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バンコックでは当時、流通系の企業では大丸が一番知られたデパートだったかもしれない。更に日系のコーヒーチェーン店も既にバンコックに上陸していた。的に滅多に当たらない射撃を終えバスに乗り込み、市街に戻った我々は喉の渇きも覚えたままにそんな日系のコーヒーチェーン店に入っていった。 昼過ぎといえ、店内はかなり混雑して冷房が感じられないほど、人いきれで暑く感じた。それでも杉さんは相変わらずTシャツの上に長袖のシャツを着て入れ墨を隠していた。ウエートレスが我々の元にやって来て席を案内してくれたが、そこは相席だった。4人掛けの椅子をセパレートに少し離してしてもらった。<br />私と杉さんは向かい合うように座り、すぐ横にやはり向かい合うように座った先客がいた。 先客の二人はスーツにネクタイを締めた40歳前後の日本人だった。私と杉さんは彼等に軽く会釈をして座席を割って貰ったのだが、如何にも迷惑そうな表情がありありと窺え、会釈を返すわけでもなかった。 我々はそれぞれアイスコーヒーを注文し射撃場での反省会などをしたりの馬鹿話に終始していた。すると、眼鏡をかけた方の神経質そうな男が我々の話に割って入ってきた。<br /><br />「あんたら、旅行者か?それとも安宿に棲み付いたりしているのか?バックパッカーって奴か?」  <br />如何にも見下したような、小馬鹿にしたような直裁的なものの云い方にイヤな感じを持ったが、私は普通に答えた。<br />「ええ、ごく普通の旅行者ですよ。安宿には泊まっていますが?」<br />「ごく普通の旅行者なら安宿には泊まらないだろ?キチンとしたホテルに泊まるはずだろ。」  <br />いったい、この男は何を俺達に云いたいのだろう?昼間から酔っている訳でも無いだろうに絡みつくようなモノの云い方をしてくる男だった。ふと真向かいの杉さんを見ると、怖い表情で唇をかみ締めて、顔を小刻みに揺らしながら我々のやり取りを聞いているようだった。<br />「安宿を泊まり歩いて、非生産的で無為な毎日、仕事もせずにブラブラして楽しいのか?バックパッカーって奴は馬鹿ばっかーって云うんだぞ。 それでも旅行者って云うのかぁ?」 <br />杉さんの隣りに座ってるこの眼鏡男、杉さんの表情の変化に気付く事もなく、はす向かいの席に座る私に向かって畳み込むようなモノの云い方を続けている。ふと相手のスーツの胸元を見ると某有名商社のバッジが光っていた。学生時代、私はその商社ビルのメンテナンスのアルバイトをしていたことがあったので、すぐに読みとれた。<br /><br />「他人に迷惑かけるでもなく、自分の金で旅を続けているわけで、人それぞれなんだから他者にとやかく言われるもんでもないと思うけど?」 私は相手の眼鏡の奥の表情を射るように答えた。私はかなり腹を立てていた。その商社マンの相方は杉さんとはす向かいに座っている所為か、杉さんの表情を読みとっているのか、ほとんど言葉を発しない。<br />「お前っ、 随分と生意気な口を利くじゃねぇか? 幾つだ?大人になめた口を利くんじゃないぞ」<br />自分から突っかかって来ておいて、いったいこの男は何なんだ? それにしても、やくざの前でやくざな口を利くなんて、なんて命知らずの男なんだろう。 その時、私とその男が諍いを始めてから、はじめて杉さんが口を開いた。<br />「KIOさん、 わしっ 暑いわ 上着脱いでも失礼にならないか?」<br />店内は込み合って人いきれで冷房も効かないくらいに感じていた。<br />「全然失礼にならないよ。脱ぎなさい 脱ぎなさいよっ」軽い調子で答える私。<br />おら~ もう杉さんにバトンタッチ~<br />「服 脱ぐ判断も出来ねえのかよ、ったくよ~」商社マンは相変わらず、悪態をつくのを止めようとしない。<br /><br />はす向かいのこの男はその時、おそらく初めて椅子を少し離した座席の隣りに座ってる杉さんの顔を見たはずだ。杉さんの顔は、既に大魔神が怒った時の表情に変わっていた。<br />修羅をくぐってきた人の怒濤の表情をとくとご覧あれという残酷な気分になっている私。<br /><br />杉さんが長袖のシャツを脱ぐ前にその男の表情がみるみると変わっていくのが判った。シャツを脱いだ時の鮮やかな入れ墨がその両腕から現れた時、男は平静を装うとするのか、アイスコーヒーに手を付けるのだが、コップを持つ手が震え、こぼしてしまう。顔は血の気が失せるとはこういうことを云うのかと、思うくらい青ざめている。空威張りな人を見下したような言葉はもう二度と出てこなかった。もう一人の相方は下を向いたまま動かない。<br />「あんたよ? 俺達があんたに迷惑をかけたか?いってみろ」<br />「いっ いえいえ、 ご迷惑をおかけしたのは私どものほうでございましたっ」 <br />消えいるような声で伏し目がちに答える男。<br />「だったら、この人に謝れっ あんた 俺は黙って聞いていたけどな、随分と失礼な事を云ってたな」<br />杉さんっ~~ かっちょえええ~~私はそんな気持ちで頼もしそうに聞く一方、もう一人の自分は複雑な気分に陥っているのを感じていた。<br />「すいませんでした、、、」 私に少しだけ目線をあげて消えいるように謝罪めいた言葉を口に出しながら頭を下げた。その男は既に涙目になって、目をしばたいていた。<br />「それが謝罪の言葉か、キチンと謝れないのかよ」畳み込むような杉さんの言葉に男は身体を震わしている。<br />「杉さん、もう いいっすよ、俺 気にしてないし、もう充分だって」私はこの男と同席してること自体が厭だった。「失せろ、、俺達の前から失せろ」 杉さん自身もそんな気持ちだったようだった。我々の伝票も持って彼等は店を逃げるように出ていった。<br /><br />「わしっ あ~ゆ~エリート面した奴らが大嫌いなんだよ。相手をみて態度を変えるのは好かん」<br />杉さんは長袖シャツを再び羽織りながらまだ怒っていた。<br />「ああ でも杉さん 格好良かったよ? この桜吹雪が目に入らぬか~って感じじゃないすか。やっぱ相手はびびるのが当たり前だと思うよ。俺は杉さんが、暴れたらどうしようかとそっちの方を心配してたよ。」<br /><br />杉さんはカッとしてもすぐには回路は切れないようにしていると云った意味の事を言うと、こういった。<br /><br />「ケーキとか 美味そうな果物の盛り付け、注文しておけば良かったな。」 それは私も同じ事を考えていた。  実は杉さんはアルコール類は一切ダメな根っからの甘党だったのだ。<br /><br />

NO8 恐怖のやっちゃんバックパッカー・杉さん 怒涛の漢・・この桜吹雪が~

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kio

kioさん

バンコックでは当時、流通系の企業では大丸が一番知られたデパートだったかもしれない。更に日系のコーヒーチェーン店も既にバンコックに上陸していた。的に滅多に当たらない射撃を終えバスに乗り込み、市街に戻った我々は喉の渇きも覚えたままにそんな日系のコーヒーチェーン店に入っていった。 昼過ぎといえ、店内はかなり混雑して冷房が感じられないほど、人いきれで暑く感じた。それでも杉さんは相変わらずTシャツの上に長袖のシャツを着て入れ墨を隠していた。ウエートレスが我々の元にやって来て席を案内してくれたが、そこは相席だった。4人掛けの椅子をセパレートに少し離してしてもらった。
私と杉さんは向かい合うように座り、すぐ横にやはり向かい合うように座った先客がいた。 先客の二人はスーツにネクタイを締めた40歳前後の日本人だった。私と杉さんは彼等に軽く会釈をして座席を割って貰ったのだが、如何にも迷惑そうな表情がありありと窺え、会釈を返すわけでもなかった。 我々はそれぞれアイスコーヒーを注文し射撃場での反省会などをしたりの馬鹿話に終始していた。すると、眼鏡をかけた方の神経質そうな男が我々の話に割って入ってきた。

「あんたら、旅行者か?それとも安宿に棲み付いたりしているのか?バックパッカーって奴か?」  
如何にも見下したような、小馬鹿にしたような直裁的なものの云い方にイヤな感じを持ったが、私は普通に答えた。
「ええ、ごく普通の旅行者ですよ。安宿には泊まっていますが?」
「ごく普通の旅行者なら安宿には泊まらないだろ?キチンとしたホテルに泊まるはずだろ。」  
いったい、この男は何を俺達に云いたいのだろう?昼間から酔っている訳でも無いだろうに絡みつくようなモノの云い方をしてくる男だった。ふと真向かいの杉さんを見ると、怖い表情で唇をかみ締めて、顔を小刻みに揺らしながら我々のやり取りを聞いているようだった。
「安宿を泊まり歩いて、非生産的で無為な毎日、仕事もせずにブラブラして楽しいのか?バックパッカーって奴は馬鹿ばっかーって云うんだぞ。 それでも旅行者って云うのかぁ?」 
杉さんの隣りに座ってるこの眼鏡男、杉さんの表情の変化に気付く事もなく、はす向かいの席に座る私に向かって畳み込むようなモノの云い方を続けている。ふと相手のスーツの胸元を見ると某有名商社のバッジが光っていた。学生時代、私はその商社ビルのメンテナンスのアルバイトをしていたことがあったので、すぐに読みとれた。

「他人に迷惑かけるでもなく、自分の金で旅を続けているわけで、人それぞれなんだから他者にとやかく言われるもんでもないと思うけど?」 私は相手の眼鏡の奥の表情を射るように答えた。私はかなり腹を立てていた。その商社マンの相方は杉さんとはす向かいに座っている所為か、杉さんの表情を読みとっているのか、ほとんど言葉を発しない。
「お前っ、 随分と生意気な口を利くじゃねぇか? 幾つだ?大人になめた口を利くんじゃないぞ」
自分から突っかかって来ておいて、いったいこの男は何なんだ? それにしても、やくざの前でやくざな口を利くなんて、なんて命知らずの男なんだろう。 その時、私とその男が諍いを始めてから、はじめて杉さんが口を開いた。
「KIOさん、 わしっ 暑いわ 上着脱いでも失礼にならないか?」
店内は込み合って人いきれで冷房も効かないくらいに感じていた。
「全然失礼にならないよ。脱ぎなさい 脱ぎなさいよっ」軽い調子で答える私。
おら~ もう杉さんにバトンタッチ~
「服 脱ぐ判断も出来ねえのかよ、ったくよ~」商社マンは相変わらず、悪態をつくのを止めようとしない。

はす向かいのこの男はその時、おそらく初めて椅子を少し離した座席の隣りに座ってる杉さんの顔を見たはずだ。杉さんの顔は、既に大魔神が怒った時の表情に変わっていた。
修羅をくぐってきた人の怒濤の表情をとくとご覧あれという残酷な気分になっている私。

杉さんが長袖のシャツを脱ぐ前にその男の表情がみるみると変わっていくのが判った。シャツを脱いだ時の鮮やかな入れ墨がその両腕から現れた時、男は平静を装うとするのか、アイスコーヒーに手を付けるのだが、コップを持つ手が震え、こぼしてしまう。顔は血の気が失せるとはこういうことを云うのかと、思うくらい青ざめている。空威張りな人を見下したような言葉はもう二度と出てこなかった。もう一人の相方は下を向いたまま動かない。
「あんたよ? 俺達があんたに迷惑をかけたか?いってみろ」
「いっ いえいえ、 ご迷惑をおかけしたのは私どものほうでございましたっ」 
消えいるような声で伏し目がちに答える男。
「だったら、この人に謝れっ あんた 俺は黙って聞いていたけどな、随分と失礼な事を云ってたな」
杉さんっ~~ かっちょえええ~~私はそんな気持ちで頼もしそうに聞く一方、もう一人の自分は複雑な気分に陥っているのを感じていた。
「すいませんでした、、、」 私に少しだけ目線をあげて消えいるように謝罪めいた言葉を口に出しながら頭を下げた。その男は既に涙目になって、目をしばたいていた。
「それが謝罪の言葉か、キチンと謝れないのかよ」畳み込むような杉さんの言葉に男は身体を震わしている。
「杉さん、もう いいっすよ、俺 気にしてないし、もう充分だって」私はこの男と同席してること自体が厭だった。「失せろ、、俺達の前から失せろ」 杉さん自身もそんな気持ちだったようだった。我々の伝票も持って彼等は店を逃げるように出ていった。

「わしっ あ~ゆ~エリート面した奴らが大嫌いなんだよ。相手をみて態度を変えるのは好かん」
杉さんは長袖シャツを再び羽織りながらまだ怒っていた。
「ああ でも杉さん 格好良かったよ? この桜吹雪が目に入らぬか~って感じじゃないすか。やっぱ相手はびびるのが当たり前だと思うよ。俺は杉さんが、暴れたらどうしようかとそっちの方を心配してたよ。」

杉さんはカッとしてもすぐには回路は切れないようにしていると云った意味の事を言うと、こういった。

「ケーキとか 美味そうな果物の盛り付け、注文しておけば良かったな。」 それは私も同じ事を考えていた。  実は杉さんはアルコール類は一切ダメな根っからの甘党だったのだ。

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  • ちょめたんさん 2007/03/18 23:05:07
    杉さん格好いい〜!!((o(* ̄◇)o<*:'゚。.*:゚・'゚゚:。'・゚【紙吹雪】:+"。*・':゚:*:'゚`。+:"`:;・
    kioさん友好関係広いですね〜!!実はkioさんその人だったりして!?胸がすっとしましたね。

    kio

    kioさん からの返信 2007/03/18 23:54:53
    RE: 杉さん格好いい〜!!((o(* ̄◇)o<*:'゚。.*:゚・'゚゚:。'・゚【紙吹雪】:+"。*・':゚:*:'゚`。+:"`:;・
    ちょめたんさん こんばんわ〜
    バンコック・サクラ吹雪編? 投票いただき有り難うございます。

    このスギさん、人好きのする、たぶん寂しがり屋な人でした。
    どなたかへのレスにも書いたと思いますが、
    インドへの同行を求められましたが、いつもマイペースで居たい
    自分は断りました。 とてつもなく強く印象に残るひとでした。

  • SUR SHANGHAIさん 2006/11/03 19:41:15
    パッカー宿の主
    わたくしめもパッカー時代には、あちこちの安宿でいろんな旅人に会いましたね〜。
    宿の主人という意味とは違う≪宿の主≫のような方がいたり。(^^ゞ
    なにやら怪しげ、怖げな内外のパッカーさんも。
    で、それを不愉快に思う現地在住邦人の方たちも。
    kioさんの旅行記の結末は、迫力ですね。
    プライバシー・ホテルではなく、≪無頼橋・ホテル≫と名付けたくなりました。(^○^)

    一度、香港の某所で台湾某所のパッカー宿情報を流したところ、数ヵ月後に移住してきた人たちがいて焦ったこともありました。(>_<)
    あの頃出会った人たち、今はどこで何をしていることやら。

    今は質もだいぶ改善されましたが、初期の頃の外国での日本食は…、期待度と値段が高いにもかかわらず、実態は(ーー;)でしたね。

    別の旅行記に出ていた≪一人旅は幸・不運は紙一重、判断はすべて自分自身に委ねられる≫、これもパッカー時代は身に沁みました。

    kio

    kioさん からの返信 2006/11/05 20:54:57
    プライバシーホテルの中国名は○○旅社 
    sur shanghaiさん こんばんわ〜

    >なにやら怪しげ、怖げな内外のパッカーさんも
    kioさんの旅行記の結末は、迫力ですね。
    プライバシー・ホテルではなく、≪無頼橋・ホテル≫と名付けたくなりました


    バンコックの怪しげ旅社編を見てくれたのですね(^-^;
    マレーシアホテルの有ったあの地区は安宿街としては
    すっかり寂れてしまったようです。 プライバシーホテルも
    90年代に既に駆逐されたようで、検索をかけてもヒットしません。
    アヤシゲな旅社にはアヤシゲな輩が当然のように集うものですね。
    普通の旅行者というよりアウトサイダーな感じの人々が普通に
    吸い寄せられている感じでしたね

    この旅社はエジプトのカイロの安宿で出逢った日系ブラジル人カップルから
    教えられたんですよね。んで彼はプライバシーホテルという名前で
    教えてくれたのですが、ホテルの看板に書かれていた中国名のホテルの名前を
    ど〜しても思い出せません。(・・;) ○○旅社と書かれていたんですが
    中国語でプライバシーに相当する単語は何でしょうか??
    まさか<無頼橋>ではないとは思いますが・・(゜゜;)\(--;)ォィォィ


    SUR SHANGHAI

    SUR SHANGHAIさん からの返信 2006/11/05 21:52:06
    RE: パッカー宿の主
    いや〜、ちょっと前まで中国では≪プライバシー≫の観念があるんだろうか、という感じでしたので、古来からの言葉は…(・・?、無いような。
    上海のような都会では、≪私生活個人的秘密≫などと言うようですが。
    地方に行ったら、今も「なに?それ?」かも。

    日本でも、英語からとって≪プライバシー≫などと言っているわけですから、おあいこですね。日本語古来の言葉も無いんじゃないでしょうか。
    これも、≪私生活個人的秘密≫かも?(^○^)

    プライバシー・ホテルの中国語名は、意味を訳した漢字を使用せずに、発音の近い漢字を当てていた可能性あり。


    kio

    kioさん からの返信 2006/11/05 22:40:31
    プライバシーの中国語
    >プライバシー・ホテルの中国語名は、意味を訳した漢字を使用せずに、発音の近い漢字を当てていた可能性あり。

    プライバシーホテル、、改めて様々な検索エンジンで調べてみたら
    今も実在するみたいです(*^_^*)なんか嬉しいゾ〜
    ルンピニーのボクシング会場に近い所為か、ムエタイのボクサーの
    御用達宿のようです。更に翻訳エンジンで中国語で<プライバシー>に
    あたる中国語を調べてみました。<隠私>と出てきました。
    いや〜もう実に言い得て妙、、だなあと感嘆しました(笑)

    やはりsur shanghaiさんの言われた通りに発音の近い漢字を当てていた
    と思います。断じて<隠私旅社>では無かったと確信を持って云えます。

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