◎ 奈良の有名な蕎麦屋 「玄」　

2010/02/12 - 2010/02/12

奈良のみならず、全国的に有名な蕎麦屋さんで、日本全国の蕎麦職人さんが勉強のために訪れるほどの、聖地のような店です。

私は１０年以上前からこの店を知っていますが、ここで食事をしたことは２度しかありません。
が、蕎麦の美味しさはしっかりと脳裏に焼き付いており、それがために各地で食べる美味しいと言われる蕎麦が、物足りなく感じてしまうのです。

前回は夜のコースでいただいたのですが、今回はお昼に行ってみました。予約も無しなので、食べられるか心配でしたが、「今日はまだ蕎麦が残っています」とのことで、久々に「玄」の蕎麦をいただくことができました。


◎ 玄

住所　奈良市福智院町２３−２
電話番号　０７４２−２７−６８６８
営業時間　昼　１１：３０〜１３：００
　　　　　夜　１８：００〜１９：００（要予約）
定休日　月曜・日曜

エリア 奈良市(奈良)

玄

店の入口です。
サラッと書いていますが、実はこの店、ここに辿りつくまでが大変で、実に分かりにくい場所にひっそりと門を構えているのです。

私は過去に２度来たことがあるので、うっすらとこんな感じのところ、という記憶が残っており、７年ぶりくらいの来店ですが、すんなり見つかりました。

御案内

お昼は予約で埋まってしまうこともありますが、もし蕎麦が残っていたら、飛び込みでも食べることができます。

夜は完全予約制で、一日２組限定という厳しさ。
どれくらい前から予約できるのか分かりませんが、非常に予約困難な店であることは間違い無いです。

御蕎麦

この時は開店前なので、門前に「玄」とは書いていなくて、ただ「御蕎麦」の看板が掲げられているだけです。

開店時間になったら、「玄」と大きく書かれたのれんがかけられるようです。

蕎麦　玄

建物の入口に「玄」の看板があります。

建物は造り酒屋「春鹿」の別邸として大正から昭和に建てられた数寄屋造りの平屋。

以前来た時と全然変わらない佇まい。
いや、むしろ建物など、ところどころに損傷が目立ちます。

店内

開店１０分前から待っていて、丁度１１時半になったら入店できました。
一番乗りで、私達だけです。
この後、徐々に他のお客さんも来店し、１２時過ぎにはほぼ満席になりました。

店内

どこでも好きなところに座って下さい、ということだったので、一番奥のテーブルに並んで座りました。

写真は窓際に置かれた床飾り。

献立

メニューはこれだけ。

夜はメニューすらなく、「蕎麦遊膳」というコース料理のみです。

テーブル

右に映ってるのは、岩塩です。

そば茶

店主の島崎宏之さんは、蕎麦好きが高じてサラリーマンから蕎麦屋へ転身した人。そして蕎麦職人としては異彩を放つ有名人で、なんとオーボエ奏者でもあるそうです。

さらに焼き物にも凝っているそうで、もしかしたらこの湯飲みも、店主の手によるものかもしれません。

せいろそば　１０５０円

何といってもまずは玄の蕎麦。
こちらの蕎麦は、つなぎなしの石臼挽き。十割蕎麦というやつです。

せいろそばは、丸抜き（殻、甘皮をとってからひいたもの）で、見た目には白っぽいです。
いなかそばは、ひきぐるみ(殻ごとひいたもの）で、黒っぽいのが特徴。
ネギなどの薬味は特になく、ワサビが少しあるだけ。
岩塩で食べても美味しいそうです。

御主人いわく「石臼で手でゆっくりと挽きますので香りが逃げないんです」
「そばの特性を引き出すには時間が必要。量とスピードを求めない」。

朝４時から臼を挽き始めるそうですが、手でゆっくり挽くため、どうしても蕎麦の量が限られてしまいます。それでお昼などは、蕎麦が無くなり次第終了なわけです。

せいろそば　１０５０円

この蕎麦、出てくるまでどういう状態だったのでしょうか。
とっても冷たく冷えており、まるで冷蔵庫に入っていたかのよう。そして箸で摘まむと、ビリビリと剥がれるような粘着感。
麺の細さにも驚かされます。

さて、食べようと思って口元に持っていくと、ふわっと漂う蕎麦の香り。食べると一気に口の中に広がる香ばしさ。

美味しい！

こんなに細い麺なのに、コシもあって、なにより香りが良い。麺が冷えていたのは、香りが逃げないように何らかの仕掛けを施してあったのか。

岩塩を少し上に落として食べると、蕎麦の甘みがぐっと引き立ち、これまた出汁とは違った味わい。

そして、のど越しが抜群に良い。
幾らでも食べられてしまう。
つるつるつるつる・・・。
あぁっ・・もう一皿食べてしまった。
足りない、もっと食べたい！

そう、一皿では到底足りないんです。
女性でも普通に２皿＋α、男性なら３皿＋αくらい食べないと、お腹は満足しないでしょう。

お昼のランチとしては、２０００〜３０００円＋α必要ということになり、ＣＰが悪いと言われ続けています。

いなかそば　１０５０円

薬味がワサビではなく、大根おろしです。


◎ 蕎麦の食べ方のおさらい

① まずは何もつけずに一口
② ワサビを少しだけつけて一口（ワサビを出汁に溶かすのは論外）
③ 岩塩を適量降りかけて一口
④ ワサビをつけ出汁につけて一口
⑤ あとは好きな食べ方で。

いなかそば　１０５０円

いなかそばは、殻ごとひいてあるので、舌触りにややザラッとした感触が残ります。この殻が香ばしさをＵＰさせているようで、せいろそばを上回る風味を誇ると思います。

このいなかそばは、大根おろしで食べるようになっているのですが、私としてはワサビで食べたほうが好きですね〜。大根おろしでは、ちょっとパンチ不足だという気がして・・。

というわけで、この後お替わりするのですが、２人ともせいろそばにしました。

そば豆腐　うにのせ　５２５円

うにの上にはワサビ、横に黒っぽい木の実みたいなものが乗っていますが、何なのか忘れました。

そば豆腐　うにのせ　５２５円

そば豆腐というので、豆腐のようなまったりしたものを想像していたのですが、食べてみてビックリ。
ほとんど水羊羹のような食感なんですよ。

なかなか面白い、ぷりっぷりの食感で、豆腐ではないみたい。でも、食べるとフワッと蕎麦の香りがしてくるんですよ〜。

蕎麦湯

こんな蕎麦湯、今までに見たことが無い。
白く濁ったこの蕎麦湯は、クリームのように濃厚でトロっとしているのです。

実はこの蕎麦湯、蕎麦を茹でた時の残り湯ではなく、蕎麦湯という名の食べ物（飲み物）で、出汁と一緒に飲為に作った料理なのだそうです。

蕎麦湯

出汁に注ぐとこんな感じになります。
注いだ後、少しかき混ぜて飲むのですが、これがなかなか美味しい。
蕎麦湯＋岩塩でいただくのも美味しいとか（私達は試していません）。

やや薄味の出汁と蕎麦湯の相性が良いのでしょう。
２杯もお代わりしてしまいました。

この蕎麦湯、例えば病気の時に、おかゆの代わりに飲んだらいいかも、なんて話していました。
よく分からないけど、この蕎麦湯、栄養もありそうなので（*^_^*）

そば団子　４２０円

そば団子　４２０円

こしあんの入った団子で、あんこはとってもアッサリしています。しかも、このあんこを包んでいる衣が、これまた水羊羹のような食感なのです。
なので、団子といっても重い感じは全くせず、すっきり爽やかに食べられました。

ちびくま

「玄」の蕎麦は、今までに私が食べたことのある蕎麦の中でも最高峰の逸品です。
この思いは、恐らくここでこの蕎麦を食べたほぼ全ての人が抱く感想ではないでしょうか。

問題は、この最高峰の蕎麦一皿の値段、１０５０円というのを高いとするか、妥当だとするのかに尽きると思います。

確かに、街中で１０５０円の蕎麦を注文すれば、お腹が一杯になるくらいの量で、胃は十分に満足するでしょう。

玄の蕎麦は、一皿がとても量が少ないので、２〜３皿食べないと、お腹が膨れません。２０００〜３０００円かかるということですね。
これは、高いのか？妥当なのか？

私としては妥当だとしたい。
この一皿を作るのに、どれだけ手間暇をかけているのか。素材の吟味・選別から、蕎麦の作成まで、いったいどれだけの特殊技能・技術が必要なのか。

今までに食べたことのある蕎麦の最高点が９０点だったとします。この店の蕎麦はそれを上回り９５点だとすると、その差はたったの５点。
９０点の蕎麦が１０００円で、９５点の蕎麦が２０００円だったら、どちらを食べるかということです。

このように数字にしてしまうと、わずかな差であるように錯覚しますが、内に秘められた技術の差は、拭いようがないほど大きいものではないでしょうか。

だから、日本全国から蕎麦職人が集まって来て、聖地のようになっているのだと思います。


玄の蕎麦が、高かろうが安かろうがまぁいいです。
一度食べたら、何年経っても絶対に忘れ去ることができない、記憶に残る蕎麦だということだけは、間違いないです。
そして、一度食べてしまったら、事あるごとに記憶の底からチクチクと脳裏に絡んでくることでしょう。

◎ おしまい

この旅行記へのコメント （4）

• potteristさん 2010/02/20 19:51:43

  おいしいですよね

  みにくまさん、はじめまして。
  いつも楽しく拝見しています。
  
  「玄」、私も行ったことあります〜。ほんとに美味しいですよね。記事を拝見して、また行ってみたくなりました。我が家は二人で蕎麦２枚とそばがき食べました。そばがきもふわっとしてて美味しかったです。お酒ともすごく合いました。
  
  確かに、美味しい蕎麦ってお値段張りますよね。
  私はケーキやお酒と同じ感覚で食べてます。お腹を満たすものというよりは嗜好品に近い感じです。嗜好品には、多少高くても丁寧に手間をかけて作られたものを頂く幸せを求めたいので、私も玄のお蕎麦にはこのお値段払っちゃいます。
  
  また訪問させていただきます。
  よろしくお願い致します。
  
  potterist

  みにくまさん からの返信 2010/02/20 21:00:12

  RE: おいしいですよね

  
  potteristさん、はじめまして〜。
  
  いつも訪問いただき、ありがとうございます<(_ _)>
  
  玄には、数年ぶりに行きました〜。
  相変わらず美味しいんですよね〜。
  
  後日、近所の美味しい蕎麦屋さんに行って食べてみたのですが、やっぱり全然違うことに気付きました。
  
  そうそう、玄のそばがきって、とても評判がいいんですよね。
  私も以前食べたことがあったのですが、すっかり忘れていて、今回食べそびれてしまいました。
  次回行く時には、絶対そばがき忘れないようにします。
  
  確かに、この蕎麦は嗜好品と言った方がいいのかもしれませんね。
  単なるお腹を満たすだけの蕎麦だと思っている人には、値段が高く感じるのでしょう。
  
  これでしばらくすると、また玄の蕎麦が食べたくなるんですよ。
  近所にある蕎麦屋で代用できる程度のクオリティなら、わざわざ思い出して食べたくなったりはしませんね。
  
  
  では〜(^O^)／
  

• zzr-cさん 2010/02/17 11:08:36

  お蕎麦好きです

  みにくまさん　こんにちは
  
  奈良の有名な蕎麦屋見せていただきました！
  
  美味しそうですねぇ〜
  
  「玄」のお蕎麦が１０５０円なら高いとは思いませんよ〜
  
  zzr-cも蕎麦が好きで、色々食べに行ってますよ〜
  
  zzr-cお勧めは岐阜の荘川にある蕎麦屋さんで
  「蕎麦正」というお店です。
  
  ここも「玄」同様塩でも食べれます。
  ワサビは自分で使う分だけその場ですり下ろすんです。
  
  zzr-cはいつも１本すり下ろして、泣いてます。
  あぁ〜蕎麦の話をしてたら食べたくなってきました( ..)φ
  
  次の休みにでも行ってきます〜
  
  　　　　　　　　　　　　　　zzr-c

  みにくまさん からの返信 2010/02/17 13:10:44

  RE: お蕎麦好きです

  
  zzr-cさん、こんにちは〜。
  
  奈良の蕎麦屋「玄」さん、ご存知でしたか〜。
  ここは蕎麦職人さんはもとより、日本全国の蕎麦好きの方たちの間ではかなりの有名店なので、やっぱり一度は行って食べてみたいお店ですよね。
  
  「玄」のお蕎麦は一皿１０５０円ですが、本当に量が少ないのでお替りしないとお腹がおさまりません。それで、CPが悪いと言われ続けているわけですが、私が思うに、価値が分かる人にとっては１０５０円でも高いとは思わないだろうし、蕎麦をお腹を膨らますだけの食事だと思ってる人にとっては、とても高く感じるのでしょう。
  
  今はあまり感じませんが、もう少し経って、何件かの別の蕎麦屋で食事をしているうちに、ふっと思うのです”玄の蕎麦をもう一度食べたい”と・・・。
  
  
  そういえば、岐阜って蕎麦屋の名店が多いみたいですねー。
  私は行ったことが無くて、聞いただけですが、蕎麦通の中で噂になるような店もあるようです。
  岐阜って蕎麦の産地だったかな？
  岐阜出身なのに、全然知らないです・・。
  
  
  私は昨日も蕎麦食べました。
  近所では一番美味しいと思っている蕎麦屋ですが、やっぱり玄と比べてしまうと、全然違うな〜と思い知らされました。
  
  
  では〜！