2007　ヨルダン・エジプト旅記　プロローグ

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プロローグ

「男を磨く旅がしたい」

あちきが担当する店の男性社員、コードネーム「ノーズブラッド」（以下ノブラ）が突然そんなことを言い出した。
ノブラは、台湾に一度ツアーで参加した程度の海外旅行歴。
あちきが過去に旅したような背負い系ひとり旅は行ったことがなく、あちきが過去に旅した体験談に興味を惹かれていたようだった。

さっそく一人で行けそうなところをリストアップ。
やっぱりチープに旅するならアジアが一番だろう。
ノブラの都合も考えずに、勝手にタイなどを勧めていると、嫌な噂が舞い込んできた。

「６月に別の人事異動が出そうですよ」と来たもんだ。

これには、あちき自身の異動の気配を感じ取り、ノブラが帰国したら、次にあちきも旅に行く予定だったのが中止になってしまう危険性が出てきた。
そこで閃いたのが、このノブラのひとり旅に便乗することだった。
こうして半ば強引に部下と上司の旅が始まったのだった。

今まで計画していた初心者向けのヌルイ旅が中級者向けの旅に切り替わる。
あちきがこの当時一番行きたかったのが、ウズベキスタンだった。

もちろんそこに行こうと、ノブラにいろいろとウズベキスタンを説明するが、聞いたこともない国名で、もちろんどこにあるかもわかんないので、かなり引き気味になってしまった。

そこで第２案として考えていたのがエジプトだった。
これにはノブラも賛成だった。

さっそく航空券を調べてみる。
ＡＢロードネットでエジプト行きの航空券を検索すると、エミレーツ航空が一番安いことを知った。
さっそく航空券を売り出している旅行代理店の数社に問い合わせをかける。
空席はなんとかなっているのだが接続が非常に悪かった。

今回エミレーツ航空を利用すると、名古屋出発が２３時で経由地のドバイに到着が翌４時４５分（現地時間）、そしてカイロ出発が１５時と乗り継ぎで時間が無駄になってしまう。
前回のトルコも同じエミレーツを利用したが、接続が悪かったのでドバイで１泊した。

実際ドバイで１泊したが、主要な観光地は１日で周れて、サファリツアーにも行ってしまった。
今回もドバイで滞在することは、逆に退屈で死にそうになる。

何か他にいい手はないかと、過去の旅記を読み返したり、旅先で知り合った旅友からの情報である国の名前が挙がってきた。
その国の名前は、ヨルダンである。
トルコに行ったときに同じ部屋に泊まっていたポルトガル人女性パウラがトルコに来る前に寄ってきた国である。
ペトラ遺跡が有名で非常に素晴らしい国と言っていた。

さっそくヨルダンのガイドブックを手に入れるために本屋に行く。
が、数軒周ったが地球の歩き方すらなかった。
他の旅行ガイドブックぐらいあるだろうと探してみたがこれもなし。

何故だ？

いろいろと調べると、地球の歩き方も２００４年にヨルダン・シリア・レバノンを刊行して以来増刷や改訂版がまったく出版されていなかったことを知る。
それどころか他の旅行ガイドも、このヨルダンやシリアは避けられているのかほとんど存在しなかった。

そもそもヨルダンは、イスラエルの東隣にヨルダン川を挟んで存在する。
どこからともなく火薬の臭いがしてきそうな国である。
これは行くなという啓示なのだろうか。
旅人は、時には迷信深くなくてはいけないというのが、あちきのセオリーである。

だが今回は、ひとり旅ではない。
もし万が一のことがあれば、ノブラがいるではないか。
彼ならきっと上司のために命も捧げるだろう。

そんな心強い身代わり地蔵が同行することもあり、旅行代理店にドバイからヨルダンの首都アンマンに行く航空券のスケジュールと空きを確認。
すると７時２５分に出発で接続もばっちり、もちろん空席ありと回答を得た。

あとは、ノブラにペトラ遺跡の素晴らしさだけを説いてその気にさせることである。
これは非常に簡単だった。
面倒なので業務命令でヨルダン行きを決定させた。

これで旅の行く先が決まった。

ヨルダン・エジプト旅記のスタートである。

２００７年５月１５日、男二人の旅は始まったのだった。


※写真左が、ノブラ。
　特技は鼻血。
※写真右が、あちき。
　特技は連休。