2022/10/05 - 2022/10/06
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鯨の味噌汁さん
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この旅には、司馬遼太郎の「街道をゆく 愛蘭土紀行Ⅱ」を持って行った。
司馬遼がアイルランドを旅したのは1987年、今から35年前だ。
「街道をゆく」の連載が週刊朝日で連載が始まったのは、それよりずっと前、ワシが小学生のときだった。当時、週刊誌は新聞といっしょに宅配してくれたから、週刊朝日は常に家にあった。
ワシは親が買ってきた「オール読物」の官能小説を愛読するいたいけな少年であったが、この連載はエッチじゃないにもかかわらず読み耽った。なかんずく海外シリーズは愛読した。モンゴル紀行なんかがお好みだった。
そのまま大人になり、社会人になると文庫本で全巻そろえ、ヒマがあると繰り返し読んだ。就職したのは純国産の伝統的ブラック企業だったから、海外旅行どころか国内の温泉にも行けなかった。
文庫本がボロボロになると単行本をそろえた。
40年近く働き、リタイアしジジイ系バックパッカーになったとき、司馬遼はとっくに故人になっていた。
この作家の足跡を追いたい、と旅先として選ぶようになった。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 船 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
10月6日。
風が強い。雲は低いが雨はない。
きょうはイニシィア島へ移動する。黒い線の部分ですね。
この部分だけが予約を取れていない。
というか、チケットの買い方もワカラン。
宿のオーナーに聞いたら
「港のツーリストインフォで聞けばわかるよー」
とのこと。あんた知らんのかい! -
午前9時、そのツーリストインフォが開くのを待ち、訪ねる。
太めの優しそうなおばさまが対応してくれる。
「イニシィア島まで行きたいでしゅ」
あらあら、とおばさまはパンフレットを調べ、さらに船会社に電話をしてくれる。電話を終えるとワシに向きなおり、
「出航は12:30ですって」
「チケットはここで買えましゅか?」
「ノオ。乗船のとき直接買ってね。イニシィアまで乗りたい人がいるからって言っておきましたから」
おお、ありがたい。 -
イニシィア島へのメドが立ったので、荷物を波止場に放置し、その辺をぶらぶら歩きまわる。船が来るまで2時間なので、あまり遠くには行けない。お土産物屋さんは開いていたが、ホテルやB&Bは閉じているところが多い。
これが若いころであれば、その2時間を有効活用し「カフェで島娘を鑑賞・籠絡・凌辱」」などなどの各種アクティビティをこなすのだろうが、足腰弱ったハゲジジイなので無理である。
やむなく波止場の待合所でiPadなどを開き、しょーもない旅日記を書きつつ時間をうっちゃる。
だがしかし、昨日と違って強い風が吹いており、待合所は簡易な囲いがあるだけなので、たちまちにして体が冷えてくる。
そのうちずるずる鼻水が出始め、
「ふぇーーくしょん!! …ってこんちくしょーー、びぇーっくしょわい!! 」
みたいなクシャミも始まってしまう。時節柄、大変好ましくない。
12:00、お客さんが港に集まり始める。クシャミに鼻水が止まらないのでやむなくマスク。 -
12:30、時間通りにAran2 Doolin Ferries社の船が接岸。
乗務員に「イニシィア島まで」と申し出ると、
「ああ、あんたか。電話で聞いてるよ、10ユーロで」
なんていいながら切符を売ってくれた。 -
20分ほど海上を走り、イニシィア島へ接岸。
この島で降りたのはワシひとり。乗り込んできた乗客はいなかった。
今はシーズンオフだ、三つの島間の移動はそんなに多くないんだろう。ワシがいなければ素通りしていたと思われる。 -
google map を開き、きょうの宿を確認する。港から徒歩10分ほどだろうか。
船着き場の終わりに、馬車が停まっていた。御者のオヤジはのんびりタバコをふかしており、客はワシひとりなのに声をかけてくる様子もない。営業せんかいコラ。
ワシもショートホープをくわえ、その場でいっぷく。こちらからホテルの名前を言う。
するとオヤジはニコニコゆう。
「歩いて5分だ。このタクシーなら10分」
タクシーのほうが時間がかかるんかい。
「回り道になるからさ」
10ユーロだ、とゆうので乗り込む。ショートホープを進呈すると、大喜びで火をつけ、うまそうに吸ってる。
上機嫌でオヤジがゆう。
「あんたのウオルクは」
なんだよウオルクって。
よく聞いたらworkのことだった。
なまっとるがな。 -
ホテルは「Hotel オースタン イニシィア」。
星二つ、清潔で気持ちのいい宿だった。
家族経営らしく、フロントでは30代半ば、小柄なヒトヅマ風の女性がエプロン姿で対応してくれた。
Wベッドのシングルユースで110ユーロ。
(写真は翌朝撮影)
https://hotelinisoirr.com/ -
ホテルにはレストランも併設されていた。お昼を少し過ぎた時間で、観光客らしいカップルが一組、あとはカウンターに地元民がぱらぱら。天井には国旗やラグビーチームの旗やが貼られている。
窓からは穏やかな海が見える。雲が去って、晴れ間が広がってきた。 -
すっかり体が冷えていたので、コーヒーとスープをいただく。
暖かいものを体に入れると、ようやく人心地が付いた。
イニシィア島はみっつの島の中でも一番小さい。ソラマメみたいな形で、東西南北とも3キロほど。歩いて回ってもいかほどでもない。
天気も回復したことだし、がんばって歩こう。(けなげ) -
ホテルのすぐ横に石組みの遺跡が残っていた。
案内板を読むと、どうやら古墳らしい。日本で言うところの円墳。
紀元前2000年というから、昨日ながめたドン・エンガスの遺跡より古い。
たぶんおそらく、アラン諸島でも最古の遺跡の一つだろう。
古墳の中央部に石塔が二本さしてあるのは墓標だろうか。葬られたのは夫婦だったのかもしれない。 -
この島もまた、地表のほとんどをトレリスでおおわれている。
ただし現役の畑として使われている場所はほとんどない。
大規模なトレリスのひとつの中は、ラグビー施設になっていた。 -
トレリスの積み方は独特で、石と石をぴったり寄せるのではなく、あえて隙間を作る。これは強風が通ったときに崩されないための工夫だ。
積まれた石を観察すると、牡蠣の化石が張り付いていた。
ゴールウェイの食堂で食べた牡蠣の遠い遠いご先祖様だろうか。 -
ワンコのウンコを放置すると150ユーロの罰金らしい。(ゲール語なので読めないが)
ヒトの生産物に関しての記述はなかったが、思料するに、同じ哺乳類でありブツの形状も似ているので、万がいちワシがやらかしても150ユーロ取られてしまうに違いない。
ワシの悪い癖で、そうゆうことを妄想してると大腸部分がニワカに活性化する。
ホテルで済ませてくればよかったとおおいに後悔する。
島に公衆トイレはなく、コンビニなんぞも当然なく、カフェも閉店しているので、気を引き締めると同時に括約筋もキリリと引き締める鯨の味噌汁である。 -
それでもイザとなったらトレリスの陰でキジを撃てばよかろう、などと己を励ましていると、こんなときだけ馬車が現れるのであった。
「な、なんにもしてませんからね!!」
ちなみに神に誓って野グソは垂れていない。小さいほうはノーコメントである。 -
でもってその馬車が通り過ぎたあとにはホカホカの馬糞が落っこちていたりする。
これは罰金の対象にならないのか。
であればワシのもセーフではないのか。(ええいしつこい) -
島に集落は一か所だけで、港の周辺にぱらぱらと家がまけてある。全部で100戸くらいだろうか。
その家も石垣できっちり囲まれている。家の石垣は農地のトレリスより目が詰まっている。なぜそうなのかは分からない。
家の造りはどれも同じで、四角の建屋にシンプルな切妻屋根だ。ひさしの部分が狭いのは、風で屋根が飛ばされないために仕様だろう。
さらにどの家も同じ方向を向いているのは、やはり風への備えと思われる。 -
宅地以外のトレリスのほとんどは牧草地になっている。そこに実にしばしば、アンガス牛が放牧されていた。
細分化されたトレリスに出入口の柵をもうけ、放牧場にしているらしい。 -
歩き回って「現役」の農地を探す。
こぶりのトラリスの中に、ようやくジャガイモ畑を見つけた。
500年にわたって島の命をつないできたジャガイモだけど、今は自家消費くらいでしか栽培されていないようだ。 -
島の一番の高台に、遺跡らしいものが見える。
よし、あそこまで行ってみよう。 -
たどりつくと、廃城だった。
地球の歩き方には「16世紀の城」とある。
クロムウェルがアイルランドに攻め込んだとき、ここも破壊されたそうな。
アイルランドでクロムウェルは悪魔の手先みたいに言われてるが、こんな離島まで来てたのか。 -
周囲にはトレリスがあるだけで、何もない。人もいない。
ゆるやかな丘陵の一番高いところに、それ自体が大きな墓標のようにも見えた。
夕刻が近づいてきた。
海からの風が少し強くなり、体感温度が下がってきた。
よって括約筋に気合いを入れなおし、ホテルへ帰っていったのである。
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この旅行記へのコメント (2)
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- willyさん 2022/10/24 17:38:03
- 風の音が聞こえそうな
- 鯨さん
最後の一枚がまた秀逸です。キュンときますね。
映画のひとコマみたいな。
なんで殿方はヘクショイのあとにチキショーっていうんですか?
山仲間はかゆいときにもチキショーっていいます。
willy
- 鯨の味噌汁さん からの返信 2022/10/25 14:05:22
- クシャミ
- アラン諸島、なかなかフォトジェニックなところでした。
天候がクルクル変わったけど、なぜか外に出てる時は晴天が多かったのもラッキー。雨だと観光しないでホテルで寝てるヒトなので。
クシャミですね、2拍子だと座りが悪いんだと思います。
「へっくしょい、こんちくしょー」
「へっくしょい、こんちくしょー」
だとキレイな4拍子。ハモるのもラクなんじゃないかと。
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