2002/11/08 - 2002/11/16
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ケン・ハンレーさん
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何もしたくなかった。ただ、ゆっくりと、照りつける太陽の下で優しい風に吹かれて、波の音を聞きながらまどろんでいたかった。・・・そう、いま、ここでこうしている事を、僕はずっと、ずっと夢見ていたんだ。ねえ、リサ、時が止まったようだよ。ここは本当の楽園だね。このままずっとここでこうしていられたら、僕は、僕は・・・。
「そろそろ出発よ、KEN。ほら、トゥーカッタが呼んでる!」
彼女はそう言って金色の髪をかき上げ、小麦色に焼けた頬を私にむけて微笑んだ。
(・・・・恋をしてしまいそうだ。)
アンダマン海に浮かぶ小さな島、ピピ・ドンの静かなビーチで、束の間のシェスタが終わった。こうして私はいま、南の国の極楽島プーケットにいる。
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 15万円 - 20万円
- 交通手段
- タクシー
- 航空会社
- タイ国際航空
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慌しい旅立ち。今回のフライトは09:45のタイ航空643便、何回目かの訪タイで初めてタイ航空を使う。チケットは高かったが、プーケットへの直行便だからやむを得ない。定刻に成田を出発。空港が、房総半島が、そして日本が眼下に見え、次第に遠のいてゆく。
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昼食はビーフ&ヌードル。旨かった。コーヒーはすでにアジアの定番、フレンチ・ロースト。傷んだ今の私の胃には、ブラックではちとキツい。一眠りして起きると、高度が下がっていた。プーケットに到着だ。飛行機はゆっくりと旋回し、間もなく着陸態勢、そして定刻15:45、プーケット国際空港に着陸。
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ビーチ選びからスタートした今回の私の旅は、「最も寛げる」カタ・ビーチに決定、今回のホテルは、「カタ・パーム・リゾート」。開業後まもなく新しいことと、他にくらべ安いのが魅力だ。1泊約9,800円、これは普段の私のホテル代に比べたらとんでもない贅沢。部屋は広くもなく狭くも無く丁度いい。バスタブと綺麗なプールのある中庭に面したベランダつき、ベッドの硬さも良好ですっかり気に入った。
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夕日を観に早速カタ・ビーチに散歩に出掛ける。歩いて7、8分でビーチに着いた。思わず言葉を失くす。美しいビーチ、美しい日没だ。緩やかに曲線を描く海岸線に優しい波が寄せ、気持ちの良い風が吹いている。子供たちが遊び、夕涼みに来た人たちが穏やかな顔をして海に向かう。そしてそれら全てが、沈みゆく夕日を受け、真っ赤に染まる。
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腹がへった。さて、夕めしだ。
「ダイノパーク・レストラン」はジュラシックパークの様な、まるで恐竜時代のテーマパークを思わせるレストラン。入り口屋根には数匹の恐竜、それに火山のオブジェまであり、一定間隔で火と煙まで吹き上げる凝りようだ。
今夜のオーダーはタイ旅行の初日の定番、カオ・パット・ガイ(鶏肉チャーハン)、パックブン・ファイデーン(空心菜=アサガオナのオイスターソース炒め)それに、一瞬躊躇したがトム・ヤム・クンを選ぶ。 -
翌朝5:30起床、仕事の悪夢で夜中に起きてしまい気分は最悪。おまけに、いやな予感が的中、トムヤムが腹の中で暴れている。落ち着いたところで中庭に面した気分のいいカフェの特等席で朝食。オレンジジュース、ベーコンエッグ、フルーツとコーヒーを取る。
7:30ピピ島ツアーのピックアップを受ける。ミニバスに乗り込むと回りはファラン(ガイジン)だらけで日本人は私だけ。すこしイヤな予感。 -
このツアーはスピードボートを使って効率よくピピ島をめぐる。スピードボートは私のような船酔いに弱いものでも大丈夫なのだそうだが、はて?。1台のボートに、スカンジナビア系と思しき5人家族、ユダヤ系男性とアジア系のカノジョのカップル、これもユダヤ系らしい5人家族、白人の娘がひとり、それに私と女性ガイドの計15人、船長と2名のクルー合わせて18名が乗り込んだ。ガイドはトゥーカッタという女性で、日本語が話せる。「アナタ、OK、ダイジョブ、わたし日本語ガイドOKです。」とのことで少し安心。
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スピードボートはとんでもないスピードでカッ飛び、船尾に座った私はしっかり掴まっていないと放り出されそうで気が気ではない。「船酔いに弱いものでも大丈夫」という意味がわかった。「船酔いをする余裕すら与えない」という意味なのだ。
出港から40分ほどで(なるほど、速い)、ピピ・レイ島(あの映画「ザ・ビーチ」の舞台となった島)のメイン・ロケ地であるマヤ・ベイに到着。 -
40分のフリータイム、上陸したのち家族やカップルは思い思いの場所に散っていったが、私と白人女性にはトゥーカッタがガイドをした。映画「ザ・ビーチ」ではここが断崖で囲まれた秘密のビーチとして描かれていたが、あれは特殊撮影で実際は入り江であること、また、ビーチの周りに椰子の木が映っていたが、あれも撮影隊が100本以上を植え、撮影が終わると全て撤去され元の姿に戻ったことなど教えてくれた。
なるほど、綺麗なビーチだ。泳ぎ、白砂のビーチに横になる。眩しい太陽に目を閉じれば、聞こえてくるのは波の音、鳥の声、風のささやきだけ。 -
10:30、天国のようなビーチを後にし、夏みかんのおやつ。次はこのビーチの裏側にあるローサマ・ベイへ向かう。お楽しみのシュノーケリングの時間だ。透明度の高い美しい海、水深は4mくらいだろうか。泳ぎに自信の無い人にはライフ・ベストが渡された。マスクとフィン、それにシュノーケルを身につけ、何年ぶりかのシュノーケリングだが、コツはすぐ思い出せた。縞模様をはじめ、ありとあらゆる極彩色のトロピカルフィッシュ。海底にはテーブルサンゴをはじめ大きな珊瑚がたくさん。
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「餌をあげてみて下さい。」船上のトゥーカッタから夏みかんの残りを渡され、受け取って水中に入れたとたん、凄い数の魚が集まってきた。餌付けされているのだ。人間を怖がる様子など微塵もない。これにはこちらのほうが驚いてしまった。同じボートのファランたちも歓声をあげ、大いに楽しんでいる。目が合うと嬉しそうな笑顔を向けてくる。当然ながら、南の島を巡る旅にあって、美しい海に感激し、まるで子供のように、無邪気に熱帯魚と遊ぶ。こんな楽しい時間のなかでクールな顔をしていられる訳が無い。
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11:00、ローサマ・ベイを後にし、もうひとつの名所、ピレ・ベイへ向かう。船上ではコーラが手渡された。ガイドのトゥーカッタは気配りのよい、しっかりした働き者だ。英語での説明のあと、私のためにもう一度日本語でガイドしてくれる。申し訳ないくらいだ。ミネラル・ウオーターも自由におかわりができ、サービスも申し分ない。隣の白人女性リサとすこし会話する。「シュノーケリング、上手いね。」「ええ、前にもしたことがあったから。でもこんなに綺麗な海は初めてよ。」と、微笑んだ。
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ピレ・ベイに到着。水路のような細い湾を進んで行くと行き止まりは断崖に囲まれたすこし広い場所、ここで「海水浴タイム」になった。水深は1.2mくらい、底は砂地になっていて太陽光が反射し、明るく澄んだブルーグリーンの海水がたまらなく美しい。リラックスした気分で泳ぎ、陽の光を浴びる。
ここではリサはずっと私と一緒だった。話相手になることが分かったからか、それとも同じ一人旅同士だったからか、あるいは・・・、「写真を一緒にとってくれるかい?」と尋ねると、「Sure!」との返事。
気に入ってくれたのかな?まさかね。 -
次はバイキング・ケーブを見学。ここは昔の海賊の隠れ家だった洞窟とのこと。今は、高級中国食材として有名なあの「ツバメの巣」の採取場になっている。ツバメの巣はウミツバメの巣であり、洞窟の中の、実に地上50メートルほどのところに作られている。洞窟のなかには、その高さに届くための竹の足場が組まれているのが見える。転落事故もあるそうだが、なにしろかなり高額な商品なので危険を冒しても取りに登るのだ。「登りたがり」が出ると困るのか、船上からのみの見学で、入場はできない。
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このあと、野生のサルが支配する海岸、モンキービーチを経て12:15、ピピ・ドン島のトンサイ・ベイ着。ここで昼食となる。メニューはスープのトム・カー・ガイを除けば、辛さを抑えた中華料理+スパゲティといった感じだがファランはみな心配そうな面持ちだ。辛いんじゃないか?」「大丈夫かな?」と、心配そうな声がする。「ジャパン、これ、辛くないか?」「大丈夫、スープ以外は辛くないよ、トライしてみて。」と優越感で答える私。おや、スエーデンの奥さん、ご飯にミートソースは邪道ですよ、邪道。
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昼休みはファラン向けにたっぷり取られ、出発は13:30とのことで食後に解散。リサはここでも私に付き合ってくれた。土産物屋を冷やかし、ビーチを散策したあと、本を読みたいという彼女のためにパラソルをレンタルし、トンサイ・ベイを前にして、二つ並んだビーチベッドに横になった。少し会話を交わし、しばらく本を読んで眠ってしまったリサ。その横顔を眺めながら私は突然、自分がとんでもない状況にあることに気づく。それは、自分がいま、“初めて会った” “金髪の”“19歳の”“イギリス人の”“超ビキニの”“女子大生”と二人だけでシェスタしているということだ。
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日本人ツアー客の乗った大型船が遅ればせながら昼食のため入港し、サーフパンツの兄ちゃんや、ブランドバッグを抱えたギャルや、日よけの帽子をかぶったオバちゃんたちが目の前をゾロゾロ歩き、その皆が私たちをまるで危険なモノ(おんや、このニーちゃん何だい、外人のカノジョと一緒だよ。)でも見るような目つきで眺めてゆく。しかし、今の私は、そんな視線すらも何とも思わず、ただただリサと過ごす「二人だけの時間」を大切に感じているのだ。どうしよう、どうすればいい?どうしようも無いから、とにかく私もシェスタする。
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午後のツアーが始まった。ボートはピピ・ドン島の海岸線にそって北上する、駱駝の形をした奇岩もあり、断崖の海岸線が美しい。風が吹き、海鳥が飛ぶ。そして何よりも空は青く、海はさらに碧い。昨日までとは景色の感じ方がまるで違う。改めて自分がいま、楽園を訪れていることを実感する。
初めは遠慮がちになっていた船内も、今はすっかり打ち解けて和やかな雰囲気につつまれた。私も、トゥーカッタが日本語のガイドを始めようとするのを「日本語はもういいよ、僕もわかるから。」と制すると、ファランたちが笑顔を見せた。ただ、あの熊のようなオヤジが・・・怖い。 -
13:50、このツアーのメインであるヒンクラングポイントに着く。ここは「グレートコーラルリーフ」と呼ばれる、海の真ん中にある、珊瑚の一大群生地だ。早速シューノケリング開始。ここにも凄い数のトロピカルフィッシュがいて、1回目のダイブではおっかなびっくりだった人も、今回は積極的に飛び込み、まるで子供のように楽しんでいる。スイカのエサが渡され、餌付けも楽しい。(考えてみれば魚って、スイカなど食べないと思っていた。)
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海底には前回のローサマ・ベイよりもさらに大型の珊瑚礁が広がる。直径2mはありそうなテーブルサンゴを発見した。
いままで接客や安全管理に徹していたボートのクルーたちも、ここでは一緒になってシュノーケリングを楽しんでいる。「ねえボス、凄いでしょ、この魚。
撮って、撮って!」っていう感じで肩をたたかれたのでパチリ。本当に公私の区別のつかない国民性だ。あきれるやら、羨ましいやら。 -
ヒンクラングポイントでのシュノーケリングに満足し、ボートはピピ島を離れる。このツアーの名は「ピピ島+1」で、この「+1」が実はとても素敵だ。ピピ島とプーケットの中間にカイ島という島がある。半日ツアーでも訪れるカイ・ノック島かと思ったら、私たちが着いたのはその北側にあるカイ・ナイ島、こちらの島は人が少ない超穴場なのだそうだ。小さな売店があるだけの小さな無人島。その白砂のビーチに、タオルをふたつ並べて敷き、私とリサは他愛も無い話をしながら最後の時間を、実にまったりと過ごした。
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「そうだ、メールアドレスをくれるかい、家に帰ったら写真を送るよ。」というと、リサは驚いたように、「ああ、素敵!まるでザ・ビーチみたい!」と目を輝かせた。そういえばあの映画のラストシーンも、メールで送られた写真で締めくくられていた、添えられた言葉は「FOR EVER」。陽が西に傾き始め、心地よい風が吹く。そして穏やかな波の音、鳥の声・・・。絵に描いたようなロマンチックなシチュエーションだ。(ここで、ここで口説かなきゃ男じゃない!)と、思ったその時、またもや登場、「ようよう、ジャパン、今日は楽しかったなあ。」あああ、熊親父!
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親父は国では建設機械ディーラー会社の社長で、親日家なのだそうだ。話をしてみるととても優しい紳士だった。彼が耳打ちする「彼女、可愛いな。」「ああ、そうだね。」「仲良くなったのか?」「No,No!そんなんじゃないよ。」「ようよう、お前はナイス・ガイだ。彼女も可愛い、お似合いじゃないか。そうだ、お前たち、結婚しろ、ケッコン!」突然、とんでもないJOKEが飛び出し、私は狼狽する。「彼女にも話したけど、僕には妻がいるんだよ。」「そんなことはどうでもいい、結婚しろ、ケッコンだ!」もう、無茶苦茶だ。「ねえ、皆さん、グッドカップルですよねえ。そうだ、ジャパン、カメラを貸せ、写真を撮ってやる、もっとくっ付け、彼女にキスしろ。」と散々冷やかされて私は真っ赤だ。
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素晴らしいツアーの終わりに「ねえ、KEN、写真送ってね、忘れないでね。」とリサが言う。忘れるものか、写真のことも、君のことも。と言いたくて言えず、オーケイ、と握手。手を振って私はバスに乗り込んだ。マイクロバスはカタ・ビーチに向かう。夕日が眩しい。今日一日のことを思い出しながら、どうしようもなく笑顔が浮かぶ。宿に帰り、一休みしてシャワーを浴び、今日も夕日を見に出掛ける。静かなカタ・ビーチの夕日。やはり美しい。海から吹く優しい潮風の中で眺める、楽園に沈む太陽。人をたまらなく感傷的にさせる夕日だ。センチメンタルになるのは旅人の特権、とはいうものの、まるで失恋でもしたような気分だ。
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今日のツアーのあと、この夕日を見させられ、一人で夕めしを食べるのではあまりに悲しすぎる。お世話になった「ブルー・マリーン」のオフィスに行き、女性社長に夕食を一緒にいかが、と誘う。(これも後で考えれば暴挙だな。)すると、オフィスにいたもう一人の女性を紹介された。小柄で可愛らしい娘。なんと明日の体験ダイビングのインストラクターだという。彼女も誘い3人で、以前メールで聞かされていたロブスター料理のレストランへ出掛ける。
前菜はシュリンプ・カクテルとタイ風揚げ春巻き。メインは30cmはあるかと思えるプーケット・ロブスターの、中華風炒めとチーズ・グリルを取った。さらにもう一品は好物のプーパッ・ポン・カリー(蟹のカレー炒め)。どれも本当に旨かった。デザートはチョコレート・アイス(でもこれがまた絶品!)と、珍しいバナナ・フリッター(天ぷら、だな)のカスタードクリームのせ、それにトロピカル・フルーツの盛り合わせ。エスプレッソも旨く、すっかり満足した。3人で1500Bt足らず。 -
二人と別れ、満ち足りた気分でホテルに向かう。まだ時間は9時前、ビア・バーの明かりの下で色っぽいお姉さんが手招きする。行ってみようかなとも思うが、いまは素晴らしかった今日一日の、余韻に浸っていたいのと、明日に備えたいのと、とにかく疲れたので部屋に戻ることにする。ごめん、またね。セブン・イレブンで、タイ旅行には欠かせない「タイ明治乳業」のチョコレート・ドリンクを購入。部屋に戻り、日焼けで痛む背中をかばいつつ、ゆっくりと風呂に浸かり、ベッドに入ったとたん意識を失う。(続)
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この旅行記へのコメント (2)
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- ゆみナーラさん 2006/10/02 21:21:02
- 楽園は本当にあるのかもしれないですね。
- 極楽島プーケットの旅日記、昨日今日と拝見しました。
透き通るような海や出会った人たちとの写真、またロマンティックな出会いの部分など色々と、現実だか夢だかというような「楽園」を想像させられた、素敵な旅行記でした。
ナコンラチャシーマとパタヤーの旅でも、また素敵な出会いがあるかも!?
これからもよろしくお願いいたします^^お気に入り登録有難うございました☆彡
- ケン・ハンレーさん からの返信 2006/10/02 22:36:48
- RE: 楽園は本当にあるのかもしれないですね。
- ゆみナーラさん、ご訪問有難うございます。ご覧頂き嬉しく思います。この旅からすでに4年が経過し、津波の影響もあってプーケットの様相も変わったようですが、私にとってはこの島は今もまさに「楽園」です。
でも、ここに限らず、タイには「楽園」と呼べる場所が至る所にありますよね。ゆみナーラさんのコラート旅行にも私はそれを感じました。路地裏を声を上げて走ってゆく子供たち、50過ぎバツイチのおっさんのはにかんだ笑顔、屋台のオバちゃんの豪快な笑い声。それらに私たちの国からいつの間にか失われてしまったものを感じたとき、それが私の求める「楽園」であるような気がします。多分に気障で失礼。
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