哀愁の街リスボン

2007/06 - 2007/07

石畳の上で僕はたたずむ

エリア リスボン(ポルトガル)

• 航空会社: KLMオランダ航空

哀愁の街リスボンとはよく言ったものだと思う。
大航海時代の栄光はいずこへ。
裏寂れた街、それが最初の印象であり、最後の印象でもある。

市電の28番に乗りサン・ジョルジェ城を目指す。
いくつかの坂といくつかのカーブを過ぎ、
停留所に降り立つと、ポケットの財布が消えていた。
悪くない。
だってスリにあうなんてそう体験できる事じゃない。

ポルトガルの犬たちはいつも寝そべっている。
暑いし、他にするべきことがないのだろう。

ホテルの窓を開けると、向かいのアパートが見えた。
カーテンの向こうでせわしなく動く住民の姿は、
まるで古いサイレントムービーのようだった。
やがて一匹の猫が現れ、映画の終わりを告げる。

七つの丘の街と呼ばれるだけあって
いたるところに坂と階段がある。
かつてはこの丘を上がり振り向けば、
世界中を行きかう帆船たちが港にひしめき合っていたのだろう。

真夜中のロシオ広場
カフェは閉まり
人影もおぼろに
色あせてゆく
僕はたたずむ

犬をつれ、道端に座り込む女性。
「写真を撮ってもいいかな？」
「いいけどこの仔お腹を空かせてるの」
了解。
小銭を差し出し、シャッターを切る。
犬は僕を見つめる。

すられた財布が見つかった。
お金を抜かれ落ちているのを見つけた女性がいるらしい。
彼女は僕のホテルまで財布を届けてくれた。
いくらかのお礼を渡そうとしたが、受け取らずに去っていった。
彼女はマリアと名乗った。
いい旅ができたと思う。