2024/04/07 - 2024/04/08
3位(同エリア47件中)
旅猫さん
旅の後半は、浅虫温泉と北限の椿である。浅虫温泉を訪れるのは、少なくとも3回目である。お気に入りの宿『椿館』は、改装のため休業中だったので、初めての宿を取った。そして、最終日は、午前中に浅虫水族館を観て、午後に、今回の旅の目的である、夏泊半島の北限の椿を観に行くことにする。
(2024.05.08投稿)
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
- ホテル
- 3.5
- グルメ
- 4.0
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 5万円 - 10万円
- 交通手段
- 高速・路線バス 新幹線 JR特急 私鉄 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
弘前駅から、14時46分発の特急『スーパーつがる1号』に乗り、青森駅へと向かう。弘南鉄道の遅れで乗り換え時間がギリギリとなり、かなり焦った。終着の青森駅からは、15時25分発の青い森鉄道線に乗り、今宵の宿がある浅虫温泉駅へと向かった。
-
駅からは、歩いて宿へと向かう。途中、ご当地マンホールを見つけた。『大型ねぶた』と『跳人(ハネト)』が描かれた青森市のものであった。
-
かつてお世話になった『海扇閣』の前を通り、線路を潜りると温泉街となる。そして、しばらく歩くと、目指す『本陣の宿柳の湯』が見えて来た。『柳の湯』は、代々、弘前藩東本陣を管理して来た庄屋で、宿の名称も、弘前藩2代藩主津軽信牧により命名されたそうである。
浅虫温泉 津軽藩本陣の宿 旅館柳の湯 宿・ホテル
-
通されたのは、庭を望む二階の部屋であった。最近少なくなった、旅館らしい佇まいである。
-
今日は、かなり歩いたので、早速、汗を流すために温泉を使う。この宿の大浴場には、自家源泉がかけ流しで注がれている。男女入れ替え制で、その片方には『御湯殿』と言う総ヒバ作りの湯船があった。約250年前からあるらしく、藩主が使ったものらしい。湯は少々熱めで、ゆっくりとは浸かれなかった。
-
さっぱりした後、往きに見掛けた麦酒工房へ行ってみる。『蛍火醸造』と言い、入口には暖簾が掛けられていた。訊けば、昨年6月に出来たばかりだそうだ。
-
店内は、カウンター席が少しと、奥にテーブル席がひとつある。この建物は、かつて銀行だったそうで、テーブル席のある場所は、金庫だったそうである。洒落た内装で、雰囲気も良い。
-
とりあえず、湯上りにちょうど良いと言うゴールデンエールの『残光』をいただく。これが喉越しも良く、とても美味しかった。
-
肴には、『県内産ひらめの生ハム』をもらう。ひらめの生ハムと言うのは初めてだったが、麦酒はもちろんだが、日本酒にもワインにも合う味わいで、気に入った。追加で、看板銘柄のWCIPA『千輪』を呑んだが、これもまた美味しかった。この店は、お気に入りに追加である。
-
麦酒を堪能した後、海岸へ出てみる。ちょうど夕暮れ時で、陸奥湾に夕陽が沈みかけていた。内湾であるため、波も穏やかである。
-
沖には、浅虫温泉の代表的な景観である湯ノ島が浮かんでいる。
-
以前、稚内で観た黄金色の海とまではいかなかったが、光の道も出来、なかなか綺麗である。しばらく佇み、夕景を眺めていた。
-
宿へ戻ると、夕食の時間である。あまり期待はしていなかったが、そこそこ品数もある。刺し身は苦手と伝えてあったが、しっかりとある。
-
お酒は、おいらせ町の桃川が醸す『杉玉 純米酒』をいただく。『杉玉』は、桃川の看板銘柄のひとつであり、米の旨味が程よい味わいである。
-
鍋が二種類あり、ひとつは鱈、ひとつは牛肉である。その牛肉の鍋が、素朴でとても美味しかった。
-
焼き物は、鮑と帆立。宿の仲居さんは、地元のおばさんと言った感じで、その中の年季の入った方は、昭和の食堂にいそうな方であった。鮑も、その方が「もう、いいんじゃないの」と殻から外して皿に盛ってくれた。
-
刺し身は間違いだったと、揚げたての天婦羅が出された。その後、蕎麦も出て来たが、そこそこの味である。全体的に、昔ながらの旅館の食事であったが、変に凝っていないので、そこは良かった。
-
『御湯殿』は、一段低い場所にあり、如何にも源泉の近くに設けられたという感じがする。柔らかい木の感触が、とても気持ち良かった。かの菅江真澄は、浅虫温泉を三度も訪れているそうだ。この『浅虫』と言う名は、『煮坪』と言う熱い湯の沸く場所で麻を蒸していたことから、かつては『麻蒸』と呼ばれていたものを変えたものらしい。他にも、アイヌ語説があるそうだ。
-
翌朝、入れ替わった風呂で朝湯を使う。混んでいるかと思ったが、貸切であった。浅虫温泉は、まだ外国人にはあまり知られていないようである。朝食は、焼き鮭があって嬉しかったが、海苔が無かった。
-
食後、部屋で寛ぐ。そして、9時半を過ぎた頃に、宿を辞す。車で、駅の先にある浅虫水族館まで送ってもらった。訪れるのは、15年ぶりである。
浅虫水族館 動物園・水族館
-
入ってすぐの場所に、陸奥湾の魚を展示する場所があった。青い袋のようなものが吊るされていたが、これは『採苗器』と呼ばれるもので、帆立の幼生を付着させるものだそうだ。
-
その隣には、帆立を養殖する籠もある。その上で、大きな魚たちが休んでいる。クロソイだそうだが、何だか微笑ましい姿である。
-
その後ろに、トンネルがあった。水槽の下を潜るトンネルは、今では必ずと言っていいほど見掛けるようになった。
-
その先に、大きな以下の標本が置かれていた。ニュウドウイカと呼ばれるもので、体長3m以上もある。マッコウクジラの餌になるそうだ。
-
ミズダコは、水槽の表面に貼り付いている。吸盤を観察できるので、結構面白い。丸まっているので大きさが分からない。
-
そして、アオリイカもいる。烏賊の中では一番美味しいとされる。
-
今日が新学期の初日と言う学校も多いためか、館内はガラガラである。訊けば、昨日までは大混雑していたそうである。
-
そして、高級魚が現れた。『キチジ』である。別名は『キンキ』で、こちらの方が知られた名である。北海道では炉端焼き、関東では煮付けが定番だが、高いので、一度釧路の炉端焼きの店で食べた切りである。当時は、今のような高級魚ではなく、安い魚だったのだ。
-
淡水に棲む魚の中に、珍しい『スギノコ』がたくさんいた。下北半島の大畑川にある赤滝の上流にしかいないヤマメである。
-
磯の生物に触れることが出来る場所には、青森らしく、帆立がいた。
-
館内放送で、イルカショーの案内が響いた。いつもなら観ないのだが、この日は時間もあり、空いていたこともあったので、観て行くことにする。久しぶりに観たが、改めてイルカの賢さを知った。
-
ショーを観た後、すぐ近くのイルカの水槽に立ち寄る。そこでは、カマイルカが二頭、水の中を滑るように泳いでいた。
-
その後、海獣たちを観に行く。大きなゼニガタアザラシは、のんびりと泳いでいた。
-
隣では、ゴマフアザラシが、泳ぎ回っている。小さな水族館だが、そこそこ見応えがあるのが、浅虫水族館の良い所である。
-
1時間半ほどで外に出る。駅の方へ戻る途中、『久慈良餅』なる店を見つけた。浅虫温泉の名物らしいので、ひとつ購入した。帰ってから食べてみたのだが、薄味の練り羊羹のような食感で、餅のような粘りもあり、面白かった。また来ることがあれば、必ず買いたい一品である。
永井久慈良餅店 本店・バイパス店 グルメ・レストラン
-
そのすぐ先に、満開の花を付けた藪椿があった。この後、いよいよ北限の椿を観に行くので、楽しみである。
-
それにしても、藪椿と言うのは美しい。控え目で、楚々とした風情を感じる。花が大きく、紅白のものが好まれる傾向だが、個人的にはこちらの方が好みである。
-
列車の時間まで小一時間あるので、駅前にある『ゆ~さ浅虫』で時間を潰す。一階にあるお土産屋を物色した後、リンゴジュースと竹輪にソーセージが入ったつまみを買い込み、二階の休憩所でひと休みする。
-
そして、12時21分発の列車で、小湊駅を目指す。二両編成の列車は混み合い、座ることは出来なかったが、乗車時間は8分であった。
-
小湊駅からは、12時35分発の平内町の町営バスに乗る。地元の人がそこそこ乗っていたが、途中で次々と降り、椿山バス停に着く頃には、私一人となっていた。降りてすぐ、ご当地マンホールを発見。漁業集落排水のもので、漁船が中央に描かれ、その周囲に特産の帆立が配されていた。
-
バス停の周辺が、北限の椿の自生地である。道沿いに多くの藪椿が生えている。その数、約一万本だそうだ。
椿山 自然・景勝地
-
かつて5月上旬以降が開花時期であったが、最近では3月中に開花するそうだ。そこで、4月上旬を狙って訪れたのだが、今年は開花が遅れ、まだ満開とまではいかないようである。それでも、多くの花を付けた樹もたくさんあった。
-
自生地は、海岸べりの斜面にあるため、目の前には海が広がっている。椿山海岸である。遠くには、下北半島が薄っすらと見えている。菅江真澄の足跡は、ここにもあった。歌碑が、そのことを伝えていた。
-
椿山には神社もあった。椿神社である。ここで、お邪魔する挨拶をする。境内には椿の樹もあり、名に相応しい社である。
-
近くに広い駐車場があった。夏場は海水浴客で賑わうのだろうが、今の季節は人影すらない。その奥に、遊歩道らしきものがあったので入ってみることにする。
-
道の脇には、すでに落ちた花も多くある。場所によっては、盛りを過ぎているのかもしれない。その道は、どこに続いて英るのか分からないので、途中で引き返すことにした。
-
藪椿は、葉の色がとても深いので、花が少ないと、とても地味である。晴れていても、椿が密生していると、外から観ても薄暗い。そのため、花が咲いていると、そこだけがとても明るく見えるのだ。
-
藪椿の群生する斜面では、アズマイチゲやキクザキイチゲも咲いていた。
-
北限の椿を堪能した後、夏泊半島の先端にある大島へと向かう。距離はあるのだが、バス便が無いので、海岸沿いを歩いて行く。松林もあり、なかなかの風情だ。
-
それにしても、綺麗な海である。そして、静かである。
-
松林が途切れると、波打ち際に立派な歩道が設けられていた。そこには、延々と俳句や短歌が刻まれた石柱が立っている。どれも素敵な句や歌であるが、こんな不便な場所を歩く人などいないので、人の目にはほとんど触れないだろう。
-
50分ほど歩くと、ようやく半島の先端に辿り着いた。昼時なので、食堂でもないかと探したが、人気が無い。ここも夏場以外は人が訪れないのだろう。店なども、すべて閉まっていた。
-
釣りが人気らしく、貸しボート屋だけが営業していたが、開店休業のようだ。おかげで、静かな風景を楽しむことが出来た。
-
海の彼方には、津軽半島も望める。帰りのバスを待つ間に出会った地元の方が、素晴らしい景色があるのに、訪れる人は少ないと嘆いていた。今の観光客は、有名な場所ばかりを競うように訪れる。江戸時代の紀行家菅江真澄がわざわざ足を運んだほどの景勝の地だが、車と言う便利なものがある時代でも、寂れて行くのだから不思議なものである。
-
夏泊半島の先端のさらに先に、大島がある。手前に鳥居があるので、島には社があるのだろう。橋で繋がっていたので渡ってみたが、山に登る必要があるので、断念した。
夏泊半島 大島 自然・景勝地
-
その大島にも、菅江真澄の歌が刻まれた石柱が立っていた。
『はま風の ふへくのりも つみぬらん
ひるやしほでの 水もあさみに』菅江真澄 -
鳥居の近くには、明治から大正に掛けての紀行作家である大町桂月の歌碑もあった。彼もまた、終生旅を愛した人であり、お酒も愛したため、私の憧れの人物の一人である。時間もあるので、句作を試みたが、凡人には大した句は浮かばなかった。
『たてがみを 海吹く風に 靡かせて
馬ひとつたつ 岩菊の原』大町桂月 -
バス停近くまで戻って来たが、まだ40分余りある。仕方が無いので、お土産用に買って来たつまみで空腹を凌ぐ。すると、貸しボート屋の主人が声を掛けて来た。義経の娘に纏わる夏泊の伝承など、興味深い話を聞かせていただき、とてもありがたい。話し込んでいると、バスがやって来た。もっと話を聞きたかったが、バスの本数があまりにも少ないので、お別れすることにした。
-
15時59分発のバスに乗り、小湊駅へと戻る。それにしても、夏泊半島は美しい場所であった。しかし、椿山から大島までの間で、出会った人は10人だけであった。小湊駅からは、16時42分発の列車に乗り、八戸駅を目指す。青森方面の方が近いのだが、待ち時間が長く、新幹線も一本後になるので、八戸に出ることにしたのだ。
-
そして、一時間ほどで八戸駅に着いた。途中の小さな駅にも、興味があったが、それはまたの機会としよう。八戸駅で、夕食用に駅弁を買い込み、18時12分発の『はやぶさ42号』に乗り込んだ。そして、早速、駅弁をいただく。青森県産の黒毛和牛と『青天の霹靂』米を使った牛めしである。味も程よく、肉も柔らかくて美味しかった。
-
大宮駅までは二時間半余りあるので、食後、お酒をいただく。青森への旅の締めくくりなので、地元八戸酒類が醸す『如空 特別純米 金ラベル』とした。『如空』は、新宿の馴染みの居酒屋でも呑んでいるが、旅先で呑むとまた格別である。
-
大宮駅に着いたのは、20時39分であった。久しぶりに、遅い時間に帰って来た。今回の旅は、北限の椿を観ることであったが、黒石の街歩きも楽しかったし、旅先で食した料理も美味しかった。そして、気になっていた北限の椿も観ることが出来て、満足であった。次は、職場の異動で時間が取れず、観ることが出来なかった桜に、どこかで出会う旅としたい。
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
この旅行記へのコメント (2)
-
- ポテのお散歩さん 2024/05/10 00:05:53
- 北限の椿
- 旅猫さん こんばんは。
浅虫温泉は昭和の時代に1度だけ行った事があります。
きっと今よりも旅館も多く、団体客も多かったのではと思います。
残念なのは、たまたま移動するのに便利だったから浅虫温泉に宿泊しただけで
友人も私もマイナーな所に来てしまって、ガッカリしながら過ごしてしまった事です。
函館から青函連絡船で青森に入り、奥入瀬から十和田湖、そして秋田に抜ける行程で、
誰もが知っている地名に比べ、私達にとっては浅虫はマイナー過ぎました(^-^;
かつての私達も、有名な観光地ばかりに行っていました(^^)
夏泊半島と聞いて、何処にあるのかわかりませんでした(^-^;
ここが椿の北限なのですね。
花が小振りで控え目な感じが、この土地に合っていますね。
地元の方が多く住んでいる地域は、その土地で伝えられているお話を
よく知っておられるのがいいですね。
そこで暮らして来た方が少ない地域は、どこにでもある町になってしまいます。
その土地が潤いながら その土地らしさを守って行くのは難しいですね。
ポテ
- 旅猫さん からの返信 2024/05/10 20:08:15
- RE: 北限の椿
- ポテさん、こんばんは。
いつもありがとうございます。
昭和ですか!
その頃は、結構賑わっていたのではないでしょうか。
今は、かなり寂れています。。。
このような温泉場は、若い頃にはあまり良く感じないかもしれませんね。
函館から青函連絡船と言うところが、また時代を感じますね。
私は、残念ながら一度も乗ることが出来ませんでした。
私も、若い頃は有名な観光地をとりあえず片っ端から訪れていました。
おかげで、今は有名どころは避けて、気になるところを旅しています。
夏泊半島を知っている人は、かなりの旅好きです。
青森では、下北、津軽と並ぶ半島です。
藪椿は花が小さく深い赤色なので、かなり地味です。
でも、本来の椿はこの姿。
自然の中に咲いていると、とても可愛いですよ。
声を掛けてくれた方は、生まれも育ちも夏泊半島だそうです。
話から、夏泊愛が染み出ていました。
生まれ故郷を好きな人は、良い顔をしています。
義経の娘の話が聴けるとは、思いもよりませんでした。
小さな集落なので、もう数軒しか人が住んでいないそうで、限界集落そのものです。
何とかならないものですかね。
旅猫
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
この旅行で行ったホテル
この旅行で行ったグルメ・レストラン
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
2
62