2007/08/08 - 2007/08/12
1870位(同エリア4544件中)
huwaさん
個人の邸宅だったところが美術館になった、という
小さな美術館って すてきですよね。
品川・御殿山の邸宅街にも そんなすてきな場所があります。
JR品川駅から徒歩15分。
この大きな石垣に沿って 坂道を上ります。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 新幹線 JRローカル 私鉄 徒歩
-
到着しました。
原美術館。
昔の邸宅って、いいですね。
敷地が広くて、門から玄関までの間に
大樹が枝を広げていたりして、
外から見える前庭だけでなく、
建物の向こうにも
広々とした芝生の中庭があったりして…。
朝から昼 昼から夕方へと お日様の動きとともに
時間の流れをゆったり感じながら
一日を過ごせそうなお家です。 -
門の前の石畳に 何か描かれています。
「KEN」っていう署名があるんですけど、
どなたの絵なんでしょう。 -
木立に包まれて、外観がよく見えませんが、
昭和13年にバウハウス様式で建てられた建物。
設計は銀座和光や横浜ニューグランドなどを建てた
建築家・渡辺仁。
カタカナの「フ」の字を逆にしたみたいな形をしていて、
ゆるく弧を描く廊下に特徴がありますが、
派手さはなく むしろつつましいまでに
シンプルなたたずまい。
建てられた当時には、このシンプルさこそが
先端をゆくモダン・デザインだったのでしょう。
モダン・アートの小さな聖地ともいうべき美術館に
本当にふさわしく。
残念ながら撮影を許されているのは この前庭だけ。 -
多田美波「明暗No.2」
つるりとした鏡のようなこの作品
周囲をぐるりと歩いて回りながら見るのが好き。
そこに映り込む自分の姿が
まるで深い森の中を散策しているように見えて
ちょっとした異空間体験を味わえるんです。 -
中庭の芝生に面して
磯崎新アトリエによって増築された
ガラス張りの とても雰囲気の良いカフェがあります。
今回、カフェから眺める広〜い芝生に
目にも鮮やかな白と緑のインスタレーションが
展開されていて、
もうもうとっっっても気に入ってしまったので、
写真に残したかったのだけど
(作品とコーディネイトされたお料理も一緒に)…。。。。
撮影は不可。
撮影されたポストカードも売られてはおらず
…しくしくしく;;
しかたがないので、パンフのみ購入。
その表紙と案内用ハガキから
雰囲気をご想像くださいませ。
泉紺「ある庭師−多分のひととき」。 -
そしてまた長い坂道を下ります。
並木が影を落とす歩道に沿って、
えんえん続くこの石垣。
この向こうにあるのは、
三菱財閥を創設した岩崎家のお屋敷なんです。
あの鹿鳴館を設計したジョサイア・コンドルによる
それはそれは華麗な西洋館だそうです。
本物の豪邸ってこういうのを言うんですね〜。
外からは建物なんて全然見えないんですよ。
石垣と樹木だけしか^^;
現在は三菱開東閣という
法人所有のクラブになっています。
残念ながら一般公開はされていません。 -
でも嬉しいことに
ジョサイア・コンドルが岩崎家のために造ったお屋敷は
そこだけではないんです。
上野・池之端にもあるんですね〜。
こちらは東京都所有で、
ちゃ〜んと一般公開してくれています。
というわけで、山手線に乗って上野に移動〜。
やっぱり外からは建物の影も見えません。
門を入ってゆるやかにカーブする坂を上ってゆくと
木立の間からようやくお屋敷が姿を現します。
ミステリアスな物語の始まりのように。
子供のころに読んだ『ジェーン・エア』とか
『レベッカ』とかの、大豪邸を舞台とした物語を
思い出しちゃう。
住み込みで働くためにやってくるヒロインも、
そういう設定で執筆している作者も、
お屋敷が見えてくるこの場面ですご〜くドキドキ
したんだろうな〜。。 -
軽やかな白い下見板張りの外壁。
天然スレート葺きの角ドーム。 -
二階のこの
三連の窓のあたりがとても素敵〜。
ジャコビアン様式というのだそうです。 -
正面玄関は北向き。
強い光は差し込みません。
淡い光にふさわしい
淡い色のステンドグラスに
上品に飾られています。 -
三連窓の内側は 階段室でした。
階段って上り下りしながら眺めが変わるので
とてもドラマティックな場所ですね。 -
だから階段は 建築家がとても腕をふるうところ。
手すりや柱の装飾も 手が込んでいます。 -
天井も 壁紙も 床の寄せ木やタイルも
マントルピースのデザインも
一室一室ちがいます。 -
西側の家族用玄関にも
こんな可愛らしいステンドグラス。 -
重厚な北側階段あたりとは対照的に
南側には明るい光がふんだんに溢れています。
わ〜コンドルが得意としたコロニアル様式!
優美な白い手すりの向こうに
輝く緑の芝生がまぶしい! -
なぜコロニアル(植民地)風と呼ぶのかといえば。
このような広々としたベランダをめぐらすのは、
西洋にはない西洋建築だからなんですって。 -
高温多湿なアジアでは
風を通すために 広い開口部をもうけながら
同時に強い日差しをさえぎる必要があります。
そこでアジアにやってきた西洋人建築家たちが、
東南アジアの家屋の様式を模倣して
生み出したのがこうしたベランダだったのだとか。 -
それにしても
上下2層にベランダをしつらえてしまうなんて
コンドルは本当にベランダ好きだったんですね〜(笑)。 -
隣にはまったく趣の違う木造平屋の建物があります。
コンドルがスイスの山小屋風にデザインした撞球室。
つまりビリヤード専用の小屋です。
撞球室は鹿鳴館にも(もちろんコンドルの設計で)
別棟として作られたそうですから
岩崎家のご当主の趣味というより、
社交上の必要から建てられたものでしょうか。 -
さて次の行き先はここです。
国立西洋美術館。
緑に映えてそびえるのは
オーギュスト・ロダン「地獄の門」。 -
よい美術館ですよね〜。
常設展は自由に撮影させてくれるし。
無料の日はあるし。
モネのすてきなコレクションはあるし。 -
でも今回の私の主目的は
日本で唯一のル・コルビュジエの建築を見ること。
森美術館での大規模展覧会で
しっかり勉強してきた直後なので
建物のそこかしこにコルビュジエらしさを
感じ取ることができて
いささか興奮気味になります。
このスロープなんか サヴォワ邸にそっくり!!! -
この階段。
手すりは設計図にはなかったことでしょうね。
きっと。 -
予定外にはまってしまったのがこの展覧会。
「祈りの中世 ロマネスク美術写真展」。
ロマネスクといえば、どっしり厚い石の壁、
シンプルな外観、やさしい円いアーチ
…というイメージしかなかったのですが…
内部には思いがけないほど
豊かな図像世界があって、
たとえば… -
こんな彫刻が一本一本の柱に刻まれているのは
フランスの修道院の聖堂。
外の「地獄の門」よりよっぽど怖くないですか!?
伊東忠太も真っ青のグロテスクさ!というか
…築地本願寺の鳩や牛が怪奇趣味と言われるなら、これはどうなるんだ〜っていう感じです。
(そういえば伊東忠太はロマネスク建築からも影響を受けていると読んだことがあった気がします。)
ちなみにこの彫刻、左端にいるのがモーセで、
例の十戒が刻まれた石版をふりかざして
怒っているところだそうです。 -
写真はこちらの本からお借りしました。
迷わず買ってしまった『ロマネスク 光の聖堂』。
撮影は六田知弘さん。 -
一夜明けて旅の最終日。
東京駅で荷物を預けてからお散歩に出発します。
コンドルの建築を堪能した後なので、
その第一期のお弟子さんだった辰野金吾の東京駅を
激写〜!
と思ったのだけれど、
外観は工事中で撮れませず。
しかたなくドームの内側を下から見上げて
撮ってみました。
きれいに見えますけど よく見たらあちこち
ボロッと穴が開いています。
大丈夫なのかな?? -
丸の内オフィス街。
ここは三菱がコンドルに
三菱1号館を建てさせたのを出発点に
オフィス街として発展してきたところ。
もちろん当時の建物はほとんど残っていませんが、
古い建築が新しく建てかえられるときに
古い建築のデザインを下層階で残す
というのが最近の流行りである模様。
たとえばこれは日本工業倶楽部の建築。 -
正面玄関の石材・石柱は、
大正9年竣工の旧会館のものを
使用しているそうです。 -
このようなファサード保存という手法には
賛否両論ありますが
たとえばこんな可憐なステンドグラスが
残されているのは嬉しいな。
大正時代のカケラを見つけたっていう感じがして。 -
よいお天気です。
お堀端を歩いていきましょう。 -
江戸城だったころの面影を
けっこう今も見ることができるんですね。 -
白鳥ものんびり泳いでいます。
-
目的地に近づいてきました。
大正15年竣工、平成5年改修の竹橋。
黒い球を載っけたデザインがかっこいい〜! -
名前は竹橋ですが、
ご覧のとおり石の橋です^^ -
そしてこの旅の最後の目的地。
東京国立近代美術館。
青い空に向かってそびえている黄色と黒の柱は
イサム・ノグチの「門」という作品。
作者の指示で 色が時々塗り替えられる作品
なのですって。
その下には原美術館と同じ 多田美波さんの作品が
ありますが、こちらのは題がなぜか
「Chiaroscuro」って
イタリア語で表示されています。 -
同じ作品でも
木陰にあった原美術館のものと違って
すごくシャープに光を反射してまぶしいので、
周囲をぐるっと歩いて回る気にはなりません(笑)。
こうして中から黒いブラインドを通して見ると
まぶしさが緩和されてちょうどいい感じ! -
見に来たのは「アンリ・カルティエ=ブレッソン
知られざる全貌」展。
まるで映画のワンシーンだけを切り取ったような
緊迫感のある写真の数々。
意味があるようなないようなひとコマだけを
見せられて、前後にどんな物語があるのかと
ついつい想像してしまい、
見るのにとても時間がかかる写真たちです。 -
ここのレストラン「クイーンアリス・アクア」は
大阪の国立国際美術館にもあって、
雰囲気もお味もとても良いので
楽しみにしていたんだけど…。
ものすごい人気で
(近所に他にお店がないせいもあって?)
満席で入れませず(泣)。
展覧会を見る前に レストランを
予約しておくべきだったんですね〜。
横須賀美術館でも同じ失敗をしたばかりなのに
学習能力のない私だった〜。。。
しかたなくお昼をあきらめて帰路に着いたのでした。
夏のアートめぐり旅は これでおしまい〜^^
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この旅行記へのコメント (2)
-
- かにちゃんさん 2008/04/02 16:08:17
- 原美術館♪
- huwaさんへ〜☆
こんにちは!
アート&建築めぐりは、まだまだ続きがあったのですね!
昨日拝見していてうれしくなりました♪
どの写真にコメントしようかしら〜、と迷って、
結局、投票だけで帰ってきてしまって・・・m(__)m
で、やっぱり原美術館ですね(^・^)
でも私、まだ行ったことないのです。
行こう、行こう、と思ってて、なかなか、かないません。
前に、息子にメールしたら、ここのカフェから返信きたことあります。
写真はダメでも、ケイタイはいいのかしら?
お料理も撮ったらダメだなんて・・・残念でしたね、
でも脳裏にくっきりと映像が残っているでしょう?
近・美のレストランは、いつもいつも満員です。
少なくとも私は、ここと世田谷美術館で、入れたためしがありません。
横須賀美術館は、昨夏、できてすぐだったせいか、入れましたよ(^_^)v
椅子の写真、やっぱり撮られたんですね(^_-)-☆
昨日、たまたま見ていたビーズの先生のブログでも、
「美術館の椅子は、いい」みたいのがでてきて、(それは島根県立美術館だった)
思わず、huwaさんを思い出しました(*^_^*)
お写真もコメントも、とってもhuwaさんらしくて、
充実した休暇を過ごされたことが、よくわかりました。。。
- huwaさん からの返信 2008/04/06 13:59:59
- やっと完成しました!
- かにちゃ〜ん^^ようこそ!
いつもいつも すてきなコメントと投票ありがとうございます!
夏の旅行記が やっとやっとやっと完成しました。
丁寧に見てくださって本当に嬉しいです。
原美術館のカフェには しっかりと
「料理も含めて撮影はご遠慮ください」
と書かれた札がテーブルの上にありました。
ガラス張りだし お料理を撮りながらお庭の作品も撮れてしまうので
無理もないです…(涙)。
でも かにちゃんのおっしゃるとおり
記憶には鮮やかに残っています。
緑の芝生の上に 緑に塗られた自転車が置かれ
白いパラソルが日陰をつくり
ブロッコリーの絵が描かれた白いお皿が何枚も
ぐるっと弧を描くように置かれていました。
お料理もアートとコーディネートされた ブロッコリーのペペロンチーニ。
真夏の晴れた日で 暑いのに
目は涼しさを感じてしまう
そんなきれいな緑と白でした。
実際に暑さをものともせず
お庭に持って出られるガーデンバスケットを注文して
パラソルの下でお食事しているカップルもいらっしゃいました^^
(ガーデンバスケットは2人用なのです。ワインもフルボトルつき!)
そうそう このカフェも人気があるので
もし行かれたら 11時のオープンと同時にカフェへ直行し
早めのランチを取られることをおすすめします^^
そのほうがすいていて気持ちよくカフェ空間を利用できますし
人気メニューはすぐ品切れになってしまうのです。
作品鑑賞は そのあとでごゆるりと♪
やっぱり椅子写真 あちこちで撮ってきてしまいます〜。
島根県立美術館…今HPを見に行ってみたら
日没時間の書かれたページがありました。
夕日が見られる美術館なのでしょうか!
その時に かっこよいここちよい椅子に座れるのかしら?
憧れの美術館がまたひとつ増えました。
ありがとうございます!
ではではまたね。
今からかにちゃんのブログにも遊びに行きま〜す!
huwaより。
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