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2009年4月、ウィーン演奏旅行に先立ちプラハへ立ち寄った。プラハは1984年、もちろん東西冷戦のさなかに一度訪れたことがある。すでに記憶は薄れてきてしまっているが、そのころは人々の顔にも冷戦の影が濃く、我々西側の人間との接触を避けるように見えた。宿も指定のドル払いのホテルのみ、人々の顔には笑顔が少なく、道を尋ねても親切に対応してくれる人は少なかった。事務的な話は英語、ドイツ語が通じたが、市民と積極的な会話をする機会は少なかった。ご存知の方も多いと思うが、町なかは迷路のような複雑な造りで、チェコ語の地図を持って迷いに迷いながら歩き回った。<br /><br />冷戦が終結して20年、チェコスロヴァキアと言う国はすでになく、この町はチェコ共和国の首都である。スロヴァキア共和国の首都はウィーンに程近いブラティスラヴァである。この落ち着いた小さな町については別途紹介したいと思う。 約25年ぶりにこの町を訪れた目的は、この間の変化をこの目で確かめたかったからだ。ウィーンの町並みはもちろん美しいが、ハプスブルク帝国華やかなりしころの姿とは大きく変化している。残念であるが良くない方向に変化していると思う。1984年製作の映画「アマデウス」のチェコ生まれの監督ミロス・フォアマンが、「モーツァルト時代の街並みはすでにウィーンにはなく、プラハにある」と語っており、そのためほとんどの撮影はプラハで行われている。 <br /><br />25年の間に人々と社会は大きく変貌した。誰もが笑顔で迎えてくれ、英語が通じる。話しかけられることも多かった。観光客は町に溢れ、商店は活気に満ちている。しかし、本当に幸いなことにプラハの中心部は昔の記憶とほとんど変わっていなかった。おそらくはモーツァルトが歩いていたころと比べても大きくは変わっていないのだろう。ユネスコ世界遺産にも指定されて、この町並みが保護され良くない方向に変貌しないことを祈るばかりだ。 <br /><br />そしてもちろんもうひとつの目的はドヴォルザーク、幸運にもわずか3泊の滞在の間に、ブロムシュテット指揮のチェコフィルがドヴォルザーク交響曲第8番とブラームス交響曲第1番を演奏する、という願ってもないコンサートがある。チケットは昼過ぎにホールのカッセまで行って、少し並んで手に入れることができた。正面の前から3列目で、指揮者の動きを完全に捉えることができる席だ。なお、この年の秋、このコンビは日本演奏旅行でこの日と同じ曲を演奏しているが、チケットの値段は5〜10倍である。ドヴォルザークの8番は3日後にウィーンで演奏する曲でもあり、その幸運に感謝! <br /><br />冒頭のチェロの深い響きを聴いたとたん、体が痺れる思いがした。弦の美しさは定評があるオケであるが、ブロムシュテットの指揮のためか金管、打楽器も鳴らすこと鳴らすこと!ドヴォルザークホール(写真1&2)1895年完成、翌年ドヴォルザーク自身がチェコフィルを指揮し、彼の名が冠された。ムジークフェラインザールは1870年の完成で、ホールのサイズも音響も比較的近いと思った。オケがトゥッテイで最強音を奏でても柔らかく包み込むような響きになる。低音の響きも豊かで申し分ない。 <br /><br />プラハには「プラハの春」のオープニングが行われる「アール・ヌーヴォー建築の精華」スメタナホール(写真4)、国民劇場(写真5)と国立歌劇場(写真6)の2つの主要オペラ会場がある。チェコフィルの翌日には国立歌劇場で「カルメン」を見ることができた。 <br /><br />4日の滞在を終えてウィーンに移動する。列車の名前は「シューベルト号」。最近のドイツのICEやフランスのTGVなど、早いのはいいが旅する風情がなくなってきて寂しい思いをすることが多い。この列車は良き時代のヨーロッパの鉄道旅行の香りがした。 <br />

変わらぬ街並み、チェコの首都プラハ:ドヴォルザークホールでチェコフィルを聴く(改訂版)

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2009/04/29 - 2009/05/02

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ハンク

ハンクさん

2009年4月、ウィーン演奏旅行に先立ちプラハへ立ち寄った。プラハは1984年、もちろん東西冷戦のさなかに一度訪れたことがある。すでに記憶は薄れてきてしまっているが、そのころは人々の顔にも冷戦の影が濃く、我々西側の人間との接触を避けるように見えた。宿も指定のドル払いのホテルのみ、人々の顔には笑顔が少なく、道を尋ねても親切に対応してくれる人は少なかった。事務的な話は英語、ドイツ語が通じたが、市民と積極的な会話をする機会は少なかった。ご存知の方も多いと思うが、町なかは迷路のような複雑な造りで、チェコ語の地図を持って迷いに迷いながら歩き回った。

冷戦が終結して20年、チェコスロヴァキアと言う国はすでになく、この町はチェコ共和国の首都である。スロヴァキア共和国の首都はウィーンに程近いブラティスラヴァである。この落ち着いた小さな町については別途紹介したいと思う。 約25年ぶりにこの町を訪れた目的は、この間の変化をこの目で確かめたかったからだ。ウィーンの町並みはもちろん美しいが、ハプスブルク帝国華やかなりしころの姿とは大きく変化している。残念であるが良くない方向に変化していると思う。1984年製作の映画「アマデウス」のチェコ生まれの監督ミロス・フォアマンが、「モーツァルト時代の街並みはすでにウィーンにはなく、プラハにある」と語っており、そのためほとんどの撮影はプラハで行われている。

25年の間に人々と社会は大きく変貌した。誰もが笑顔で迎えてくれ、英語が通じる。話しかけられることも多かった。観光客は町に溢れ、商店は活気に満ちている。しかし、本当に幸いなことにプラハの中心部は昔の記憶とほとんど変わっていなかった。おそらくはモーツァルトが歩いていたころと比べても大きくは変わっていないのだろう。ユネスコ世界遺産にも指定されて、この町並みが保護され良くない方向に変貌しないことを祈るばかりだ。

そしてもちろんもうひとつの目的はドヴォルザーク、幸運にもわずか3泊の滞在の間に、ブロムシュテット指揮のチェコフィルがドヴォルザーク交響曲第8番とブラームス交響曲第1番を演奏する、という願ってもないコンサートがある。チケットは昼過ぎにホールのカッセまで行って、少し並んで手に入れることができた。正面の前から3列目で、指揮者の動きを完全に捉えることができる席だ。なお、この年の秋、このコンビは日本演奏旅行でこの日と同じ曲を演奏しているが、チケットの値段は5〜10倍である。ドヴォルザークの8番は3日後にウィーンで演奏する曲でもあり、その幸運に感謝!

冒頭のチェロの深い響きを聴いたとたん、体が痺れる思いがした。弦の美しさは定評があるオケであるが、ブロムシュテットの指揮のためか金管、打楽器も鳴らすこと鳴らすこと!ドヴォルザークホール(写真1&2)1895年完成、翌年ドヴォルザーク自身がチェコフィルを指揮し、彼の名が冠された。ムジークフェラインザールは1870年の完成で、ホールのサイズも音響も比較的近いと思った。オケがトゥッテイで最強音を奏でても柔らかく包み込むような響きになる。低音の響きも豊かで申し分ない。

プラハには「プラハの春」のオープニングが行われる「アール・ヌーヴォー建築の精華」スメタナホール(写真4)、国民劇場(写真5)と国立歌劇場(写真6)の2つの主要オペラ会場がある。チェコフィルの翌日には国立歌劇場で「カルメン」を見ることができた。

4日の滞在を終えてウィーンに移動する。列車の名前は「シューベルト号」。最近のドイツのICEやフランスのTGVなど、早いのはいいが旅する風情がなくなってきて寂しい思いをすることが多い。この列車は良き時代のヨーロッパの鉄道旅行の香りがした。

旅行の満足度
4.5
観光
4.5
ホテル
4.5
グルメ
4.5
ショッピング
4.0
交通
4.0
同行者
家族旅行
一人あたり費用
10万円 - 15万円
交通手段
鉄道 観光バス タクシー 飛行機
航空会社
ブリティッシュエアウェイズ
旅行の手配内容
個別手配

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  • ドヴォルザークの像とドヴォルザークホール

    ドヴォルザークの像とドヴォルザークホール

  • ドヴォルザークホールの内部

    ドヴォルザークホールの内部

  • ドヴォルザーク像と筆者

    ドヴォルザーク像と筆者

  • 「プラハの春」音楽祭会場の市民会館スメタナホール

    「プラハの春」音楽祭会場の市民会館スメタナホール

  • 国民劇場とトラム

    国民劇場とトラム

  • 国立歌劇場

    国立歌劇場

  • カレル橋の賑わい

    カレル橋の賑わい

  • 塔の町プラハ

    イチオシ

    塔の町プラハ

  • 塔の町プラハ

    塔の町プラハ

  • 塔の町プラハ

    塔の町プラハ

  • プラハ城内の聖ヴィート大聖堂

    プラハ城内の聖ヴィート大聖堂

  • 聖ヴィート大聖堂の内部

    聖ヴィート大聖堂の内部

  • 聖ヴィート大聖堂のステンドグラス

    聖ヴィート大聖堂のステンドグラス

  • からくり時計を見る人々

    からくり時計を見る人々

  • からくり時計

    からくり時計

  • 国立博物館

    国立博物館

  • フランツ・カフカのカフェ

    フランツ・カフカのカフェ

  • ウィーン行きの国際列車「シューベルト号」

    ウィーン行きの国際列車「シューベルト号」

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