにくい、この看板が目印

    オルタ邸は住宅街にありなかなか見つけにくい、この看板が目印

  • オルタ邸のアールヌーヴォー様式の外観

    オルタ邸のアールヌーヴォー様式の外観

  • オルタ邸は一般住宅の中にあり見つけにくい

    オルタ邸は一般住宅の中にあり見つけにくい

  • オルタ邸は一般住宅の中にあり見つけにくい

    オルタ邸は一般住宅の中にあり見つけにくい

  • 建築のカットモデル

    建築のカットモデル

  • 建築のカットモデル

    建築のカットモデル

  • 建築のミニチュアモデル

    建築のミニチュアモデル

  • オルタ邸の飾り棚

    オルタ邸の飾り棚

  • 建築家ヴィクトル・オルタの胸像

    建築家ヴィクトル・オルタの胸像

  • 開館は14時からで要注意である。私はうっかり午前に出かけ、再度出直すことになった。また参観者の人数制限を行っており、この日も雨の中、30分以上待たされた

    イチオシ

    開館は14時からで要注意である。私はうっかり午前に出かけ、再度出直すことになった。また参観者の人数制限を行っており、この日も雨の中、30分以上待たされた

  • 邸宅内のらせん階段、内部は撮影不可なので、絵葉書を購入して撮影

    邸宅内のらせん階段、内部は撮影不可なので、絵葉書を購入して撮影

  • 玄関近くの階段、装飾が特徴的である、絵葉書を購入して撮影

    玄関近くの階段、装飾が特徴的である、絵葉書を購入して撮影

  • 建築家ヴィクトル・オルタの写った写真、絵葉書を購入して撮影

    建築家ヴィクトル・オルタの写った写真、絵葉書を購入して撮影

  • ストックレー邸の直線的なファサード

    ストックレー邸の直線的なファサード

  • ストックレー邸はブリュッセルの西部、メトロのMontgomery駅から徒歩で15分ほどのところの住宅街にある

    ストックレー邸はブリュッセルの西部、メトロのMontgomery駅から徒歩で15分ほどのところの住宅街にある

  • 邸宅内の写真を撮るどころか、門扉は固く閉ざされており、塀の外から撮影することしかできない

    邸宅内の写真を撮るどころか、門扉は固く閉ざされており、塀の外から撮影することしかできない

  • ストックレー邸の直線的なファサード

    ストックレー邸の直線的なファサード

  • ストックレー邸の直線的なファサード

    ストックレー邸の直線的なファサード

  • ストックレー邸周囲の集合住宅

    ストックレー邸周囲の集合住宅

  • ストックレー邸周囲の集合住宅

    ストックレー邸周囲の集合住宅

  • ブラジル大使邸が隣接している

    ブラジル大使邸が隣接している

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