1997/11/19 - 1997/11/20
493位(同エリア626件中)
北風さん
既にこの湖に突入してから4時間ぐらいは経っていた。
ドライバーが前を指差して叫ぶ。
「ほら、お前のホテルが見えてきたぞ!」
別にこんな塩しかない所にホテルなぞ所有しているはずも無いが、実はこのツアーに参加するに当たり、どうしてもこのホテルに泊まりたかった。
そこで、俺だけここで一泊して次の日に次のツアーに拾ってもらえる様交渉していた。
ウユニのパンフレットで見た、世界で唯一の塩でできたホテルだ。
どんな所だろう?
考えただけで胸はわくわく、口の中は塩辛くなってきた。
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「ゴガガガガァー」と、分解寸前間でエンジンに仕事をさせていたドライバーが、シートに片手を乗せて後部座席を振り返った。
「ほら、お前のホテルが見えてきたぞ!あそこは塩でできているから生き埋めになるかもよ。夜は危ないぜ!アッハッハッ!」
時速100kmで突っ走る車のドライバーが、片手ハンドルでよそ見運転している現在より危険な事はないと思うのだが・・・ -
「ザザザザァッ!」と白い塩の土煙?を従えて、ドライバーがブレーキを蹴っ飛ばした。
滑る滑る!
ランクルの車体がイヤイヤをするようにボディをよじりながら少しずつスピンに入ろうとする中、ドライバーの両腕がハンドルの上でめまぐるしく踊った!
多分、車は停車しようとしているのだと思う。 -
到着した!
無事に!
五体満足で!
ウユニのパンフレットで見た、世界で唯一の塩でできたホテルだ! -
「サク、サク、サク」とホテルに近づく。
おおっ!
玄関が!
ホテルの壁はやはり岩塩ブロックだ。
地層の縞々が天然のおしゃれな外装になっている。 -
ブロックを積み上げた間の隙間には、塩がすり込んであった。
セメントがわり? -
どうやら、このホテル建て増し中らしい。
ホテルの横には新館の土台ができていた。 -
きれいに四角く切り取ったブロックを積み上げて、これまた水で溶いた塩水でくっつけている。
なんか、すごく簡単な造りだ。
大丈夫なのか?
今夜天井が落ちてくることは無いのか? -
ホテルの前にさりげなく置かれていた塩でできた椅子。
座り心地はともかく、このまま現代美術館に飾られてもおかしくないほど、カッコいい。
ツアー客の白人のおばちゃんが、腰かけたのだが・・
おばちゃん、自分のお尻が必要とする面積の3分の一しかない座面に、座ろうとするのは無謀じゃないのか? -
岩塩ブロックでできたホテルの中は、
岩塩ブロックでできた、リビング、キッチン、レストラン、があった。
全て塩! -
-
なんと、テーブルまで塩でできていた。
-
旅日記
『塩のホテルにて』
キッチンの窓の外では、5角形の亀甲模様を赤く染めてウユニに日が沈んでいく。
夕食は簡単なチキンのグリルだった。
周りの環境を考えてか、かなりの薄味。
住み込みで働いている少女に、テーブル・ソルトを頼むと、いきなり柱をスプーンで削りだした。
・・確かに、塩加減なぞその場でどうにでもなる環境だ。 -
ホテルの外でがなりたてる発電機をバックに、今夜の寝床のドアを開けた。
これは・・
おしゃれな部屋と言えばいいのだろうか?
まるでイスラム教の寺院張りにドーム状に組まれた天井が、妙に日本のラブ・ホテルを連想させてくれる。
さすがに、ベッド本体は塩じゃなかったらしい。
(ここまで塩だと、本当に眠っている間に干物になってしまう)
発電機の停止と共に、ウユニの夜は静寂が支配する。
急激に下がった気温に肩までしっかりと毛布に包まった俺の耳には、サラサラと微かな音しか聞こえてこない。
「サラ、サラ?」
懐中電灯で照らしたベッドの上には、既に薄く塩が降り積もっていた。
・・天井が崩れ落ちそうな不安の中、俺は今、必死に楽しい夢を見ようとしている。
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