2005/08/11 - 2005/09/22
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ダイサクさん
『インドで考えた。』
ー知らないことは罪であるー
先日、幼稚園の頃からのお付き合いをさせて頂いている歯医者の先生とご飯を食べていた時に、先生がふとおっしゃった言葉が強く印象に残っている。
「社会で生活するにあたって、時として“知らないことは罪になる”からね」。
どういう話題の中でこの言葉が出てきたかは正確には覚えていないが、これはつまり、「例えば、何か罪を犯してしまって、それを咎められた時に、『私はそれが悪いことだとは知りませんでした』と言ってもそれは通じないよ」というごく当たり前のことを言っている。
私がこのやりとりを冒頭に紹介し、伝えたいのは、「知らないことの罪」であり、裏を返せば「知ることの重要性」である。
私は今夏、インドを43日間一人旅してきた。インドに行こうと考えてから、インドという国について調べ初めた私は、それまで全く知らなかったさまざまな事実を知っていった。例えば、人口。インドの現在の人口は、約11億0300万人。世界の人口は今年6月現在、65億人に迫ることが明らかにされている、ということは、世界の人口の約6人に1人がインド人になる。また、2050年までにインドの人口は約15億9300万人に増加する見込みであり、2030年までに中国を抜き世界一の人口大国になるだろうともいわれている。もちろん、これらの情報はニュース番組でも知ることができるものである。
しかし、インドには私が初めて事実として目の当たりにしていく驚愕の事実がいくつもあり、私はそれまで自分がそれらに関して「何も知らない」で裕福に暮らしてきたことに、少なからず負い目を感じてしまった。現在、グローバル化が進み国境という概念が薄れ、国連(実際にはアメリカを中心とする世界だが)を主導に発展途上国の経済支援や地球環境問題に対する連携が行われてきている。世界は密接に繋がっており、他国の経済問題も政治問題も環境問題も、もはや対岸の火事ではない。すなわち、少し大げさな言い方になってしまうかもしれないが、同じ地球の同時代を生きる同じ人間として、私たちはもっと「知らないのは罪である」という意識を育まなければならないし、「知るべき」であると思うのである。当然、そんなのは個人の自由じゃないかと言われてしまえばそれまでなのだが。
しかし、何かの縁でインドに行き、これまた何かの縁でボランティアに参加させて頂き、現地のインド人に多くの愛情と親切を頂いた私は、インドで「知ったこと」や「感じたこと」、「考えたこと」を少しでも多くの日本人に伝えていきたいと思うのである。私もインドでの問題を知ってから、それに対して直接的な行動を起こしてはいないが、まずは間接的になってしまうが、より多くの人にインドでの問題を伝えようと思うのである。
そこで、今回はたった43日間の旅ではあるが、その中で知り、終始考え続けていた「子供の貧困」問題についてのレポートを書いていきたいと思う。
まだまだ、私も知らないことが多い。そこはご容赦下さい。もし、何か補足等がありましたら掲示板などに書いてくだされば幸いです。
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インドを旅していると、最初は衝撃を受けるが、次第にそれはここではごく当たり前の日常なのだと受け入れることが多々ある。
それは例えば、路上を歩いている牛の姿であったり、路上で寝るインド人の姿であったり、値段のついていない商品の数々であったりする。
それら日本では非日常な現実にふれることが旅のおもしろさの一つであろう。
しかし、旅をはじめてから終えるまで、インドで日常的に目の当たりにする子供達の貧困問題やカースト制などに対して、「どうして?」という疑問が消えることはなく、そのことを知らずに裕福に日本で暮らしてきた自分に負い目を感じてしまいながらも、そのような現実をゆるしてしまっているインド社会に対して怒りに似た感情を抱いてしまったことがある。
それは「路上暮らしをしている子供達」(左写真参照)であり、「ホテルや路上や観光地で労働をしている子供達」の姿である。 -
私は今でも、インドで初めて子供連れの母さんに「バクシーシ」と言われた衝撃を覚えている。(左写真参照。インドでは日常的に見かける。)
それは日本で22年間暮らし、そこで見てきて聞いてきて学んできたことの範囲外の事実をリアルに眼のあたりにしたからこその衝撃であった。
しかし、私にとってそれはあくまで「インドの問題」であった。 -
私がこの「インドの問題」を「自分にも関係のある問題」と捉えるようになったのは、バンガロールで、1週間、過去に児童労働をさせられていた子供や、修正液を離さない子供や路上で生活している子供とふれあい、それら貧困に苦しめられ続けている全ての子供達の自由と権利を勝ち取っていくために自らの人生をかけて活動をしている人びとの姿を目の当たりにすることができたからである。(左写真参照。)
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この体験は一つの出会いによってもたらされた。
それは、私がインドに出発する前にビザを取得するために行った東京のインド大使館であった。
横に座った女性に「すいません、ハサミ持っていますか?」と尋ねられたのが始まりであった。
その女性こそ、バンガロールで子供の人権を守るために活動している実生さんであった。(左写真参照。)
南からインドを北上しようという私の話を聞いた実生さんが言った「よかったらバンガロールにおいでよ」という言葉と、そこでもらった電話番号が書かれている名刺が私をバンガロールに導いたのだ。 -
BRICSと呼ばれ経済発展が目覚しいインド。
電化製品などの購買力をもつ中流以上の人口は2億人以上いるとされ、国内市場は、自動車では04年に100万台を超え、カラーテレビも日本に匹敵する800万台に達し、携帯電話の加入台数は約5千万台と中国に次ぐ世界第2位の規模になっている。
南インドの中心都市であるバンガロールは、インドで最も急速に発展している都市(左写真参照。)である。「アジアのIT基地」と呼ばれるこの都市には、約10年前にケンタッキーフライドチキンに代表される外資の有力店舗やIT企業がいち早く進出し、そのお陰もあって街はインドとは思えないほど発展しており、そこでの暮らしには不便もあまり感じられない。街で働く人も比較的裕福であり、街中ではインドではご法度とされている“恋人同士が手を繋いで歩く姿”も頻繁に見かけることが出来るし、オートリキシャーよりも自動車の方が多い印象もある。 -
しかし、その急速な発展を支えているのが、建設現場やホテル、レストラン等で働く多くの児童労働者(左写真参照。)の存在である。
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バンガロールのストリートチルドレンの数は8万人、児童労働者は10万人いると言われている。多くのストリートチルドレンはゴミ拾い(左写真参照。バンガロールの市場でゴミの山から何かを探す少女。)をしたり物乞いをし、取るに足らないお金を手に入れる一方で、修正液ボトルを吸って飢えをしのいでいる。
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このような児童労働者やストリートチルドレンの存在の背景には、インドが抱える大きな問題の一である貧困問題がある。
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11億の人口を抱えるインドの農村人口は計7億2000万人とされ、多くは貧困状態にある。
一日1ドル未満で暮らす貧困人口は政府推計で2億5000万人に上る。
世界には約2億4,600万人の児童労働者がいるが、その内の1億人はインドにいる。(左写真参照。エローラ遺跡前で手品でお金を稼ぐ少年。)
インドには約4億人の子供達ー人口の約40%を占めるーがいるが、そのうちの1億5千万人は学校に通っているが、一方で約1億人の子供達は小学校をすでに辞めているか、働いているか、路上をぶらつき、路上で生活をしているのである。
カーストの低い家庭の子供たち、そして、都市部の貧困家庭、自然災害の犠牲になった家庭の子供たちに多い。 -
1986年には、幼年労働禁止法が制定されたが、インドでは児童労働は常態となっており、統計にもでないような農村や部署での雇用によって潜在的児童労働者は数え切れないだろう。
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2005年8月、インド下院は同国最大の課題である貧困問題解消のため与党連合が提出した「国家農村雇用保証法案」を賛成多数で可決した。
農村部の全世帯が対象で、一世帯につき1人に一日最低60ルピー(約150円)、100日間の労働を保証する雇用促進策で、地元メディアによると予算規模は総額4000億ルピーに上る。
ちなみに、その予算の約2倍の7,700億ルピーが今年の軍事予算に充てられている。
そして、その軍事予算の10分の1の702億ルピーが教育費に充てられている。
軍用機1機を小学校建設に当てると約25校建つ計算になるという。 -
1998年にインドで初めてノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・セン(厚生経済学・社会選択論分野での理論的研究と発展途上国の貧困・開発問題の分析という、二つの異なった分野を結びつけた研究で知られる)は「初等教育が基本的人権として保障されて初めて、インドは経済的にも社会的にも発展することができる。」と述べている。
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