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「自転車泥棒」は1948年製作、ヴィットリオ・デ・シーカ監督のイタリア映画を代表する名作だ。製作された1948年はイタリアも日本と同様に第2次世界大戦に敗戦し、国民全体が貧困の中で何とか生きようとしていた時代。2年間失業中のアントニオ・リッチは妻のベッドシーツを質草にするかわりに自転車を質屋から出してようやくポスター貼りの仕事を得た。だが仕事中に一瞬のスキをつかれて大切な自転車を盗まれてしまう。アントニオは必死に自転車泥棒を追いかけたがトンネルで見失ってしまう。警察も相手にしてくれない。だが生活がかかるアントニオは諦める訳にはゆかず息子のブルーノを連れて泥棒市を回り、犯人と思しき男を追及するが実らない。思い余ったアントニオはサッカー場近くで自転車を盗んでしまうがすぐに捕まりサッカー見物帰りの人達から子供の前で袋だたきに遭う。何とか許してもらったアントニオは恥ずかしさとさらなる絶望感に涙を禁じえない。息子のブルーノは父が精一杯努力したにもかかわらず報われず、大衆から蔑まされた様を一部始終見ていた。子供の前で自転車泥棒になってしまったことへの恥ずかしさと絶望感に沈みきった父の心情を悟った6歳の息子、ブルーノは優しく父の手を握ってくれた。父を決して軽蔑することなく父の生き様を息子が解っている、父にとってこれ以上の励ましは無いだろう。父と息子は2人で手をつないで重い足取りで去る。これがラストシーンの悲しいストーリーだ。この映画が不朽の名作になったのは、敗戦で国民全体が絶望の淵に立たされ、世の中が殺伐とした時代でも、変わることの無い父と息子のきずなが万人の心を打つからだと思う。この映画についてはNHKの大河ドラマなどで著名な脚本家の竹山洋氏がNHKの「世界わが心の旅=ローマ〜父の面影」で1997年に紹介された。ご自身の父との思い出と重ね合わせて「自転車泥棒」のロケ地を回り、父との思い出を回想する、という内容だったが、私の心にも深く刻み込まれていた。<br />そして、いつか「自転車泥棒」のロケ地を回りたいと思っていた私にとってロケ地訪問が今回のローマ滞在の目的になっていた。<br />10月20日はアントニオが泥棒を見失ったクイリナーレの丘のトンネル、かつて自転車などの盗品の市があって現在も自転車屋が並ぶポルタ・ポルテーゼの市、アントニオとブルーノが絶望の淵で歩いたテレヴェ河岸とパラティーノ橋、アントニオが自転車を盗み、すぐに捕らえられたフラミーニオ・サッカースタジアム周辺を映画のシーンを思い浮かべながら歩いた。イタリアで驚くことは撮影から60年近く経つというのにパラティーノ橋から見る光景など変わっていないことだ。今回のローマは私にとっても「世界わが心の旅」になった。<br />(写真はパラティーノ橋周辺の光景)<br />

欧州・バックパッカーの旅【40】 イタリアのローマで「自転車泥棒」のロケ地を訪問

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2006/10/20 - 2006/10/20

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さすらいおじさん

さすらいおじさんさん

「自転車泥棒」は1948年製作、ヴィットリオ・デ・シーカ監督のイタリア映画を代表する名作だ。製作された1948年はイタリアも日本と同様に第2次世界大戦に敗戦し、国民全体が貧困の中で何とか生きようとしていた時代。2年間失業中のアントニオ・リッチは妻のベッドシーツを質草にするかわりに自転車を質屋から出してようやくポスター貼りの仕事を得た。だが仕事中に一瞬のスキをつかれて大切な自転車を盗まれてしまう。アントニオは必死に自転車泥棒を追いかけたがトンネルで見失ってしまう。警察も相手にしてくれない。だが生活がかかるアントニオは諦める訳にはゆかず息子のブルーノを連れて泥棒市を回り、犯人と思しき男を追及するが実らない。思い余ったアントニオはサッカー場近くで自転車を盗んでしまうがすぐに捕まりサッカー見物帰りの人達から子供の前で袋だたきに遭う。何とか許してもらったアントニオは恥ずかしさとさらなる絶望感に涙を禁じえない。息子のブルーノは父が精一杯努力したにもかかわらず報われず、大衆から蔑まされた様を一部始終見ていた。子供の前で自転車泥棒になってしまったことへの恥ずかしさと絶望感に沈みきった父の心情を悟った6歳の息子、ブルーノは優しく父の手を握ってくれた。父を決して軽蔑することなく父の生き様を息子が解っている、父にとってこれ以上の励ましは無いだろう。父と息子は2人で手をつないで重い足取りで去る。これがラストシーンの悲しいストーリーだ。この映画が不朽の名作になったのは、敗戦で国民全体が絶望の淵に立たされ、世の中が殺伐とした時代でも、変わることの無い父と息子のきずなが万人の心を打つからだと思う。この映画についてはNHKの大河ドラマなどで著名な脚本家の竹山洋氏がNHKの「世界わが心の旅=ローマ〜父の面影」で1997年に紹介された。ご自身の父との思い出と重ね合わせて「自転車泥棒」のロケ地を回り、父との思い出を回想する、という内容だったが、私の心にも深く刻み込まれていた。
そして、いつか「自転車泥棒」のロケ地を回りたいと思っていた私にとってロケ地訪問が今回のローマ滞在の目的になっていた。
10月20日はアントニオが泥棒を見失ったクイリナーレの丘のトンネル、かつて自転車などの盗品の市があって現在も自転車屋が並ぶポルタ・ポルテーゼの市、アントニオとブルーノが絶望の淵で歩いたテレヴェ河岸とパラティーノ橋、アントニオが自転車を盗み、すぐに捕らえられたフラミーニオ・サッカースタジアム周辺を映画のシーンを思い浮かべながら歩いた。イタリアで驚くことは撮影から60年近く経つというのにパラティーノ橋から見る光景など変わっていないことだ。今回のローマは私にとっても「世界わが心の旅」になった。
(写真はパラティーノ橋周辺の光景)

同行者
一人旅
一人あたり費用
100万円以上
交通手段
鉄道 高速・路線バス
  • <br />アントニオが泥棒を見失ったクイリナーレの丘のトンネル<br /><br />


    アントニオが泥棒を見失ったクイリナーレの丘のトンネル

  • アントニオが自動車に乗せてもらって犯人を追いかけてトンネルまで来たシーン。

    アントニオが自動車に乗せてもらって犯人を追いかけてトンネルまで来たシーン。

  • <br />アントニオが犯人と思って捕まえたが間違いだったトンネルの内部。


    アントニオが犯人と思って捕まえたが間違いだったトンネルの内部。

  • アントニオが追いかけた男が人違いと解ったトンネルのシーン。

    アントニオが追いかけた男が人違いと解ったトンネルのシーン。

  • <br />トンネルを抜けた反対側。<br />


    トンネルを抜けた反対側。

  • トンネルにもある、イタリアらしい彫刻。

    トンネルにもある、イタリアらしい彫刻。

  • <br />クイリナーレの丘のトンネル近くの光景。<br />


    クイリナーレの丘のトンネル近くの光景。

  • トンネルの上、クイリナーレの丘の公園。

    トンネルの上、クイリナーレの丘の公園。

  • 父アントニオが息子ブルーノに絶望の中で「ピザを食うか」と言ったテヴェレ川沿いの歩道から見るパラティーノ橋。

    父アントニオが息子ブルーノに絶望の中で「ピザを食うか」と言ったテヴェレ川沿いの歩道から見るパラティーノ橋。

  • 父アントニオが息子ブルーノに絶望の中で「ピザを食うか」と言ったテヴェレ川沿いの歩道のシーン。ブルーノは嬉しそうにうなずいた。

    父アントニオが息子ブルーノに絶望の中で「ピザを食うか」と言ったテヴェレ川沿いの歩道のシーン。ブルーノは嬉しそうにうなずいた。

  • 「自転車泥棒」で、犯人と知り合いだと思った老人を追いかけてきたパラティーノ橋。撮影された1948年から60年近くになるので街路樹が大きくなっているが、映画のシーンと比べて、橋やバックのサンタ・マリア・インコスメティン教会(真実の口の教会)の塔周辺の光景は変わっていない。

    「自転車泥棒」で、犯人と知り合いだと思った老人を追いかけてきたパラティーノ橋。撮影された1948年から60年近くになるので街路樹が大きくなっているが、映画のシーンと比べて、橋やバックのサンタ・マリア・インコスメティン教会(真実の口の教会)の塔周辺の光景は変わっていない。

  • パラティーノ橋。撮影された1948年から60年近くになるので街路樹が大きくなっているが、映画のシーンと比べて、橋やバックのサンタ・マリア・インコスメティン教会(真実の口の教会)の塔周辺の光景は変わっていない。

    パラティーノ橋。撮影された1948年から60年近くになるので街路樹が大きくなっているが、映画のシーンと比べて、橋やバックのサンタ・マリア・インコスメティン教会(真実の口の教会)の塔周辺の光景は変わっていない。

  • 父と息子に詰問された老人は逃げるようにパラティーノ橋から去っていった。

    父と息子に詰問された老人は逃げるようにパラティーノ橋から去っていった。

  • 父と息子がパラティーノ橋で老人を見つめるシーン。バックは変わっていない。

    父と息子がパラティーノ橋で老人を見つめるシーン。バックは変わっていない。

  • パラティーノ橋の説明板。「自転車泥棒」のロケに使われた。

    パラティーノ橋の説明板。「自転車泥棒」のロケに使われた。

  • 父と息子が泥棒を探しに来た、泥棒市があったポルテーゼ門周辺。

    父と息子が泥棒を探しに来た、泥棒市があったポルテーゼ門周辺。

  • 泥棒市があったポルテーゼ門周辺のシーン。

    泥棒市があったポルテーゼ門周辺のシーン。

  • 父と息子が盗品自転車を探したポルタ・ポルテーゼの蚤の市。

    父と息子が盗品自転車を探したポルタ・ポルテーゼの蚤の市。

  • 父と息子が盗品自転車を探したポルタ・ポルテーゼの蚤の市。以前より盗品の自転車を扱っていたそうで、今も自転車店が並んでいる。

    父と息子が盗品自転車を探したポルタ・ポルテーゼの蚤の市。以前より盗品の自転車を扱っていたそうで、今も自転車店が並んでいる。

  • アントニオが自転車を盗んで捕らえられたサッカー場の周辺。

    アントニオが自転車を盗んで捕らえられたサッカー場の周辺。

  • アントニオが自転車を盗んで、すぐに捕まえられたサッカー場近くのシーン。

    アントニオが自転車を盗んで、すぐに捕まえられたサッカー場近くのシーン。

  • 現在のサッカー場。

    現在のサッカー場。

  • 映画に登場するサッカー場。

    映画に登場するサッカー場。

  • 現在のサッカー場。1960年のローマオリンピックの時に建て替えられたそうだ。

    現在のサッカー場。1960年のローマオリンピックの時に建て替えられたそうだ。

  • 息子ブルーノが父アントニオの手を優しく握るラストシーン。

    息子ブルーノが父アントニオの手を優しく握るラストシーン。

  • フラミーニオ・サッカースタジアム前ではイタリアの映画フェスティバルを開催していた。映画祭スタッフに「自転車泥棒」のロケポイントを教えてもらった。

    フラミーニオ・サッカースタジアム前ではイタリアの映画フェスティバルを開催していた。映画祭スタッフに「自転車泥棒」のロケポイントを教えてもらった。

  • アントニオが自転車を盗んですぐに捕まったフラミーニオ・サッカースタジアム前にはドーム競技場ができていた。

    アントニオが自転車を盗んですぐに捕まったフラミーニオ・サッカースタジアム前にはドーム競技場ができていた。

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この旅行記へのコメント (8)

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  • アンタライさん 2009/03/23 09:06:39
    いいですね〜!! 名作映画シリーズ
    映画で海外旅行に憧れるんですよね。

    自転車泥棒の映画最後の、息子ブルーノが父親アントニオの手を握るシーン!!
    今でも、思い出すだけで涙がでます!!

    ポルテーゼ門は素敵ですね!

    名作映画シリーズ、今後も期待しています。

    さすらいおじさん

    さすらいおじさんさん からの返信 2009/03/23 22:07:09
    RE: いいですね〜!! 名作映画シリーズ

    アンタライさん

    ローマ旅行記をごらんいただきコメントをありがとうございます。

    自転車泥棒の息子ブルーノが涙で顔をくしゃくしゃにした父親の顔を見上げてアントニオの手を優しく握るシーンは何度見ても泣けてきますね。

    大戦に負けて国民が貧困に苦しむ姿は日本もイタリアも同じですね。

    イタリア映画はローマの建物、遺跡などそのまま映画に取り入れて、しかも被写体の建物、遺跡などがそのまま残っているのがすばらしいですね。

  • kioさん 2007/08/06 00:14:15
    自転車泥棒
    さすらいおじさん殿 お久しぶりです

    自転車泥棒、、確か初めて観たのが小学生の頃、
    ラストシーンが 子供心にとてつもなく切なく感じたものです
    戦後まもない頃のイタリア映画 ネオリアリズムのもう真髄ですね
    <鉄道員> <苦い米>もそうだけど 名も無き市井の人々の
    哀歓を淡々と見せている。
    自転車泥棒、子役も父親役も 素人という話を何かで聞いたことがありました。

    さすらいおじさん

    さすらいおじさんさん からの返信 2007/08/06 10:51:52
    RE: 自転車泥棒
    kioさん
    暑中お見舞い申し上げます。
    「自転車泥棒」をごらんいただき、コメントをありがとうございます。
    ラストの6歳のブルーノ=エンツォ・スタヨーラが父アントニオ=ランベルト・マジョラーニの手を取って父の顔を見上げるシーンは本当に切ないですね。
    竹山洋氏のNHK「世界わが心の旅=ローマ〜父の面影」に中年になったブルーノ少年=エンツォ・スタヨーラが登場しピザを食べるシーンを再現してくれました。1997年時点では郵便局勤務とのことでした。父アントニオ=ランベルト・マジョラーニは悲壮な表情が役にピッタリでデ・シーカ監督が採用したそうですが、声は吹き替えだそうです。その後映画に出たけれど端役だけだったようです。ネオリアリズムのイタリア映画、フェデリコ・フェリーニ監督の「道」も好きです。フェリーニ監督はサンマリノに行ったときに宿泊したリミニ出身で、リミニの海岸はロケにも使ったということを最近知って、リミニをもっと歩けば良かった、と思っています。
    戦後間もない頃のイタリア映画は人間の内面を描いている点で小津映画と対比する人もいますが、「自転車泥棒」も「道」も「鉄道員」も人間の悲しみの表現が日本映画よりも直接的だと思います。


  • seitani5766さん 2007/01/06 22:29:11
    自転車泥棒の事
    さすらいおじさんへ。

    またしても、イタリア名画ですね。私は、自転車泥棒は見ていませんが、先日、紹介された「旅情」は見ました。
    矢張り、イタリアは映画でも本当のイタリアでも、何処から見ても繋がるとろが多いのかもしれませんね。
    私は、残念ながらアメリカ映画主体です。でも、イタリアなどヨーロッパ映画のほうが、映画らしい雰囲気がありますね。

    では、また失礼いたします。
    猪谷 盛一

    さすらいおじさん

    さすらいおじさんさん からの返信 2007/01/06 23:51:32
    RE: 自転車泥棒の事
    猪谷 盛一さん

    私が見ている洋画の大半はアメリカ映画です。素晴らしい映画がたくさんありますね。

    イタリア映画はたくさん見ていませんが、ヒューマン・ドラマは好きです。
    フェデリコ・フェリーニ監督の「道」、ピエトロ・ジェルミ監督の「鉄道員」などは心を打たれます。

    イタリア映画には小津安二郎監督の「東京物語」のような、人の心の微細な動きを描くものがあって、日本映画的なものは親近感があります。イタリア人と日本人は感性が似ているように思います。


  • おでぶねこさん 2007/01/04 16:42:59
    感動の旅ですね。
    さすらいおじさんさん。こんばんは。

    名画でめぐるローマの旅・・・素敵ですね。
    『ローマの休日』も感動が蘇ってきましたが、
    自転車泥棒には胸が熱くなりました。
    『自転車泥棒』は見たことが無いのですが
    イタリアの5本の指に入る名画なんですね。
    是非、一度見てみようと思います。

    心に残るローマ。。。良い旅で本当に良かったですね。

     おでぶねこ

    さすらいおじさん

    さすらいおじさんさん からの返信 2007/01/04 21:13:50
    RE: 感動の旅ですね。
    おでぶねこさん

    自転車泥棒をご覧いただきありがとうございます。
    この映画はおでぶねこさんがおっしゃる通り、何度見ても胸が熱くなります。

    ローマの休日は大好きな映画の一本、自転車泥棒は心を奪われた映画の一本です。

    映画を見るときに自分の人生と重なって見えるものは思い入れが違うだろうと思いますし、皆さん思いのある映画がおありだろうと思います。



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