縄文エネルギーに満ちた青森

2025/05/21 - 2025/05/22

新幹線で新青森へ、三内丸山遺跡とそれに隣接した青森県立美術館を訪れた。
県立美術館にシャガール作品が飾られていることは知らなかった。
思わぬ眼福に巡り合えた。

エリア 青森市内(青森)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0
• ホテル: 4.0
• グルメ: 4.5

• 同行者: カップル・夫婦（シニア）
• 交通手段: 高速・路線バス タクシー
• 旅行の手配内容: 個別手配

大宮駅で金子半之助のえび天まきを調達。
酢飯ではなく、タレが染み込んだ茶色いご飯が特徴だ。
中には、ふっくらとしたえび天が丸ごと入っている。
天むすの海苔巻きバージョンだね。
レモンサワーを飲みながら青森を目指す。
「トクだ値50％OFF」で運賃は半額だ。

大宮駅 駅

新青森駅到着。
郷土色豊かなねぶた人形が並んでいる。
太鼓の革に絵を描いたような平面タイプは津軽流のねぷた。
奥には遮光器土偶のねぶたがある。

新青森駅 駅

こちらは立体タイプの南部方式のねぶた。青森市のねぶたがこれだ。
新青森駅から青森駅に移動するつもりが、なぜか鉄道の連携がよろしくない。

新青森駅 駅

駅の観光案内所で相談し、バゲージを抱えたままタクシーで三内丸山遺跡にやってきた。

縄文時遊館 公園・植物園

遺跡の入り口にある縄文時遊館に三内丸山の縄文ライフが展示されていた。
縄文人にしてはきれいすぎる衣装に思えるが、植物の繊維で編んだアンギンという布をまとっている。
彼らが高度な染色・装飾技術を持っていたことを示しているようだ。
腕や手首には、骨や貝などで作られたと思われる輪状の装飾品を重ね付けしている。

縄文時遊館 公園・植物園

三内丸山遺跡は約5900年前～4200年前の集落跡。
展示されている地層断面のレプリカは時間のタイムカプセル。
黒い線や灰色の帯は、火山の噴火で降った火山灰の跡。
土器片が埋まってることで、それぞれの時代の暮らしの痕跡がわかる。

縄文時遊館 公園・植物園

遺跡全域のジオラマがあった。
遺跡は約40ヘクタールの広大な範囲に広がっている。住居、ゴミ捨て場、掘立柱建物、貯蔵穴、墓・土坑墓、粘土採掘穴、盛り土、道路などが配置されている。

縄文時遊館 公園・植物園

三内丸山遺跡は2021年に「北海道・北東北の縄文遺跡群」の一部としてユネスコ世界文化遺産に登録された。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

「北海道・北東北縄文遺跡群」のマークは北海道と東北地方の地形をモチーフとし、縄文土器の造型を想起させるレベルの高い造型。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

道の傍らの直径４ｍほどの盛り土はお墓。
へりに沿って環状に石が並べられている。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

高床式の建物は貯蔵庫だろうか。
昔は海進が進んでいたから今の青森市内は海の中。
遺跡と海岸線は、当時は意外に近かったらしい。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

ボランティアが無料でガイドしてくれた。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

南盛り土には土器や石器、土偶などの捨て場で、1000年ほどの間に丘のように盛り上がった。
発掘時の状況がそのまま展示されている。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

竪穴住居が並び、茅葺きの屋根が地面に埋め込まれるような形で再現されている。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

発掘された柱の穴の大きさや間隔をもとに再現したようだ。
あくまでも想定であり、事実このような構造であったかどうかはわからない。
そこで構内には、樹皮葺きや土葺きの竪穴建物も別に復元されている。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

中に入ると構造材として主にクリ、ケヤキ、トチノキなどの木材が使われている。
結束材は、葛や藤などの蔓を加工したもの。水に濡れると締まる性質を持つ植物を巧みに利用していたと思われる。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

地面に円形に掘り込まれた炉。小石や焼けた土のようなものが確認でき、ここで火を焚いていたことがわかる。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

発掘された柱の穴。
穴の配列や状況を細かく観察し、想像力をフル回転させ、そこにあった建造物を予測する。
三内丸山遺跡では、このような柱穴が1,000棟分以上も確認されている。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

この高床式の建物もそのようなプロセスを経て復元された。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

水分が空気を遮断していた北の谷からは、木製品や魚の骨、植物の種子なども出土した。
出土した魚の骨を分析すると、身の骨に比して頭の骨が少ない。
どうも海岸で頭とハラワタを除いて集落に運び込んだらしい。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

三内丸山遺跡のシンボルともいえる六本柱建物跡。
柱穴の間隔、幅、深さはそれぞれ4.2メートル、2メートル、2メートルで全て統一されている。この事実はこの時すでに測量技術のあったことを示している。
また、これほど大規模な建造物を建てるため労働力と彼らを的確に指導できる指導者がいたことを示している。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

現在進行形の発掘現場は、それを保護するための巨大なドームの中で進められている。
この巨大な穴は大規模な食料の貯蔵庫として機能していた可能性が高い。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

三内丸山集落は、食料として、また建材として最適なクリの木を大量に利用していた。ただ自然の恵みを享受するだけでなく、集落の周囲にクリの木を植え、クリの栽培を行っていた可能性が高いとされている。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

こちらは屋外での発掘風景。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

当時の平均余命は30～35歳ほどとか。
乳幼児の死亡率が極めて高かったため、それを含めた全体平均は13～15歳前後と見積もられている。

特別史跡 三内丸山遺跡 名所・史跡

出口近くにあったオブジェ。
森の守り神であるフクロウと生命の源ともいえる遮光器土偶。
縄文の不可思議なエネルギーがこもっているようだ。

縄文時遊館 公園・植物園

縄文時遊館前のロータリーで待っていると、青森の主要観光地を結ぶシャトルバス、ねぶたん号がやってきた。

縄文時遊館 公園・植物園

わずか２分で青森県立美術館。

青森県立美術館 美術館・博物館

青森県立美術館で衝撃を受けたのは4枚に及ぶシャガールのバレエ舞台の背景画。
ニューヨーク・バレエ・シアターの依頼で制作した4幕もののバレエ「アレコ」の背景画4作のうち3点を青森県立美術館が所有しており、フィラデルフィア美術館所有の一点とともに展示されている。高さ9m × 幅15mの巨大な4枚の背景画が並ぶ、四層吹抜けの大空間が大インパクトだ。

青森県立美術館 美術館・博物館

アレコの原作はプーシキンの叙事詩『ジプシー』。
ラフマニノフがこれをもとにオペラを作曲しており、バレエに転用された。
昨年はこの会場でバレエの公演が行われたらしい。

青森県立美術館 美術館・博物館

第一幕から第二幕では自由にあこがれてジプシーのグループに身を投じたアレコがジプシー娘のゼフィーラと愛を語り合う。
第三幕でゼフィーラの心は若いジプシーの男に移る。起承転結の転だ。
第四幕の結で、嫉妬に狂ったアレコは、ゼフィーラとその恋人を刺し殺してしまう。

青森県立美術館 美術館・博物館

アレコが嫉妬にさいなまれる3幕目の背景画がフィラデルフィア美術館が所有しているもの。
同館の改修工事に伴い、2027年3月末まで長期貸与されている。
そのあとはどうするのだろう？

青森県立美術館 美術館・博物館

第４幕の背景画はシャガールらしさ全開だ。
シャガール作品でしばしば登場する「空飛ぶ馬」は、自由・夢・魂の解放の象徴。
左上には暖かな金色の光に包まれたシャンデリア。右上には不穏な雰囲気を帯びた暗い雲の中に人の顔のような形が浮かび上がっている。
ジプシーたちから追放されたアレコは、孤独のうちに荒野をさまよう。

青森県立美術館 美術館・博物館

照明の変化と合わせて幻想的で色彩豊かな独自のシャガールの世界が作り上げられ、バレエのストーリーにアクセントを与えている。
かつてニースでシャガール自身が開設に携わった国立マルク・シャガール美術館を見たけれど、それに劣らぬ素敵な作品だ。
良いものを見た。

青森県立美術館 美術館・博物館

前回青森に来たのは2022年7月8日。
町の中心地にあった棟方志功記念館を観覧中に安倍晋三銃撃の報に接した。
その時の校倉づくりの記念館は老朽化で取り壊され、
作品は、今はこの青森県立美術館に収納されている。

青森県立美術館 美術館・博物館

板極道や釈迦十大弟子など棟方作品が並んでいる。
棟方志功記念館より展示スペースは二倍になったようだ。

青森県立美術館 美術館・博物館

視力の弱い棟方志功が板木をなめるように掘り進んでいる有名な写真も飾られていた。

青森県立美術館 美術館・博物館

シャガール、棟方志功と並ぶこの美術館の目玉が、弘前出身の奈良美智。
巨大なこどもの顔は「アンニュイ・ヘッド」。
この顔、怒ってる？退屈？眠いだけ？
そのあいまいさこそがこの作品のキモ。

青森県立美術館 美術館・博物館

つり目でちょっと不機嫌そう、でも何かを秘めたような「奈良顔」の少女がギターを抱えている。
タイトルは「1,2,3,4! it’s everything!」。
何かが始まるのだろう。

青森県立美術館 美術館・博物館

「WISH FOR WORLD PEACE」
子どもたちが穏やかに目を閉じていられる世界であってほしい。それがそんなに難しいことだろうか？
シンプルなメッセージが伝わってくる。

青森県立美術館 美術館・博物館

高さ8.5ｍの巨大な「あおもり犬」にたどり着くためには、ニューヨークの非常階段のような屋外の鉄の階段を登り降りしなければならない。
この美術館のシンボル的な奈良作品だ。

青森県立美術館 美術館・博物館

県立美術館前からバスで青森駅に向かう。

青森県立美術館 美術館・博物館

ホテルルートイン青森駅前にチェックインし、荷物を置いてからねぶたの家 ワ ラッセ。

ねぶたの家 ワ ラッセ 美術館・博物館

2022年に中は見ているので、中に委は入らず、

ねぶたの家 ワ ラッセ 美術館・博物館

ロビーに置かれていたねぶたにご挨拶。
2024 年の青森ねぶた祭でねぶた大賞を受賞した北村麻子氏による『鬼子母神』は、本来はここに展示されているはずが、関西万博で展示されているのかな？

ねぶたの家 ワ ラッセ 美術館・博物館

駅前通りで食事の店を探していると、何やら行列がある。

お食事処おさない グルメ・レストラン

行列の先頭に行ってみるとホタテ料理で有名なお食事処おさない。
さっそく行列に並んだが、一巡目には入れず、2組目で空きを待つことに。

お食事処おさない グルメ・レストラン

中心部がレアなままの帆立フライがグッド。

お食事処おさない グルメ・レストラン

貝焼き味噌も美味かった。
味噌味の出汁でホタテやネギを煮て卵でとじる。

お食事処おさない グルメ・レストラン

イカメンチの屋台風はいまいちだった。

お食事処おさない グルメ・レストラン

りんご餃子もやや期待外れ。

お食事処おさない グルメ・レストラン

陸奥湾のホタテを使った塩ラーメンは、青森らしく塩気が強いが、ホタテの味がしっかり出ていた。

お食事処おさない グルメ・レストラン