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パリのオーステルリッツ駅から、夜行列車を使い、マドリッドを経由してトレドまで行く。<br />実は、この列車に乗りたいばかりに、一日かけてパリに戻った。<br />名前もズバリ「トレインホテル フランシスコ・デ・ゴヤ」という。<br />今回の旅行で、ヒコーキ以外で、唯一、予約している乗り物だ。<br /><br />が、配偶者は、相変わらずぶつぶつ言っている。<br />何がかなしゅうて夜行列車なんぞに、と思っているらしい。<br />彼女のアタマの中は、いまだに「夜行列車=ああ上野駅的なもの」に、なっているらしい。<br /><br />値段はしっかり高いくせに、狭いし、揺れるし、時間もかかる。<br />飛行機の移動だったら、もっと早くて安い。バスだって安い。<br />まあまあ、確かにそうだけどさ、と鯨は思う。<br />夜行寝台・国際列車なんて、なんとなーく素敵じゃないですか。<br />一度、乗ってみたいじゃないですか。

パリからトレド・国際寝台列車でスペインへ

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2007/05/09 - 2007/05/10

214位(同エリア846件中)

鯨の味噌汁

鯨の味噌汁さん

パリのオーステルリッツ駅から、夜行列車を使い、マドリッドを経由してトレドまで行く。
実は、この列車に乗りたいばかりに、一日かけてパリに戻った。
名前もズバリ「トレインホテル フランシスコ・デ・ゴヤ」という。
今回の旅行で、ヒコーキ以外で、唯一、予約している乗り物だ。

が、配偶者は、相変わらずぶつぶつ言っている。
何がかなしゅうて夜行列車なんぞに、と思っているらしい。
彼女のアタマの中は、いまだに「夜行列車=ああ上野駅的なもの」に、なっているらしい。

値段はしっかり高いくせに、狭いし、揺れるし、時間もかかる。
飛行機の移動だったら、もっと早くて安い。バスだって安い。
まあまあ、確かにそうだけどさ、と鯨は思う。
夜行寝台・国際列車なんて、なんとなーく素敵じゃないですか。
一度、乗ってみたいじゃないですか。

同行者
カップル・夫婦
交通手段
鉄道
航空会社
ANA
  • ホームに入ってきた列車を、歩いてチェックする。<br />すると、ホームのはしっこで、で、見事なワシッ鼻の、怖い顔をした白髪のおじさんと目があった。<br />しばらくして、乗車号のデッキに戻ったら、そのおじさんが、入口でチケットをチェックしていた。<br />つまり、そのおじさんは、鯨の車両を担当する車掌さんなのだった。<br />何輌かに一人ずつ、担当として、車掌さんかつくらしい。<br />ほかの車両には、かわいらしい女性車掌も見かけたのに、残念極まりない。<br /><br />おじさんは、入口でチケットをチェックし、部屋のキーをくれた。<br />そして、部屋まで付いてくると、ざざっとスペイン語で、説明をしてくれるのだった。<br /><br />「シーツはここ。そこはトイレだ。フロじゃないからな、ジャポネ、間違って入るんじゃないぜ。<br />シャワーはこれ。水は大切に使ってくれ。<br />夕メシは7時でいいな。<br />おっと、パスポートをあずからなくちゃな」<br /><br />おおむね、そんなことを言ったらしい。<br />で、パスポートは、取り上げられてしまった。<br /><br />夜(といってもまだ明るいのだが)、食堂車に行くと、料理の中身は、すっかりスペインになっていた。<br />いや、正確に言うと、スペイン料理なのかどうかは分からない。<br />ただ、メニューがスペイン語で、ウエイターもスぺイン人だった。<br />ふたりとも黒髪で、陽気で、よく動いて、気持がいい。<br />まだフランス国内を走っているのだが、もう列車のに中はスペインなのである。<br /><br />夜中に目が覚めると、国境の駅だった。<br />パリを出たとき、東にいたお月さまが、ちょうど真上にきていた。<br />お月さんがきれいだぜ、と下の段に寝ている配偶者に言ったが、返事の代わりに寝息だけが帰ってきた。<br /><br />

    ホームに入ってきた列車を、歩いてチェックする。
    すると、ホームのはしっこで、で、見事なワシッ鼻の、怖い顔をした白髪のおじさんと目があった。
    しばらくして、乗車号のデッキに戻ったら、そのおじさんが、入口でチケットをチェックしていた。
    つまり、そのおじさんは、鯨の車両を担当する車掌さんなのだった。
    何輌かに一人ずつ、担当として、車掌さんかつくらしい。
    ほかの車両には、かわいらしい女性車掌も見かけたのに、残念極まりない。

    おじさんは、入口でチケットをチェックし、部屋のキーをくれた。
    そして、部屋まで付いてくると、ざざっとスペイン語で、説明をしてくれるのだった。

    「シーツはここ。そこはトイレだ。フロじゃないからな、ジャポネ、間違って入るんじゃないぜ。
    シャワーはこれ。水は大切に使ってくれ。
    夕メシは7時でいいな。
    おっと、パスポートをあずからなくちゃな」

    おおむね、そんなことを言ったらしい。
    で、パスポートは、取り上げられてしまった。

    夜(といってもまだ明るいのだが)、食堂車に行くと、料理の中身は、すっかりスペインになっていた。
    いや、正確に言うと、スペイン料理なのかどうかは分からない。
    ただ、メニューがスペイン語で、ウエイターもスぺイン人だった。
    ふたりとも黒髪で、陽気で、よく動いて、気持がいい。
    まだフランス国内を走っているのだが、もう列車のに中はスペインなのである。

    夜中に目が覚めると、国境の駅だった。
    パリを出たとき、東にいたお月さまが、ちょうど真上にきていた。
    お月さんがきれいだぜ、と下の段に寝ている配偶者に言ったが、返事の代わりに寝息だけが帰ってきた。

  • さて、スペインである。<br />この国には、ガイドブックなし、というハンデをしょいつつ、トツゲキしなくてはいけない。<br />(わしも配偶者も、買い忘れたのネ)<br />個人旅行なのに、いかがなものか、と思う。<br />ガイドも、添乗員も、知りあいもいないのである。<br /><br />コトバもわからん。<br />ちなみに、ワシが知っているスペイン語は、「フラメンコ」「パエーリャ」くらいである。<br />この二つの言葉で、スペイン観光をするには、じゃっかん問題があるような気がする。<br /><br />もっとも、救いはある。<br />「ヨーロッパ鉄道の旅」という小冊子は持ってきたのである。<br />つまり、主な駅の構内図はある。<br />したがって、列車と駅だけをひたすら行くのであれば、これ一冊あれば大丈夫! なのである。<br /><br />が、しかし、ヨーロッパくんだりまで来て「列車と駅だけ見て帰ってきましたワッハッハ」ってのは、いけてない。<br />鯨は、ほんのりと鉄道オタクなのであるが、ディープな「鉄ちゃん」ではない。<br />「鉄道の旅」であるからして、町の地図、ホテルなどの情報は掲載されていない。<br />これから行く、トレドとグラナダの町歩きの情報は、何もない。<br />ないものはしかたない、と思うことにする。<br /><br />なんてったって、もうスペインについてしまったのだ。<br />とりあえず、<br />「線路は続くよどこまでも」<br />など呟き、トレドまで行ってみることにする。<br /><br />マドリのチャルマンティン駅で「フランシス・デ・ゴヤ」とはお別れだ。<br />このトレインホテルは、そのまま、パリまで戻っていくのだ。<br />鯨は、たった一晩であっても「世話になった」と、感謝のキモチでいっぱいだった。<br />その感謝のキモチは、例えて言えば。<br />少年が、長いことあこがれていた年上のお姉さんにキスしてもらったようなものかもしれない。<br />いやいや、キスだけでなく、同衾させていただいたようなものかもしれない。<br />その夢の一夜が、終わったのである。<br />(・・・ここ、五木寛之みたいだナ)<br /><br />学生のころには、とてもじゃないが、こんな列車、乗れなかった。高嶺の花、であった。<br />当時、ユーレイル・ユースパスを駆使して、各駅停車の夜行に乗ったのは、宿代を浮かしたいからだった。<br />毎日毎日、残りのオカネの勘定ばかりしていたのである。<br />「各駅停車・世界の旅」は旅情溢れる世界だが。<br />「各駅停車・夜行の旅」は、ドロボー対策に、きんちゃく袋を抱えて、エビみたいに体を曲げて寝ていたのだった。<br /><br />・・・などと鯨が感慨にふけっている間。<br />配偶者は、この寝台特急のシャワー室にあった、かわいらしいトイレタリー・キットを、せっせとカバンに詰めていた。<br />お持ち帰り可、とゆわれると、この世代の女性は、なんでも持ってってしまうのである。<br />きっと彼女は<br />「ヘルスメーター・お持ち帰り可」<br />とか、<br />「フライパン・お持ち帰り可」<br />とか、<br />「イースター島モアイ像・お持ち帰り可」<br />とか、ゆわれても、がんばってカバンに詰め込んでしまいそうな気がする。<br /><br />ちなみに、旅の後半、配偶者のカバンの中は、石鹸やらシャンプーやらで一杯になった。<br />でもって彼女は、<br />「次の旅行で使えるでしょ」<br />と、ゼッタイやんないことをシャーシャーというのであった。<br /><br />さて、マドリで乗り換えて、特急「タルゴ」で30分ほど走ると、トレドである。<br />「タルゴ」は、スペインが誇る最新式の特急であって、JR東日本の「スーパーひたち」に似ている。<br />似ているのは外観だけではなく、振り子式を採用し、スムーズにカーブを曲がれる、なんてところも同じ機能だ。<br />途中、ノンストップなので、マドリ-トレドは非常に近い。<br /><br />とはいえ、マドリ市内の駅を移動し、出発駅構内でキップ売り場を探し、地元の方々の列に並んでキップを買う、という、非生産的な行事をこなさなくてはいけない。<br />アタリをつけて、ヨロヨロと窓口にたどりつく。<br />すると、窓口で、<br /><br />「その便は売り切れだ、次まで待ちな」<br /><br />などと無情なことをゆわれてしまう。<br />筆談なので、非効率なことおびただしい。<br /><br />「ダメだった。次の列車まで待とう」<br /><br />朝から、ヒモノのように疲れてしまう。<br />ふたりで、マドリ・アトーチャ駅のカフェにへたりこんだ。<br />通勤時間帯なので、ビジネスマンやら、学生やらが、サンドイッチとコーラをほおばっている。<br />ふと見ると、カウンターの内側に、オレンジジュースの圧搾機がある。<br />スペインは、バレンシアオレンジの本場なのである。<br />圧搾機は、ミョーに背が高く、オレンジを投入する口が、地上2.5メートルくらいの高さにある。<br />これに対し、カフェのお姉さんは、せいぜい160センチくらいなのである。<br /><br />「あれ、どうやってオレンジジュース作るんだろうねぇ」<br /><br />「頼んでみたらいいじゃない」<br /><br />というわけで、「オレンジジュース」を追加でオーダーしてみる。<br />すると、お姉さんが、バスケットボールのフリースローのスタイルで、オレンジを片手に持って、構える。<br /><br />「おお」<br /><br />そして、ピョーンとジャンプ。<br />そのまま、オレンジを放り投げた。<br />オレンジは見事にシュートされ、たちまち、ジュースとなって、下の口から出てきたのであった。<br /><br />「と、とれびやーん」<br /><br />鯨は、思わず、スタンディングオベーションをしてしまった。<br />(トレビアンはフランス語なのだが)<br />お姉さんは「大したことないのヨ、これくらい」と、平然とジュースを手渡してくれた。<br />しかしあれ、外れた時はどうするのだろう。<br /><br />旅先で、こういうことに出会うと、元気が出る。<br />考えてみれば、この先、スペインには予約しているホテルもない。<br />ここから先は、どこへ行こうと何をしよう勝手なのだ。<br />要は、四日後に、リスボンに入っていればいいのだ。<br />たった四日でも、こういう状態が出現する、というのは、現役サラリーマンをやっている鯨には、貴重なのである。<br />疲れたら休めばいいし、日が暮れたらホテルに泊まればいいだけのことだ。そう思うことにする。<br /><br />

    さて、スペインである。
    この国には、ガイドブックなし、というハンデをしょいつつ、トツゲキしなくてはいけない。
    (わしも配偶者も、買い忘れたのネ)
    個人旅行なのに、いかがなものか、と思う。
    ガイドも、添乗員も、知りあいもいないのである。

    コトバもわからん。
    ちなみに、ワシが知っているスペイン語は、「フラメンコ」「パエーリャ」くらいである。
    この二つの言葉で、スペイン観光をするには、じゃっかん問題があるような気がする。

    もっとも、救いはある。
    「ヨーロッパ鉄道の旅」という小冊子は持ってきたのである。
    つまり、主な駅の構内図はある。
    したがって、列車と駅だけをひたすら行くのであれば、これ一冊あれば大丈夫! なのである。

    が、しかし、ヨーロッパくんだりまで来て「列車と駅だけ見て帰ってきましたワッハッハ」ってのは、いけてない。
    鯨は、ほんのりと鉄道オタクなのであるが、ディープな「鉄ちゃん」ではない。
    「鉄道の旅」であるからして、町の地図、ホテルなどの情報は掲載されていない。
    これから行く、トレドとグラナダの町歩きの情報は、何もない。
    ないものはしかたない、と思うことにする。

    なんてったって、もうスペインについてしまったのだ。
    とりあえず、
    「線路は続くよどこまでも」
    など呟き、トレドまで行ってみることにする。

    マドリのチャルマンティン駅で「フランシス・デ・ゴヤ」とはお別れだ。
    このトレインホテルは、そのまま、パリまで戻っていくのだ。
    鯨は、たった一晩であっても「世話になった」と、感謝のキモチでいっぱいだった。
    その感謝のキモチは、例えて言えば。
    少年が、長いことあこがれていた年上のお姉さんにキスしてもらったようなものかもしれない。
    いやいや、キスだけでなく、同衾させていただいたようなものかもしれない。
    その夢の一夜が、終わったのである。
    (・・・ここ、五木寛之みたいだナ)

    学生のころには、とてもじゃないが、こんな列車、乗れなかった。高嶺の花、であった。
    当時、ユーレイル・ユースパスを駆使して、各駅停車の夜行に乗ったのは、宿代を浮かしたいからだった。
    毎日毎日、残りのオカネの勘定ばかりしていたのである。
    「各駅停車・世界の旅」は旅情溢れる世界だが。
    「各駅停車・夜行の旅」は、ドロボー対策に、きんちゃく袋を抱えて、エビみたいに体を曲げて寝ていたのだった。

    ・・・などと鯨が感慨にふけっている間。
    配偶者は、この寝台特急のシャワー室にあった、かわいらしいトイレタリー・キットを、せっせとカバンに詰めていた。
    お持ち帰り可、とゆわれると、この世代の女性は、なんでも持ってってしまうのである。
    きっと彼女は
    「ヘルスメーター・お持ち帰り可」
    とか、
    「フライパン・お持ち帰り可」
    とか、
    「イースター島モアイ像・お持ち帰り可」
    とか、ゆわれても、がんばってカバンに詰め込んでしまいそうな気がする。

    ちなみに、旅の後半、配偶者のカバンの中は、石鹸やらシャンプーやらで一杯になった。
    でもって彼女は、
    「次の旅行で使えるでしょ」
    と、ゼッタイやんないことをシャーシャーというのであった。

    さて、マドリで乗り換えて、特急「タルゴ」で30分ほど走ると、トレドである。
    「タルゴ」は、スペインが誇る最新式の特急であって、JR東日本の「スーパーひたち」に似ている。
    似ているのは外観だけではなく、振り子式を採用し、スムーズにカーブを曲がれる、なんてところも同じ機能だ。
    途中、ノンストップなので、マドリ-トレドは非常に近い。

    とはいえ、マドリ市内の駅を移動し、出発駅構内でキップ売り場を探し、地元の方々の列に並んでキップを買う、という、非生産的な行事をこなさなくてはいけない。
    アタリをつけて、ヨロヨロと窓口にたどりつく。
    すると、窓口で、

    「その便は売り切れだ、次まで待ちな」

    などと無情なことをゆわれてしまう。
    筆談なので、非効率なことおびただしい。

    「ダメだった。次の列車まで待とう」

    朝から、ヒモノのように疲れてしまう。
    ふたりで、マドリ・アトーチャ駅のカフェにへたりこんだ。
    通勤時間帯なので、ビジネスマンやら、学生やらが、サンドイッチとコーラをほおばっている。
    ふと見ると、カウンターの内側に、オレンジジュースの圧搾機がある。
    スペインは、バレンシアオレンジの本場なのである。
    圧搾機は、ミョーに背が高く、オレンジを投入する口が、地上2.5メートルくらいの高さにある。
    これに対し、カフェのお姉さんは、せいぜい160センチくらいなのである。

    「あれ、どうやってオレンジジュース作るんだろうねぇ」

    「頼んでみたらいいじゃない」

    というわけで、「オレンジジュース」を追加でオーダーしてみる。
    すると、お姉さんが、バスケットボールのフリースローのスタイルで、オレンジを片手に持って、構える。

    「おお」

    そして、ピョーンとジャンプ。
    そのまま、オレンジを放り投げた。
    オレンジは見事にシュートされ、たちまち、ジュースとなって、下の口から出てきたのであった。

    「と、とれびやーん」

    鯨は、思わず、スタンディングオベーションをしてしまった。
    (トレビアンはフランス語なのだが)
    お姉さんは「大したことないのヨ、これくらい」と、平然とジュースを手渡してくれた。
    しかしあれ、外れた時はどうするのだろう。

    旅先で、こういうことに出会うと、元気が出る。
    考えてみれば、この先、スペインには予約しているホテルもない。
    ここから先は、どこへ行こうと何をしよう勝手なのだ。
    要は、四日後に、リスボンに入っていればいいのだ。
    たった四日でも、こういう状態が出現する、というのは、現役サラリーマンをやっている鯨には、貴重なのである。
    疲れたら休めばいいし、日が暮れたらホテルに泊まればいいだけのことだ。そう思うことにする。

  • なんとかトレドに到着すると、正午を過ぎていた。<br />日差しが強い。空気が乾いている。ヨーロッパ人の観光客が、バラバラとバス停に向かって歩いていく。<br />フラフラとそのまま付いて行きそうになり、あわてて我に帰った。<br />とにもかくにも、あすのキップは、とりあえず確保しなくてはならない。<br />アサイチでマドリに戻り、特急を乗り継いで、グラナダまで行きたいのである。<br /><br />で、例によって筆談で、翌日のキップを確保。<br />勇躍駅を出て、バス停に向かう。<br /><br />と、駅の前に、三階建ての古い古いホテルが建っている。「プリンセス・ガリアナ」と読めた。<br />あすの朝は早いので、駅の近くが良い、と判断。<br />とりあえず、そこに入ってみる。<br />「こんににちわー」<br />あいさつする(日本語だけど、不思議と通じる)。<br />★三つ。ふたりで100ユーロ。朝食なし。<br />荷物を置いて、地図(英語)をもらって、旧市街へ出かけた。<br />配偶者は、ノースリーブ。スペイン内陸の5月は、もはや夏なのである。<br /><br />トレドは城閣の町だ。<br />河沿いの丘の上に、みっちり、旧市街が固まっている。遠くから見ると、ハチの巣みたいだ。<br />しかし、その中は、まるで迷路であって、ナニガナニヤラ、さっぱりわからないのである。<br /><br />地図は英語。しかもおおざっぱ。<br />名所・旧跡・寺院・いっさい知識なし。<br />ガイドブックなし。<br />土地カンなし。<br /><br />ガイドブックではないが、司馬遼の「街道を行く」は持ってきた。<br />それを手許においてあるくのだが、何しろ司馬遼であるから、レストランの紹介や、名所旧跡の位置関係なんて、トーゼン書いてない。<br />ふたりは白昼の城内を、フラフラとさまようのだった。<br />かろうじて、天正の少年使節が訪れたカテドラルは、わかった。<br />しかし、歩けば歩くほど、道は細くなり、坂は上りになり、観光客はまばらになる。<br />同じところを、ぐるぐる回っているだけのような気もする。<br />

    なんとかトレドに到着すると、正午を過ぎていた。
    日差しが強い。空気が乾いている。ヨーロッパ人の観光客が、バラバラとバス停に向かって歩いていく。
    フラフラとそのまま付いて行きそうになり、あわてて我に帰った。
    とにもかくにも、あすのキップは、とりあえず確保しなくてはならない。
    アサイチでマドリに戻り、特急を乗り継いで、グラナダまで行きたいのである。

    で、例によって筆談で、翌日のキップを確保。
    勇躍駅を出て、バス停に向かう。

    と、駅の前に、三階建ての古い古いホテルが建っている。「プリンセス・ガリアナ」と読めた。
    あすの朝は早いので、駅の近くが良い、と判断。
    とりあえず、そこに入ってみる。
    「こんににちわー」
    あいさつする(日本語だけど、不思議と通じる)。
    ★三つ。ふたりで100ユーロ。朝食なし。
    荷物を置いて、地図(英語)をもらって、旧市街へ出かけた。
    配偶者は、ノースリーブ。スペイン内陸の5月は、もはや夏なのである。

    トレドは城閣の町だ。
    河沿いの丘の上に、みっちり、旧市街が固まっている。遠くから見ると、ハチの巣みたいだ。
    しかし、その中は、まるで迷路であって、ナニガナニヤラ、さっぱりわからないのである。

    地図は英語。しかもおおざっぱ。
    名所・旧跡・寺院・いっさい知識なし。
    ガイドブックなし。
    土地カンなし。

    ガイドブックではないが、司馬遼の「街道を行く」は持ってきた。
    それを手許においてあるくのだが、何しろ司馬遼であるから、レストランの紹介や、名所旧跡の位置関係なんて、トーゼン書いてない。
    ふたりは白昼の城内を、フラフラとさまようのだった。
    かろうじて、天正の少年使節が訪れたカテドラルは、わかった。
    しかし、歩けば歩くほど、道は細くなり、坂は上りになり、観光客はまばらになる。
    同じところを、ぐるぐる回っているだけのような気もする。

  • 疲れ果て、バールに入った。<br />スペイン風軽食喫茶、みたいなヤツである。<br />カウンターに、日本人の若夫婦がいた。<br />新婚旅行であろう。睦まじく、ガイドブックを見ている。<br />ううう。それ、見せてほしい。今、どこにいるのか、知りたい。<br />しかし、新婚旅行は、フタリノセカイ、なのであった。<br />片隅にいる、チューネン日本人くたびれたぞ系夫婦には、視線すら、送ってくれないのだった。<br />仲良く、お互いの写真などを、撮り合っているのだった。<br /><br />話しかけてみた。<br /><br />「・・・日本からですか」<br /><br />奥さんのほうが、ギラっと、鯨をにらんだ。<br />背中を向けていたダンナも、うさんくさそうに、鯨を一瞥した。<br />・・・が、そこまでだった。<br />二人は、二人のまま、会話を続けた。<br />つまり、鯨は、シカトされてしまったのであった。<br />トレドくんだりまで来て、日本人に話しかけられたくないのよこのタコ、と、思っていたのかもしれない。<br />または、観光地で、親しげに話しかけてくるヤツに注意しましょう、オサケに睡眠薬入ってます、という話を連想したのかもしれない。<br /><br />鯨は、どう説明しようか、案じていた。<br />ガイドブックなしで、パエーリャ・フラメンコしかしゃべれなくて、なぜか、ここにいること。<br />せめてせめて、自分がいま、どこにいるのか、知りたいこと。<br />が、落ち着いて考えれば、非常にウソ臭いのである。<br />よって、話しても、胡散臭い目で見られるのが、オチであろう。わしが話しかけらけても、絶対警戒する。<br />しかも、鯨は人相が、公平に見て、かなり凶悪なのである。<br /><br />二人は、われわれ観光難民に一瞥もくれず、さっさと店を出て行ったのであった。<br />奥さんのほうは、料理をデジカメに収めていたので、ブログなどを書いているやもしれぬ。<br />この日のプログには、<br /><br />「トレドのバールで、ヘンな日本人が近づいてきますから、注意しましょう。相手にしちゃダメ。<br />人相も悪いので、ムシするのが一番です(はぁと)」<br /><br />くらいは、書かれているような気がする。<br /><br />鯨は、そこでオリーブのピクルスと、タコのマリネと、ベーコンエッグを注文した。<br />ビールも、昼間だったけど、一杯だけ飲んだ。<br />タコはおいしかった。<br />店員さんだけがやさしく、お勘定を払うとき、「アリガト、サヨナラ」と、言ってくれたのだった。<br /><br />教訓。トレドには、ガイドブックを持っていくべきである。

    疲れ果て、バールに入った。
    スペイン風軽食喫茶、みたいなヤツである。
    カウンターに、日本人の若夫婦がいた。
    新婚旅行であろう。睦まじく、ガイドブックを見ている。
    ううう。それ、見せてほしい。今、どこにいるのか、知りたい。
    しかし、新婚旅行は、フタリノセカイ、なのであった。
    片隅にいる、チューネン日本人くたびれたぞ系夫婦には、視線すら、送ってくれないのだった。
    仲良く、お互いの写真などを、撮り合っているのだった。

    話しかけてみた。

    「・・・日本からですか」

    奥さんのほうが、ギラっと、鯨をにらんだ。
    背中を向けていたダンナも、うさんくさそうに、鯨を一瞥した。
    ・・・が、そこまでだった。
    二人は、二人のまま、会話を続けた。
    つまり、鯨は、シカトされてしまったのであった。
    トレドくんだりまで来て、日本人に話しかけられたくないのよこのタコ、と、思っていたのかもしれない。
    または、観光地で、親しげに話しかけてくるヤツに注意しましょう、オサケに睡眠薬入ってます、という話を連想したのかもしれない。

    鯨は、どう説明しようか、案じていた。
    ガイドブックなしで、パエーリャ・フラメンコしかしゃべれなくて、なぜか、ここにいること。
    せめてせめて、自分がいま、どこにいるのか、知りたいこと。
    が、落ち着いて考えれば、非常にウソ臭いのである。
    よって、話しても、胡散臭い目で見られるのが、オチであろう。わしが話しかけらけても、絶対警戒する。
    しかも、鯨は人相が、公平に見て、かなり凶悪なのである。

    二人は、われわれ観光難民に一瞥もくれず、さっさと店を出て行ったのであった。
    奥さんのほうは、料理をデジカメに収めていたので、ブログなどを書いているやもしれぬ。
    この日のプログには、

    「トレドのバールで、ヘンな日本人が近づいてきますから、注意しましょう。相手にしちゃダメ。
    人相も悪いので、ムシするのが一番です(はぁと)」

    くらいは、書かれているような気がする。

    鯨は、そこでオリーブのピクルスと、タコのマリネと、ベーコンエッグを注文した。
    ビールも、昼間だったけど、一杯だけ飲んだ。
    タコはおいしかった。
    店員さんだけがやさしく、お勘定を払うとき、「アリガト、サヨナラ」と、言ってくれたのだった。

    教訓。トレドには、ガイドブックを持っていくべきである。

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この旅行記へのコメント (6)

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  • ondine24さん 2025/12/18 07:49:10
    初めまして(╹◡╹)
    私の旅行記にご訪問&ポチ有難う御座いました。

    鯨様の旅行記いくつか読ませて頂きましたが、余りの面白さにアゴが外れそうになりました…
    「ワシ」というご自身の呼び方にもなかなか妙味を感じ、私もマネして、これからは自分の一人称も「ワシ」にしようかと思いました(←嘘です)

    文章の所々に、そこはかとなく司馬遼太郎テイストを感じるなぁと思っていたら、やはり愛読されているご様子、
    そして、どうやら同世代らしい!
    昭和の高度成長期に無邪気な子供時代を生きてきた同志じゃないですか!
    という事で、勝手に親近感を覚えておるところで御座います。

    お写真の奥様、憂を帯びた雰囲気が色っぽい…
    思わず惚れそうになりました、、、
    おっと、私は女でした。
    しかし、男女脳を判定する○✖️式の設問に答えたら「限りなく男脳 」という結果が出て、超納得の上コレ迄の人生を生きております。

    そんな私ですが、決して怪しい者では御座いませんので、どうかご安心下さい。
    これからもちょくちょく鯨様の旅行記にお邪魔させて頂こうかと思っております。

    それでは、ご機嫌よう
    ϵ( 'Θ' )϶

    鯨の味噌汁

    鯨の味噌汁さん からの返信 2025/12/18 09:51:44
    Re: 初めまして(╹◡╹)
    ondine24さま

    こちらこそはじめまして。

    こんな古い旅日記にご訪問ありがとうございます。
    そろそろ20年前ですね。あれからふたりとも何回か脱皮してますのでもはや原形はとどめてないような気が。あのころは40代だったし。


    >私の旅行記にご訪問&ポチ有難う御座いました。

    われわれの次の旅行先候補にペナンが上がったので、ふらふらと4T内をお散歩しておりました。ホテルのチョイスなど、興味深く拝読しております。

    自分の旅日記は「役に立たない」のをモットーにしてるのに、人様の日記で情報を集めようとする、われながら小賢しいヤツです。


    >「ワシ」というご自身の呼び方にもなかなか妙味を感じ、私もマネして、これからは自分の一人称も「ワシ」にしようかと思いました(←嘘です)

    岡山の友人(⇒女性)から伝染しました。かの地域では女性も「ワシ」を使うようです。
    ちなみに新潟の山間部では女性も「オレ」を使います。かわいい女子高生が「オレ」を使ってるのを聞くとワクワクします。男か女かわからんおばあちゃんが「オレ」とゆうと性転換したのだなと思います。


    >そして、どうやら同世代らしい!

    はい。昭和の半ばに生まれ、社会に出てまもなくバブルが崩壊し、アップアップで世の中を渡ってきた世代です。「失われた30年」が働き盛りでした。
    そういえば、4T、同世代の方が多いような気がいたします。
    ここに書き始めたころ(40代の終わり)おない年だった方々がそのまま年を取った感じでしょうか。
    若い方は動画サイトやnoteに行っちゃってるみたい。多摩ニュータウンみたいに高齢化が進んでるんじゃないかしらん。


    >これからもちょくちょく鯨様の旅行記にお邪魔させて頂こうかと思っております。

    ありがとうございます。
    読んでワハハと笑っていただければうれしゅうございます。

    ワシもペナンのお話、ゆっくり読ませていただきますね。
  • willyさん 2020/07/17 13:13:00
    久々にお邪魔しています
    鯨さん

    もう、どこも覗きたいところがない、とりあえず接続しても開けるだけで閉じてしまうことも多いこの頃、更新はないと知っていても返ってきてしまいました。モンサンミシェルからまた始めました。
    食いしん坊さんがおっしゃっているように、星の数ほどのトラベラーさんの中から鯨さんに巡り合えた幸せ、また改めてかみしめています。読む人を幸せに楽しくしてくれるこんな文章がかけたらなあと思いながら。一筋天から差し述べられる光条です。
    その筆が新たに振るわれる日が来ることを心から楽しみに待っております。
    will

    鯨の味噌汁

    鯨の味噌汁さん からの返信 2020/07/18 08:53:11
    RE: 久々にお邪魔しています
    willyさん、

    ご無沙汰してます。
    ここの住民は皆さんそうなんでしょうが、11月、3月とふたつの旅がポシャりました。夫婦旅も今年は取りやめ。多分ヒコーキに乗らない年になりそうです。
    そもそも旅をするためにプーになったのに、人生は思ったように行きません。

    こういう時ははるか昔の旅行記でも紐解いて、のんびり妄想と想像を広げるくらいしかないようです。
    来年は…どこに行こうかなぁ。今から「買うあてもない」チケットを検索してますよー。
  • さすらいの食いしんぼうさん 2009/11/12 00:37:26
    ほのぼのエキサイティングな旅行記
    写真はたったの(ホントにたったの)4枚しかないのにあたかも情景がうかぶ見事な描写!次々とこの夫婦に襲いかかる災難の数々。そして次にこのふたりに何が起るのか!という期待をぬぐいさることが出来ず読み終えた時刻には完全に仕事に遅刻していました。(朝からこんなトラベルサイトに入った自分がまちがいだった。朝は新聞とメールのチェックぐらいにしておくべき。)

    そして果たしてトレドでの結末は「歩かざる、とアルガサルへ走ってしまったふたりはそのまま勢いあまって崖からタホ川へ転落する...」なんて勝手な他人の不運を期待、想像しながら楽しませてもらいました。(ひょっとして写真が4枚しかないのはトレドではガイドブックを忘れた上、さらにデジカメも故障したんじゃないか?とこれまた勝手な想像.. ふふっ)

    フォートラベルの何千か何百か知らないけれど星の数ほどもある旅行記の中から鯨さんのサイトを見つけた幸運に感謝。

    鯨の味噌汁

    鯨の味噌汁さん からの返信 2009/11/13 11:12:47
    RE: ほのぼのエキサイティングな旅行記

    どうもどうもはじめまして。鯨の味噌汁でございます。
    お読みいただき感謝します。

    と、さすらいの食いしん坊さんのホームを拝見。
    おお!「お気に入り」に「ももであ」さんがいらっしゃるではありませんか。ワシも大変愛読させていただいております。

    > 写真はたったの(ホントにたったの)4枚しかない

    いや、これでも多いほうでして。
    写真が非常にヘタクソなんです。。。

    これからもよろしくお願いします。
    ワシも遊びに行きます。







    > 写真はたったの(ホントにたったの)4枚しかないのにあたかも情景がうかぶ見事な描写!次々とこの夫婦に襲いかかる災難の数々。そして次にこのふたりに何が起るのか!という期待をぬぐいさることが出来ず読み終えた時刻には完全に仕事に遅刻していました。(朝からこんなトラベルサイトに入った自分がまちがいだった。朝は新聞とメールのチェックぐらいにしておくべき。)
    >
    > そして果たしてトレドでの結末は「歩かざる、とアルガサルへ走ってしまったふたりはそのまま勢いあまって崖からタホ川へ転落する...」なんて勝手な他人の不運を期待、想像しながら楽しませてもらいました。(ひょっとして写真が4枚しかないのはトレドではガイドブックを忘れた上、さらにデジカメも故障したんじゃないか?とこれまた勝手な想像.. ふふっ)
    >
    > フォートラベルの何千か何百か知らないけれど星の数ほどもある旅行記の中から鯨さんのサイトを見つけた幸運に感謝。

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