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三蔵法師玄奘の志と夢 <br /><br /> 三蔵法師玄奘は、600年、現在の河南省&#32241;師県氏鎮で、北朝系統の官僚の家に生まれた。13歳で出家し、22歳で得度の後、長安にやってきた。 <br /><br /> そして、若くして仏教に深い造詣を示した三蔵法師玄奘だが、理解しがたい学説を究明したいと思うのと同時に、仏典の原典の不完全さが原因で翻訳が正しいかどうか分からないという現状を打破するため、国禁を犯してでも、インドに渡ろうとする。この時、三蔵法師玄奘は、28歳。627年のことである。 <br /><br /> 長安を出発した三蔵法師玄奘は、さまざまな困難に遭遇しながらも、西域諸国をまわり、1年後にインドに辿りつく。その行程は、5000kmにも及んだ。現在のパキスタン・バングラデシュ・ネパールなど、その当時の110あまりの諸国をめぐったことになる。 <br /><br /> インドでは、まず六大聖地を参拝し、多くの名僧を表敬訪問した後、最高学府である那爛陀寺に入って戒賢法師に学んで、大乗仏教の奥義を極めた。その才は、インドの僧侶たちの間でも名が知れ渡るほどで、帰国する時は、インドに留まるように言われたほどである。 <br /><br /> 再び困難をおして長安に戻ったのは、645年、44歳の時であった。唐の太宗は、長安から50km離れたところまで多くの大臣を派遣して出迎え、長安城内でも出迎えの人々があふれたという。 <br /><br /> 西安市の南約5kmにある慈恩寺は、三蔵法師玄奘ゆかりの寺として名高い。もともとは、隋の時代に建てられた無漏寺で、648年、唐の高宗が、亡くなった母親、文徳皇后のために増改築した寺だった。 <br /><br /> 150粒の仏舎利、8体の仏像、657部の経典を持って戻っていた三蔵法師玄奘は、慈恩寺において、大勢の高僧や学者を集めて経典の漢訳を行う。新訳は75部1335巻にもなった。 <br /><br /> 652年、多数の経典と仏教を収蔵する目的で境内につくられたのが、大雁塔である。当初は5層であったが、則天武后の長安年間、10層に改築された。三蔵法師玄奘は、早く建つようにと、毎日、煉瓦などを籠で運んだという。 <br /><br /> その後、戦火に遭うなどした大雁塔は、現在、高さ64m、レンガづくりの7層建てとなっている。螺旋階段で最上階まで登ることができる。 <br /><br /> 塔の南入口左右には、三蔵法師玄奘を称えた、太宗の「大唐三蔵聖教序」、高宗の「大唐三蔵聖教序記」の2つの石碑がある。 <br /><br /> 三蔵法師玄奘は、664年、病により63歳で入寂した。葬儀には、中国全土の寺から来た僧侶なども含め、100万人以上の参列者がいた。長安から250km離れたところから参列した庶民もいたという。 <br /><br /> 西安の郊外、東南に20kmほど行ったところには、三蔵法師玄奘が眠る興教寺がある。 <br /><br /> 昔ながらの田園地帯が広がり、はるかに少陵原を見渡せる場所に佇む静かな古刹は、669年に創建された。粛宗皇帝より寺名を授けられ、清代には一部焼失したが、1930年に大雄宝殿や東塔が再建された。 <br /><br /> 西院には唐代に建てられた磚塔がわずか3基であるが残っている。なかでも三蔵法師玄奘の遺骨が納められた中央舎利塔は、高さ21m、5層で、唐代木造建築の磚塔として最古のものである。西は窺基法師、東は園測法師の舎利塔。共に玄奘三蔵の高弟であるが、窺基法師は、慈恩大師として奈良の東大寺に画像が伝わっている。東院の経蔵院には宋代の印刷による仏典が数多く収蔵されている。 <br /><br /> 玄奘三蔵と同じように、20年あまりもインドやスマトラ島など東南アジアの島々を巡歴した義淨も、400部の経典を持って、695年に長安に戻った(往復に海路をとった)。義淨も、大勢の高僧、学者とともに、それら仏典の漢訳に勤しんだ。新訳は54部221巻であった。 <br /><br /> 西安市の南約1kmにある薦福寺の小雁塔は、707年、義淨の経典を収蔵するために建造されたものだ。唐の中宗が建てた献福寺を、690年、則天武后が改築したものだ。 <br /><br /> 塔が小雁塔と呼ばれるようになったのは、大雁塔よりも小振りであったためだ。当初は、高さ45m、15層あったが、やはり明の時代以後のたびたびの地震により、上部が崩れ、塔身も壊れた。現在の塔は、36m、13層である。 <br /><br /> 大雁塔が楼閣式に対して、この小雁塔は軒の間が狭い密檐式となっている。丸みをおびた塔身には、そこはかとなく風情があり、薦福寺の境内も閑雅である。日本人の感性が通じるものを持つ寺だ。 <br /><br />http://www.westpassion.com

シルクロード――西安編?

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2009/05 - 2009/05

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西部旅情

西部旅情さん

三蔵法師玄奘の志と夢

 三蔵法師玄奘は、600年、現在の河南省緱師県氏鎮で、北朝系統の官僚の家に生まれた。13歳で出家し、22歳で得度の後、長安にやってきた。

 そして、若くして仏教に深い造詣を示した三蔵法師玄奘だが、理解しがたい学説を究明したいと思うのと同時に、仏典の原典の不完全さが原因で翻訳が正しいかどうか分からないという現状を打破するため、国禁を犯してでも、インドに渡ろうとする。この時、三蔵法師玄奘は、28歳。627年のことである。

 長安を出発した三蔵法師玄奘は、さまざまな困難に遭遇しながらも、西域諸国をまわり、1年後にインドに辿りつく。その行程は、5000kmにも及んだ。現在のパキスタン・バングラデシュ・ネパールなど、その当時の110あまりの諸国をめぐったことになる。

 インドでは、まず六大聖地を参拝し、多くの名僧を表敬訪問した後、最高学府である那爛陀寺に入って戒賢法師に学んで、大乗仏教の奥義を極めた。その才は、インドの僧侶たちの間でも名が知れ渡るほどで、帰国する時は、インドに留まるように言われたほどである。

 再び困難をおして長安に戻ったのは、645年、44歳の時であった。唐の太宗は、長安から50km離れたところまで多くの大臣を派遣して出迎え、長安城内でも出迎えの人々があふれたという。

 西安市の南約5kmにある慈恩寺は、三蔵法師玄奘ゆかりの寺として名高い。もともとは、隋の時代に建てられた無漏寺で、648年、唐の高宗が、亡くなった母親、文徳皇后のために増改築した寺だった。

 150粒の仏舎利、8体の仏像、657部の経典を持って戻っていた三蔵法師玄奘は、慈恩寺において、大勢の高僧や学者を集めて経典の漢訳を行う。新訳は75部1335巻にもなった。

 652年、多数の経典と仏教を収蔵する目的で境内につくられたのが、大雁塔である。当初は5層であったが、則天武后の長安年間、10層に改築された。三蔵法師玄奘は、早く建つようにと、毎日、煉瓦などを籠で運んだという。

 その後、戦火に遭うなどした大雁塔は、現在、高さ64m、レンガづくりの7層建てとなっている。螺旋階段で最上階まで登ることができる。

 塔の南入口左右には、三蔵法師玄奘を称えた、太宗の「大唐三蔵聖教序」、高宗の「大唐三蔵聖教序記」の2つの石碑がある。

 三蔵法師玄奘は、664年、病により63歳で入寂した。葬儀には、中国全土の寺から来た僧侶なども含め、100万人以上の参列者がいた。長安から250km離れたところから参列した庶民もいたという。

 西安の郊外、東南に20kmほど行ったところには、三蔵法師玄奘が眠る興教寺がある。

 昔ながらの田園地帯が広がり、はるかに少陵原を見渡せる場所に佇む静かな古刹は、669年に創建された。粛宗皇帝より寺名を授けられ、清代には一部焼失したが、1930年に大雄宝殿や東塔が再建された。

 西院には唐代に建てられた磚塔がわずか3基であるが残っている。なかでも三蔵法師玄奘の遺骨が納められた中央舎利塔は、高さ21m、5層で、唐代木造建築の磚塔として最古のものである。西は窺基法師、東は園測法師の舎利塔。共に玄奘三蔵の高弟であるが、窺基法師は、慈恩大師として奈良の東大寺に画像が伝わっている。東院の経蔵院には宋代の印刷による仏典が数多く収蔵されている。

 玄奘三蔵と同じように、20年あまりもインドやスマトラ島など東南アジアの島々を巡歴した義淨も、400部の経典を持って、695年に長安に戻った(往復に海路をとった)。義淨も、大勢の高僧、学者とともに、それら仏典の漢訳に勤しんだ。新訳は54部221巻であった。

 西安市の南約1kmにある薦福寺の小雁塔は、707年、義淨の経典を収蔵するために建造されたものだ。唐の中宗が建てた献福寺を、690年、則天武后が改築したものだ。

 塔が小雁塔と呼ばれるようになったのは、大雁塔よりも小振りであったためだ。当初は、高さ45m、15層あったが、やはり明の時代以後のたびたびの地震により、上部が崩れ、塔身も壊れた。現在の塔は、36m、13層である。

 大雁塔が楼閣式に対して、この小雁塔は軒の間が狭い密檐式となっている。丸みをおびた塔身には、そこはかとなく風情があり、薦福寺の境内も閑雅である。日本人の感性が通じるものを持つ寺だ。

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