2008/08/30 - 2008/09/05
6079位(同エリア17023件中)
スキピオさん
街歩きをしていると、いろいろな人たちを見かけます。
そんな人たちに、つい声をかけてみたくなるのが、人情というもの。
ねえ、ヌレーエフさん。
あなたが、フランスに亡命したのは、1961年、23歳の時だったのですね。噂によると、ひとりでとっさに決断したとか・・・
映画『愛と悲しみのボレロ』でも、あの場面は印象的でした。
ところで、あなたの役を演じたジョルジュ・ドンがその後エイズで亡くなったけど、あなたまで、同じ病気で倒れてしまうとは・・・
【ルドルフ・ヌレーエフ・・・シャン・ゼリゼ通りの北側のアヴニュー・ガブリエル】
-
君はいつもそうしているの、娘さん。考え深げに、じっとベンチに座って,道行く人を見ているの。それとも物思いに耽っているのかな。
でも,君の、健康そうで若々しい体から感じられるのは、はじけるような躍動感だ。もしかするとだれも見ていない真夜中,くるみ割り人形のようにくるくるとおどっているのではないか。裸足のまま,車道を軽快にリュクサンブール宮殿まで、スキップを踏んでいるのではないか。
枯れ葉散る秋になっても,雪まじりのみぞれ降る冬になっても,君は裸足で,ワンピース一枚で、ベンチに座っているのだろうな。それとも、お金持ちそうな紳士が、すっぽりと頭から外套を掛けてくれるのかな。
君と友達になりたかったなあ。でも,そう思うのは僕だけではないだろうな。
【ボナパルト通り、ハンガリー学院の前で】 -
四人の美しいニンフ(水の精)たち、君たちはパリのいたるところで、水を提供してくれる。どこかで読んだけど、今では八十八カ所にいるんだって。
君たち四人はそれぞれ、「善意」「素朴」「慈悲」「節度」を表わしていると、書いてあった。残念ながら、僕には君たちの姿から寓意を読みとることなんてできない。「素朴」と「節度」さんは目を閉じて、「善意」と「慈悲」さんは目を開けているそうな。
その上、君たちは「四季」をも象徴しているらしい。「素朴」さんは春、「慈悲」さんは夏、「節度」さんは秋、「善意」さんは冬という具合にね。君たちは、カリアチード(女像柱)以外の仕事も、立派にこなしているのだね。
大金持ちのヴァラスさんが、普仏戦争、パリ・コミューンで疲弊したパリに、飲み水を提供しようと、君たちを町に送り出して、もう百三十年以上・・・君たちはちっとも歳をとらないね。
【ヴァラスの泉・・・サン・シュルピス教会前】 -
「スタジアムで会おうぜ Rejoins-moi au stade!」
君とこうして出会えたのは、今回のフランス旅行で一番嬉しいことのひとつだ。だってそうだろう。あのワールドカップ以来・・・君は大車輪の活躍をして,強敵ブラジルを粉砕し、フランスチームを決勝まで進めた。そして,あの頭突き,世界中を驚嘆させたあの頭突きで君は一発退場し、フランスは準優勝に終わった・・・あの決勝戦以来、君は、フランスではいざ知らず,日本ではほとんど話題に上らなかったからだ。
ワールドカップ終了後,『ジダンの頭突き』という歌がはやったらしいね。僕も何度も聴いたよ。アップテンポなレゲエ調の楽しい曲だね。もっとも君にとって楽しい曲だったかどうか知らないが・・・
「スタジアムで会おうぜ」こうやって、子供たちに呼びかける君は,やっぱり、スポーツ界のヒーローだ。また、あのチャリティー・コンサート『愚か者たちのコンサート』に、出たらいいのに。 -
スーティン君、君の絵は破滅的に寂しくて暗いね。パリの町のどこを歩いたって、君が描いたようなギャルソンなんていないじゃないか。「昔は、いた」なんて言わせないぜ。あれは、君自身だったんだから。君みたいなやつ,君以外にいやしないさ。
モンパルナス駅近くの「ゲテ(陽気)通り」から入った、インクの染みのように小さい「G.ガティ広場」に君は年がら年中寒そうに立っている。昼時ともなれば,まわりでパンをかじる男や女がベンチに座ってるけど,誰も君のことを見やしない。
そういえば、精神を病んだ人たちが入る「サン・タンヌ病院」の小径に君の名がついていたね、「シャイム・スーティン小径」と。
【スーティン像(アルビ・ブラタスarbit blatas 作)・・・ガストン・バティ広場】 -
首を傾げ、胸に両手を当てて、君はなにを夢想するのか。遠い遠い、神々の時代を思い出しているのか。
母親アフロディテにも父親ヘルメスにも似た美しい少年。そんな少年に夢中になった水の精(ニンフ)のサルマキスは、少年が衣服を脱ぎ捨てて、澄んだ泉で水浴びするのを、その裸身を目の当たりにして、燃え上がる恋の炎に抵抗できない。彼女は、水に飛び込むと、無理矢理少年を抱きしめ、からみついたまま、神々にこう祈った。「永遠に、この人と一体になりますように!」
この願いを神々は聞き入れた。二人の身体は混ざり合って合一し、男でもあり女でもある姿に、男でもなく女でもない姿になった。
君の名は、父と母の名を等しくもらって、ヘルマフロディテ。
【「ヘルマフロディテ」・・・ザッキン作(ザッキン美術館)】 -
一体君は、落下しているのか,それとも上昇しているのか。平和なリュクサンブール庭園で、そんな姿は場違いじゃないか。
人騒がせだね。
【フィリップ・セネ Philippe Seené 作「マッハIII」】 -
やあ、驚いたなあ。君は大詩人らしいけど、牛が食べ物を反芻するように、アルコールをためておいて反芻するのだね。それなら、酔いはずっと持続するからね。
もしかしたら、君の名前はヴェルレーヌ?
そんなことないよね。確かにヴェルレーヌはこの辺に出没していたけど、百年も前のことだもの。
【アクセル・カッセル Axel Cassel 作「酔いどれ詩人」・・・リュクサンブール庭園】 -
君は真剣そうな顔をして乗っているけど,ロバ君は慣れたもの。含み笑いをしながら、軽々と歩いているよ。なにしろ,ロバ君は二千年前に、あのイエス様を乗せたことがあるんだから。
【リュクサンブール庭園】 -
マダム、こんなところにいらっしゃったのですか。もう少しで、通り過ぎてしまうところでした。実際、今まで何度も通り過ぎていました。リュクサンブール庭園の茂みの中で、遠くから聞こえる子供たちの歓声に、マダムはじっと耳を傾けているのですね。
今でも昔でも、夢中になって遊ぶ子供たちの心はひとつ、たくさんの童話をお書きになったマダムには、そのことがよくお分かりでしょう。『模範的な女の子』や『学問のあるロバの話』や『ソフィーの不幸』などなど、あなたの童話は決してきれいごとだけですまさせない、芯の通ったレアリスムがありますね。炉辺に集った子供たちに童話を読み聞かせるマダムは、それはそれは魅力的なおばあちゃんだったんでしょうね。
ナポレオンのモスクワ遠征時、あなたの父上ロストプーチン伯爵はロシア皇帝アレクサンドル一世からモスクワ総督に任ぜられ、あの有名なモスクワ大火の責任者にされそうになりましたね。そんなナポレオンの敵を父親に持ちながら、マダムは、フランスの伯爵家に嫁いだのですね。御苦労なさったことでしょう。
ご存知ですか。かつて、あなたの童話は日本でも翻訳されたことがあったのですよ。また復刊されればいいのですが・・・
ねえ、セギュール伯爵夫人。
【リュクサンブール庭園内】
注 : 夫人の訳書は、「少年少女世界の名作文学」第21巻 フランス編3 (昭和41年)小学館 の中の『学問のあるロバの話』です。 -
いくら十九世紀最大の文豪の名をほしいままにしているとはいえ,バルザック殿、そっくり返り過ぎてはいませんか。まるで、下界なぞもう見たくない、そうおっしゃっているようではありませんか。
まあ、お気持ち、わからないではありませんが・・・
なにしろ、貴殿は、毎日毎日二十年間《「夕食をほおばったまま」午後六時に寝て、真夜中に起き、コーヒーを飲んで正午まで仕事》(『フランス文学史』より)をなさり、長・中編小説合わせて百四十編近くに及ぶ『人間喜劇』という膨大な作品をお書きになったのですから。貴殿にしてみれば、この小説世界・・・「私生活情景」「地方生活情景」「パリ生活情景」「政治生活情景」「軍隊生活情景」「田園生活情景」「哲学的研究」に分類されている・・・を構築しながら、人の世のことを知りつくしてしまわれたのだから、下界には食傷ぎみなのでしょう。
十八年の恋が実り、ハンスカ伯爵夫人とめでたく結婚とあいなりました(1850年)が、その時には長年の過度な仕事がたたり、貴殿に余命はほとんどありませんでしたね(同年没)。
お二人の恋の夢、天上を仰いで見続けているのですね。バルザック殿。
【バルザック像(ロダン作)・・・ラスパイユ通り】 -
「ほらほら、芝生は立入り禁止ですよ」なんて野暮なことは言うまい。花婿・花嫁は幸福の絶頂なんだから。
結婚して四半世紀を越えた身には、まぶしくてまぶしくて。写真を撮っているのは、花嫁のご両親?
【モンソー公園にて】 -
手を振っている方向に、ママンがいるのかな。
メリーゴーランドのお馬でも、君は淑女のようにアマゾーヌ(amazone 横すわり乗り)で乗ってるね。ママンのまねをしたのかな。
【エクス・アン・プロヴァンスにて】 -
派手なことの好きだった君が、サン・ジェルマン・デ・プレ教会の隣の小さな広場でおとなしくしているなんて・・・
ベンチの恋人たちは、君の失恋なんて気にも止めず、二人の愛を確かめるのに懸命だね。マリー・ローランサンとの世紀の恋も、セーヌとともに流れてしまったのかなぁ。
君の頭、包帯がないね。戦争(第一次)前の君かな。
【L.プラシェ広場・・・詩人アポリネール像(ピカソ作)】 -
メスナジェ君,今度は窓拭きかい。そんなの変だよ。ガラス窓を汚しているのは君自身なんだから。それとも自分を消し去ろうというのかね。
ここは、メニルモンタン。来るたびに,君と出会い,君の活躍を確認する。君が一番似合う通りだ。
でも先日、リヴォリ通りのサン・ジャックの塔近くで君を見かけたよ。日よけのシートで君は本を読んでたけど、あんな乙にすました街では、「白い男」はまさに白けて見えた。
白濁するパスティスをこよなく愛し、しゃべればアニスの香りを漂わせる、そんな連中だよ、君のことが好きなのは。
【メニルモンタン通り】 -
ニケさん。いやにのびのびしているじゃないか。ルーヴル宮殿の中にいるよりもよほど気持ちがよさそうだね。まさか、逃げ出して来たんじゃないだろうね。
【モンペリエ、現代の古代都市アンチゴーヌ】 -
君ははるばるローマからモンペリエにやって来たんだね。ここは、古代オリンピックをするのに最適さ。思い切り円盤を投げることができるよ。でも、練習のし過ぎには注意しよう。おしりの湿布が痛々しいよ。
【モンペリエの現代の古代都市「アンチゴーヌ」】 -
背中より大きなかばんをしょって、学校へ。ママンに手を引かれた、ピカピカの一年生。
【モンペリエの現代の古代都市「アンチゴーヌ」】
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この旅行記へのコメント (5)
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- じんままさん 2009/03/17 00:34:46
- パリの街の人たち
- スキピオさん、こんばんは。
パリをたくさん旅行されているのですね。
ちがった角度から見るパリの魅力がこの旅行記から感じられ、楽しく拝見させていただきました。
パリはベルギー旅行の際、通過しただけなのですが、ぜひ行ってみたいとずっと思っています。
旅行記、参考にさせていただきます。
今後ともよろしくお願いいたします。
じんまま
- スキピオさん からの返信 2009/03/22 21:19:24
- RE: こちらこそ、ようこそ。
- じんままさん、こんばんは。
こちらこそ,よろしくお願いします。今度,ぜひパリをぶらついてみて下さい。おもしろいです。もちろんビールも楽しみのひとつです。
今年の夏も行くつもりです。
-
- パルファンさん 2008/11/07 22:54:39
- 大好きな映画
- スキピオさん、こんばんは〜
また、趣きのある旅行記♪
あぁスキピオさんの・・と一目でわかる。
表紙は、大好きな映画の一つ「Les uns et les autres」(あってる?)
に出たルドルフ・ヌレーエフなんですねー
そして、こんな像があったとは!シラナカタ・・
とっても読み応えがある旅行記で、このあとじっくり見せて
頂きます。
まずは一言お伝えしたくってのカキコミでした。
パリをはじめとした新たな旅行記楽しみにしております♪
- スキピオさん からの返信 2008/11/10 23:53:58
- RE: 大好きな映画
- パルファアンさん、こんばんは。
さっそく遊びに来てくださり、ありがとうございます。自分の思い込みだけの旅行記なのですが、よろしくお願いします。
はい、原題は「Les uns et les autres」です。すばらしい映画ですね。クロード・ルルーシュの作品では、他に『遠い日の家族 Partir, revenir』もいいですね。これも時代は第二次大戦ですが、こちらのキー・ミュージックは「ラフマニノフ」・・・
本当に、ルルーシュの映画はいいですね。
- パルファンさん からの返信 2008/11/13 22:53:27
- 遠い日の家族のDVD
- こんばんは
映画は好き、と言っても子育ての時代はすっぽり抜けていまして
「遠い日の家族 Partir, revenir」は知りませんでした。
人間の悲しみを描いているようですね。是非みたいな・・
DVDにはなってるのかしら?
キー・ミュージックが「ラフマニノフ」・・となると更に気になりますね。
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