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バスは整備されたハイウェイを1時間ほど走ると、バスターミナルのような場所で停止した。<br />乗り合わせた欧米人パッカーが「ワディ・ラム?」と運転手に聞いている。<br />ここがそのワディ・ラムに行くための分岐点らしい。<br /><br />ペトラの宿に泊まっていた韓国人もワディ・ラムは良い所だよと薦めていた。<br />だが、今回は日程的に厳しいのでスルーとなる。<br />ここで多くの旅行者が降りる。<br />そしてロバっ子も。<br />またしても話しかけるタイミングを失ってしまった。<br /><br />奇遇なこともあるもんだ。<br />二度あることは三度あるのかと、かすかな希望にかけてみた。<br />ペトラからワディ・ラムに来たということは、そのまま南下してアカバを目指す確率が高い。<br />あとは、イスラエルに行くかエジプトに渡るか。<br /><br />まあエジプトに渡るとしたら、そのまま南下して先にルクソールやアブシンベルなど行くルートがスムーズである。<br /><br />やっぱり三度目はなさそうだと思い車窓の眺めに集中した。<br />いよいよアカバに入る。<br />街はかなり大きくて整備されとてもきれいだった。<br /><br />そして途中下車を繰り返してバスターミナルに到着した。<br />バスの運転手に5JD(うろ覚え)を支払ってバックパックを受取った。<br /><br />すぐにタクシー運転手がやってきた。<br />「どこに行く?」<br />「フェリーポートだ。エジプトに行く」<br />「3JDでどうだ?」<br />「二人で?」<br />「もちろん」<br />あちきにとっては値切りようのない運賃なので言い値で乗ることにした。<br /><br />近くに止めてあるタクシーに乗り込む。<br />そして、走り出すと1分もしないうちにすぐに路肩でタクシーが停まる。<br /><br />瞬間的にあちきの体内警報装置が鳴り出した。<br />タクシーの運転手が乗ったまま顔を後ろに向けて話しかけてきた。<br />「エジプトに行くんだな?」<br />「ああ」<br />「スピードボートか?」<br />「もちろんそうだ」<br />「今日は土曜日だからスピードボートはない」<br /><br />なんだと?!<br /><br />「嘘だ」<br />「本当だ。土曜日はスピードボートは出ないんだ」<br />あちきが確認したボートの時刻表は、ネットで見たものだが更新がされいない感じはしていた。<br />このドライバーが真実を言っている可能性は十分にある。<br />もちろんその逆の可能性も。<br /><br />「提案だが、エジプトに行くならエイラットから行くのがいい」<br />エイラット・・・イスラエルか?!<br />「イスラエルのエイラットだって?」<br />「そうだ。ここから10分くらいで国境に着く。あとは簡単だ。船で行くより早いし安い」<br /><br />ふとノブラを見た。<br />アンマンの空港での出来事を思い出す。<br />イスラエルの入国は、相当骨が折れると聞いている。<br />まさに尋問のような入国審査があるとかないとか・・・。<br />そんな状況にノブラは耐えられるはずがなかった。<br /><br />さらに厄介なこととしては、イスラエルの入国スタンプがパスポートに押されると、周辺の一部のアラブ諸国への入国ができなくなる恐れがある。<br /><br />どう考えてもイスラエル入国は避けなくてはならない。<br />「スローボートがあるだろう。それに乗る」<br />ドライバーはクレイジーだと言わんばかりに首を振る。<br />「スローボートの出発は16時くらいで、着くのが夜遅くだ」<br /><br />あちきは瞬時に考えた。<br />あちきらがフェリーポートに行きたいと言った時に、なぜこの話をしなかったのかが気になる。<br /><br />もっと言えば、このままフェリーポートに行けば3JDだが、エイラットにつながる国境に行くほうがそれ以上に稼げるはずだ。<br /><br />「アドバイスありがとう。フェリーポートに行ってくれ」<br />あちきは鋭い眼差しでドライバーを見た。<br />もちろん交渉は終わりの意味をこめている。<br /><br />ドライバーもあきらめたらしく、タクシーを走らせた。<br />フェリーポート着くと、その中まではタクシーが入れない。<br />ゲート付近にある警備員詰め所の前で降ろされた。<br /><br />タクシー運転手は、警備員に話しかけた。<br />「今日はスピードボートはないよな?」<br />「ああ、土曜日はないぞ」<br />どうやら本当らしい。<br />「夕方までここにいるのか?」<br />ドライバーが聞いてきた。<br />時計を見ると9時になろうとしていた。<br />「ああ、そうするよ」<br /><br />実際にエイラットから入るとなると、エイラットのエジプト大使館でエジプトのビザを取らなくてはならない。<br />今回手持ちの資料にイスラエルのデータはないのである。<br />旅としては、盛り上がるがリスクが高すぎる。<br /><br />警備員詰め所前で警備員にパスポートを見せる。<br />警備員は、あそこに行くんだ、と白い建物を指差した。<br /><br />ふと振り返るとタクシーは走り去っていた。<br />あのタクシー運転手は、良い人だったことになる。<br /><br />疑ってすまない。<br />心の中でお詫びをした。

2007 ヨルダン・エジプト旅記 0519-02

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2007/05/15 - 2007/05/24

67位(同エリア77件中)

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morikens

morikensさん

バスは整備されたハイウェイを1時間ほど走ると、バスターミナルのような場所で停止した。
乗り合わせた欧米人パッカーが「ワディ・ラム?」と運転手に聞いている。
ここがそのワディ・ラムに行くための分岐点らしい。

ペトラの宿に泊まっていた韓国人もワディ・ラムは良い所だよと薦めていた。
だが、今回は日程的に厳しいのでスルーとなる。
ここで多くの旅行者が降りる。
そしてロバっ子も。
またしても話しかけるタイミングを失ってしまった。

奇遇なこともあるもんだ。
二度あることは三度あるのかと、かすかな希望にかけてみた。
ペトラからワディ・ラムに来たということは、そのまま南下してアカバを目指す確率が高い。
あとは、イスラエルに行くかエジプトに渡るか。

まあエジプトに渡るとしたら、そのまま南下して先にルクソールやアブシンベルなど行くルートがスムーズである。

やっぱり三度目はなさそうだと思い車窓の眺めに集中した。
いよいよアカバに入る。
街はかなり大きくて整備されとてもきれいだった。

そして途中下車を繰り返してバスターミナルに到着した。
バスの運転手に5JD(うろ覚え)を支払ってバックパックを受取った。

すぐにタクシー運転手がやってきた。
「どこに行く?」
「フェリーポートだ。エジプトに行く」
「3JDでどうだ?」
「二人で?」
「もちろん」
あちきにとっては値切りようのない運賃なので言い値で乗ることにした。

近くに止めてあるタクシーに乗り込む。
そして、走り出すと1分もしないうちにすぐに路肩でタクシーが停まる。

瞬間的にあちきの体内警報装置が鳴り出した。
タクシーの運転手が乗ったまま顔を後ろに向けて話しかけてきた。
「エジプトに行くんだな?」
「ああ」
「スピードボートか?」
「もちろんそうだ」
「今日は土曜日だからスピードボートはない」

なんだと?!

「嘘だ」
「本当だ。土曜日はスピードボートは出ないんだ」
あちきが確認したボートの時刻表は、ネットで見たものだが更新がされいない感じはしていた。
このドライバーが真実を言っている可能性は十分にある。
もちろんその逆の可能性も。

「提案だが、エジプトに行くならエイラットから行くのがいい」
エイラット・・・イスラエルか?!
「イスラエルのエイラットだって?」
「そうだ。ここから10分くらいで国境に着く。あとは簡単だ。船で行くより早いし安い」

ふとノブラを見た。
アンマンの空港での出来事を思い出す。
イスラエルの入国は、相当骨が折れると聞いている。
まさに尋問のような入国審査があるとかないとか・・・。
そんな状況にノブラは耐えられるはずがなかった。

さらに厄介なこととしては、イスラエルの入国スタンプがパスポートに押されると、周辺の一部のアラブ諸国への入国ができなくなる恐れがある。

どう考えてもイスラエル入国は避けなくてはならない。
「スローボートがあるだろう。それに乗る」
ドライバーはクレイジーだと言わんばかりに首を振る。
「スローボートの出発は16時くらいで、着くのが夜遅くだ」

あちきは瞬時に考えた。
あちきらがフェリーポートに行きたいと言った時に、なぜこの話をしなかったのかが気になる。

もっと言えば、このままフェリーポートに行けば3JDだが、エイラットにつながる国境に行くほうがそれ以上に稼げるはずだ。

「アドバイスありがとう。フェリーポートに行ってくれ」
あちきは鋭い眼差しでドライバーを見た。
もちろん交渉は終わりの意味をこめている。

ドライバーもあきらめたらしく、タクシーを走らせた。
フェリーポート着くと、その中まではタクシーが入れない。
ゲート付近にある警備員詰め所の前で降ろされた。

タクシー運転手は、警備員に話しかけた。
「今日はスピードボートはないよな?」
「ああ、土曜日はないぞ」
どうやら本当らしい。
「夕方までここにいるのか?」
ドライバーが聞いてきた。
時計を見ると9時になろうとしていた。
「ああ、そうするよ」

実際にエイラットから入るとなると、エイラットのエジプト大使館でエジプトのビザを取らなくてはならない。
今回手持ちの資料にイスラエルのデータはないのである。
旅としては、盛り上がるがリスクが高すぎる。

警備員詰め所前で警備員にパスポートを見せる。
警備員は、あそこに行くんだ、と白い建物を指差した。

ふと振り返るとタクシーは走り去っていた。
あのタクシー運転手は、良い人だったことになる。

疑ってすまない。
心の中でお詫びをした。

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  • ワディ・ラムへと続く道。

    ワディ・ラムへと続く道。

  • アカバのバスターミナル。

    アカバのバスターミナル。

  • アカバ、フェリーターミナル。

    アカバ、フェリーターミナル。

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