2005/11/07 - 2005/11/09
21858位(同エリア27611件中)
きっちーさん
昌徳宮をあとにし、地下鉄利用で3号線「獨立門」駅へ。
5番出口のすぐ脇の小道を上がると、古びたレンガ造りのゲートが見えてきます。
ここには、1920年代(日本による植民地支配時代)に、日本によって建てられた、「刑務所」という名の拷問および殺人施設の一部が、歴史館として残されています。
ふと、フランスの哲学者が書いた「監獄の誕生」というタイトルが、頭をよぎります。
はしゃぎまわる子供の声がひびく公園に、不釣合いなこの陰惨な施設は、社会科見学に訪れる学生達と2〜3人の素人カメラマン以外に、ひと気もなく時が止まったかのように、静かに訪れる人を迎えます。
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地下鉄の階段を登りきったところにある、案内板。
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刑務所歴史館入口。
監獄のゲートをそのまま入口として、利用しています。
いわゆる「観光客」の姿はなく、韓国の学生さんたちが、先生に引率されて、小学生や高校生くらいの人たちまで、たくさん来ていました。
こういうところで、知っている韓国人と知らない日本人の、溝が生まれてしまうのでしょう。
グルメや、ショッピング、エンタメだけじゃなくて、こうゆう歴史の共有がもっとできればいいんですけど・・。
もうちょっと、時間がかかるのかなあ。 -
入口でチケットを切ってくれたお兄さんが、「あそこから見てってね」と言ってくれたのか、丁寧に何か話しかけては正面のコンクリートの建物を指差します。
閉じたままの扉に「閉まってるんじゃないの??」とおっかなびっくりノブを回すと、案外簡単に開いて、順路を示す矢印が見えます。
案内に沿って右手へ進むと、ガランとした部屋にパネルがかけられており、まったく読めないのですが、ここで殺された韓国の女性や男性の半生が解説されているようです。
外に建っている、このほかの刑務所施設と異なり、ここだけ写真撮影を禁止しているのは、こうした死者の顔写真が展示されているせいなのかもしれません。
部屋の中央には、木製の十字架がおかれており、隣のガラスケースにある鞭を見ても、どうやって使うかは不明なものの、拷問道具であることは明白でしょう。
ここまでは、文章を読めないこともあって、それほど陰惨な印象を受けることはなかったのですが、ここからは違っていたのです。
本当にショックを受けるのは、この建物の地下を見てからなのでした。
矢印はさらに建物の地下へ続きます。
途中から、地元の人らしき50代くらいの男性が、私たちの前を歩いて行きます。
彼に案内されるように階段をおりきると、そこには鉄格子で閉ざされた無数の部屋が並んでいます。
檻の前には一つ一つ、ハングルと中国語でタイトルがが表示され、当時監獄で行われていた、日本人による残酷な拷問のようすが、マネキン人形で再現されています。
レイプ、拷問、暴力など、薄暗い地下に広がる光景にぞっとするような、なまなましい息苦しさを感じます。
これは日本の「軍隊」がやったことではなく、公務員や一般の市民が行っていたことだと思うと、寒気を覚えます。
「軍隊」だから、人を殺せるのではなく、「市民が市民を殺す」という異常さが、「日本人」というナショナリズムに浸かった特権意識があれば、それが出来るのだという事に、つくづく考えさせられました。
(だから、タイトルを「日本軍」にせず「日本人」にしました。戦争犯罪って軍隊の中だけじゃなく、一般市民も参加しておこなわれるものだから)
目の前に広がる光景は、日本人の加害行為を告発しているものであるため、お母さんと一緒に日本語で感想をささやきあっていると、ふと、前を行くおじさんが振り向いて、つかみかかってくるんじゃないかと不安まで感じたほどです。
もちろん、そんなことはなく、おじさんは静かに館内を回っているだけでした。 -
さて、私的に一番インパクトが強かったのは、「立棺」と名づけられた、文字通り棺桶を立たせた拷問道具(というか処刑道具)です。
これに、生きたまま人を閉じ込めると、動くことも眠ることもできず、数日中に足の血管が破裂して、死亡するそうです。
このほかに、四角い木の箱。
一見、なんでもなさそうなのですが、なかに鉄の釘が突き出ていて、韓国の人を閉じ込めて転がしたしたそうです。
当然、体重がかかったところに突き出た釘で突き刺され、出血死してしまいます。
牢屋自体も、トイレや暖房設備のないものでした。
韓国の寒い冬、すきま風の入る冷たく狭い檻の中で、横になることもできない人数が閉じ込められ、大勢が拷問と虐待によって衰弱死していきました。
生き残った人の写真は、骸骨が立ち上がったかのように虚ろで、アウシュビッツのサヴァイバーを連想させます。
この監獄で殺されていった人達は、いわゆる「犯罪者」ではありません。
日本の侵略統治に反対し、韓国独立のために戦ったレジスタンス。
もしくは、日本にも独立運動にもかかわりなく、捕まった市民、知識人など。
ガイドブックには「刑務所歴史館」とありますが、やはり「収容所」あるいは「処刑場」といったほうが、しっくりくるように感じました。 -
撮影禁止の館内を出て、獄舎へ入ります。
がらんとした陽の射す廊下で、カメラマンらしき人が、あちこち記録写真を撮影しています。
刑務所というのは、今も昔もそんなにデザイン的に変化はないように思えました。
入ったことはないんですが(笑)、映画とかで見るのと似てるんです。
独房の一部が開放されていて、中へ入ると壁のあちこちにハングルで落書きがされています。
どんなことが書かれているのかわかりませんが、ちゃんと読めたらなあと、自分をふがいなく感じました。
解説より、こういうフツーの誰かが書いた「言葉」を受けとめてみたかったです。
この建物では、日本語の解説もつけられていましたが、こんなひどいことがここだけではなく、朝鮮半島のあちこちで行われていたのです。
よく、戦後補償や靖国問題、天皇の戦争責任問題などをめぐって現れる韓国や北朝鮮に対する日本のマスコミの、やたら「反日感情」とラベリングして背景を報道しない無神経さや、「恨み深い」と言い捨てる人達の傲慢ぶりを、この施設は無言で告発しているのではないでしょうか。 -
韓国だけではありません。
中国での731部隊による生体実験。
フィリピン、オーストラリア、ミャンマー、グアム、南国列島の島々。
日本による傷跡は、アジア各地に残っているのです。 -
コンクリートで周囲から隠された、小さな敷地。
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壁の内側には、さらに小さな小屋が建てられています。
じつは、これ、死刑場です。
日本人による一方的な裁判のすえ、朝鮮半島の人達がここで絞首刑にされました。 -
処刑場のすぐそばにある、謎のトンネル。
倉庫か何かかと思ったら、これを通って、殺した人達の遺体をこっそり墓場へ、捨てに行っていたそうです。
いったいどれくらいの遺体が捨てられたのでしょう。
見られないようにこんなの作ってたって事は、悪いことしてるって知っててやってたわけです。 -
日本語表記の解説文も一部つくられています。
もっと詳しく知りたかった。 -
いま見ると、横浜の赤レンガ倉庫や、東京駅の古い駅舎のようにシックな建物にみえてしまったりするのですが・・・。
かつて、大勢の朝鮮半島の人達を殺す場所であったこの建物が、逆に死んでいった人々の無言の証言を、代弁しているのです。
台北の「総統府」もそうですが、日本によるコロニアルの建築様式は、赤レンガがシンボルのようです。 -
ちょっとブレイク。
恒例のトイレネタ。 -
博物館のトイレは、周囲の景観を損なわないようレンガっぽい外壁にしてあります。
中は、明るく清潔な雰囲気で、一つ一つの個室に花の絵がかけられて、ほっとします。
ソウルの公共施設のトイレはどこも清潔で、トイレットペーパーも完備された、とても使いやすいものでした。 -
個室の中にも、絵が(笑)。
公共施設のトイレは非常に使いやすいのですが、一般のお店のトイレなどは、配水管が細く、紙を流せないトイレも多く残っています。
個室の中に備え付けのゴミ箱が設置されていて、使った紙はそこに捨てるように、ハングルと英語で注意書きがあったりします。
流せるのか流せないのか、微妙な場合は流さないでバスケットに捨てちゃう方が無難でしょう。
以上、恒例のトイレネタでした。 -
歴史館のまわりは、高層住宅地。
香港、マカオ、台北、日本など、ソウルもそうですが、比較的狭い敷地に大勢の人が暮らしていると、こういう高層建築物が、あちこちで見られます。
この歴史館で見られるような、日本による人道に対する犯罪を、否定するような「つくる会」の教科書があります。
このような動きに対抗して、ある教科書が、最近、中国・韓国・日本の先生たちによる共同制作で、発表されました。
「未来をひらく歴史」というタイトルで、書店で購入できます。
中・韓・日、どこの学生が使っても学べ、共通の歴史認識を共有できるよう、日本の侵略戦争の過程も詳しく紹介されています。
また、中国にくらべるとあまり知られていない、朝鮮半島の歴史についても、丁寧な記載があります。
ただ、ちょっと気になったのが、韓国の人達の名前はきちんと、韓国語の読みで記載されているのですが、中国の人達の名前は日本語読みなんですよね。
これはちゃんと、現地の読み方に変更した方がいいと思いました。
ただ、こういう企画が形になったことは、やっぱり嬉しい。
タイトルの通り、「未来をひらく」第一歩だと思うので、日本の学校でこれが教科書として、使われてくれるようになってくれたらと願います。
だって、韓国や中国ではすでに、日本の戦争の実態を、学んでいるのですから。 -
去年、北京へ行ったとき、有名な「中国人民抗日戦争記念館」へ行けなかったので、今回この歴史館へこれてよかったです。
旅行記は、まだ続きますので、見てくださいね〜。
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この旅行記へのコメント (5)
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- SUR SHANGHAIさん 2006/06/20 20:50:24
- おひさしぶりです
- ここには行った事がありませんが、世界各地には戦争当時や人種・国籍によって同じ人類を隔離・虐待した時代の、こうした施設が多くありますね。
今も同じような事態があるとかないとかと言うニュースを聞くたびに、これらの歴史が教訓になっていないことを感じます。
同じ人類なのに、これは一体どういうことなのか…。
というのを切実に感じさせてくれる旅行記ですね。
楽しいだけの旅行ではなく、何かを考えさせてくれる所も回ってみるべきと思っています。
ご紹介くださって、ありがとうございます。
- きっちーさん からの返信 2006/06/28 18:11:53
- RE: おひさしぶりです
- 読んでいただいて、ありがとうございます。
個人的に関心があるところだったので、短い時間でしたが、行けて良かったと思います。
ただ、ハングルはちゃんと勉強しないと、ダメですね(笑)。
まったく、わかりませんでした!
きっと、韓流ファンの人たちの方が、実りの多い旅をしてるんだろうなあ、とちょっと寂しかったです。
語学は大切ですね。
失礼します。
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- revelstokeさん 2005/11/10 13:14:54
- 記念写真
- 良く、こんな1番怖い場所で写真を取れましたね???びっくりです。
私は説明を見て1分で退散しました。
- きっちーさん からの返信 2005/11/10 21:31:35
- RE: 記念写真
- タイトルを、パクッちゃってすみません(笑)。
写真を撮ったのは、少しでも多くの人に知ってもらえたらなあと、思ったからです。
文章はこれから書いていくつもりですが、こういうところを広島・長崎とセットでみてほしいと思います。
実際、韓国の社会科見学で、たくさんの学生さんが来ていました。
私も、自分の友人と付き合っていく上で、共通の認識を分かち合いたいと思っています。
韓国の学生さんや暮らしている人達は、戦時中日本がどんなことをしたのかをこうした記録を通して知っているのに、戦争当事者が今も暮らしているこの日本で生活していて、知らないんじゃすまないと思っています。
まあ、あまり肩に力を入れるのも苦手なので、韓国との交流が進む中で、知らないことで溝が生まれないように、仲良くするために、知っておきたいと思っています。
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- revelstokeさん 2005/11/10 12:59:26
- そのタイトルはやめて!
- 西大門の収容所です。去年の入場料は1500Wでした。
地下の牢屋には、かなりひどい蝋人形があり、とても殺伐としたところです。
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