2025/09/17 - 2025/09/17
1058位(同エリア10335件中)
かっちんさん
東京スリバチ学会会長の皆川典久さんと、港の見える横浜の谷を歩きました。
「スリバチ地形」とは、台地が河川の浸食や湧水などによって削られてできた、すり鉢状の窪地や谷のこと。
高台の山手本通りからの続きです。
再び大丸谷(おおまるだに)の窪地へ向かって階段を下り元町商店街へ。
崖の下には湧水が出ているところがあり、元町公園から再び坂道を上がり山手本通りに出て港の見える丘公園を目指します。
この散歩は、NHK学園オープンスクール「学び歩き」で見つけた少人数の町歩きです。
なお、旅行記は下記資料を参考にしました。
・NHK学園オープンスクール
・横浜山手西洋館マップ
・横浜古壁ウォッチング「古色を秘めた道路境界石」:土方坂
・日本交通計画協会「都市と交通」118号
・「ベーリック・ホール」のHP
・ザ・ヨコハマスタンダード「貝殻坂」
・国営ひたち海浜公園「パンパスグラス」
・ガーデンネックレス横浜「ガーデンペア」
・横浜観光情報「横浜マリンタワー」
・遊ぼう横浜「港町横濱 おさんぼ」
・ウィキペディア「谷戸」「横浜地方気象台」
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- JRローカル 私鉄 徒歩
- 旅行の手配内容
- ツアー(添乗員同行あり)
-
「お散歩コースの地図」
散歩の続きのコースは
・カトリック山手教会前の山手本通り~下り階段~土方坂~厳島神社~湧水~元町商店街~
・ジェラール水屋敷~元町公園~上り坂~エリスマン邸、ベーリック・ホール~
・山手本通り~外国人墓地~横浜地方気象台~港の見える丘公園~
・フランス山を下る~鋳鉄製の骨組~元町・中華街駅 -
高台の尾根伝いにある「山手本通り」(カトリック山手教会前)
真っすぐ進みます。 -
「大丸谷へ下りる道」
山手本通りから、フェリス女学園より少し手前に左へ入る道があります。
写真右側の塀はフェリス女学園の敷地。 -
「大丸谷へ下る急な階段」
無名の階段です。
はるか遠くに首都高速神奈川3号狩場線の高架道路が見えます。 -
両側が開けて見晴らしがいい階段(大丸谷)
大丸谷東側の崖を下る階段です。 -
階段途中から見上げたところ(大丸谷)
おやっ、手摺りに丸い輪があるのはなぜでしょう?
ある人の考えは
「子どもが手摺りに跨って下まで滑り降りる遊びをやっていて、バランスを崩すと崖から落ちてしまうので、丸い輪で停止させて短い距離だけ滑らせるのでは」
とコメントしています。
なるほど・・・ -
まもなく階段の終わり(大丸谷)
その先は緩やかな「土方坂」。
「ひじかたざか」とは読まずに「どかたざか」。
名前の由来は、横浜開港から明治初頭にかけて、このあたりに埋め立て工事の人足小屋が設けられたことから「土方坂」と呼ばれるようになりました。 -
手摺りに跨って滑り降りる遊びは確かに危ない!(大丸谷)
-
イチオシ
階段をふり返ると・・・(大丸谷)
崖に作られた急峻な階段とわかります。 -
「元町厳島神社」
土方坂を下りたところは横浜市中区元町。
右に曲がり、しばらく進むと神社に到着。
元町の神様に参拝します。 -
「湧き水」(元町)
厳島神社から住宅地の裏道を歩くと、湧き水が見られるところがあります。
崖に浸み込んだ水が平地との境目に湧き出ているのです。 -
まもなく「元町商店街」
正式には「元町ショッピングストリート」。 -
「歩車共存型街路」(元町商店街)
1960年代、建物1階部分の壁面線を1.5m後退させて歩道空間を創出したことで、全国に先駆けて「歩車共存型街路」を実現しました。
1985年には電線類を地中化しています。 -
お洒落な店が並ぶ「元町商店街」
-
イチオシ
「腰の曲がった高齢電柱」(元町仲通り)
おそらく道路の道幅拡張時、電柱上部が電線が入り組んでいるので、下部だけ移動したと思われます。 -
「水屋敷通り」に入ります
-
ふり返ると「元町商店街」(水屋敷通り)
-
「元町公園案内図」
元町公園手前にある「ジェラール水屋敷」に到着。
その先は斜面につくられた「元町公園」。
公園の坂道を上れば高台の山手本通り。
周りには「山手80番館遺跡」、「エリスマン邸」、「ベーリック・ホール」などがあります。 -
「ジェラール水屋敷地下水槽」説明板
幕末に来日したフランス人実業家アルフレッド・ジェラールは、「谷戸」に湧き出る豊富な湧水を利用して、横浜港に出入りする船舶への給水事業を開始。
「谷戸(やと)」とは、丘陵地が浸食されて形成された谷上の地形のこと。
水屋敷の名前はここに由来しています。
元町公園内にはもう一つの煉瓦地下貯水槽(上部貯水槽)の存在が確認されています。 -
「水屋敷地下水槽」
今でも湧き水が出ています。 -
緩やかな斜面にある「元町公園」
-
「上部貯水槽」説明板(元町公園)
この水は、明治時代に船乗りたちの間で「インド洋に行っても腐らない」と評判を呼んでいました。
上部貯水槽は、周囲の山からの湧水が毎分約60リットル流れ込み、その水位が1m程度になると下部貯水槽へ流れるような仕組み。
ここで集水し沈殿させる役割を果たす貯水槽と考えられています。 -
「公園のプール」(元町公園)
以前は湧水を使っていたので、泳ぐには冷たすぎるとの話もあり。 -
「山手80番館遺跡」(元町公園)
赤レンガの構造物は、関東大震災前の異人館遺跡です。
床部のせりあがりや壁体の亀裂が随所にみられ、関東大震災の被害状況を物語っています。
浄化槽も備え、古き良き横浜の居留外国人の華やかな暮らしぶりを知ることができます。 -
「ベーリック・ホール」(元町公園)
昭和5年(1930)イギリス人貿易商B.R.ベリックの邸宅としてJ.Hモーガンにより設計されました。
現存する戦前の山手外国人住宅の中では、最大規模の横浜市認定歴史的建造物です。
スパニッシュスタイルを基調とし、玄関の3連アーチ、屋根瓦を持つ煙突、クリーム色のスタッコ仕上げの外壁など、建築学的にも価値ある建物です。
では、室内を見学。 -
パーティーができそうな「居間」(ベーリック・ホール)
高い天井に暖炉を備えたこの広い居間は、建物の中でも特に目を引く空間です。
広さは47畳、天井の高さは約4mあります。
花弁模様の彫刻を施した石張の暖炉も素敵。 -
隣の「パーム・ルーム」(ベーリック・ホール)
アーチ状の窓があるため、明るい空間でくつろげます。 -
「食堂」(ベーリック・ホール)
重厚な化粧梁組天井と、壁面には飾り棚を置くアールコープが設けられています。 -
「照明のスイッチ」(ベーリック・ホール)
懐かしい形のスイッチです。
スイッチを上げた時の「カチッ」という触感を思い出します。 -
「流し台」(ベーリック・ホール)
荒洗い用と仕上げ洗い用の2槽のシンクがあり、左右両側に水切り台が。
材質は鉄製ほうろう引き。 -
「令息寝室(2階)」(ベーリック・ホール)
フレスコ技法の青い磨き壁、スパニッシュスタイルの建築にしばしば用いられるクワットレフォイルと呼ばれる四つ葉状の文様の小窓があります。 -
「客用寝室(2階)」(ベーリック・ホール)
青で統一された部屋です。
建設当時は客用寝室としてつくられていましたが、現在は応接室としています。 -
「浴室(2階)」(客用寝室)
浴室にはクワットレフォイルの小窓があり、ブルーのタイルが強烈な印象を与えます。 -
「主人寝室(2階)」(ベーリック・ホール)
ベリック氏は、和紙や絹を輸出し、紙類や化粧品・香水・文房具などを輸入する商館の経営者として、横浜とロンドンを行き来していました。
元は主人寝室でしたが、当時の活躍ぶりが感じられるように、あえて書斎として復元しています。 -
「婦人寝室(2階)」(ベーリック・ホール)
当時の富裕な婦人の暮らしぶりが見えてきます。 -
隣には「サンポーチ(2階)」(ベーリック・ホール)
庭木の緑、温かな陽光、港の景色。
この部屋で過ごすひとときが、遠い異国で生活する婦人の気持ちを和ませたのでは。 -
イチオシ
「旧ボイラータンク(地階)」(ベーリック・ホール)
地階には元々暖房室や石炭室、焚き木置場などがありました。
「旧ボイラータンク」は創建時から使われてきたもので、暖房室(現男女トイレ)にあったものを移しました。
昭和初期の設備機器として貴重なものです。 -
「皆川氏の著書」お勧めタイム(エリスマン邸前)
最近の書籍「東京スリバチ散歩 地形の楽しみ方ガイド(2024)」と「東京レトロ名建築(2025)」の紹介。
この本を持っていれば、スリバチ地形や建築物を見ながらひとりで歩けます。
では、山手本通り沿いに「港の見える丘公園」へ向かって出発。 -
「貝殻坂」(山手本通り)
元町公園から別ルートで山手本通りに上がる坂道と階段。
名前の由来は、外国人墓地の崖土の中に貝殻片が混ざっていたから、周辺に貝塚があったから、などといわれています。 -
「外国人墓地」(山手本通り)
十字架の墓石です。 -
「山手のブラフ積み」(山手本通り)
「ブラフ」とは「切り立った崖」の意味。
新山下に面する絶壁状の地形から、外国人居留地の時代より、山手は外国人たちによって「ブラフ」と呼ばれていました。
「ブラフ積み」とは、棒状の房州石を長手面と小口面が一段中に交互に並ぶ積み方です。
山手本通りり沿いの宅地は、宅地の間や宅地と道路の間に多くの段差があり、造成する際に石積みの擁壁(石垣)が築かれています。 -
「横浜地方気象台」(山手本通り)
関東大震災後の1927年に竣工したアール・デコ建築の本庁舎。
天気予報で提供される横浜の気温や積雪などは、ここで観測された数値が公表されます。 -
「パンパスグラス」(横浜地方気象台)
南米(ブラジル・アルゼンチン)原産のイネ科シロガネヨシ属の植物。
高さは2mから3mにも及び、羽毛のようにやわらかい花穂をつけています。
名前の由来は、英名で南米の大草原(パンパス)に生えている草(グラス)という意味。 -
「港の見える丘公園」の地図
港の見える丘公園入口に到着。 -
白花も混じるピンクの花「サルスベリ」(港の見える丘公園)
-
ガーテーンの妖精「ガーデンベア」(港の見える丘公園)
見た目は緑のクマのぬいぐるみそっくりですが、ふかふかの苔でできた身体に、溢れるばかりの花々がアフロヘアのように一年中咲き誇っています。 -
階段を上がると「展望台」(港の見える丘公園)
-
イチオシ
素晴らしい景色「横浜港と横浜ベイブリッジ」」(港の見える丘公園)
船の行き来を眺めながらのんびりできます。
次はフランス山へ。 -
「レンガ造り井戸遺構」(フランス山)
この井戸は、明治29年(1896)のフランス領事公邸竣工時に、上水道が山手まで敷設されていなかったために設置されたもの。
水はすでに涸れていますが、井戸の深さは約30mで、使われているレンガは円形に積むために扇形をしています。 -
イチオシ
「フランス山の風車」
井戸水を汲み揚げるための風車。
当時の写真は残されていないため、同時代に使われていた「フェリス女学院の赤い風車」などの写真から、多翼型の風車であったと思われます。
電気を使わず、風車とポンプを組み合わせて地下水を汲み揚げていたのです。 -
「玄関ホールの壁と床のタイル張り」遺構(フランス領事官邸)
震災後に建てられたフランス領事官邸ですが、戦後まもない昭和22年(1947)に火災で焼失し、現存している遺構は、焼け残った1階部分です。 -
「2階に通じる階段」遺構(フランス領事官邸)
-
横浜のシンボル「横浜マリンタワー」(フランス山からの眺望)
昭和36年(1961)に建設され、当時は日本で最も高い灯台として、長く横浜の港を見守ってきました。
高さ106mのタワーです。 -
「バルタール広場の鋳鉄製の骨組」(フランス山の入口)
1860年代フランスのパリに建てられ1973年まで100年余り存続したパリ中央市場の地下の一部です。
再開発のためすべて取り壊された後、横浜市が19世紀末の純鋳鉄製構造物としての貴重な学術的・文化的遺産であるためパリ市にその一部の移設を申し入れ、寄贈されたものです。
現在の建築骨組みは鉄骨の組み合わせなので、確かに違います。 -
東京駅ホームにあった「鋳鉄製柱」(2014/9/23訪問)
今はもうないかも・・・ -
イチオシ
「すいかと丸い輪っかの架線柱」(2014/9/23訪問)
東京駅に芸術品がありました!
旅行記にしているのでご覧ください。
『東京駅の隠れた建造物「レリーフ飾りの支柱」(東京)』
https://4travel.jp/travelogue/10935956 -
「元町・中華街駅の案内板」(みなとみらい線ホーム)
「横浜山手の坂道散歩」は、ゴールの「元町・中華街駅」に無事到着しました。
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この旅行記へのコメント (2)
-
- yamayuri2001さん 2025/10/02 16:41:07
- 山手の坂・・・
- かっちんさん、こんにちは。
お久しぶりです。
いつも散歩で歩いている山手の坂道に、
こんなに色々と歴史があったんですね。
旅行記を読みながら、感心していました。
途中に、アフロヘアのガーデンベアの写真があったので、
突然、里山ガーデンに行きたくなり、
秋の里山ガーデンのお花畑を堪能して、
たった今、帰ったばかりです。
かっちんさんの旅行記には、本当にたくさんの学びがあり、
感心して拝見しています。
いつもありがとうございます。
yamayuri2001
- かっちんさん からの返信 2025/10/02 21:38:23
- Re: 山手の坂・・・
- yamayuri2001さん
こんばんは。
スリバチ学会の皆川さんの案内で町歩きをし、さらにいくつか調べてまとめてみました。
お役に立てそうですね。
今日は釧路の鶴居村ホテルTAITOに宿泊しています。
明日は朝5時に出発してキラコタン岬から釧路湿原を眺めるツアーに参加します。
かっちん
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