1972/09/16 - 1972/09/16
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片瀬貴文さん
1961年9月19日（火）
昨日に引き続き、鉄筋コンクリートの話。
4日間暑い日が続く。
「日本の残暑は、こんなだったかなぁ」と、思う。
日本が、遠い国になってしまった。
「何のためにこんなに苦労してまで、パリにいるのか」
「日本に帰って、うまいものを食べて寝ていた方が、よほどマシな人生ではないだろうか」
充実ばかりが、何時までも続かないと言うことなのだろう。
到着以来二ヶ月余りの、異常な高揚の反動だろうが、それにしてもこんなに激しい感情の波は、余り経験したことがない。
働くことが、馬鹿らしいと感じたりもする。
留学生病だそうだ。
デパートで、ゴッホの複製を見る。
南仏の秋の田園風景。
285フラン（当時2万円）は、買えない価格ではない。
気に入って買ってしまおうかと、迷いながら行きつ戻りつ30分。
結局やめた。
やはり285フランは大金だ。
少なくとも、日本では。
だが、まだ諦めきっている訳ではない。
未だに、後ろ髪を引かれている。
決断の悪さは、疲れだろうか。
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