2024/01/23 - 2024/01/23
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Karenさん
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2022年冬に国立西洋美術館で開催された「ピカソとその時代ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」でピカソとブラックの作品を合わせて複数枚見ているうちに、それまで何を描いているのか全く分からないと思っていたキュビスムの作品が少しずつ見えてくるような感覚になりました。またコラージュやパピエ・コレ(後で触れます)といったキュビスムで用いられた手法が面白いと興味がわいてきたところで、約50年ぶりの日本での大規模なキュビスムの展覧会、「パリポンピドゥーセンター キュビスム展 美の革命」 を楽しみにしていました。家の事情でいけないかな、と思っていたのですが、会期終了目前に何とか行くことができました。約140点の作品からなる展示は、キュビスムの誕生から発展をそれこそいろいろな角度から取り上げていて、とても楽しめました。ただ、作品数の多さとやはり頭を使ってみるせいか、とても疲れました(笑)。
※所蔵の明記がないものは全てポンピドゥーセンター所蔵です。
※展示場内の説明や音声ガイドをもとに記述していますが、勘違い・誤り等あるかもしれません、ご容赦願います。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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1月に入り一段と冷え込む日々ですが、この日は日差しの暖かさを感じます。お昼を食べて正午過ぎ、入館です!
国立西洋美術館 美術館・博物館
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第1章 キュビスム以前ーその源泉
ポール・セザンヌ「ポントワーズの橋と堰」1881/国立西洋美術館
2022年頃に、セザンヌの風景画がキュビスムの誕生に影響を与えたということを知り、それまでヘタウマ?良さがわからん、と思っていたセザンヌが近代絵画の父と言われる理由が良くわかりました。 -
第2章 プリミティヴィスム
アンドレ・ドラン「立てる裸婦」1907
パブロ・ピカソの「アヴィニョンの娘たち」1907 は、20世紀美術の記念碑的作品と言われますが、それにはピカソがたまたま立ち寄った博物館でみたアフリカ芸術の影響があります。ただそこにはプリミティブ(原始的な)という西洋人がアフリカを下にみる視点がありました。 -
パブロ・ピカソ「女性の胸像」1907
「アヴィニョンの娘たち」の一番右側の女性と同じように描かれた作品。アフリカの仮面から着想したと言われるとものすごく納得感があります。そう考えると独創的と感じられる表現も全くの無から生み出されるのではないのだな、とつくづく思います。 -
ジョルジュ・ブラック「大きな裸婦」1907-1908
「アヴィニョンの娘たち」をみたブラックは、「その絵はまるで、誰かがガソリンを飲んで火をはいているようなものだ」といったそうですが、その絵に応えて描いたのがこの作品。 -
第3章 キュビスムの誕生-セザンヌに導かれて
ジョルジュ・ブラック「レスタックの高架橋」1908初頭
セザンヌの風景画にも用いられた景色で、使われている色彩も同様ですが、キュビスム的になってきました。 -
第4章 ブラックとピカソ-ザイルで結ばれた二人(1909-1914)
パブロ・ピカソ「肘掛け椅子に座る女性」1910
分析的キュビスムと呼ばれる頃の作品。背景に塗り残しがあるのはこの頃の特徴だそうです。 -
パブロ・ピカソ「ギター奏者」1910夏
上の作品に比べてより平面的、シンプルな形・色に分解されていることがわかります。 -
ジョルジュ・ブラック「ヴァイオリンのある静物」1911
ブラックとピカソが共同でキュビスムを探求していた時代。サインがない作品もあり、どちらの作品か判別が難しいものもあるそうです。
この作品は、白で点々と置かれているのが、何を表しているのか気になりました。(ずっしり重い図録を買って、ひーひーいいながら持って帰ったにもかかわらず、今見てみると作品ごとの説明はない・・・) -
ジョルジュ・ブラック「ギターを持つ男性」1914春
分析的キュビスムを突き詰めていくと、描かれたものは現実感を失っていき、何が描かれているのかわからなくなってしまう、という点を問題と考えたブラックとピカソは、絵の中に新聞紙や壁紙といった現実世界にあるものをそのまま貼り付けたり(パピエ・コレ)、おがくずや砂を混ぜ込んだり(コラージュ)していきます。(総合的キュビスムと呼ばれます。)それは、キュビスムに描かれているものはなんだかよくわからないが、あくまでも現実世界を描くことにこだわっていることがわかります。(それがさらに進んでいくと抽象絵画ということになっていきます。)
この作品にも、おがくずが用いられています。 -
ジョルジュ・ブラック「果物皿とトランプ」1913初頭
そしてこちらは上の作品と似ていますが、おがくずがを使っているのではなく、絵をひっかいて木目を出しています。こうした様々な表現方法を模索していることがうかがえます。
また、ギターや瓶といった特定の物が描かれているのは、それ自体がすでに完成された美しい造形である、という認識から扱われているというのが、腑に落ちました。 -
パブロ・ピカソ「ヴァイオリン」1914
単純に気に入った作品。ベルクグリューン美術館展でも似たような作品を見たような記憶が。こちらも点描のように色を表現しているのが気になります。様々なデザインと全体に軽妙さが感じられるところが気に入った点です。 -
第5章 フェルナン・レジェとフアン・グリス
フェルナン・レジェ「形態のコントラスト」1913
キュビスムが色彩を取り戻していきます。
キュビスムはブラックとピカソだけではなく、様々な画家の手によって描かれました。ブラックとピカソはギャラリーを通じて作品を発表していましたが、続く若い画家たちはサロンでキュビスムをひとつの運動として発表していきます。(第6章 サロンにおけるキュビスム 写真なし)フェルナン・レジェとフアン・グリスはそのちょうど中間の立ち位置で、ギャラリー、サロンいずれでも活動しました。 -
フェルナン・レジェ「婚礼」1911-1912
とても大きなこの作品を見たとき、シャガールっぽい、と感じました。細長い線上に集められたモチーフが上へ上へと上がっていく感じ、そして黒・グレーとパステルの色彩。
会場を巡っていくと、後でシャガールも出てきたので驚きましたが、同時代に同じパリで活動していたので、それぞれの作品を目にしていたかもしれません。 -
イチオシ
ファン・グリス「ギター」1913
この絵もお気に入りのひとつ。全体の構成や色彩はシンプルですが、左上には実際の版画が貼られていたり、右下には裸婦像のようなものが異なるタッチで描かれていたり。いろいろな見方ができる楽しさがあるなと思いました。 -
第7章 同時主義とオルフィスム-ロベール・ドローネーとソニア・ドローネー
ロベール・ドローネー「都市no.2」1910
いわゆるキュビスム的な作品ですが、何か童話の世界のような、ここから物語が書けそうな絵だなと思いました。 -
ロベール・ドローネー「パリ市」1910-1912
展覧会のメインビジュアルとなっている巨大な作品。1889に完成したエッフェル塔、右下にはアンリ・ルソーの作品にあるセーヌ川の風景、そしてボッティチェリの「プリマヴェーラ」の三美神を彷彿とさせる女性たち・・・。写真では伝わりにくいのですが、華やいだ、ウキウキするような気分を感じる作品でした。 -
章のタイトルであるオルフィスムとは、オルフェウス的つまり詩的なキュビスムを表しますが、確かにリズムが感じられるというか、高尚なイメージを感じました。
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ソニア・ドローネー「パル・ビュリエ」1910-1912
ロベール・ドローネーは1912年に鮮やかな色彩による抽象絵画を生み出していくことになります。その妻ソニア・ドローネーによるこの作品は、色彩に共通点を見出すことができます。(写真はとらなかったのですが、後に出てくるシャガールの「婚礼」にも同じ色彩の組み合わせが使われており、ドローネーの影響を受けたと考えられているそうです。) -
イチオシ
第8章 デュシャン兄弟とピュトー・グループ
フランティシェク・クプカ「色面の構成」1910-1911
チェコ出身のクプカによるこの作品は、今回の展示の中でも、映像を思わせる画面の割り、ノスタルジックな色調に、唯一無二の独創性を感じました。 -
第9章 メゾン・キュビスト
レイモン・デュシャン=ヴィヨン「メゾン・キュビスト」1912
サロンの展示として、このような家(模型)が出品されていたとは全く知りませんでした。アールヌーボーやアールデコの家や室内装飾は現在も残っているものもありますが、キュビスムも建築としてとても面白いです。 -
サロンでは一部の部屋が展示されたそうですが、実際にあったら、素敵な空間になりそうだなと思います。
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第10章 芸術家アトリエ「ラ・リュッシュ」
マルク・シャガール「ロシアとロバとその他のものに」1911
ラ・リュッシュ(蜂の巣)は、ピカソがまだ若く生活の苦しい時代を過ごした「洗濯船」のように、成功する前のアーティストが暮らす場所でした。
その中に、シャガールもいました。シャガールといえばこの作品のように幻想的なイメージがありますが、よく見れば背景に浮かぶ幾何学模様や建物の描き方にキュビスムの手法を見ることができます。 -
マルク・シャガール「墓地」1917
この作品の空の紫色がシャガールっぽいな、と思った作品。 -
イチオシ
マルク・シャガール「キュビスムの風景」1919-1920
お気に入りの1枚。まずは色彩が好み。そして、木目や文字が描かれているところがコラージュやパピエ・コレを思わせ、なんといっても真ん中に描かれたおじさんが可愛くて。これもいろいろな見方ができる楽しい作品だなと思いました。 -
アメデオ・モディリアーニ「女性の頭部」1915
ラ・リュッシュにはモディリアーニも暮らしていました。モディリアーニといえば購入当初は税金の無駄遣いとたたかれた、大阪中之島美術館のアーモンドの目を持つ女性の絵が思い浮かびますが、彫像もまさにその特徴を持っています。そしてこの展覧会の流れでみると、プリミティヴィスムやキュビスムの影響がこの造形につながったことが感じられました。 -
第11章 東欧からきたパリの芸術家たち
レオポルド・シュルヴァージュ「エッティンゲン男爵夫人」1917
こちらもとても大きな作品。風景画と室内画と肖像画がひとつの絵の中におさめられている感じと、顔含め描き方が可愛い系なところが面白くて気に入りました。 -
第12章 立体未来主義
ナターリヤ・ゴンチャローワ「電気ランプ」1913
この章では、ロシアのアーティストの作品が紹介されています。時代はロシア革命の頃。当時の「ロシア・アヴァンギャルド」の運動のひとつとして立体未来主義が位置付けられるそうです。 -
ナターリヤ・ゴンチャローワ「帽子の婦人」1913初頭
ロシアの文化(文学・音楽・絵画)には興味があり、それぞれから感じられるのはあの巨大な大地とシベリアに象徴される厳しい自然の中で生き抜いていく人々の泥臭い生命力。他にはない力強さがこれらの絵画からも感じられます。 -
ジャン・プーニー「椅子、パレット、ヴァイオリン」1917-1918頃
またこれらの絵は20世紀初期のロシアの印象的なポスターにもつながっていくように感じました。 -
第13章 キュビスムと第一次世界大戦
アルベール・グレーズ「戦争の歌」1915
第一次世界大戦が始まると、キュビストの中でも動員され前線に送られる者が多くいました。「戦争の歌」を作曲したフローラン・シュミットの肖像で、前線での素描に基づいて後に油彩で完成された作品です。肖像というだけなく、聞いた音楽から浮かんだ印象を絵に落とし込んだということで、音楽と絵画を結びつけた最初の作品ともいわれています。音楽と絵画を結びつけたというと、カンディンスキーが思い浮かんだのですが、それ以前にもこのような絵が描かれていたことを知りました。 -
パブロ・ピカソ「若い女性の肖像」19147-8月
点描の表現と、全体に使われた緑色が印象的な作品。戦争勃発前後の時期に、違うかもしれませんが平和を求めるように緑色が使われたのかなと感じました。 -
第14章 キュビスム以後
パブロ・ピカソ「輪を持つ少女」1919年春
第一次世界大戦が終わると、新たな動きが出てきたり、それまでを否定するような動きが出てきます。音声ガイドの山田五郎さんの解説で、キュビスムは1910年代のアーティストが皆かかったはしかのようなもの、というのはまさに膝を打つ表現で、はしかの後、それぞれの探求を進めていくことになります。作風が様々に変化していくピカソもこの絵が一見キュビスム以後なのか、と思いましたが、リアルに描かれた背景の鏡が、新古典主義へつながっていくように感じます。 -
ル・コルビュジエ「静物」1922
五郎さんの解説でもうひとつ、だんだんとキュビスムが当たり前のものとなっていき、そして抽象に進む方向性と、より溶け込んでいく方向性が出てくるというのが、とても納得しました。第一次世界大戦後に、ピュリズム(純粋主義)が生まれてきます。ざっくりいうとシンプルになっていくということでしょうか。
キュビスムをいったんは否定したものの、その後受容していくコルビュジェはその先にモダニズム建築を生み出していきます。 -
フェルナン・レジェ「タグボートの甲板」1920
もうひとつ、機械をはじめとする新しい発明品に対する無邪気な崇拝というのもこの時代によくみられるテーマです。
絵画・彫刻だけではなく、キュビスムが同時期にどのように語られたのか、雑誌やサロンのチラシなどからもみることができました。1900年代後半から1910年代の短い期間に火花のように起こり、そして時代に溶け込んでいったキュビスムの閃光を見たように感じた展覧会でした。 -
イチオシ
鑑賞後、外に出てみると、空に浮かんだ雲が、白やグレーの絵の具を筆でぽつん、ぽつんと置いたように見えました(笑)冷たい空気を頬で感じながら、自然も、人が作り出す造形物も美しい、しみじみと思いました。
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番外編!
上野で美術館めぐりの日は時間を確保するため、JR上野駅の駅ナカでさくっとお昼をすませます。今回ははじめてペンスタ(Suicaのペンギンがあしらわれたカフェ)でパニーニとコーヒー。パニーニが案外いけました! -
そして鑑賞後、時間が遅くなってしまったのですが、頭が疲れて糖分補給、とばかりに西洋美術館のCafeすいれんでケーキセットをいただきました。この日はオペラを。
Cafeすいれんは西洋美術館の美しい中庭に面していて、建物と木々が目に優しく心から落ち着く、大好きなスポットです。
今年もたくさんの美術展との素敵な出会いがありますように!!
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