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<br />1962年3月12日(月)<br /><br />案内のフランス国鉄係長さんは、話が好きらしく、退屈しない。<br /><br />「フランスの小説では何が好きか?」<br /><br />と訊かれたので、ロマン・ロランの『チボー家の人びと』と、ピエール・ロティ(ロチ)の『アイスランドの漁夫』を挙げたら、たまたま彼の故郷が『アイスランドの漁夫』の舞台であるパンポルに近い、プルパラネックとのことで、驚く。<br /><br /><br />ピエール・ロティ(ロチ)(1850-1923)は、本名ルイ・マリー・ジュリアン・ヴィオー。<br /><br />大西洋に面する港、ラ・ロッシェルに近い、ロッシュフォールに生まれ、ブレストの海軍士官学校を卒業して海軍士官となり、日本にも1885年(明治18年)と1900-1901年(明治33年-34年)の二度にわたりやって来た。<br /><br />1885年の来日時には、鹿鳴館のダンスパーティーにも参加し、短編集「秋の日本」にその様子を描いている。<br /><br />その他にも日本を題材にした小説「お菊さん」「お梅が三度目の春」を遺しているが、日本人に対する評価は低かったと評される。<br /><br /><br />そのロティの小説「氷島(アイスランド)の漁夫」は、彼の小説の中でも最高と評価されているが、私は岩波文庫の翻訳を呼んですっかりとりこになり、フランス語の原書を取り寄せて夢中になって読んだ。<br /><br />今でも目を瞑れば、ブルターニュの、ハリエニシダ(フランス語では「ジョンク」)の花が真っ黄色に咲く、海の見える丘が、まぶたに浮かんでくる。<br /><br /><br />ここブルターニュ地方の貧しい小村プルパラネックは、19世紀末以来、男たちが毎年遠洋漁業船群を組んで、荒天のアイスランドに出かけるようになった。<br /><br />しかし魚場の豊かさに比例して危険も大きく、漁期が終わっても帰らない男が少なくない。<br /><br />その男たちの名前が、教会の壁にぎっしり並んでいる。<br /><br /><br />今年も帰還の季節が近づき、危険な海アイスランドに夫を送り出している妻たちが、そろそろ戻ってくる夫を待ち、海の見える丘に登って毎日編み物をしながら、ひねもす海を眺めている。<br /><br />やがて一人、二人と戻って来て、その都度丘に残る人数は僅かになる。<br /><br />そしてついにいつまで待っても戻って来ない船が、確定する。<br /><br />私はこの本を読んだ時の悲しさを、今も忘れることが出来ない。<br /><br /><br />今年の復活祭に、プルパラネックに来ないかと誘われ、私は二つ返事で訪問を約束する。<br /><br /><br />ソフィーさんのマイページ」(訪問54カ国、文章1,590件 写真6,770枚)<br />http://4travel.jp/traveler/katase/<br /><br />スイスの写真が美しい「片瀬貴文さんのマイページ」(文章625件 写真2,400枚)<br />http://4travel.jp/traveler/takafumi/<br /><br />ブログの作成日順に並んでいる「片瀬貴文の記録」(文章1,650件)<br />http://blog.alc.co.jp/d/2001114<br /><br />(片瀬貴文)<br />

1962年のパリだより【827】「氷島(アイスランド)の漁夫」の村を訪問する約束をする

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1962/03/12 - 1962/03/12

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ソフィ

ソフィさん


1962年3月12日(月)

案内のフランス国鉄係長さんは、話が好きらしく、退屈しない。

「フランスの小説では何が好きか?」

と訊かれたので、ロマン・ロランの『チボー家の人びと』と、ピエール・ロティ(ロチ)の『アイスランドの漁夫』を挙げたら、たまたま彼の故郷が『アイスランドの漁夫』の舞台であるパンポルに近い、プルパラネックとのことで、驚く。


ピエール・ロティ(ロチ)(1850-1923)は、本名ルイ・マリー・ジュリアン・ヴィオー。

大西洋に面する港、ラ・ロッシェルに近い、ロッシュフォールに生まれ、ブレストの海軍士官学校を卒業して海軍士官となり、日本にも1885年(明治18年)と1900-1901年(明治33年-34年)の二度にわたりやって来た。

1885年の来日時には、鹿鳴館のダンスパーティーにも参加し、短編集「秋の日本」にその様子を描いている。

その他にも日本を題材にした小説「お菊さん」「お梅が三度目の春」を遺しているが、日本人に対する評価は低かったと評される。


そのロティの小説「氷島(アイスランド)の漁夫」は、彼の小説の中でも最高と評価されているが、私は岩波文庫の翻訳を呼んですっかりとりこになり、フランス語の原書を取り寄せて夢中になって読んだ。

今でも目を瞑れば、ブルターニュの、ハリエニシダ(フランス語では「ジョンク」)の花が真っ黄色に咲く、海の見える丘が、まぶたに浮かんでくる。


ここブルターニュ地方の貧しい小村プルパラネックは、19世紀末以来、男たちが毎年遠洋漁業船群を組んで、荒天のアイスランドに出かけるようになった。

しかし魚場の豊かさに比例して危険も大きく、漁期が終わっても帰らない男が少なくない。

その男たちの名前が、教会の壁にぎっしり並んでいる。


今年も帰還の季節が近づき、危険な海アイスランドに夫を送り出している妻たちが、そろそろ戻ってくる夫を待ち、海の見える丘に登って毎日編み物をしながら、ひねもす海を眺めている。

やがて一人、二人と戻って来て、その都度丘に残る人数は僅かになる。

そしてついにいつまで待っても戻って来ない船が、確定する。

私はこの本を読んだ時の悲しさを、今も忘れることが出来ない。


今年の復活祭に、プルパラネックに来ないかと誘われ、私は二つ返事で訪問を約束する。


ソフィーさんのマイページ」(訪問54カ国、文章1,590件 写真6,770枚)
http://4travel.jp/traveler/katase/

スイスの写真が美しい「片瀬貴文さんのマイページ」(文章625件 写真2,400枚)
http://4travel.jp/traveler/takafumi/

ブログの作成日順に並んでいる「片瀬貴文の記録」(文章1,650件)
http://blog.alc.co.jp/d/2001114

(片瀬貴文)

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