アイラブ仏像めぐり　近江の秘仏を訪ねて4　千光寺

2022/06/26 - 2022/06/27

専門講師解説付き見仏ツアーに参加した。
ツアー全編、発見と感動に満ちていた。

エリア 甲賀(滋賀)

この日、２ヶ所目は千光寺。甲賀市水口町儀俄(ぎが)にある。

周囲には田んぼが広がっており、その先には野洲川が流れている。川を下れば琵琶湖まですぐ。
千光寺は、野洲川に向かってせり出す甲賀の山々の端に建つ。
寺から見て、野洲川の向こうが旧東海道で、水口宿はすぐそこ。人の往来の多い豊かな土地であったと思う。

ここも、寺と神社がカップルのパターンで、相方は八坂神社。訪問の時間はなかったが案内看板によると、川枯姫大神をまつり平安時代には川枯神社といったそう。川枯って何者？
野洲川という豊かな河川があるのに、なぜ枯れる？

この秘仏ツアーの訪問先は大型バスでは入れないところが多い。ここも同様で、バスを降りてこんな道をてくてく歩いて行く。
何てステキなイントロダクション。

寺に足を踏み入れると、千光寺ではなく、川枯寺の石柱。
川枯寺ともいうようだが、インパクト大のスゴい名だ。

パンフレットによると、創建は749年、橘諸兄による。
1580年兵火に焼失とあるのは、信長焼き討ちのことだろうか。
これまで、観音様を訪ねて琵琶湖周辺をあちこち訪れてきたが、焼き討ちの歴史を持つ寺院が実に多い。
湖西の比叡山だけでなく、湖北、湖東、湖南と琵琶湖の周囲すべてで焼き討ちが行われたのだろうか。比叡山だけでなく小さな集落の寺院まですべて焼き払ったのだろうか。
実際のところ、誰がどんな力をもって、寺院やほとけさまを焼いたのだろう？

寺は集落で管理され、3年ごとに交替しながら総代さんが中心になってお守りしているとのこと。来歴などよく分からないことが多いそうだ。

本尊は十一面千手観音立像。国の重要文化財で、立派な収蔵庫にお住まいだ。

スリムなスタイル、整った顔立ち、千手もみなすべて手抜きなく綺麗。

やや寄った眼、小さな唇。
彼女は十代後半で、目下の関心事はファッションや化粧。

眉は細目に弧を描くように細心の注意を払っている。アイシャドウは幅広め、アイラインも入れて切れ長の眼にみせたい。
でもこれ以上メイク濃くしてはダメ。色っぽくなりすぎるから。今のままであなたは十分に綺麗だから。

宝塔もスリムで重々しくなくスッと真っ直ぐ立ち、観音の姿と重なる。

昼食は、水口のふじ吉。
旧東海道にあり、これまた大型バスで近づけない。なのでマイクロバスに乗り換えて、こちらへ。

美しいお料理の数々。近江はおいしい。
バスを乗り換えてきた甲斐がある。

水口は東海道の宿場町。写真は、広重の東海道五十三次の水口宿で、かんぴょうを干す様子が描かれている。

当時も今も水口の名物は、かんぴょうとのこと。かんぴょう料理が天ぷらやら煮物やら少しずつ出てくる。が、主役ではない。

最後に主役になって登場した。素朴で、ほっとするお味。
食事を終え、戻るマイクロバスの車窓から感激の景色を目にした。農家の庭先でかんぴょうを干していたのだ。
仏像が古代と今をつないでくれるように、かんぴょうが江戸時代と今をつないでくれた。