2006/07/28 - 2006/08/01
16位(同エリア75件中)
あらゆさん
トカラ列島は、屋久島と奄美大島の間に長くつらなるマイナーな島々。鹿児島から船で6〜13時間とロサンゼルス並みに遠く、鹿児島の人でも「ほとんど行かないなあ」と言う場所。ホテルやレストランや土産物屋がない、つまり観光地らしい場所はほぼありません。島の人も「何もない島」と言います。
でも「何もない島」と言われると逆に興味がわいてくる----僕は頭を空っぽにしたくて、トカラ列島に出かけました。
さて、諏訪之瀬島の次に訪れたのが、隣の悪石島です。悪い石の島……ある意味、名前がかなり魅力的です。
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 3万円 - 5万円
- 交通手段
- 船 JALグループ
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悪石島。この島はトカラ列島のなかでも「ボゼの祭り」で、なかなか知名度が高いです。
このお祭りは
●旧暦のお盆に(今年は8月9日)
●東南アジア風の「仮面神ボゼ」が出現して
●男性器をかたどったマラ棒で人びとを追いかけ回し、赤土の泥を塗る
という、何とも興味をそそる変な祭りです。このときは観光客もドッと訪れます。
ただし民宿の人によると、この時期は島の人も祭りにかかりきりになるため、民宿には泊まれないとのこと。ツアーに参加する観光客はボゼを見られるけれども、この時はフェリーや公民館に泊まるそうです。
一方、この旅行ではボゼの2週間前に悪石島を訪れましたが、意外にタイミングが良かった。島も静かで民宿のお客は僕だけ。旧暦の七夕だったので、独特の風習も見られたし。
ちなみに今年のボゼツアーは、台風の影響で鹿児島から船が出せず中止になったらしい……。僕は幸運だったのかもしれません。 -
見よ、このフェリーとしまの勇姿を!
悪石島は、諏訪之瀬島からフェリーで1時間ほどの距離にあります。諏訪之瀬島からクッキリ見える近さだけど、島の間の行き来はほとんどないと聞きました。
まあ、相手の島に行く用事はなさそうかな……。 -
こちらはフェリーとしまの2等船室。テレビはBSが入るので、大リーグ中継が流れていました。
2等寝台、1等船室もあるけれど、ほとんどの乗客は2等船室に乗っています。寝るにはここで十分だし。
夏なのでべた凪で、船酔いは全くしませんでした。 -
悪石島の民宿は5軒と多く、そのうち4軒が山の上の集落に(というか、すぐ近所に)かたまっています。僕は「さかもと荘」に泊まりました。
さかもと荘は数年前に改築したということで、キレイな部屋で快適でした。ちなみに隣は、あまり使われていない公民館です。 -
港での風景。
フェリーから降ろした生活物資や郵便物を、島の人たちが運んでいきます。宝を山分けしているような風景で、なぜか見飽きません。 -
集落にあった木。葉っぱでけむくじゃらです。
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悪石島にも諏訪之瀬島にも、中学校があります。校舎は、東京の学校とさほど変わらない立派さ。校庭も広いし。それぞれの学校には、校長も教頭もいます。
生徒は7〜9人ほど。先生の数は生徒と同数。究極のワンツーマン教育か、それとも先生が余っているだけなのか……。子供の育て方に悩む都会の親ごさんは、ぜひ視察してみてください。
ちなみに子供たちは夏休み中。歯の治療などは島ではできないため、九州に渡っている人もいたりします。
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離島でも自動販売機はあります。
ただしお金を入れても、茶のペットボトルは出てきませんでした。コーラは出てきたので自販機の故障ではないです。商品が入っていなかっただけでしょう。
右下の丸いのは空き缶入れ。中をのぞいたら、クワガタがのそのそ動いてました。
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食事中の方はごめんなさい。これは道ばたによく落ちていた牛のフンです。道路にはヤギのフンがよく落ちていました。よけて歩くのが意外に難しかった。
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透明度が高いです。ああ、海水浴がしたい。
山の集落から40〜50分下りた場所に、海岸まで出られる岬があります。夕方といってもカンカン照りの昼間、岬へ向かいました。さあ、泳ぐぞ! -
岬への道が!
台風のせいで崩れさってました。海水浴が、青い海が……。
ちなみに島には、別の岬へ下りる道もありますが、これも台風により半分崩れていました。
諏訪之瀬島や悪石島は岩や石の海岸ばかりで、観光地的にノンビリ寝そべるような海水浴は難しいです。リゾート的な海を目当てにするならば、砂浜がある宝島に行くのがよいでしょう。 -
かなり大きな牛発見。
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牛のみなさんは1年中放牧されています。起伏があったり草ぼうぼうの牧場を歩くトレーニングを積んでいるせいで、足腰が鍛えられ強いです。
また海水のミネラルがついた草を食べるので、牛が健康に育ちます。ちなみに、島の人のみなさんにも「風邪を引いときは海水浴をしろ」という言い伝えがあるそうです。タラソテラピーの原点ですね。
島から出荷しているのは子牛。約10カ月育てたあとに、鹿児島の畜産農家に出荷します。ちょっとドナドナ的です。 -
鉄条網は痛くないかい?
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この週はノミ駆除週間。牛を飼育している人それぞれが、殺虫剤をかけています。
面白いのは自分の牛を呼び集める方法。「ももこー」「ひかるー」などと名前を呼ぶと、それだけで集まってきます。牛は自分の名前を覚えているのです。
ちなみにクラクションを鳴らすだけでも「これは自分の家のクルマだ」と聞き分けて、わらわらと集まってくるとか。 -
道路で飼料を食べた牛が、おとなしく牧場へ戻っていきます。どこかの子供より聞き分け良さそう。
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こちらは飼われているヤギ。でも、島には野生のヤギも多いです。
野生のヤギは草木のツユに濡れるのを嫌うので、道路で寝ることも多いとか。そのせいか、道路にはヤギのフンが散乱しています。 -
巨大なクモ発見。これは、宿のすぐ隣の道路に網を張っていました。
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諏訪之瀬島と違い、悪石島には簡単に入れる温泉があるとパンフに書いてありました。温泉には一家言あるので、喜び勇んで行きました。
注意点はそう多くありません。まず、高地にある集落から温泉がある海岸そばまで、徒歩で40〜50分かかります。酷暑の昼に歩くと、行きだけで死にそうです。
行きはまだ楽ですよ、急な坂を下るだけだから。温泉に入った帰りは、坂を上らなければ! クルマを借りて行った方が無難です。僕は精魂尽き果てて、宿の人にクルマで迎えに来てもらいました。運が良ければ、クルマで通りかかった島の人に乗せてもらえることもあるでしょう。
とにかく、真っ昼間に徒歩で温泉に行くのだけは、やめたほうがいいです。 -
こちらは湯泊温泉。観光地の温泉ではなく、地元の人が訪れる公衆浴場的な場所です。どうやら管理人は常駐していないらしく、訪れたときには管理人もお客もいませんでした。
むき出しの管から出ているのが温泉です。シャワーもあります。石けん、シャンプー類はありません。
肝心の温泉は、源泉100%なのは間違いない。でも、熱くて入れません。ということで、家のお風呂のように自分で水を出して薄まるのを待ちましょう。
ちなみに僕は、湯船いっぱいにたまるまで待ってられず、腰ぐらいまでの量で浸かってました。 -
湯泊温泉の近くには、鹿児島の指宿にも似た砂蒸し温泉もありました。プーンと硫黄臭もします。期待が持てます。
しかし建物だけがポツンと立っています。無人です。 -
入り方が書いてない。管理人もお客もいないから、入り方がわからない。しかも酷暑で吐きそう……。
湯泊温泉まで歩いて疲れ切ったこともあり、入るのをあきらめて隣の芝生で寝てました。
あとで聞いたところ、砂をかぶるのではなく、毛布を敷いて上に寝るだけで効果があるとか。「島の人は冬によく来ますよ」とのこと。
そうだよ、冬にはちょうど良い温泉だよなあ。 -
悪石島で、僕が最も期待していた場所。それはこの海岸温泉です。ここでは、海岸で自然に湧き出ている温泉に入れます。
巨大な石に温泉マーク。ワイルドな感じでしょう。 -
島に着いてからわかったのですが、海岸温泉についてちょっとした誤算がありました。それは、
●満潮時でないと、熱くて入れない
源泉の温度は高く、それだけでは浸かれません。外の海から海水が流れ込んでくるのを待たなければ、温泉の温度は下がらないのです。
-
満潮時、こんな風に海水が流れ込まないと、海岸温泉には入れないです。
もうひとつ、温泉に入るときにわかった誤算は
●海水がどこまで流れ込むと
適当な温度になるのかわからない
流れ込む海水が少ないと、熱くて入れません。海水が多すぎるとただの海水浴です。満潮の時間は聞いて訪れたのですが、僕が入るときはまだ熱湯でした。
そこで温泉外の海に浸かり、荒波にもまれながら時を待ちました。いちおう、海に流れ込む湯には浸かれましたよ。でも1時間半待っても、当の温泉は熱湯のまま。仕方なく「今日はタラソテラピーに来たんだ」と自分を納得させてそのまま帰りました。
実は、普段は「ここまで水位が上がれば温度がちょうど良い」という水位ラインが描かれています。しかしこの時は台風被害から温泉を復旧させたばかりで、ラインをまだ描いていなかったとのこと。次に訪れる人は、水位ラインを確かめてから入ってください。 -
湯泊温泉には、露天風呂もあります。ただしこの湯も熱い。水の入れ方がわからず、入れませんでした……。
-
花竹と呼ばれる、花や草木を挿すための竹筒。彫ってあるのは家の家紋のようなもの。家ごとに違うそうです。
これが何に使われるのかといえば……。 -
「悪石島は、神様へお供えものをするための島」
宿のおばちゃんが話していた言葉です。
例えば島では、こうした祠を見かけます。これは泊まっている民宿の裏にあったもの。
??? 地蔵や仏像ではなく、お神木だけが供えられているのは何故だろう。
おばちゃん曰く、ここはお釈迦様を祭っている祠。家では代々、4月に唐芋でお釈迦様の人形を作り、その人形を洗面器に立たせ、タケノコで作ったひしゃくで水を3回かける風習(目が良くなるらしい)が受け継がれてきたとか。
そう、この島は民俗学の学者がよく調査に訪れるなど、興味深い祭りや風習が多いのです。 -
花竹は墓のまわりで、花や草を供えるために使われています。
親戚の墓にも花や草を供えるため、墓のまわりには数本の花竹がささっています。「そうか、親戚のお墓にもお参りするのか」と感心。島というのは、強く結ばれた共同体なのだな。 -
7月の七夕はお墓参りの日です。七夕といっても旧暦の話。今年は7月31日でした。
七夕には、墓を清めてススキを供えます。あのふわふわの穂を供えるのかと思いきや、青々とした葉でした。
もちろん、親戚のお墓にもススキを供えていました。 -
真夏なのに、本当に七夕です。
2〜3軒の家は竹に鮮やかな短冊を飾って掲げていました。 -
七夕にはモチを供えます。宿でもモチつき機を使って、モチを作っていました。
なんでも、家の中にいる(神棚がある)
●大黒さま
●火の神さま
●神さま
●仏さま
にお供えするそうです。神さまの種類が多い……。
神さまならぬ僕にも、つきたてのモチを食べさせてくれました。食べ方は、黒砂糖をかじってモチを食べるというもの。下手に醤油をつけるよりもシンプルで、おいしかった。
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「悪石島では6月と10月以外は何かしらの行事がある」と言われます。何でも正月を3回祝うぐらい、行事が盛りだくさん。
で、七夕にもお祭りがあります。盆踊りです。といっても大音量スピーカーから流れる音楽に合わせて踊るアレではありません。
悪石島の盆踊りは、鐘の音と詠唱に合わせ、扇子を使って踊るというもの。2週間後にあるボゼ祭りの予行練習も兼ねています。公民館の小さな庭で、20〜30人が輪になって扇子を舞わせていました。かなり独特です。
このあとは、墓地に隣接する発電所近くに場所を移して魚釣り踊りもしました。こちらは、竹の枝を使った踊り。かなり独特です。
日本はどこも同じ場所のようで、実は違うのだなあ。
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魚のサワラの薫製。スモーキーで、まるで上質のウインナーのよう。ビールに合います。
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宿では大きな鍋を使って自家製豆腐を作っていました。国産大豆と海水だけでできた、シンプルな豆腐。
船の出航が迫っていたので、できたての豆乳だけ飲ませてもらいました。えぐみやベタベタ感やしつこさがない純粋な豆腐の液が、スッと胃に入っていきました(当たり前か)。 -
くれぐれも日中は出歩かないように!
島の人にならって昼寝をしましょう。
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この旅行記へのコメント (1)
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- ミシマさん 2006/12/12 21:21:46
- 美女とねずみと神々の島
- あらゆさんこんにちは。
悪石島は、随分前に「美女とねずみと神々の島」という本を読んでず〜っと気になっていました。
アマゾンの存在を知ってアマゾンで初めて再購入したのは、この本で、以来、改めて気になっていました。
「美女とねずみと神々の島」の中で、悪石島の小学生が「今度生まれてくるときは、御鼠様は無理だとしても、せめてガヤス(カラス)に生まれてきたい」って言うくだりが忘れられません。
>「悪石島では6月と10月以外は何かしらの行事がある」と言われます。何でも正月を3回祝うぐらい、行事が盛りだくさん。
っていう豊かな島の感じは、僕のイメージと大きく外れますが、貴重な旅行記ありがたく読ませて頂きました。
僕も、ぜひ一度訪ねてみたい憧れの離島です。
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