
2006/07/05 - 2006/07/05
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ジオディオスさん
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インゴダ川沿いの緑の湿原と白樺林がどこまでも広がる、天国にも似たまったりとした心の原風景を西へ西へと突き進む。
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雲が大地にくっつき、見渡す限りの大平原を突き進んでいく。シベリアというと、タイガがどこまでも続く針葉樹林帯をイメージしていたが、実際の様相は違っていた。
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写真からだとよくわからないが、夏の湿原には、短い夏を謳歌するように、白・黄・ピンク・紫といった可憐な花々が咲き乱れている。風が吹くといっせいにゆらめき、まるで私たちを見送るウエーブをしているかのようだ。
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手付かずの豊かな自然が育むからか、日本の最後の清流“四万十川”はいうに及ばず、川底がすっきり見えるほどにクリアーだ。しかし、鉄分を含んでいるためか、湿原帯の養分からなのか、水が赤みを帯びていた。
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もし、私が天国を想像しろと言われれば、澄んだ湖を懐に抱いた美しい高原に花が咲き乱れ、家畜がのんびりと草をはんでいる世界を創造するだろう。まさか、それに近い心の原風景を東シベリアで出会えるなんて、出発前には思いもよらなかったことだ。この美しい風景をつまみにしながら、ロシアンティー片手に、至福の時がまったりと過ぎていく。シベリア鉄道は飽きると聞いていたが、少なくとも私には、一瞬たりとも当てはまらなかった。
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この湿原帯の車窓風景を眺めて感じたことは、以前歩いたことのある尾瀬に近い風景だということだ。だから、まるで尾瀬ヶ原の中をずうっと走っている気分で、実に爽快だ。この緑の絨毯に敷き詰められた大地の下が、永久凍土層なんて全く予想だにできない。
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時差について記しておこう。その1)出発地のウラジオストクと終点のモスクワでは、7時間の時差がある。車内にもキリル文字で書かれた出発駅から終点までの全停車駅と停車時間を表示している時刻表がある。しかし、その時刻表上に書かれているダイヤの時刻は全てモスクワ標準時で表示されている。なので、自分が走っている場所の時間にモスクワとの時差分の時間をたせば、次の停車駅の到着時刻と停車時間がわかるのである。
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その2)出発前のシベリア旅行を計画した際には、到着・出発時間は現地時間表示でなかったので、時差を常に考慮せねばならず、旅のプランニングは結構苦労した。
しかし実際乗車してみると、標準時を基準にしたダイヤの方が分かりやすかった。景色は変わらないのに、時差だけが自然に変わっていたり、電車が走っているとどこから時差が変わったのか全然気づかないし、「時計の針を1時間戻して下さい。」などとの車内放送があるわけでもなかった。つまり、到着駅が近くなると逆算して時差が変わったことを知るのであった。
時差が1時間・1時間と短くなるにつれて、西へ西へと近づいて行くのが、かえって実感できた。 -
その3)もし手元に地図帳があれば、開いてもらいたい。ハバロフスクは東経約135度、つまり日本の標準時の明石と同経度ということだ。しかし、(夏時間も関係しているが)日本より+2時間である。例えば、日本が午後2時だとすると、ハバロフスクは午後4時なのである。更にハバロフスクは日本の最北端稚内よりも北にあるので、日本と比べて夏の日照時間が長い。ということは、夏のハバロフスクの4時はものすごい“昼間”なのである。
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その4)それでは、夏のシベリアで日本の標準時と同じ地域は、一体どこになるのかお分かりであろうか?ちょっと信じ難いが、それは、東京よりも3000km離れたバイカル湖やイルクーツクまで行かないと、日本の標準時に追いつかないのである。恐るべし、世界最多の12の時間帯を持つ、ロシア連邦。
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このシベリア鉄道乗車中、一日中ひたすら大自然を眺めていたせいだろうか、はたまたシベシアが猛暑だったからだろうか、なぜか南国ムードの沖縄の曲の♪涙そうそう♪が私の脳裏にBGMとして終始流れていた。
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シルカ近郊の河畔に突然、教会が姿を現す。現在は廃墟っぽく見える。近くに集落など全然目にすることはできないのだから、遊牧民相手に布教活動をしていたのだろうか。聞くところによれば、夏の湿原は蚊が多く、冬はものすごい寒さが襲うこの地域での布教活動は想像を絶するに違いないものだっただろうに、と思索にふけってしまう。今では教会の周りでは、野生馬が数頭大地をのどかに駆け巡っていて、その面影はつゆに感じられない。
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タイガの話を述べておこう。その1)タイガとは、シベリア地方の針葉樹林帯のことだ。森林地帯であるこの地方は、実は海から遠いために、年間降水量はステップ気候並みに低い。それでは、なぜあの広域な樹林帯が生まれるのか?それは、永久凍土層が関係している。気温の高い夏に、地表面は溶ける。しかし、溶けた水分は下に凍土層が広がっているので、地面にそれ以上浸透せずに、大量の水を含んだ泥土層になる。この泥土層が森林の多量の水分と栄養を供給し、少雨であってもタイガが生まれるのである。
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その2)シベリア鉄道乗車前、私の持つタイガのイメージは、深く鬱蒼とした松林が長いトンネルのように続いていて、車窓から見える唯一の景色はひたすら暗いタイガだけだと思っていた。しかし、どうだろう。シベリア鉄道を敷く枕木確保からだったのか、なぜか線路沿線は数十メートルにわたって、伐採されており、かなり視界が開けていたこと。また、エゾ松の単体の樹林帯ではなく、白樺とエゾ松の混交林帯であったことだ。そして白樺の比率が意外にも高かったことだ。白樺は落葉樹だ。従って、秋季に葉が落ち、森に陽が差し込みタイガが明るくなる。また、白樺の樹皮も光を浴びると白く輝く。一方、常緑樹のエゾ松の比率が高いと、タイガに光が差し込みずらくなるので、陰鬱な森が出来上がる。一般的に、エニセイ川以東に広がる前者を「明るいタイガ」、以西に広がる後者を「暗いタイガ」と呼ぶ。
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大きな川の鉄橋には、必ず歩哨所があって、24時間体制で銃を持ち、警備に就いている。モスクワからウラジオまで完全に舗装道路が貫通していない現在も、シベリア鉄道は東西間の経済の大動脈であり、その重要性を示すものだ。しかし、ウラジオからモスクワまで、はて一体何本もの橋が架かっていたことか?大変な人数を擁し、ほとんど橋の近くなどには駅や集落は見かけない場所が多かったので、どう人のシフトをやり繰りしているのだろう、とこっちが気を揉んでしまいそうだ。
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チタ付近の農村集落風景。大きな町が近づいてくると、集落も大きくなり、家の様相もしっかりとした構えになってくる。短い夏の間に家庭庭園には野菜の収穫をしているようだった。車窓から覗く限り、各家々では、鶏などの家畜は必ず飼っているようだった。チタの町が近いというのに、道路は未舗装なのがわかるだろう。
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ちょっとピンボケしてしまったが、ブリヤート共和国の首都のウラン・ウデ近郊のシベリア鉄道とモンゴル・北京方面の分岐点。
ウラン・ウデは1666年にコサック兵によって築かれ、18世紀には清との貿易地点で栄えた。モンゴル系の人が多いせいか、車窓からチベット仏教寺院が所々に見えた。
モスクワまであと、5609km。 -
スリジャンカ?駅付近の駅。ここまでほとんど遅れることなどなかったが、列車待ちなのか、この駅では1時間以上も待たされた。バイカル湖は家向こうに見えるので、もう少しずれて停車してくれれば、退屈な時間など費さずに、バイカル湖を見ながらお茶を楽しめたのに。
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スリジャンカ?駅付近の駅。スリジャンカ?駅では、列車が着くと、たくさんのオームリの売り子が乗降口に押し寄せる。売り子達の様相を見る限り、衛生面で一抹の不安を覚えたので、食べたいのだが、躊躇していた。が、仲良くなった乗務員が、「しきりにうまいから買え。」と勧めるので、オームリ1匹(20P 約90円)を購入した。まだ、出来立てなのか、生暖かい。色は燻してあるのか金色で、魚臭く、中身は骨も少なく白身で、川魚のような泥臭さはない。さすが、世界最高透明度を誇るバイカル湖の魚だ。味は最高に美味だ。「しまった。もう何匹か買えば良かった。」と悔やんでも、あとの祭りだった。もし、バイカル湖を訪れたなら、是非是非ご賞味あれ。
オームリの燻製の詳細に関しては、次号の“シベリア鉄道で行く世界遺産5”を参照して下さい。 -
ウランウデを出て2時間ほど走ると、ついに待ちに待った母なるバイカル湖が姿を現す。これから湖畔沿いに、200km以上、3時間程度の車窓の旅を味わえる。実に愉快だ。
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電車の矛先をイルクーツクに向け、ジグザグ坂を登り始めると、ついにバイカル湖とお別れだ。快晴なのに、バイカル湖に霧が発生している理由やバイカル湖の詳細は、次号の“シベリア鉄道で行く世界遺産5”をご覧あれ!
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この旅行記へのコメント (5)
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- hamaさん 2008/11/28 15:37:19
- こんにちわ
ジオディオスさん
シベリアシリーズ、大変勉強になります。(ハラショ)
また訪問させて頂きます。
スパシーバ
hama
- ジオディオスさん からの返信 2008/12/04 11:17:47
- RE: こんにちわ
- hama さん
お返事遅くなりました。シベリアシリーズの訪問ありがとうございました。
たくさん旅行記のネタはあるのですが、日々の仕事に追われ、アップが大幅に遅れています。なるべく早くhamaさんの行きたい場所であるタヒチと私が勉強しているイースター島シリーズをアップしたいと思っております。
こんなトロい私ですが、これからもよろしくお願い申し上げます。
ジオディオス
>
> ジオディオスさん
>
> シベリアシリーズ、大変勉強になります。(ハラショ)
>
> また訪問させて頂きます。
>
> スパシーバ
>
>
> hama
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- デコさん 2006/11/10 18:56:42
- はじめまして
- ジオディオスさんへ
インゴダ川沿いの緑の湿原と白樺林…とても心惹かれる風景ですね。
手付かずの自然の素晴らしさを感じました。
シベリアというと、私もタイガの針葉樹林帯しか思い浮かばなかったのですが、こういう所でのんびりと、過ごしたいと思いました。
また、癒しにお邪魔させていただきたいです。
デコ
- ジオディオスさん からの返信 2006/11/10 23:12:35
- RE: はじめまして
- デコさんへ
はじめまして。訪問&書き込みありがとうございました。
私も早速デコさんのところへお邪魔させてもらいました。先ず、たくさんの旅行記をお持ちでびっくりいたしました。とても短時間では拝見できないので、少しずつ拝見させてもらいます。それに写真がとっても素敵で印象的でした。私が行き逃した所、例えば、ノルウェーのリーセフィヨルド、次回再アタックするチャンスのときに、とっても参考になりました。
私は暇を見つけては更新に努力し続ける日々が続いていますが、まだ始めたばかりでよく勝手もわからず、なかなか進みませんが、また忘れた時にでも、いらして下さい。そのときには、もう少し西へむかっていることでしょう。
- デコさん からの返信 2006/11/11 06:13:31
- RE: RE: はじめまして
- ジオディオスさん、
お返事くださって、そして、ご訪問くださってありがとうございます。
私も皆さんの旅行記を参考にさせていただきながら、
これからも旅を楽しんでいきたいと思っています。
きっと、ジオディオスさんもあちらこちらの旅を楽しんでこられていることと思います。
それらを更新してくださるのを楽しみに、またお邪魔させていただきますね。
では、また ^^)/
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