2006/05/16 - 2006/05/18
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arzaga10さん
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新緑の世界遺産・屋久島で、
縄文杉に会うため、登山に初挑戦。
若葉と潮は薫り、水の音・鳥の歌は耳を奪います。
屋久杉千年の息吹に精霊を感じた、忘れえぬ旅です。
※訪問地〜縄文杉登山、白谷雲水峡
- 一人あたり費用
- 3万円 - 5万円
- 交通手段
- 船 ANAグループ
PR
-
羽田から鹿児島まで飛び、鹿児島港から高速船で
屋久島をめざします。今回は、弟との二人旅でした。
桜島は雨雲にすっぽり覆われ、裾野を覗かせるのみ。
かなりの雨が降っていました。
実は予約していた高速船が欠航になり、途方に暮れ
たのですが、船を運航する会社がもう一社あることを
思い出し、問い合わせると「予定通り運行します」と、
あっけなくも頼もしい返事。無事、屋久島に辿り着いた
のでした。 -
屋久島も当然のように雨でした。宮之浦港の近くで
予約していたレンタカーを拾い、惣菜から日曜大工の
道具まで揃うスーパーに寄ってから、山道を走ること
10分ほど。コテージ型の宿に到着です。携帯電話は
通じません。
屋久島はとにかく雨が多い所です。年間の降水量は
東京の3倍近く。「月に35日雨が降る」とか、「島の
どこかでいつも必ず雨が降っている」などと言われて
いるそうです。 -
日没まで時間がありそうだったので、島の周りを
ドライブすることにしました。屋久島の特徴を表す
表現がもう一つ。「洋上のアルプス」です。海抜0の
海岸線から1900mの九州最高峰まで一気に駆け
上がるような地形のためです。標高差が大きいため、
亜熱帯〜冷温帯と気候が幅広く、植生も多様です。
高速船から島影が見えた時、弟が「鬼が島みたい」
と言いました。ちょうどそんな感じの、海の上に山が
にょきっと聳えているようなシルエットなのです。 -
一方、海です。屋久島は周囲130km、五角形ぎみの
円形(なんじゃそりゃ)をしています。その北西部に
ある「田舎浜」というビーチです。クリーム色の砂が
美しいこの浜は、5〜7月頃にかけてウミガメが産卵
に来ることで知られています。ちょうどこの時期には
産卵の観察ツアーも行われます。今回の旅の中でも、
後日ツアーに参加することにしました。 -
島は緑で溢れています。中でも印象的だったのが、
木々や岩肌を覆うコケ。高温多湿なので、よく育つの
でしょう。道路のアスファルトにもたくましく生え、
白いラインを消してしまうほどの勢いでした。
耳を澄ますと、島のどこにいても水の音が聞こえて
きます。海の近くでは波、山の近くでは川や滝です。
そしてそこに、常に数種類の生き物の鳴き声が重なり
ます。鳥や虫、そしてサルとおぼしき声です。まるで
自然の音楽。エンジンを停めて聴き入りました。 -
ヤクザルの群れに会いました。ニホンザルの亜種
で、より小型なんだそう。こちらには関心を示さず、
親子と思しきいくつかの集まりになって、寄り添う
ように身を寄せ合っていました。
以前、日光のいろは坂で野生のニホンザルに威嚇
されたことがあるため、サルといえば獰猛なイメージ
を持っていましたが、認識を改めるような穏やかな
様子でした。 -
初日最後のお楽しみは夕食。屋久島名物を求めて
宮之浦にある居酒屋へ。カウンターと小上がりのある
店は、地元の人もよく利用するようでした。
一品目は「首折れサバ」の刺身。水揚げしてすぐに
サバの首を折り、血抜きをして鮮度を保つそうです。
もちろん酢で締めたりはしていません。「サバ観」を
覆す味でした。締めサバももちろんおいしいですが、
こちらは酢がない分、たっぷりした脂がダイレクトで
舌に届きます。ありがたや…。。。 -
二品目は、トビウオの唐揚げ。片栗粉がまぶされ、
翼のようにヒレを広げた、「飛んで」いる時の姿の
まま登場。驚きました。サンマより身が厚くて短く、
身は淡白な白身。揚げてあるからこそ、ちょうどいい
コクが出てます。ヒレも煎餅みたいに食べられます。
一仕事終えた板前のおじさんに訊くと、ヒレを開いた
まま油にくぐらせて「姿揚げ」に仕上げるそうです。 -
一夜明けて、2日目。今回の旅のメインイベント、
縄文杉登山に出かけました。朝4時、まだ暗いうちに
起き出して、宮之浦の宿からレンタカーで1時間、
5時頃に「荒川登山口」に着きました。
…が、豪雨でした。縄文杉登山は往復で半日かかる
道のりです。本当に行けるのか不安になりましたが、
他の登山客も続々と集まってくるし、ともかく出発。
片道10キロのうち最初の8キロは、伐採した杉の木を
運ぶためのトロッコの軌道に沿って歩きます。 -
登山口を出てからしばらくは、景色が変化に富んで
いて飽きません。昔の集落あとや、トロッコの軌道を
川に渡すための橋などに出会いながら、大雨の中を
妙にルンルンで歩きました。橋はあくまでトロッコ用
らしく、手すりのないものもあります。7〜8mほど
下に増水した川がしぶきを上げているのを見下ろすと
ゾクゾクします。
心配だった雨も、ゴアテックス素材のトレッキング
シューズと雨合羽で完全防水。快適に歩けました。 -
2時間も歩くと雨足は弱まり、陽も射してきました。
トロッコ軌道は延々と続いています。ただの山道より
格段に歩きやすいのですが、正直言って、疲れと共に
だんだんうんざりもしてきます。
でもそんな時、目の前に島の鹿、ヤクシカの親子が
現れました。本州で見るシカより小柄です。さすがに
こちらを警戒していましたが、それでも10mくらいの
距離では逃げません。単調になった道のりに新鮮な
驚きを添えてもらい、疲れを忘れました。 -
トロッコの軌道をようやく歩き終えると、いよいよ
本格的な登山道に入ります。登山はほぼ未経験。
網の目のような木の根に足を取られそうになったり、
チェーンを渡した岩盤の上を慎重に歩いたりして、
少しずつ少しずつ登っていきました。
雨は上がっていました。○○まであと〜キロという
見どころまでの距離を示す看板に励まされながら、
鬱蒼と茂る杉の森を進みました。 -
ハート型の空。「ウィルソン株」という巨大な杉の
切り株の中です。あの豊臣秀吉が切るよう命じたと
いわれている巨木は、切り株の中が腐ってぽっかりと
穴が空いています。広さはなんと10畳ほど。中には
小さな祠があり、お供え物がしてありました。ここで
一休みするため、登山者も入れ替わり立ち代わり
やってきます。きつい登山もこのあたりまで来ると
最終盤。縄文杉は目前です。 -
そして登り始めて5時間、ついに縄文杉と対面。
樹齢は、2千年とも7千年ともいわれています。今の
姿の日本列島ができるよりも前に生まれたなんて。
写真ではまるで伝わりませんが、そのごつごつした
幹は、円柱ではなくそそり立つ壁に見えるほど巨大。
木という生物として認識できる大きさを超えていて、
命が宿っていることがむしろ不思議に思えました。
自然と、普段ならまず出てくることのない「精霊」と
いう言葉が頭に浮かび、しばし立ち尽くしました。 -
縄文杉の脇にある櫓のような休憩所で食事。弟が
コーヒーを淹れてくれました。贅沢な一杯。この時は
まだ雨でしたが、帰路につくと止んでくれました。
来た道を引き返すだけなので、目新しさは期待して
いませんでしたが、ウィルソン株に戻る頃に陽が差し
始め、やがてピーカンに変わりました。大逆転です。
すると、何やら甘い香りがしてきました。森の新緑が
一斉に薫りだしたのです。なんという清々しさ。足取
りも軽くなり、スタートから11時間でゴールしました。 -
「ええわぁ〜」とばかりに、路肩でグルーミング中の
ヤクザル。クルマで対向車線を走っても逃げません。
サルにもシカにも出会いました。夜には、屋久島を
代表するもうひとつの動物、ウミガメの産卵を見に
行きます。早朝からの縄文杉登山でクタクタでしたが、
ちょうどこの時期から観察ツアーが始まると知って、
事前に予約していたのです。 -
で、産卵観察会へ。永田地区にある「いなか浜」に
集合しました。アカウミガメの上陸が確認されると、
主催者が誘導。物陰からこっそり見守るのを想像して
いましたが、60人の参加者が大胆にウミガメを包囲。
産卵前に近づくと海に引き返すけれど、産み始めれば
逃げも隠れもしないそうです。ピンポン玉みたいな
卵が産み落とされるのを、懐中電灯で照らして観察。
可哀相な気がしましたが、ツアーで観察するのが、
自然の生態への影響を極力抑える方法なのでしょう。 -
3日目は最終日。ハイキングコースとして人気の
白谷雲水峡に出かけました。散策路が整備されて
いて、歩きづらい箇所はほとんどありません。晴れて
いましたが、新緑と苔の織り成す昼なお暗い森の中。
小川や屋久杉、突然出会う動物たちと、変化に富んで
いて見飽きることのない景色が続いていました。
スタートから1時間ほどのハイクで、「もののけ姫」の
舞台のモデルになったというエリアに出ました。 -
その名も「もののけの森」。複雑に枝を絡ませあう
巨木と、それらを覆い尽くす苔たちの世界。屋久杉の
森のような生命の躍動感や迫力とは違いました。
文字通り森閑として、時間が停まっているかのような
空間。訪れる者を拒むような厳しい自然の風情はく、
逆に心を惑わすような異形の木々の造形は、まるで
おとぎ話で迷い込む森のようでした。
人の世の忙しさの中に戻っていく自分をはっきりと
意識しつつ、この薫る島を後にしました。
(おわり)
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