1997/11/19 - 1997/11/19
283位(同エリア626件中)
北風さん
ボリビア入国最大の目的は、このツアーに参加する事だった。
行き当たりばったりの俺の旅にも、南下するルートは無限大にあるわけじゃない。
当然、国と国の間にある国境を通り、正式な入国手続きを踏まねばならないし、それには道路が通っていなければならない。
ボリビアからチリへのルートの中で一番おもしろそうなルートがこのツアーだった。
標高4000mに広がる広大な塩湖を横断し、3泊4日でチリへ抜けるこのツアーだ。
雨季は目の前、このツアーの締め切りももうすぐ、俺はウユニへ着くなり急いでツアー会社のドアを叩いた。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- レンタカー
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旅日記
『ウユニ・ツアー 初日』
早朝、ハードな移動の連続でヘロヘロになった身体を引きずりながら、ウユニの街中の旅行会社の前に向かった。
さすが、この物価の安い国で大枚US$70もするツアー。
ツアー・バスは日本の誇るランドクルーザーだった!
これなら、どんな悪路でも大丈夫そう。
かなり古そうには見えるが・・
さすが、何事もいいかげんな国だけあって、この中になんと乗客9人!
このばかでかい白人の間に埋もれながら3日間も過ごすのか? -
南米人には珍しくチャッ、チャッとドライバーが荷物を載せて、ギュウギュウにツーリストも乗せて、ランクルのアクセルをベタ踏み!
ディーゼルだから・・というだけでは説明がつかない様な騒がしいメカノイズと共に、あっという間に街が消えた!
バックミラーに僅かな文明の名残りが薄い煙となって遠退いて行く。
周りを見渡せば、最近見慣れた標高4000mの草木も生存が厳しい荒野が再び広がっていた。 -
あちこちに塩の山が出現!
さすが塩湖周辺だけあって塩は腐るほど採れるらしい。
ドライバーが
「このまま湖の周りを少し回ってから湖に突入する!」と、車の振動で妙にビブラートのきいた低音で怒鳴り散らす。
・・・突入?なんかシリアスな言葉に聞こえるが?
誰かが地平線を指差して叫んだ。
「あれは、蜃気楼?」 -
「どこかにつかまれ!」
ドライバーが叫ぶやいなや、車のフロントガラスに映っていた景色が空の青一色なった。
(・・・車が跳んだ?)
次の瞬間、今度は激しい振動と共に白一色に変わる。
「エッ」と思うほど突然目の前に白い地平線が現れた。
どうやら、湖に突入したらしい。
これが、ウユニ塩湖なのか?
なんだ?
この大きさは? -
「とりあえず、降ろしてくれ!」
乗客全員が合唱した!
すごいぞ!この湖!
このスケールは一体何なんだ!
誰しもこんな景色が突然現れたら、その足で確かめずにいられない。 -
一歩踏み出すと、足元からは「サク、サク」と音がした。
まるで雪原そのものだ。
ものすごい乱反射に、このツアーの必需品にサングラスがあげられている事が納得できる。
乗ってきた車と絶え間ないシャッター音以外はどこにも文明の匂いがしない。
この異様な風景、SFの映画の舞台になってもおかしくないぐらいの非現実感があった。 -
どうやらこの場所は、観光ルートのお約束の場所らしい。
白一面の世界の中、茶色い染みが浮かんでいるそばには、ちょこんと塩で作ったテーブルが置かれていた。 -
「ここの塩は厚さ50cmはありますが、あの茶色い所は塩の割れ目です。危険ですから近寄らないで下さい」
と、ドライバーはのたまうが・・・
その割れ目のそばに、わざわざテーブルまで用意しているのはどういう事だろう?
とにかく、この湖は完全に干上がっているわけではないらしい。
つまり、俺達は2トンを超える車とともに、厚さ50cmの塩の塊の上に浮いているわけか?
ここで塩が割れたら立派な干物になれるだろうなぁ。 -
かれこれ1時間は走っただろうか?
白い平原のど真ん中に、ポツンとチャリンコがとまっていた。
周囲の風景があまりにも現実離れしている中、おもいっきり生活感をかもし出している。 -
どうやら、ここが塩の採掘場らしい。
あちこちに積み上げられた塩の山の彼方に山小屋らしきものが見えてきた。 -
採掘場で唯一、いや、360度見渡す限りただ一つ、白い平原に影を落としていた小屋。
ただし、この小屋、塩のブロックを削りだして積み上げた「塩の小屋」だった! -
ウユニはもうすぐ雨季を迎えるという。
塩の採掘場には、既に浅く水が溜まっていた。 -
突き抜けるような青い空が、塩の山と共に水面に浮かんでいる。
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旅日記
『市内バス?』
日がだいぶ昇ってきた。
白い水平線に人影が浮かぶ。
(一体どこで仕事をしていたんだ、この方々は?)
そして、その背後には・・・ -
バスが来た。
塩の湖に水しぶきを上げて、のっそりとやってくる姿は、まるで貨物船みたいだ。
が、しかし、これは市内バスなのだろうか?
一仕事終えた採掘場の人々がぞろぞろと乗り込んでいくのは、お昼ご飯を食べる為に帰宅するのだろうか?
周りの景色自体が非現実的なこの世界には、まだまだ謎が隠されているらしい。 -
砂漠に風が作る風紋があるように、ウユニの白い平原には奇妙な模様があった。
まるで蛇がのたうつような細い筋が、幾つも交差して延々と続いている。 -
-
そして、この模様、湖の中に行くほど形が整い、きれいな5角形になっていく。
これって、もしかして上空から見ると巨大な亀の甲羅に見えるのでは? -
荷物も人間も飛び跳ねる車内とは裏腹に、窓ガラス越しには白い大地と青い空だけの世界が広がっている。
本当に映像だけだったら、静寂が支配する世界に見えるのだけど・・・
この車にこれだけの人と荷物を載せて、100km巡航は自殺行為では? -
フル・アクセルで爆走する車の速度が落ちた。
フロントガラスの向こうに、何やら三日月型の模様が浮かんでいる。
ふと、ペルーのナスカで観光した「ナスカの地上絵」を思い出した。
あの時も、ゼロ戦並みにかっ飛んでいたセスナは、地上の模様の上で速度を落としていた気がする。
今度は一体、何があるんだろう? -
白一色の大地にグレーのブロックが一列に並んでいた。
・・・このツアー、ドミノ倒しのオプションがついていたっけ?
ん?
このブロックは・・・ -
この三日月模様は、なんと、塩のブロックを並べたものだった。
しかも、ドミノの様に並べられたこのブロック、ご大層に地層まで断面についている。
おまけに、むちゃくちゃ固い!
蹴ったブーツの先がへこむほどに! -
塩でできた小屋の裏には、きれいに切り出された岩塩ブロックが山積みされていた。
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