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 朝食に行くとウェイターが「グループ?」と訊くから、個人だと答えると「英語話せるの?」と来た。「もちろん」というとどこへ行ってきたか、今日はどこへ行くのかと話しかける。「日本人は話しないの?」ときくと、「話さないから英語ができないのかと思っていた」という。「みんな話せるんだけどね、日本人はshyだから話さないのよ。それは覚えておいてね」<br /> <br /> ここの朝食には新鮮な野菜がいっぱい。トマトを皿に載せながら、コックさんに「エジプトのトマトはおいしいね」というと喜んで、他の野菜も美味しいという。肉厚のピーマンもしゃきしゃきしていて、しかも甘い。サラダ菜をボディビルしたような野菜があった。「これなーに」「アラビア語でハス」「英語では?」「わからない」チコリのような味だ。日頃は野菜をあんまり食べない私が野菜を中心に食べている。乳製品もおいしい。「エジプトの素材はすべてグー。」と指を丸めるとにこにこしている。にこにこしたついでに、アルミホイルを持ってきて、昼食にお弁当をつくっていけという。その必要はないよ、と断る。<br /><br /> 気の早い二人は8時前には船着き場に行き、出ていく船の写真を撮っている。足下の岸辺にコサギが獲物をねらっている。大またで2,3歩あるいたとおもったら、コサギがスイと飛んだ。と、もう嘴に小魚をくわえている。「シャッター切らなかったの?」「見とれちゃったよ」<br /><br /> スペイン人が同乗すると言っていたのだが、なかなか現れず結局二人だけ。作りかけのオベリスクを見学。アスワンはグラニート(花崗岩)の産地だ。ここから切り出した石をいかだにのせてナイルを下っていったのだろう。切り出し方を説明してくれる。<br /><br /> 石丁場でも、同じような切り出し方をしている。石やさんが「酒には目がないが、石には目があるんだ」と言って、石の目に沿って石をうがち、ハンマーでこちんと叩くとものの見事にまっすぐ割れる。面白がって、何回もやって貰ったものだ。<br /><br /> アスワンハイダムを見て、オールドダムに来る。船に乗ってフィラエ遺跡に行くのだ。昨日見たたくさんの船はこの送迎用の船だった。岩陰にはアオサギがいる。フィラエ遺跡も水没から助けられた遺跡のひとつ。イシス神殿だ。<br /><br /> 古代エジプトは多神教、神様はごまんといる。中心になるのはオシリスとイシス。二人は夫婦である。オシリスは弟セトのために体を切り刻まれてエジプト中に捨てられてしまった。それをイシスが拾い集め、再生したが、内蔵をワニかなにかに食べられてしまったとかで、この世の戻れず冥界を支配することになったのだそうな。二人の子どもがハヤブサの姿をしたホルス。私がエジプトの神様の名を知っているのはヨシムラ先生と教養高いマンガのおかげ。<br /><br /> この神殿はアレキサンダー大王が作らせたものだそうだ。アレキサンダーの名前が出てくると「さあさしっかりアレキさん」(BC334)ぐっと歴史も身近に感じられる。神殿の柱にクロスが見える。コプト教徒がここまで逃げ延び、ずいぶん殺されたようだ。しかし、その後この神殿は教会となる。柱などヘレニズムの影響が見られるようだが、私にはあんまりおもしろくない。<br /><br />福沢諭吉によると、「文明は物質で表されるもの。文化とは形にならないものである」という。しかし両者は密接に関わり合って、文化があってこそ文明がうまれるのだろう。そうなると、違った文化が入ってくれば、おのずと文明も変化する。<br /><br /> 吉村作治さんによれば、「エジプトにおける文化の断絶は大きくいうと三つある。一つ目は多神教からキリスト教という一神教支配に変わるとき。俗に言うコプト時代。でもまだこの時代は古代エジプトが生きていた。7世紀、イスラムが入ってくると、エジプト人ですら人種が変わってしまったのではないかと錯覚するほどの変化だった。文化の三つ目の、最終はヨーロッパの植民地政策の到来。これはそれまで2回に比べ建設的、創造的なものでなくの、破壊と搾取のそれである。」と。<br /><br /> イスラムの世界はアラビア語で礼拝が行われる。イブン・バツータが広範囲に旅行をしたのも、彼はコーランを教えながらイスラム圏を移動していたのである。アラブとはイスラムでアラビア語を公用語とする国だと聞いたことがある。だからイラン(ペルシャ語)はアラブには入らないと。<br /> <br /> 「約束の時間は11時半ですが、まだ時間があります。ヌビア博物館でも行きませんか。ひとり20ドルです」とガイドのローニー君が言う。お出でなすったな、でも、今日はこのまま空港へ行くのだし、今回二人ともドルをそんなに持っていないが、40ドルならなんとかある。そこでドルを払う。ドルを欲しがるのはエジプト経済がインフレなのか。<br /><br /> 以前トルコの田舎で、両替に行くと、ひとだかりができていた。不思議に思ってのぞいていると、土地の人がトルコリラをドルに替えている。なぜだか訊くと、インフレがひどいのでたとえ少しでもドルに替えておかないと、目減りしてしまうのだと言っていた。<br /><br /> 入場料は20ポンド、カメラはお預け。夫が「気がつかないふりをしてやろう」という。ここの博物館もよく整理されている。ジオラマまであり、ヌビアの歴史がよく分かる。人物の彫刻は写実ながら省略するところはちゃんと省略してあり、やはり良い。<br /><br /> ナイル沿いに菩提樹が見える。「あれはbo treeでしょ」というが[febus]だという。どう見ても菩提樹だ。緯度的にも菩提樹があって不思議はない。しかし、この国でユーカリがどこにでもたくさんあった。あれは在来種ではなかろう。たぶんオーストラリアからの移植だろう。<br /><br /> 予定通りなら2時にはカイロにつくから、その足でアレキサンドリアへ行こうと予定していたのだが、飛行機は遅れに遅れ、1時半発が3時発。やーれやれ。<br /><br /> カイロに近づくにつれ、遠くに紅海とシナイ半島の山並みが見える。同じように緑のない砂漠と禿げ山。始めは紅海を見に行こうと言っていたのだが、ここから紅海を見たからもういい、と言い出す。カイロ方面は雲に覆われている。しかしその白いはずの雲がなんとも薄汚いのだ。スモッグのせいかね、と言いながらシャッターを切る。<br /><br /> 夫がカメラの砂防をそんなに気にすることなかったんじゃないかという。とんでもない、毎晩、レンズはもとよりフィルターまではずして掃除していたのを知らないな。それでも、ズームの動きがわるくなっている。たぶん砂がはいりこんでいるのだろう。<br /><br /> 今日のホテルはラムセス ヒルトン。値段はナイル ヒルトンより安い。私たちの部屋は20階。はるか向こうにギザのピラミッドがまるで小山のように見える。このホテル、コンパクトで居心地はいいのだが、難点はエレベーターがちっとも来ないこと。だれもがイライラして上下全部のボタンを押すから、人がいなくても止まってしまう。だからなおのこと遅くなる。気の短い日本人には不向き。<br /><br /> 懲りもせず中華へ行く。夫はステラビール。私は中国茶。ところがまた中国茶はないという。その代わりグリーンティならありますと。なぜグリーンティなの、と言いながらグリーンティをとると出てきたのはウーロン茶。そうか、ウーロン茶は青茶だ。だからグリーンティと言っているんだね。でも日本人には紛らわしい。これは中国茶のウーロン茶。日本人が中国茶が欲しいと言ったら、自信を持ってこれをすすめなさい、と漢字まで書いてやる。<br /><br /> 食事が済んで席を立とうとしたとき、ウェイターが「マダム」と言って薔薇の花をくれた。お礼のつもりだったのだろうか。部屋に持っていって水差しに活ける。やっぱり生きている花はいい。<br />

エジプト弥次喜多記 7

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1999/01 - 1999/01

389位(同エリア409件中)

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buchijoyce

buchijoyceさん

 朝食に行くとウェイターが「グループ?」と訊くから、個人だと答えると「英語話せるの?」と来た。「もちろん」というとどこへ行ってきたか、今日はどこへ行くのかと話しかける。「日本人は話しないの?」ときくと、「話さないから英語ができないのかと思っていた」という。「みんな話せるんだけどね、日本人はshyだから話さないのよ。それは覚えておいてね」
 
 ここの朝食には新鮮な野菜がいっぱい。トマトを皿に載せながら、コックさんに「エジプトのトマトはおいしいね」というと喜んで、他の野菜も美味しいという。肉厚のピーマンもしゃきしゃきしていて、しかも甘い。サラダ菜をボディビルしたような野菜があった。「これなーに」「アラビア語でハス」「英語では?」「わからない」チコリのような味だ。日頃は野菜をあんまり食べない私が野菜を中心に食べている。乳製品もおいしい。「エジプトの素材はすべてグー。」と指を丸めるとにこにこしている。にこにこしたついでに、アルミホイルを持ってきて、昼食にお弁当をつくっていけという。その必要はないよ、と断る。

 気の早い二人は8時前には船着き場に行き、出ていく船の写真を撮っている。足下の岸辺にコサギが獲物をねらっている。大またで2,3歩あるいたとおもったら、コサギがスイと飛んだ。と、もう嘴に小魚をくわえている。「シャッター切らなかったの?」「見とれちゃったよ」

 スペイン人が同乗すると言っていたのだが、なかなか現れず結局二人だけ。作りかけのオベリスクを見学。アスワンはグラニート(花崗岩)の産地だ。ここから切り出した石をいかだにのせてナイルを下っていったのだろう。切り出し方を説明してくれる。

 石丁場でも、同じような切り出し方をしている。石やさんが「酒には目がないが、石には目があるんだ」と言って、石の目に沿って石をうがち、ハンマーでこちんと叩くとものの見事にまっすぐ割れる。面白がって、何回もやって貰ったものだ。

 アスワンハイダムを見て、オールドダムに来る。船に乗ってフィラエ遺跡に行くのだ。昨日見たたくさんの船はこの送迎用の船だった。岩陰にはアオサギがいる。フィラエ遺跡も水没から助けられた遺跡のひとつ。イシス神殿だ。

 古代エジプトは多神教、神様はごまんといる。中心になるのはオシリスとイシス。二人は夫婦である。オシリスは弟セトのために体を切り刻まれてエジプト中に捨てられてしまった。それをイシスが拾い集め、再生したが、内蔵をワニかなにかに食べられてしまったとかで、この世の戻れず冥界を支配することになったのだそうな。二人の子どもがハヤブサの姿をしたホルス。私がエジプトの神様の名を知っているのはヨシムラ先生と教養高いマンガのおかげ。

 この神殿はアレキサンダー大王が作らせたものだそうだ。アレキサンダーの名前が出てくると「さあさしっかりアレキさん」(BC334)ぐっと歴史も身近に感じられる。神殿の柱にクロスが見える。コプト教徒がここまで逃げ延び、ずいぶん殺されたようだ。しかし、その後この神殿は教会となる。柱などヘレニズムの影響が見られるようだが、私にはあんまりおもしろくない。

福沢諭吉によると、「文明は物質で表されるもの。文化とは形にならないものである」という。しかし両者は密接に関わり合って、文化があってこそ文明がうまれるのだろう。そうなると、違った文化が入ってくれば、おのずと文明も変化する。

 吉村作治さんによれば、「エジプトにおける文化の断絶は大きくいうと三つある。一つ目は多神教からキリスト教という一神教支配に変わるとき。俗に言うコプト時代。でもまだこの時代は古代エジプトが生きていた。7世紀、イスラムが入ってくると、エジプト人ですら人種が変わってしまったのではないかと錯覚するほどの変化だった。文化の三つ目の、最終はヨーロッパの植民地政策の到来。これはそれまで2回に比べ建設的、創造的なものでなくの、破壊と搾取のそれである。」と。

 イスラムの世界はアラビア語で礼拝が行われる。イブン・バツータが広範囲に旅行をしたのも、彼はコーランを教えながらイスラム圏を移動していたのである。アラブとはイスラムでアラビア語を公用語とする国だと聞いたことがある。だからイラン(ペルシャ語)はアラブには入らないと。
 
 「約束の時間は11時半ですが、まだ時間があります。ヌビア博物館でも行きませんか。ひとり20ドルです」とガイドのローニー君が言う。お出でなすったな、でも、今日はこのまま空港へ行くのだし、今回二人ともドルをそんなに持っていないが、40ドルならなんとかある。そこでドルを払う。ドルを欲しがるのはエジプト経済がインフレなのか。

 以前トルコの田舎で、両替に行くと、ひとだかりができていた。不思議に思ってのぞいていると、土地の人がトルコリラをドルに替えている。なぜだか訊くと、インフレがひどいのでたとえ少しでもドルに替えておかないと、目減りしてしまうのだと言っていた。

 入場料は20ポンド、カメラはお預け。夫が「気がつかないふりをしてやろう」という。ここの博物館もよく整理されている。ジオラマまであり、ヌビアの歴史がよく分かる。人物の彫刻は写実ながら省略するところはちゃんと省略してあり、やはり良い。

 ナイル沿いに菩提樹が見える。「あれはbo treeでしょ」というが[febus]だという。どう見ても菩提樹だ。緯度的にも菩提樹があって不思議はない。しかし、この国でユーカリがどこにでもたくさんあった。あれは在来種ではなかろう。たぶんオーストラリアからの移植だろう。

 予定通りなら2時にはカイロにつくから、その足でアレキサンドリアへ行こうと予定していたのだが、飛行機は遅れに遅れ、1時半発が3時発。やーれやれ。

 カイロに近づくにつれ、遠くに紅海とシナイ半島の山並みが見える。同じように緑のない砂漠と禿げ山。始めは紅海を見に行こうと言っていたのだが、ここから紅海を見たからもういい、と言い出す。カイロ方面は雲に覆われている。しかしその白いはずの雲がなんとも薄汚いのだ。スモッグのせいかね、と言いながらシャッターを切る。

 夫がカメラの砂防をそんなに気にすることなかったんじゃないかという。とんでもない、毎晩、レンズはもとよりフィルターまではずして掃除していたのを知らないな。それでも、ズームの動きがわるくなっている。たぶん砂がはいりこんでいるのだろう。

 今日のホテルはラムセス ヒルトン。値段はナイル ヒルトンより安い。私たちの部屋は20階。はるか向こうにギザのピラミッドがまるで小山のように見える。このホテル、コンパクトで居心地はいいのだが、難点はエレベーターがちっとも来ないこと。だれもがイライラして上下全部のボタンを押すから、人がいなくても止まってしまう。だからなおのこと遅くなる。気の短い日本人には不向き。

 懲りもせず中華へ行く。夫はステラビール。私は中国茶。ところがまた中国茶はないという。その代わりグリーンティならありますと。なぜグリーンティなの、と言いながらグリーンティをとると出てきたのはウーロン茶。そうか、ウーロン茶は青茶だ。だからグリーンティと言っているんだね。でも日本人には紛らわしい。これは中国茶のウーロン茶。日本人が中国茶が欲しいと言ったら、自信を持ってこれをすすめなさい、と漢字まで書いてやる。

 食事が済んで席を立とうとしたとき、ウェイターが「マダム」と言って薔薇の花をくれた。お礼のつもりだったのだろうか。部屋に持っていって水差しに活ける。やっぱり生きている花はいい。

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