2016/11/20 - 2016/11/20
527位(同エリア1519件中)
ころたさん
六本木ミッドタウンの21-21デザイン サイトで「デザインの解剖展」という美術展が開催されている。企画ディレクターの武蔵野美大 佐藤氏によれば「デザインを、ものを見るための方法としてとらえること。つまりものや環境を理解するためにデザインをメスにすることができるのではないだろうか。」と哲学的なことをおっしゃっている。いいですよ。アート好きなエンジニアの私としては、美大へ進むといっている長女をお供に、この難解な美術展に挑もうじゃないか。
11月ももう下旬、秋の深まる六本木に出かけた。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.5
- 同行者
- 家族旅行
- 交通手段
- 私鉄
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場所はご存知、六本木ミッドタウン。でもサントリー美術館じゃないよ、今日は。場所はビルの外。
東京ミッドタウン ショッピングモール
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東京ミッドタウン・ガーデンにある 21-21 Design Sight というギャラリーが会場。六本木の樹々もすっかり秋模様だ。
東京ミッドタウン ショッピングモール
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夜にはライトアップされる並木の向こうにギャラリーはある。
東京ミッドタウン ショッピングモール
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ありました。これが 21-21 Design Sight。大きな折り紙のような特徴的な建物の設計はお馴染み、安藤忠雄。主な展示室は地下にある。
21_21 DESIGN SIGHT 美術館・博物館
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なんともユニークな建物で催される展覧会はデザインが主題。数多くの企画やワークショップが催される21-21のディレクターには、三宅一生の名も見える。
http://www.2121designsight.jp/21_21 DESIGN SIGHT 美術館・博物館
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そして今回の展覧会は「デザインの解剖展」。なんだろな?という題名だが、21_21のディレクターも務める武蔵野美大 佐藤氏によれば、氏が2001年より取り組んでいるプロジェクトで、身近な製品を「デザインの視点」で解剖し、各製品の成り立ちを徹底して検証する試みとのこと。
21_21 DESIGN SIGHT 美術館・博物館
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今回は明治乳業の製品を取り上げ、形としてのデザインに止まらず、製品を細部に至るまで文字通り解剖していくと言う。
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21_21の入口には30人ほどの列ができていて、雨の中10分ほど待ってから入場した。
そんなに人気のある展覧会だったんだ。21_21 DESIGN SIGHT 美術館・博物館
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いかにも安藤忠雄設計!という作りのビルに入り、入場料1100円(高校生の娘は500円)を支払って地下に降りていく。
21_21 DESIGN SIGHT 美術館・博物館
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するとまず目に入ったのはたくさんの子供たちが何やら作っているスペース。
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なになに「ワークショップ みんなでカイボウ」。真っ白な牛乳パックにいろいろなデザインパーツを貼り付けて、自分だけの牛乳をつくろうというイベントだ。
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子供たちと一部の大人たち、一生懸命にやっている。2時間も掛けて作るんだ。
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そして本番。「デザインの解剖とは」の大きなパネル。
ははぁ、やりたい事がだいぶ分かってきたぞ。 -
最初の展示室では、これまで佐藤氏が「デザインの解剖」で取り上げてきた題材を、立体で表現した。「写ルンです」とかISSEI MIYAKEの「生地」とか。
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リカちゃんの頭蓋骨を、リカちゃんの顔から逆構築するなんてこともやっている。ちゃんと解剖学的解析を加えて。
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これから分解していくプロセスを示した図。「ミルクチョコレート」であれば、最外側の包装のデザイン・色彩・材質から始まって、次第に内部に分解する。最内では、チョコの栄養分や味覚まで分解していく。
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これはデザインといってもアートの手法じゃないな。エンジニアリングだ。我々技術者が製品分析や新製品設計をする時に用いる手法だ。
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それをデザインに持ち込むことで、新たな視野が開けることをもくろんでいるらしい。
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まずは「きのこの山」。
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いきなり巨大「きのこの山」がお出迎え。子供連れ、カップルには絶好のカメラスポット。
そうそう、この展示会は撮影OKといううれしい企画。なので私も遠慮なく。 -
分解は、パッケージデザインの各パーツから、きのこの山のお菓子パーツへと進んでいく。
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パッケージにデザインされた山の風景を実体化してみたり、
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何種類かのきのこ(1種類じゃなかったのね)のオブジェがあったりする。
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歴代のパッケージの変遷。
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次第に分解を進め、「おいしさの訴求ポイント」表記や、「成分表示」等々、事細かな内容について解析していく。
この辺になると「ちとくどいな」、誰もがそう思い始める。 -
これは面白かったな。きのこの山に関わるweb解析をビジュアル化したもの。検索した人がどんなキーワードを引いて、次にどこに飛んで行ったかをリンクして可視化した。
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これもweb解析であり、検索回数を円の色と大きさで表現した。「作品 ウェブサイトの解析」というアートです。
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とにかく文章が事細かくて長い。だから見学者が進むのに時間が掛かるし、入場待ちの行列も長くなる。
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分解はどんどん進んで、「原材料」や「栄養」「生産量」に至る。もう完全にエンジニアリングだ。
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そして最後には工場見学を行って、製造プロセスを表現する。
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私には面白いんですが、一般の人達にとってはホントにおもしろいんだろうか。最初の「きのこの山」で熱心にパネルを読んでいたがためにできた渋滞の波は、次の部屋ではずいぶんと空いてくる。
21_21 DESIGN SIGHT 美術館・博物館
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次の題材は「ブルガリアヨーグルト」。ここまで来ると皆さん、見学のコツを掴んだのか、見学スピードが突然上がって渋滞は解消される。
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おなじみのパッケージデザインもパーツに分けて解析していく。
見せ方はさすがグラフィックデザイナーだ。21_21 DESIGN SIGHT 美術館・博物館
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ブルガリアヨーグルトの中カバーには、たくさんの「ヨーグルトあるある」が印刷されていたんだ。気にも留めなかった。その印刷の原紙。カットする前の大きなもの。
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次、「ミルクチョコレートの解剖」
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ここにも中央に巨大サンプルがで~んと置かれている。
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「meiji」ロゴのデザイン的特徴を分解。何種類かのR(文字のコーナー部の円弧の大きさのこと)を使っている。
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そのロゴの時代変遷を辿る。どのロゴから見覚えがありますか?それで歳が分かっちゃうよ。私は4番目から。ちなみに上から、1926年,1931年,1951年,1955年,1971年,2009年 の登場となる。
うん、私の記憶と合っている。 -
パッケージに印刷されている製造日はインクジェット印刷。その仕組みを模擬モデル化したもの。7つのノズルから間欠的に点を印刷することで文字を表せる、と言うもの。
インクに見立てた白玉は左方で下に落ちてから、右手に流れてレールの上に運ばれ、プログラムされたタイミングで黒板に落ちていく。こういう見せ方がさすがだね。 -
「エッセルスーパーカップ」に行く。アイスだよ。
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ここでもまずはパッケージから。
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印刷されているロゴや背景を大きなパネルで表示している。
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そしてお馴染み巨大サンプル。
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次、「おいしい牛乳」。
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巨大サンプルも精巧でしょ。箱の裏のスタンプや折跡もちゃんと再現されている。
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なぜか一番人気があったのが、この牛乳パック型のブロックを切り刻んで作った積み木のコーナー。なんで?と思ったが、作者のTwitterが大うけしているらしい。(娘も知ってた)
https://twitter.com/rin_shimohama/status/786753764636057600?ref_src=twsrc%5Etfw
なるほどね。みんなこれがお目当てだったのかも。21_21 DESIGN SIGHT 美術館・博物館
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ネット社会らしい現象だね。Twitter一つで大盛り上がりなんだ。googleで「牛乳積み木」を検索すると30万件がヒット。先日行った「カリエール展」(http://4travel.jp/travelogue/11186592 を見てね)だとたった3万件だよ。ころた超絶お勧めの「篠山紀信展」(http://4travel.jp/travelogue/11176830 )でさえ50万件足らず。
ちなみに「デザインの解剖」だと40万件。すごいな「牛乳積み木」の人気は・・・
(写真は牛乳の生産工程を牧場から可視化したもの) -
今回の展覧会は得るものが多かったな。「解剖する」というプロセスはエンジニアにはお馴染みなのだが、アーティストや一般の人がこういうものに興味を持ってくれることは、我々にはうれしいかぎり。エンジニアはこの解剖の逆のことをやって、一つ一つの製品をデザイン(設計)しているんだ。
(写真は牛乳工場のビデオ。これもデザインされた見せ方をしているよね。) -
でも大事な部分が物足りない。それはここにはWhatはあるけれども、WhyとHowが抜けている。つまり「どんなだった?」は提示しているが、「なぜそうした?」「どうやってそうなった?」が述べられていない。
エンジニアはそこにこだわる。たまたまできた結果ではない。必ず理由があってそうデザインしたのだ。
(写真は乳牛一頭が1年間に生産する牛乳の量(左の円筒)と、ウンチとオシッコ(右の円錐)。牛さんすごい!)21_21 DESIGN SIGHT 美術館・博物館
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私も設計者としてプロのデザイナーに製品形状のデザインをお願いすることがある。しかし製品の目的や特性をよく理解しないままデザインだけを行おうとするデザイナーの作品は、ほぼ使い物にならない。まさにここで行われているような、機能や特性を分解して理解し、何が必要なのかを分かったうえで形状をデザインすることが重要だ。それは何も自動車や飛行機に限ったことではないのだ。
21_21 DESIGN SIGHT 美術館・博物館
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3時間ほど見学して外に出ると、行列は2倍の長さになっていた。彼らが「牛乳積み木」以外のものに少しでも興味を持ってくれたらと願う。そして誰よりこれからデザイナーをめざそうと言う娘が、今日のことを心に留めていつの日かいい仕事をしてくれるようになれば、と願う。
21_21 DESIGN SIGHT 美術館・博物館
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その娘は「気持ちが悪くなった」とか申しておった。それ、知恵熱なじゃいの?いいんだよ、自分の中でゆっくり消化しな。
すっかり黄色くなった銀杏並木を歩きながら、そんなことを思う父であった。
(なんか今回は感動的な終わり方だなぁ by JIGAJISAN )東京ミッドタウン ショッピングモール
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この旅行記へのコメント (3)
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- olive kenjiさん 2016/11/27 22:38:03
- so nice report
- ころたさん ついでに見たこの旅行記好きです。
気がついた三つの事
? 長い解説文は展示会場に渋滞をおこす。
? いいデザインとは=鋭い感性+緻密なエンジニアリング手法
? おそらく素敵な環境に囲まれたお嬢さんは芸大に進められるでしょう。
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- アルカロイド ダリルさん 2016/11/23 17:42:15
- エンジニアリング解説
- ころたさん!こんばんわ~
ダリルです!
おいしい牛乳の積み木は、笑えました!
私なら、なんて積もうかな~? を考えてしまう、引きずり込み方は、上手ですね~!
(きのこ)でコレだけ哲学デキる日本を離れ、ゆる~い東南アジアの、アバウトさを味わいに、不便でテキトーでデンジャラスで安いご飯を食べる対比に、クラクラしながらもハマってます!
今夜も、いい絵が描けそうです! 日本に育ち、何となく積み重ねた感性を視覚化した展示は、当たり前たと思ったことが、学習と分析の集大成である事を、思い知らされて新鮮でした!
楽しい美術展リポート、ありがとうございました!
ダリル
- ころたさん からの返信 2016/11/24 10:16:24
- RE: エンジニアリング解説
- ダリルさん、こんにちは
「いいね」戴きありがとうございました。
私は割とマイナーな美術展を回るのが好きなのですが、今回のかなりオタクな美術展にあんなに人が押し寄せるとは思ってもいませんでした。「おもしろいもの」に対する若者の情報収集力は大したものです。現代はネットが世の中を回しているんだと、改めて思いました。
台湾B級グルメ、私も大好きです。もう2年も台湾に行けてないけど、何かほっと安心できるいい国ですよね。台南には知り合いの成功大学の先生がいて、2回ほど訪問しました。仕事の付き合いだといい処でしか食べられないけど、ホントはダリルさんのようにどこへでも潜り込んでB級をたらふく食べたかった(蟹にB級は失礼?)。
しばらく訪台できそうもないので、ダリル旅行記でその気になっています。
では、また
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