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ケニアの旅 ナイロビ、アバーディア、ナクル国立公園、マサイマラ<br /><br /> アフリカは日本にとってまだまだ遠い国である。アフリカに入る直行便は数が非常に少ないので、今回のケニヤ周遊の旅は、乗り継ぎのため深夜にシンガポール・チャンギ空港で、4時間もの時間待ちをするという忍耐で始まった。シンガポールからアラブ首長国連邦のドバイまで飛び、ここで更に9時間の時間待ちをしてから、再度乗り換えてナイロビへ向かわなければならないのである。<br /><br /> アラブ首長国連邦のエミレーツ航空のステュワーデスは、国際色豊かである。概ねブロンドで白色の肌をした美人揃いである。回教の戒律がなさしむるところなのであろうか、アラブの女性は人前で接客サービスをする習慣がないらしく、異国人ステュワーデスだけでクルーを編成しているのである。イギリス、ベルギー、フランス、チュニジア、ドイツなどとそれぞれに国籍の異なる美人達が妍を競っている観があって乗客の目を楽しませてくれる。<br /><br /> 17時55分ケニア空港着。道中二日かかってやっとケニヤの首都ナイロビへ到着し、ホテルへ入ると夕食後直ちに久しぶりの安眠を貪った。<br /><br /> 翌朝五時半には目が覚めた。窓の外を眺めるとまだ薄暗いが既に出勤の人々がしきりに歩いているのが目に入る。車と人の流れが次第に勢いを増していく。車の流れを縫うようにして人々が道路を横切って行く。それが実にスムーズなのだ。そして人々は皆一様に長袖を着ているし、自転車が殆ど見られないのが意外だ。こうした朝の出勤風景を眺めているとロスアンジェルスと上海の出勤風景の対比を思い出していた。前者は車ばかりで歩いている人が皆無なのに後者では自転車の大群と歩行者の流れに数えるほど少数の車であった。ここナイロビでは歩行者と車の混在という姿である。そしてなによりの違いは人々の肌が黒く頭髪が縮れていることである。それにしても赤道から僅か140 km 南に位置している熱帯地方だというのにこの涼しさは一体どういうことだろう。ナイロビは海抜が1700m の高原であるところにその謎解きの鍵があるのだ。今は乾期のため湿度も50パーセントくらいなので殆ど汗をかかない。<br /><br />  食事が済んでからサハリカーに乗り込んで出発。運転手はキクユ族の若いジェームス氏でナイロビに住み、二男一女の妻帯者である。バンツー系の農耕民で豆やとうもろこしを食べるので多少肥満気味である。どことなく泥臭くあか抜けしていないが善良な人柄である。<br /><br /> ナイロビ市郊外にさしかかると舗装道路に大きな穴が至るところに穿いており、これを避けるために車は蛇行しながら進むので思わず体に力が入ってしまう。やがて舗装されていない草原と森林の道を進むことになるが乾期のためもうもうたる砂塵を巻き上げながらガタゴトと大きく揺れながらの走行が続く。防塵マスクのガーゼがたちまち砂塵で黄色になる。<br /><br /> 途中小休止した民芸品売り場には木彫りの動物の像や石彫りの像と赤色をベースとした派手な色彩の首輪や腕輪などが並んでいる。これ等の民芸品を眺めていると店員が「こんにちは」とにこやかに話しかけてくる。しきりにしつこく勧めてくるのでゆっくり眺めていることもできない。やたらと帽子と交換しようとかボールペンやライターと交換しようと言ってくる。が、これはその品をくれという意味で物々交換しようということではない。<br /><br /> 順調なドライブが続き予定通り、アバーディアにあるロッジ、ザ・アークに到着したが、長時間のがたがた道の走行で腰が痛くなりかけていた。部屋を割当てられて中へ入ると予想していたより設備がいい。早速シャワーで汗と埃を流して観察台のある屋上に行ってみると象の親子が五頭水を飲みに広場へ来ていた。広場には動物用に塩が撒いてある。動物達は種を問わず一様に塩を嘗めにやってくるようだ。生物にとって塩はそれほど大切なものなのであろう。夕食までにブッシュバック、バッファロー、象、小鳥等を観察した。夕食後は部屋へ帰って待機していると珍しい動物が現れた時、枕元のブザーで知らせてくれることになっている。疲れているので手持ちのウイスキーを引っかけてベッドに入ると忽ち寝入ってしまった。<br /><br /> 夜十時半と十二時半の二回だけベルの音に誘われて起きだし観察場へ出掛けた。セーターを着てジャンパーを羽織らなければ寒いくらいだ。ベッドには湯たんぽが入っているほどの冷え込みである。十時半の時には犀を二頭観察した。十二時半の時は手負いの水牛を狙って現れたハイエナの群れを観察した。しばらくの間、池に逃げ込んだ水牛を襲おうとするハイエナと水牛の駆け引きを観察していたが、なかなかけりがつきそうもないのでベッドにはいり、ブザーがならないようにスイッチを切って寝ることにした。<br /><br />  翌朝五時に目が覚めたので観察台へ行くと昨夜の水牛とハイエナの攻防が まだ続いていた。根負けして遂に池から上がった水牛が灌木の向こうへ逃げたのを追ってハイエナ達が姿を消すところまで見届けると丁度朝食の時間となった。<br /><br /> 結局このロッジで観察した動物は象、ブッシュバック、バッファロー、ぶちハイエナ、犀、狒(バブーン)、いぼ猪、ジャッカル等である。<br /><br /><br /> 七時五十分に出発して途中ニャフルルのトムソンズフォールを見学した。あまり大きな滝とは思えなかったが東アフリカでは最大で中央アフリカではビクトリヤフォールズに次いで二番目の大きさであるという。<br /><br /> ここでは、全身に真っ赤な衣装を纏った女が馴れ馴れしげに話しかけてきて、石彫りの動物像を売りつけようとつき纏うので閉口した。一般にアフリカの売り子達は客の気持ちを考えないで、ただひたすら強引に売りつけようとするから敬遠されて、客は終には品物を見ようともしなくなるということ等は意に介さない。つかず離れずという売り子とお客の間に発生すべき心理的な関係の機微にまでは考えが及ばないようである。<br /><br /> このあとエクアトール(赤道) と標識のでている箇所で水流の渦巻き実験を見学した。赤道直下で漏斗へ水差しから水を流すと浮かべてあるマッチ棒は東西の方向に停止して全然動かない。ところが赤道から十m程北へ離れた箇所で同じことをすると浮いているマツチ棒は時計方向へ回転をはじめるではないか。今度は場所を変えて南へ十mのところで同じことを繰り返すと不思議なことに今度はマッチ棒は時計と反対方向への回転運動を始めたのである。こんな簡単な実験で赤道がどこを通っているかを調べることが出来るのである。<br /><br /> この後ナクル国立公園のライオンヒル・ロッジに早い時間に到着した。ここで昼食を済ませて部屋へ入ると、昔懐かしい蚊帳が吊ってあった。<br /><br /> このあと砂塵もうもうと立ちのぼるサバンナの道を動物を探してサハリドライブした。<br /><br />ヌーと縞馬の大群、 麒麟、象、トムソンガゼル、インパラ、ハーテビースト等を観察した。待望のライオンも家族が五頭で休憩しているところを目撃できた。ライオンを見たいというサファリー客は多いので、ガイド達がそれぞれに無線で連絡しあって、沢山の車が集まってきた。それにしても現地人ガイド達の視力の良さには驚かされる。<br /><br /><br />肉眼で遠くのライオンを発見し、雄が立ち上がったとか雌が歩いているとか指さすのだが、我々がいくら双眼鏡で覗いてみても視野に入ってこない。車でかなり近寄って初めてライオンがいることを確認するような次第である。<br /><br /><br /> 翌朝七時に出発して朝飯前のサハリをした。フラミンゴ、ペリカンの大群を観察した後ロッジへ帰った。朝食を済ませてから今度はナイバシャ湖で船による水上サハリを楽しんだ。何種類もの水鳥やパピルスの群生なども観察したし、船上からはマウント・ロコノツの秀麗な山容が見えた。約一時間のサハリだったが河馬の群れが水中にたむろしているのも観察することができた。大きな図体の河馬が体を水面下に沈めて、耳と鼻だけを水面上にだして息づいているところはなんとなくユーモラスである。<br /><br /> 翌日はマサイ族の村を訪問した。村はマニヤッタと言い、牛の糞を固めて作られた建坪五坪程の小屋に五〜十人の家族が生活しているのである。こんな小屋が十二〜三戸ばかり長方形の広場を取り囲むようにして建っている。広場の広さは百坪ほどもあったであろうか。この広場へは放牧されている牛が夜間に休息のため集まってくるのだという。<br /><br />  広場には牛の糞尿が垂れ流しになつており、その糞を子供達が裸足で踏みつけながら走り廻っている。小屋の中には寝室が二部屋設けられていて牛の革が敷かれている。子供と夫婦がこの部屋へ寝るのだというが家財道具らしいものは何も置いていない。壁には小さな明かり取りの窓が穿たれているだけで、電気は勿論通じていないので、照明はなく部屋の中は薄暗い。土間には粗末な竈が築かれていて三十センチ角ほどの金網が置いてある。肉を焼くためのものであるという。部屋の隅のほうに陶製の容器が五〜六個置いてあるだけである。この容器で牛の血やミルクを飲むのである。彼らには本来野菜や穀物を食べるという習慣がないという。湿気が少ないので建材として使われている牛糞も乾燥していて臭わない。この小屋は女達が作る習わしになっており、六年の耐用年数であるという。ここの集落のファミリーは血族、姻族七十三人からなり、飼っている牛の数は三百頭である。酋長は二十五才で妻を五人持っていて子供は十三人いると言っていた。酋長だけがかぶることのできるというライオン皮の帽子を被って記念写真を撮らしてくれた。<br /><br /><br /> 我々が到着したとき女達が集まって歓迎の歌を歌ってくれたが一様に頭の髪が短くて一見男か女か判別できない。よく見ると乳房が膨れているのでようやく女と識別することができる。男も女も赤い生地の布を纏っていて殆どの者が裸足である。体型は一様にすらりと痩せており、筋肉質の手足を持っている。<br /><br /> 先史時代の生活がそのまま世の中の変化と関係なく、悠久の時間と共に静かに流れているという感じで、ここにいる限り現代文明とは隔絶された原始社会が現存している。男達は狩りや放牧で過ごし、子供達は学校へ行くこともなく、放牧した牛の番で一日を過ごすのであるし、女達は水汲みや薪拾いで時間を過ごしているのである。人間の幸せとは何か、進歩とか文明は本当に人間に幸福をもたらすものなのかということを考えさせられた一日であった。<br /><br /> 今日のサハリでは縞馬の大群とヌーの大群を目撃した。それぞれ五百頭くらいずついたがタンザニアから移動してきたものだという。またハネムーンのライオンも一対目撃したが、交尾に疲れ果てて横になり動こうとしなかった。新婚のライオンは七日間交尾を続け、一日40回に及ぶというから激しいものだ。<br /><br /> マラソバロッジで宿泊。明かりが消えてから空を仰ぐと星が近くに輝いており、星@s数も横浜で見るよりは多くあるように見える。大気の汚染がないし人工の光の邪魔がないので星が一際輝いて見えるのであろう。<br /><br /> 旅の最後の昼食にケニア料理を食べた。鉄棒に刺して火炙りした肉塊を、好みに応じて切り分けてくれるシュラスコ料理である。ポーク、ビーフ、ゴート、チキン、ハタビー、ジブラ、オストリッチ、と野性動物の肉を少しずつ味わったが縞馬が柔らかくて一番美味しいと思った。<br /><br /> 心身ともにどっぷり漬かって自然に回帰した思いのするケニアの旅であった。<br /><br /><br />

動物王国ケニアでマサイ族の原始生活を見学

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1999/06/15 - 1999/06/24

895位(同エリア1070件中)

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32

早島 潮

早島 潮さん

ケニアの旅 ナイロビ、アバーディア、ナクル国立公園、マサイマラ

 アフリカは日本にとってまだまだ遠い国である。アフリカに入る直行便は数が非常に少ないので、今回のケニヤ周遊の旅は、乗り継ぎのため深夜にシンガポール・チャンギ空港で、4時間もの時間待ちをするという忍耐で始まった。シンガポールからアラブ首長国連邦のドバイまで飛び、ここで更に9時間の時間待ちをしてから、再度乗り換えてナイロビへ向かわなければならないのである。

 アラブ首長国連邦のエミレーツ航空のステュワーデスは、国際色豊かである。概ねブロンドで白色の肌をした美人揃いである。回教の戒律がなさしむるところなのであろうか、アラブの女性は人前で接客サービスをする習慣がないらしく、異国人ステュワーデスだけでクルーを編成しているのである。イギリス、ベルギー、フランス、チュニジア、ドイツなどとそれぞれに国籍の異なる美人達が妍を競っている観があって乗客の目を楽しませてくれる。

 17時55分ケニア空港着。道中二日かかってやっとケニヤの首都ナイロビへ到着し、ホテルへ入ると夕食後直ちに久しぶりの安眠を貪った。

 翌朝五時半には目が覚めた。窓の外を眺めるとまだ薄暗いが既に出勤の人々がしきりに歩いているのが目に入る。車と人の流れが次第に勢いを増していく。車の流れを縫うようにして人々が道路を横切って行く。それが実にスムーズなのだ。そして人々は皆一様に長袖を着ているし、自転車が殆ど見られないのが意外だ。こうした朝の出勤風景を眺めているとロスアンジェルスと上海の出勤風景の対比を思い出していた。前者は車ばかりで歩いている人が皆無なのに後者では自転車の大群と歩行者の流れに数えるほど少数の車であった。ここナイロビでは歩行者と車の混在という姿である。そしてなによりの違いは人々の肌が黒く頭髪が縮れていることである。それにしても赤道から僅か140 km 南に位置している熱帯地方だというのにこの涼しさは一体どういうことだろう。ナイロビは海抜が1700m の高原であるところにその謎解きの鍵があるのだ。今は乾期のため湿度も50パーセントくらいなので殆ど汗をかかない。

食事が済んでからサハリカーに乗り込んで出発。運転手はキクユ族の若いジェームス氏でナイロビに住み、二男一女の妻帯者である。バンツー系の農耕民で豆やとうもろこしを食べるので多少肥満気味である。どことなく泥臭くあか抜けしていないが善良な人柄である。

 ナイロビ市郊外にさしかかると舗装道路に大きな穴が至るところに穿いており、これを避けるために車は蛇行しながら進むので思わず体に力が入ってしまう。やがて舗装されていない草原と森林の道を進むことになるが乾期のためもうもうたる砂塵を巻き上げながらガタゴトと大きく揺れながらの走行が続く。防塵マスクのガーゼがたちまち砂塵で黄色になる。

 途中小休止した民芸品売り場には木彫りの動物の像や石彫りの像と赤色をベースとした派手な色彩の首輪や腕輪などが並んでいる。これ等の民芸品を眺めていると店員が「こんにちは」とにこやかに話しかけてくる。しきりにしつこく勧めてくるのでゆっくり眺めていることもできない。やたらと帽子と交換しようとかボールペンやライターと交換しようと言ってくる。が、これはその品をくれという意味で物々交換しようということではない。

 順調なドライブが続き予定通り、アバーディアにあるロッジ、ザ・アークに到着したが、長時間のがたがた道の走行で腰が痛くなりかけていた。部屋を割当てられて中へ入ると予想していたより設備がいい。早速シャワーで汗と埃を流して観察台のある屋上に行ってみると象の親子が五頭水を飲みに広場へ来ていた。広場には動物用に塩が撒いてある。動物達は種を問わず一様に塩を嘗めにやってくるようだ。生物にとって塩はそれほど大切なものなのであろう。夕食までにブッシュバック、バッファロー、象、小鳥等を観察した。夕食後は部屋へ帰って待機していると珍しい動物が現れた時、枕元のブザーで知らせてくれることになっている。疲れているので手持ちのウイスキーを引っかけてベッドに入ると忽ち寝入ってしまった。

 夜十時半と十二時半の二回だけベルの音に誘われて起きだし観察場へ出掛けた。セーターを着てジャンパーを羽織らなければ寒いくらいだ。ベッドには湯たんぽが入っているほどの冷え込みである。十時半の時には犀を二頭観察した。十二時半の時は手負いの水牛を狙って現れたハイエナの群れを観察した。しばらくの間、池に逃げ込んだ水牛を襲おうとするハイエナと水牛の駆け引きを観察していたが、なかなかけりがつきそうもないのでベッドにはいり、ブザーがならないようにスイッチを切って寝ることにした。

翌朝五時に目が覚めたので観察台へ行くと昨夜の水牛とハイエナの攻防が まだ続いていた。根負けして遂に池から上がった水牛が灌木の向こうへ逃げたのを追ってハイエナ達が姿を消すところまで見届けると丁度朝食の時間となった。

 結局このロッジで観察した動物は象、ブッシュバック、バッファロー、ぶちハイエナ、犀、狒(バブーン)、いぼ猪、ジャッカル等である。


 七時五十分に出発して途中ニャフルルのトムソンズフォールを見学した。あまり大きな滝とは思えなかったが東アフリカでは最大で中央アフリカではビクトリヤフォールズに次いで二番目の大きさであるという。

 ここでは、全身に真っ赤な衣装を纏った女が馴れ馴れしげに話しかけてきて、石彫りの動物像を売りつけようとつき纏うので閉口した。一般にアフリカの売り子達は客の気持ちを考えないで、ただひたすら強引に売りつけようとするから敬遠されて、客は終には品物を見ようともしなくなるということ等は意に介さない。つかず離れずという売り子とお客の間に発生すべき心理的な関係の機微にまでは考えが及ばないようである。

 このあとエクアトール(赤道) と標識のでている箇所で水流の渦巻き実験を見学した。赤道直下で漏斗へ水差しから水を流すと浮かべてあるマッチ棒は東西の方向に停止して全然動かない。ところが赤道から十m程北へ離れた箇所で同じことをすると浮いているマツチ棒は時計方向へ回転をはじめるではないか。今度は場所を変えて南へ十mのところで同じことを繰り返すと不思議なことに今度はマッチ棒は時計と反対方向への回転運動を始めたのである。こんな簡単な実験で赤道がどこを通っているかを調べることが出来るのである。

 この後ナクル国立公園のライオンヒル・ロッジに早い時間に到着した。ここで昼食を済ませて部屋へ入ると、昔懐かしい蚊帳が吊ってあった。

 このあと砂塵もうもうと立ちのぼるサバンナの道を動物を探してサハリドライブした。

ヌーと縞馬の大群、 麒麟、象、トムソンガゼル、インパラ、ハーテビースト等を観察した。待望のライオンも家族が五頭で休憩しているところを目撃できた。ライオンを見たいというサファリー客は多いので、ガイド達がそれぞれに無線で連絡しあって、沢山の車が集まってきた。それにしても現地人ガイド達の視力の良さには驚かされる。


肉眼で遠くのライオンを発見し、雄が立ち上がったとか雌が歩いているとか指さすのだが、我々がいくら双眼鏡で覗いてみても視野に入ってこない。車でかなり近寄って初めてライオンがいることを確認するような次第である。


 翌朝七時に出発して朝飯前のサハリをした。フラミンゴ、ペリカンの大群を観察した後ロッジへ帰った。朝食を済ませてから今度はナイバシャ湖で船による水上サハリを楽しんだ。何種類もの水鳥やパピルスの群生なども観察したし、船上からはマウント・ロコノツの秀麗な山容が見えた。約一時間のサハリだったが河馬の群れが水中にたむろしているのも観察することができた。大きな図体の河馬が体を水面下に沈めて、耳と鼻だけを水面上にだして息づいているところはなんとなくユーモラスである。

 翌日はマサイ族の村を訪問した。村はマニヤッタと言い、牛の糞を固めて作られた建坪五坪程の小屋に五〜十人の家族が生活しているのである。こんな小屋が十二〜三戸ばかり長方形の広場を取り囲むようにして建っている。広場の広さは百坪ほどもあったであろうか。この広場へは放牧されている牛が夜間に休息のため集まってくるのだという。

広場には牛の糞尿が垂れ流しになつており、その糞を子供達が裸足で踏みつけながら走り廻っている。小屋の中には寝室が二部屋設けられていて牛の革が敷かれている。子供と夫婦がこの部屋へ寝るのだというが家財道具らしいものは何も置いていない。壁には小さな明かり取りの窓が穿たれているだけで、電気は勿論通じていないので、照明はなく部屋の中は薄暗い。土間には粗末な竈が築かれていて三十センチ角ほどの金網が置いてある。肉を焼くためのものであるという。部屋の隅のほうに陶製の容器が五〜六個置いてあるだけである。この容器で牛の血やミルクを飲むのである。彼らには本来野菜や穀物を食べるという習慣がないという。湿気が少ないので建材として使われている牛糞も乾燥していて臭わない。この小屋は女達が作る習わしになっており、六年の耐用年数であるという。ここの集落のファミリーは血族、姻族七十三人からなり、飼っている牛の数は三百頭である。酋長は二十五才で妻を五人持っていて子供は十三人いると言っていた。酋長だけがかぶることのできるというライオン皮の帽子を被って記念写真を撮らしてくれた。


 我々が到着したとき女達が集まって歓迎の歌を歌ってくれたが一様に頭の髪が短くて一見男か女か判別できない。よく見ると乳房が膨れているのでようやく女と識別することができる。男も女も赤い生地の布を纏っていて殆どの者が裸足である。体型は一様にすらりと痩せており、筋肉質の手足を持っている。

 先史時代の生活がそのまま世の中の変化と関係なく、悠久の時間と共に静かに流れているという感じで、ここにいる限り現代文明とは隔絶された原始社会が現存している。男達は狩りや放牧で過ごし、子供達は学校へ行くこともなく、放牧した牛の番で一日を過ごすのであるし、女達は水汲みや薪拾いで時間を過ごしているのである。人間の幸せとは何か、進歩とか文明は本当に人間に幸福をもたらすものなのかということを考えさせられた一日であった。

 今日のサハリでは縞馬の大群とヌーの大群を目撃した。それぞれ五百頭くらいずついたがタンザニアから移動してきたものだという。またハネムーンのライオンも一対目撃したが、交尾に疲れ果てて横になり動こうとしなかった。新婚のライオンは七日間交尾を続け、一日40回に及ぶというから激しいものだ。

 マラソバロッジで宿泊。明かりが消えてから空を仰ぐと星が近くに輝いており、星@s数も横浜で見るよりは多くあるように見える。大気の汚染がないし人工の光の邪魔がないので星が一際輝いて見えるのであろう。

 旅の最後の昼食にケニア料理を食べた。鉄棒に刺して火炙りした肉塊を、好みに応じて切り分けてくれるシュラスコ料理である。ポーク、ビーフ、ゴート、チキン、ハタビー、ジブラ、オストリッチ、と野性動物の肉を少しずつ味わったが縞馬が柔らかくて一番美味しいと思った。

 心身ともにどっぷり漬かって自然に回帰した思いのするケニアの旅であった。


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