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ヨーロッパを、鉄道とバスを使って、個人旅行しようとするとき、持っていくべきものは何か。<br />鯨は、なにはともあれ「大きめのメモ帳」だ、と思う。<br />なぜなら、言葉は喋れなくても、鯨だって、数字と地名くらいなら書けるからだ。<br /><br />とりあえず、パリに降りた。<br />旅の最初の目的地は、フランスのモンサンミッシェルである。<br />写真なんかで見ると、干潟の中の小島が、丸ごとお城。<br />上から下まで建物ぎっしり。<br />世界遺産に人口密度ランキングがあったら、ダントツ一位間違いなし、の物件である。<br /><br />パリからモンサンミッシェルまで、電車とバスで移動しなくてはならない。<br />しかも、全席指定のTVG(洋物新幹線)で、予約を取らなくてはならない。<br />海外旅行25年ぶりのチューネン夫婦にとって、こういうのが一番ややこしい。<br />出発駅は、パリのモンパルナスである。<br /><br />さて、夕方。<br />駅の中をうろうろして、キップ売り場を特定する。<br />その窓口に向かって、二人は、じりじりと接近。<br />「き、君がいきなさいよ。昔、エーケン(英会話研究会)にいただろう」<br />「今更そんなこと。あなたこそ外資系にいたんでしょ」<br />窓口のお姉さんを目前にして、夫婦は小さく争う。<br />が、配偶者がしぶとく拒否するので、鯨は時刻表からメモを取り、<br /><br />5/5/2007 paris ⇒ Rennes TGV 07:24 2persons<br /><br />お姉さんに恐る恐る差し出すと、彼女はじっとメモをのぞき込み、<br />「シュークリーム、エマニエール、モンサンミッシェル?」<br />どうやら、モンサンミッシェルに行くのか、と聞いているらしい。<br />「ウイウイ」<br />「ムニエール、ブイヤベース、モンサンミッシェル?」<br />「ウイウイ」<br />さっぱりわからんが、とりあえず頷いてみる。<br />すると、お姉さんはニッコリ微笑み、カタカタ端末に入力し、キップを二枚くれるではないか。<br />出てきたのを見ると、<br />「paris ⇒ Rennes ⇒ Mont Saint-Michel」<br />と、ちゃんと印字してあり、バスの絵まで入っていた。<br />言葉はわからなくとも、バス路線付きのチケットが購入できたのである。<br /><br />配偶者もほっとしている。<br />「やるじゃない」<br />鯨も、なんだ大したことないじゃん、矢でも鉄砲でも持ってこい、と思った。<br />ほんの少し、気が大きくなった。<br /><br />そのあと、メシを食おう、とパリの町を歩きまわり、裏通りの海鮮レストランに入った。<br />その店は、地元の客で、いっぱいなのである。<br />鯨は、生ガキを食べたかったので、ウエイトレスを呼び、隣のおじさんが食べている生ガキを指さして、<br />「ツー・パーソンズ」<br />と、言った。<br />「ボンジュール・ソムリエール・サマヨエール?」<br />いろいろとウエイトレスが聞いてくる。<br />「ウイウイ」<br />適当に答えていると、ニッコリ微笑み、ウエイトレスは去った。<br />そして、ウエイターがふたり現れ、鯨夫妻の、ヨコのテーブルが、あわただしく、足された。<br />ふたり席が、四人席になった。<br />少しだけイヤな予感がした。<br />隣のおじさんは、相変わらず、10個くらいの生ガキを、ぴちゃぴちゃすすっていた。<br />「・・・あれが来るんだよな」<br />増えたテーブルの席を見つめながら、鯨は配偶者につぶやいた。<br />「でしょうね」<br />「でも、お姉さん、なにか、言ってたよな」<br />「言ってたわね」<br />「念を押してたようにも見えた」<br />「うん」<br />しずしずと、ワゴンが押されてきた。その上に、大きめのタライが載っている。<br />そのタライの上に、山盛りで氷が載っている。<br />その上に、ビッシリと、死にたてピチピチの海鮮物が載っている。<br />満艦飾、海鮮版モンサンミッシェルという感じである。<br />モンサンミッシェルに行くのはあすであるが、早くも、それふうのメニューに当たってしまったのである。<br /><br />どうやらそれは<br />「豪華海鮮フルセット・カニ・エビ・カキ・オマール貝・ハマグリ・アサリ食べ放題」<br />ともいうべきメニューなのであった。<br /><br />カニが2種類。エビが3種類。カキを数えると、16個載っている。ハマグリ5個。オマール貝・アサリ・その他多数。<br />「・・・すげえ量だな」<br />「・・・」<br />「しかたない、食べよう」<br />「うん」<br />黙々と食べていると、また、ワゴンが押されてきた。<br />モンサンミッシェルのタライは、もう一セット、出てきたのであった。<br /><br />キップ売り場でキップは買えても、油断してはいけないのだ。<br />鯨も配偶者も、必死に食べた。<br />食べ物を粗末にしてはいけません、という教育を受けた世代である。<br />が、食べても食べても、タライの中身は、ちっとも減らないのだった。<br />タライの底の竜宮城があって、そこからカニやらエビやら、次々と派遣されているようであった。<br /><br />配偶者は、「鉄の胃袋」を持つ。子供を3人育てる生命力の源泉である。<br />鯨も、その名の通り、鯨飲馬食を旨とする。<br />完食した。<br />が、鯨はその後3日ばかり、オナカの調子が、よろしくなかった。<br /><br />

電車とバスを乗り継いで、モンサンミッシェルまで行きました。

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2007/05/07 - 2007/05/08

203位(同エリア1886件中)

鯨の味噌汁

鯨の味噌汁さん

ヨーロッパを、鉄道とバスを使って、個人旅行しようとするとき、持っていくべきものは何か。
鯨は、なにはともあれ「大きめのメモ帳」だ、と思う。
なぜなら、言葉は喋れなくても、鯨だって、数字と地名くらいなら書けるからだ。

とりあえず、パリに降りた。
旅の最初の目的地は、フランスのモンサンミッシェルである。
写真なんかで見ると、干潟の中の小島が、丸ごとお城。
上から下まで建物ぎっしり。
世界遺産に人口密度ランキングがあったら、ダントツ一位間違いなし、の物件である。

パリからモンサンミッシェルまで、電車とバスで移動しなくてはならない。
しかも、全席指定のTVG(洋物新幹線)で、予約を取らなくてはならない。
海外旅行25年ぶりのチューネン夫婦にとって、こういうのが一番ややこしい。
出発駅は、パリのモンパルナスである。

さて、夕方。
駅の中をうろうろして、キップ売り場を特定する。
その窓口に向かって、二人は、じりじりと接近。
「き、君がいきなさいよ。昔、エーケン(英会話研究会)にいただろう」
「今更そんなこと。あなたこそ外資系にいたんでしょ」
窓口のお姉さんを目前にして、夫婦は小さく争う。
が、配偶者がしぶとく拒否するので、鯨は時刻表からメモを取り、

5/5/2007 paris ⇒ Rennes TGV 07:24 2persons

お姉さんに恐る恐る差し出すと、彼女はじっとメモをのぞき込み、
「シュークリーム、エマニエール、モンサンミッシェル?」
どうやら、モンサンミッシェルに行くのか、と聞いているらしい。
「ウイウイ」
「ムニエール、ブイヤベース、モンサンミッシェル?」
「ウイウイ」
さっぱりわからんが、とりあえず頷いてみる。
すると、お姉さんはニッコリ微笑み、カタカタ端末に入力し、キップを二枚くれるではないか。
出てきたのを見ると、
「paris ⇒ Rennes ⇒ Mont Saint-Michel」
と、ちゃんと印字してあり、バスの絵まで入っていた。
言葉はわからなくとも、バス路線付きのチケットが購入できたのである。

配偶者もほっとしている。
「やるじゃない」
鯨も、なんだ大したことないじゃん、矢でも鉄砲でも持ってこい、と思った。
ほんの少し、気が大きくなった。

そのあと、メシを食おう、とパリの町を歩きまわり、裏通りの海鮮レストランに入った。
その店は、地元の客で、いっぱいなのである。
鯨は、生ガキを食べたかったので、ウエイトレスを呼び、隣のおじさんが食べている生ガキを指さして、
「ツー・パーソンズ」
と、言った。
「ボンジュール・ソムリエール・サマヨエール?」
いろいろとウエイトレスが聞いてくる。
「ウイウイ」
適当に答えていると、ニッコリ微笑み、ウエイトレスは去った。
そして、ウエイターがふたり現れ、鯨夫妻の、ヨコのテーブルが、あわただしく、足された。
ふたり席が、四人席になった。
少しだけイヤな予感がした。
隣のおじさんは、相変わらず、10個くらいの生ガキを、ぴちゃぴちゃすすっていた。
「・・・あれが来るんだよな」
増えたテーブルの席を見つめながら、鯨は配偶者につぶやいた。
「でしょうね」
「でも、お姉さん、なにか、言ってたよな」
「言ってたわね」
「念を押してたようにも見えた」
「うん」
しずしずと、ワゴンが押されてきた。その上に、大きめのタライが載っている。
そのタライの上に、山盛りで氷が載っている。
その上に、ビッシリと、死にたてピチピチの海鮮物が載っている。
満艦飾、海鮮版モンサンミッシェルという感じである。
モンサンミッシェルに行くのはあすであるが、早くも、それふうのメニューに当たってしまったのである。

どうやらそれは
「豪華海鮮フルセット・カニ・エビ・カキ・オマール貝・ハマグリ・アサリ食べ放題」
ともいうべきメニューなのであった。

カニが2種類。エビが3種類。カキを数えると、16個載っている。ハマグリ5個。オマール貝・アサリ・その他多数。
「・・・すげえ量だな」
「・・・」
「しかたない、食べよう」
「うん」
黙々と食べていると、また、ワゴンが押されてきた。
モンサンミッシェルのタライは、もう一セット、出てきたのであった。

キップ売り場でキップは買えても、油断してはいけないのだ。
鯨も配偶者も、必死に食べた。
食べ物を粗末にしてはいけません、という教育を受けた世代である。
が、食べても食べても、タライの中身は、ちっとも減らないのだった。
タライの底の竜宮城があって、そこからカニやらエビやら、次々と派遣されているようであった。

配偶者は、「鉄の胃袋」を持つ。子供を3人育てる生命力の源泉である。
鯨も、その名の通り、鯨飲馬食を旨とする。
完食した。
が、鯨はその後3日ばかり、オナカの調子が、よろしくなかった。

同行者
カップル・夫婦
交通手段
鉄道 高速・路線バス
航空会社
ANA
  • パリで、「モンサンミッシェル・海鮮盛り」を、早くも体験してしまった翌日。<br />TGV(洋物新幹線)で、レンヌ駅に無事、到着した。<br />階段をトントンとおり、バス停を探す。<br /><br />駅前にバスロータリーがあり、ぐるりと一周するが、それらしきバスは出ていない。<br />ベンチに座っている地元在住と思われる方々の中から、比較的、わかってそうなおばさんを見つくろい、<br />「モンサンミッシェル?」<br />と聞くと、あっちだ、と教えてくれた。観光客によく聞かれるのだろう。<br /><br />駅の右側の建物が、バスの発着所なのであった。<br />で、どのバスであるかを、探す必要はなかった。<br />バスの腹に、例のお城のイラストが、ドドーン、と描かれている。<br />鯨は、旅のシロートなので、こういうのを見つけるとホッとする。これなら間違いようがない。<br /><br />観光客を乗せたバスは、イナカ道を1時間ばかり走る。<br />小さな町や村を抜け、麦畑を抜け、牧場を抜ける。<br />途中、ささやかなスタンドを持つ競馬場がある。<br />海に向かっているらしい、風車跡もある。<br />広く開けた丘の道を下りながら、海が近いナ、と感じたとき、前方に、うっすらと城の影が浮かんだ。モンサンミッシェルだ。<br /><br />島まで道路が通じているが、陸側の、一番最後のバス停で降りた。<br />予約してあるホテル(ルレ・サン・ミッシェル)が目の前にあった。<br /><br />旅に出るとき、パリとモンサンミッシェルと、最後のリスボンだけ、宿を予約した。<br />結果的に、パリとリスボンは、予約する必要はなかった。<br />なぜかというと、大きい町のホテルなんてものは、当日いくらでも取れるから。<br />ただモンサンミッシェルのホテルだけは、予約しておいてよかったと思う。<br />このホテルは、全室からお城が見える、というのがウリなのだ。<br />あと、ウエイトレスさんが全員大柄で、たくましい。<br />これも、ウリといえないこともない。<br />美人もいるし、それなりの方もいるが、全員が肩幅があって、大股でスタスタと歩く。<br />ノルマンディー出身・たくましいお姉さん大集合、といった風情であって、なかなかよろしい。<br />

    パリで、「モンサンミッシェル・海鮮盛り」を、早くも体験してしまった翌日。
    TGV(洋物新幹線)で、レンヌ駅に無事、到着した。
    階段をトントンとおり、バス停を探す。

    駅前にバスロータリーがあり、ぐるりと一周するが、それらしきバスは出ていない。
    ベンチに座っている地元在住と思われる方々の中から、比較的、わかってそうなおばさんを見つくろい、
    「モンサンミッシェル?」
    と聞くと、あっちだ、と教えてくれた。観光客によく聞かれるのだろう。

    駅の右側の建物が、バスの発着所なのであった。
    で、どのバスであるかを、探す必要はなかった。
    バスの腹に、例のお城のイラストが、ドドーン、と描かれている。
    鯨は、旅のシロートなので、こういうのを見つけるとホッとする。これなら間違いようがない。

    観光客を乗せたバスは、イナカ道を1時間ばかり走る。
    小さな町や村を抜け、麦畑を抜け、牧場を抜ける。
    途中、ささやかなスタンドを持つ競馬場がある。
    海に向かっているらしい、風車跡もある。
    広く開けた丘の道を下りながら、海が近いナ、と感じたとき、前方に、うっすらと城の影が浮かんだ。モンサンミッシェルだ。

    島まで道路が通じているが、陸側の、一番最後のバス停で降りた。
    予約してあるホテル(ルレ・サン・ミッシェル)が目の前にあった。

    旅に出るとき、パリとモンサンミッシェルと、最後のリスボンだけ、宿を予約した。
    結果的に、パリとリスボンは、予約する必要はなかった。
    なぜかというと、大きい町のホテルなんてものは、当日いくらでも取れるから。
    ただモンサンミッシェルのホテルだけは、予約しておいてよかったと思う。
    このホテルは、全室からお城が見える、というのがウリなのだ。
    あと、ウエイトレスさんが全員大柄で、たくましい。
    これも、ウリといえないこともない。
    美人もいるし、それなりの方もいるが、全員が肩幅があって、大股でスタスタと歩く。
    ノルマンディー出身・たくましいお姉さん大集合、といった風情であって、なかなかよろしい。

  • ホテルから島まで、一本道が通じている。<br />干潟の中を通した道だ。片側に牧草地が開けていて、羊が放牧されている。<br />車道には「羊横断注意」の標識が出ている。<br />ヒトの歩く道には、標識は出ていないが、羊のフンがそこかしこに散乱している。<br />ヒトの場合は「羊横断注意」ではなく「羊糞・靴裏注意」である。<br />のんびり20分ほど、歩く。

    ホテルから島まで、一本道が通じている。
    干潟の中を通した道だ。片側に牧草地が開けていて、羊が放牧されている。
    車道には「羊横断注意」の標識が出ている。
    ヒトの歩く道には、標識は出ていないが、羊のフンがそこかしこに散乱している。
    ヒトの場合は「羊横断注意」ではなく「羊糞・靴裏注意」である。
    のんびり20分ほど、歩く。

  • さて、モンサンミッシェルは、フランス版「安芸の宮島」だと思っていただければ、間違いない。<br />(・・・こんなまとめ方でいいのだろうか)<br />島であること。<br />干潟があること。<br />お城と大鳥居、という目印があること。<br />島中がオミヤゲ屋さんであふれていること。<br />私設・公設の博物館があること。<br />世界中から観光客が集まっていること。<br />世界遺産であること。<br />周囲に糞がちらばっているところまで同じである。<br />(宮島はシカ、モンサンミッシェルは羊で、生産者は異なるが)<br />よって、日本でモンサンミッシェル気分を味わいたかったら、広島に行けば良いような気がする。<br />(良くないような気もする)<br /><br />修道院でくれるパンフレットには、ちゃんと日本語もある。<br />というか、英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・中国語とパンフレットがそろっていて、かつ、色分けされている。<br />であるから、そのヒトが持っているパンフレットを見れば、どこの国から来たのかが一目瞭然である。<br />この日の東洋人は、過半数が中国語のパンフを持っていた。チャイナパワー恐るべし、である。<br />いっぽう、ゴールデン・ウイークが終わった時期だったので、日本人は少ない。ぱらぱら程度である。<br />北京オリンピックでの、日本劣勢を予感させる観光客構成なのであった。

    さて、モンサンミッシェルは、フランス版「安芸の宮島」だと思っていただければ、間違いない。
    (・・・こんなまとめ方でいいのだろうか)
    島であること。
    干潟があること。
    お城と大鳥居、という目印があること。
    島中がオミヤゲ屋さんであふれていること。
    私設・公設の博物館があること。
    世界中から観光客が集まっていること。
    世界遺産であること。
    周囲に糞がちらばっているところまで同じである。
    (宮島はシカ、モンサンミッシェルは羊で、生産者は異なるが)
    よって、日本でモンサンミッシェル気分を味わいたかったら、広島に行けば良いような気がする。
    (良くないような気もする)

    修道院でくれるパンフレットには、ちゃんと日本語もある。
    というか、英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・中国語とパンフレットがそろっていて、かつ、色分けされている。
    であるから、そのヒトが持っているパンフレットを見れば、どこの国から来たのかが一目瞭然である。
    この日の東洋人は、過半数が中国語のパンフを持っていた。チャイナパワー恐るべし、である。
    いっぽう、ゴールデン・ウイークが終わった時期だったので、日本人は少ない。ぱらぱら程度である。
    北京オリンピックでの、日本劣勢を予感させる観光客構成なのであった。

  • 島のてっぺんまで登って、修道院を見て、そのあと、干潮時だったのでぐるりと島を一周した。<br />干潟が水平線まで広がっている。干潟はちゃんとクツで歩けるが、ところどころ、突如柔らかくなっており、ズブズブと沈む。<br />ヨーロッパ人の観光ツアーは、干潟をハダシで歩いていた。<br />みんな、短パンをはいて、その短パンも、ドロだらけになっている。<br />潮干狩りをしているわけではない。干潟を延々とあるくだけのツアーらしい。<br />いいトシをこいたおじさん・おばさんが、童心に帰って、キャーキャー喜んでいる。<br />島を一周し、入口の駐車場にたどりつくと、そこはキャンピングカーで一杯だった。<br />なるほど、地続きのヨーロッパ人は、キャンピングカーで、国境を越えて旅をするのだ。<br /><br />とろとろと歩いてホテルに戻る。<br />当日の夕食は、ホテルで予約していた。<br />ここのホテルは、日本からも予約できるくらいだから、レストランも、ちゃんと日本語が書いてある。よって、昨日のような失敗をする心配はない。<br />で、<br />「鯖の酢着け」<br />のメニューを見つけ、なにしろ鯨はシメサバが大好物なので、ワインのアテに頼んだ。<br />すると、大きめのサバの半身が、三切れ出てきてしまった。<br />シメサバは好物であっても、半身をみっつは、つらい。<br />配偶者に「一切れあげるよ」といったが、拒否されてしまう。彼女はヒカリモノはダメなのである。<br />で、オードブルのシメサバだけで、おなかがいっぱいになってしまった。<br />なんでここまで来て、連夜の大食い選手権しなくてはならないのか。<br />学習能力のなさに、我ながら悲しくなる。<br /><br />部屋から見えるモンサンミッシェルが、ライトアップされている。<br />何かに似てるな、と、鯨は考えた。<br />「・・・そうだそうだ。浦安だよ浦安。そっくりじゃん」<br />配偶者が、言う。<br />「ここまで来て、浦安を思い出してどうするのよ」<br />それもそうだった。こっちは正真正銘のホンモノなのである。<br /><br />早朝、配偶者が寝ているのを横目に、鯨は早めに起き出した。<br />ホテルを抜けだし、1時間ほど、周囲を一回りした。<br />ホテルやお土産物屋、レストランを抜けると、羊の放牧地と、畑が広がっている。<br />農家の庭先に、古ぼけたトラクタが鎮座していた。<br />顔をあげると、朝霧の向こうに、海の中のお城が、ぼんやりと浮かんでいた。

    島のてっぺんまで登って、修道院を見て、そのあと、干潮時だったのでぐるりと島を一周した。
    干潟が水平線まで広がっている。干潟はちゃんとクツで歩けるが、ところどころ、突如柔らかくなっており、ズブズブと沈む。
    ヨーロッパ人の観光ツアーは、干潟をハダシで歩いていた。
    みんな、短パンをはいて、その短パンも、ドロだらけになっている。
    潮干狩りをしているわけではない。干潟を延々とあるくだけのツアーらしい。
    いいトシをこいたおじさん・おばさんが、童心に帰って、キャーキャー喜んでいる。
    島を一周し、入口の駐車場にたどりつくと、そこはキャンピングカーで一杯だった。
    なるほど、地続きのヨーロッパ人は、キャンピングカーで、国境を越えて旅をするのだ。

    とろとろと歩いてホテルに戻る。
    当日の夕食は、ホテルで予約していた。
    ここのホテルは、日本からも予約できるくらいだから、レストランも、ちゃんと日本語が書いてある。よって、昨日のような失敗をする心配はない。
    で、
    「鯖の酢着け」
    のメニューを見つけ、なにしろ鯨はシメサバが大好物なので、ワインのアテに頼んだ。
    すると、大きめのサバの半身が、三切れ出てきてしまった。
    シメサバは好物であっても、半身をみっつは、つらい。
    配偶者に「一切れあげるよ」といったが、拒否されてしまう。彼女はヒカリモノはダメなのである。
    で、オードブルのシメサバだけで、おなかがいっぱいになってしまった。
    なんでここまで来て、連夜の大食い選手権しなくてはならないのか。
    学習能力のなさに、我ながら悲しくなる。

    部屋から見えるモンサンミッシェルが、ライトアップされている。
    何かに似てるな、と、鯨は考えた。
    「・・・そうだそうだ。浦安だよ浦安。そっくりじゃん」
    配偶者が、言う。
    「ここまで来て、浦安を思い出してどうするのよ」
    それもそうだった。こっちは正真正銘のホンモノなのである。

    早朝、配偶者が寝ているのを横目に、鯨は早めに起き出した。
    ホテルを抜けだし、1時間ほど、周囲を一回りした。
    ホテルやお土産物屋、レストランを抜けると、羊の放牧地と、畑が広がっている。
    農家の庭先に、古ぼけたトラクタが鎮座していた。
    顔をあげると、朝霧の向こうに、海の中のお城が、ぼんやりと浮かんでいた。

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