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牧山を刳り抜いた二つのトンネルを潜り過ぎると、目の前に石巻港が開けてくる。この港を見るのは初めてのことだが、今まで見て来た三陸の港は、大体がどこも巾着袋のような天然の良港で、自然の暴風雨を避けるのは丁度良い避難港になっているが、この石巻港は、外海を埋め立て、直接外洋に面している。規模は小さいが八戸も丁度こんなような感じの埋め立て港だった。<br /><br />港と言っても、入江とか、湾になっている訳ではなく、ただだだっ広い埋め立て地に護岸を作ったようなものだから、何か広大な工業団地の造成地の中を歩いているような感じである。震災直後は、この広大な埋め立て地も瓦礫の山で、押し流された家屋、倉庫、番小屋等が芥のように寄せ集められていたに違いないが、10か月も経った今では、それらの残骸も綺麗に片付けられて、生き残った冷凍倉庫は既に営業を再開しているし、あちこちに新たに立ち上げた倉庫、工場、或いは再築住宅などがポツン、ポツンと点在している。この町の復興はこれからに違いないが、10か月経った今も廃墟の状態を見ないで済んで救われた。<br /><br />護岸の際まで行って、遠くの海を眺める。今は波静かだ。この静かな海がある日突然凶暴になって、小山のような大きな波になって襲い掛かる。防波堤の先の方に小さな島が見えるが、先の震災はあの島などひと飲みにして猛烈なスピードでこの岸壁にまでやってきたのだ。あんなあるか無いかのような背の低い防波堤など何の役にも立たなかっただろう。人々は恐怖に慄くよりか先に、一瞬の間に波に飲みこまれてしまった。今突然に地震が起きて、大津波に襲われたら、あの1キロも離れた牧山まで駆けて逃げることは無理だろう。<br /><br />昨夜来の雪に白く積もった埋め立て地は、そうした人々の怨念、哀悼、無念さを包み込むように、朝日に白く輝いていた。Fenix。人々は廃墟の中から立ち上がり、悲しみを乗り越えて、今又新たな世紀を築くために立ち上がっている。雪の中に平穏そうに見えるこの光景も、そうした未来への羽ばたきの一駒に見えてきた。

石巻・松島・塩竃1日旅行(4)石巻港。

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2012/02/04 - 2012/02/04

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ちゃお

ちゃおさん

牧山を刳り抜いた二つのトンネルを潜り過ぎると、目の前に石巻港が開けてくる。この港を見るのは初めてのことだが、今まで見て来た三陸の港は、大体がどこも巾着袋のような天然の良港で、自然の暴風雨を避けるのは丁度良い避難港になっているが、この石巻港は、外海を埋め立て、直接外洋に面している。規模は小さいが八戸も丁度こんなような感じの埋め立て港だった。

港と言っても、入江とか、湾になっている訳ではなく、ただだだっ広い埋め立て地に護岸を作ったようなものだから、何か広大な工業団地の造成地の中を歩いているような感じである。震災直後は、この広大な埋め立て地も瓦礫の山で、押し流された家屋、倉庫、番小屋等が芥のように寄せ集められていたに違いないが、10か月も経った今では、それらの残骸も綺麗に片付けられて、生き残った冷凍倉庫は既に営業を再開しているし、あちこちに新たに立ち上げた倉庫、工場、或いは再築住宅などがポツン、ポツンと点在している。この町の復興はこれからに違いないが、10か月経った今も廃墟の状態を見ないで済んで救われた。

護岸の際まで行って、遠くの海を眺める。今は波静かだ。この静かな海がある日突然凶暴になって、小山のような大きな波になって襲い掛かる。防波堤の先の方に小さな島が見えるが、先の震災はあの島などひと飲みにして猛烈なスピードでこの岸壁にまでやってきたのだ。あんなあるか無いかのような背の低い防波堤など何の役にも立たなかっただろう。人々は恐怖に慄くよりか先に、一瞬の間に波に飲みこまれてしまった。今突然に地震が起きて、大津波に襲われたら、あの1キロも離れた牧山まで駆けて逃げることは無理だろう。

昨夜来の雪に白く積もった埋め立て地は、そうした人々の怨念、哀悼、無念さを包み込むように、朝日に白く輝いていた。Fenix。人々は廃墟の中から立ち上がり、悲しみを乗り越えて、今又新たな世紀を築くために立ち上がっている。雪の中に平穏そうに見えるこの光景も、そうした未来への羽ばたきの一駒に見えてきた。

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  • 石巻港まで来ると津波に流されずに残った建物など、まだ取り壊されずにあった。

    石巻港まで来ると津波に流されずに残った建物など、まだ取り壊されずにあった。

  • 護岸の辺りは沈下し、海水が入り込んでいる。

    護岸の辺りは沈下し、海水が入り込んでいる。

  • 石巻港。遠くの小島など大津波に一たまりもなかっただろう。

    石巻港。遠くの小島など大津波に一たまりもなかっただろう。

  • 右横の漁港では、もう既に何艘かの漁船が操業を始めている。

    右横の漁港では、もう既に何艘かの漁船が操業を始めている。

  • 沈み込みの激しい護岸。

    沈み込みの激しい護岸。

  • 番小屋などは打ち捨てられている。

    番小屋などは打ち捨てられている。

  • 流されはしなかったが、建物の外観だけを残した家屋。

    流されはしなかったが、建物の外観だけを残した家屋。

  • 更に酷い状態の家屋。護岸からかなり離れた場所にあった。

    更に酷い状態の家屋。護岸からかなり離れた場所にあった。

  • あちこちで修復、再開の槌音が聞こえていた。

    あちこちで修復、再開の槌音が聞こえていた。

  • 三陸沖は漁業の宝庫。数年後には又、旧来の活況を呈していることだろう。

    三陸沖は漁業の宝庫。数年後には又、旧来の活況を呈していることだろう。

  • 遠くに牧山が見える。ここからあの山まで1キロ以上。走って逃げるのは大変だったに違いない。

    遠くに牧山が見える。ここからあの山まで1キロ以上。走って逃げるのは大変だったに違いない。

  • 新たな住宅も建築途上にある。

    新たな住宅も建築途上にある。

  • 再び沖の海を眺め、この港を後にする。

    再び沖の海を眺め、この港を後にする。

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