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著書第6章 南米家族旅行<br /><br />いつもは年に4~5回は海外へ行くのですが、今年2020年は2月のエクアドル以来どこにも行けません。もちろん新型コロナウイルス禍のせいです。<br /><br />それで、もう古いですが、自分の著書(坂本泰樹)の中の旅行記を紹介したいと思います。「「機内にお医者さんはいませんか?」空飛ぶドクターの海外旅行と健康管理」悠飛社。出版社が倒産したので絶版になっているので、アマゾンの古本くらいでしか買えません。特に、そのうち5つは発売直後に関西毎日放送のラジオ番組『ありがとう浜村淳です』(午前8時&#12316;10時30分)の新刊書籍紹介のコーナーで5日間連続放送されました。2008年のことです。失敗談が多く、面白いと思います。 その第4弾です。第9章 油断大敵! カンクンにて、第10章 ベネズエラでの学会、第4章 新婚旅行 の続きです。<br /><br />その代わり、写真はありません。表紙写真は2018年1月(30年後)にやっと再挑戦して行き着いたマチュピチュの写真です。<br /><br /><br />まずリマへ<br /><br /> 医者になってアメリカに基礎医学(生殖免疫学)研究で留学をし、その帰国前に憧れの南米旅行をしました。1988年の2月のことです。私としては珍しくツアーでした。アメリカン・エキスプレスのツアーでした。日本の慌ただしそうなツアーには興味ありませんが、アメリカのツアーなら少しは違うだろうと試してみたかったのと、ヨーロッパのように現地の事情がわからないので、さすがに少し不安だったからです。<br /> 日本と同じく定番のツアーらしく、ペルーの首都・リマから古都・クスコへ飛び、空中都市・マチュピチュ見物。次に、ブラジルのリオデジャネイロ、イグアスの滝、そして最後が私にとって長年の憧れの国、サッカーの英雄マラドーナの国、アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスです。<br /> リマは南米の西海岸にあり、眺めのきれいな場所に連れて行かれました。私としては少し意外でした。アメリカのカリフォルニア州のようなきれいな景色があるとは期待していませんでした。しかし、街中は危険がいっぱいでした。私は世界中を回ったつもりですが、私が経験した中で間違いなく一番治安の悪そうな街でした。ニューヨークのマンハッタンよりはるかに怖い。昼間の商店街でも、周り中が泥棒の目です。命の危険は必ずしもありませんが、さすがの私もウィンドウショッピングもやめて、ホテルに戻りました。<br /><br />(注釈:ペルー・リマの名誉のために追加しますが、2018年に再訪した時は全く変わっていて安全になっていました。その時のガイドさんに聞くと私の記憶は間違いなく、確かに以前はかなり危険な場所だったと教えてもらいました)<br /><br /> 貧しい国の常で、小さい子が物売りにレストランに入って来ます。当然、ウェイターからは怒られながらです。ショッキングだったのは、タバコを一箱ではなく、一本単位で売りにくるのです。いくら物価が違うとはいえ、哀れに思えてきます。でも、何の解決策にもならないので、私は一切買ってやりません。タバコも吸いませんが。<br /><br />高地クスコへ<br /><br /> リマから飛行機でいきなり標高3600メートル程度のクスコです。アメリカでシンシナティへ移る前に住んでいたアルバカーキは標高2000メートル程度でした。少し似たような気候で、日差しは相当強いのですが、空気は冷んやりとしているのです。<br /> 日本の蒸し暑さとは全然種類が違います。むしろ、正反対といっていいでしょう。息苦しいとまではいえませんが、気のせいか少し歩くだけで息切れがします。風邪気味のせいかもしれません。何か体が宙に浮いてふわふわした変な感じでした。それでも、普通に昼間はクスコ市内を観光したのでした。<br /> 完全におかしくなったのは、ホテルに夕方チェックインしてからです。珍しく、頭痛が始まったのです。コカインが入っているらしいマテ茶をすすめられて飲みましたが、何の効果もありません。ついには、ホテルに備えられている酸素もしばらく吸入しましたが、同じく全く効果はありません。<br /> その当時は、ほとんど知識がなかったのですが、高山病だろうとは気がつきました。標高も高いし、何となく空気が薄いのもわかります。そのうち、吐き気まで催してきました。かみさんは私ほどではないですが、やはり少し頭痛とお腹の調子がおかしいと言います。当時、一歳半のアメリカ生まれの長男は、もちろんはっきりした症状はなんか訴えませんが、やはり機嫌が悪い。<br /> ホテルに頼んで医者の往診を頼みました。頭痛などできつい反面、自身が医者である私はどんな医者が来るか、どんな治療をしてくれるか興味津々でした。<br /> 年配の男性医者がやって来ました。しかし、予想に反して看護婦も連れずに、一人でやって来ました。英語はほとんど喋れず、従ってほとんど説明はわかりませんでした。私の片言のスペイン語では全く歯が立ちません。薬を取りに自分の診療所に戻ったようで、しばらくすると戻って来ました。また一人です。注射を受けました。それと内服薬です。当時の私にはどんな薬か想像もつきません。<br /> ペルーの高山病の治療に慣れているはずの医者を信用するしかありません。これも同じく当時の私には全く知識がなかったのですが、旅行保険などには入っていませんでした。<br /> でも、運が強いのです。ここペルーは物価も安く、保険もないのに医者に請求されたのは米ドルでたったの60ドルでした。往診で家族3人診てもらって治療を受けたのにです。<br /> どうも、睡眠薬を飲まされたようで、しばらくして熟睡しました。で、目が覚めたのは翌朝ですが、スッキリとしています。もう頭痛も吐き気も全くありません。嘘のように高山病が治ったのです。あのペルーの医者は名医です! でも、本来なら朝集合して、マチュピチュ行きの列車に乗るはずなのに、もう間に合いません。いまだに悔しくてたまりません。結婚して3年目くらいですが、新婚旅行以来、私の旅に対する執念を知っているかみさんはよっぽど高山病で私がきつかったのだろうと呆れていました。<br /> 日本旅行医学会で高山病の予防薬のアセタゾラミド(商品名ダイアモックス)を知って以来、私は今度こそダイアモックスを内服して、準備万端で近い将来マチュピチュに行きたいと思っています。必ずしも、毎回高山病にかかるとは限りませんが、こんな苦い経験のある私ですから、リスクは取りたくありません。副作用の少ない安全な薬があるのですから。<br /> 私が、現在日本旅行医学会のウェブサイトの認定医のリスト(http://www.jstm.gr.jp/japan_map.html)に名を連ね、積極的にダイアモックスの処方をしているのは、このような自分自身の苦い経験があるからです。もっと多くの人にこんないい予防薬があると知らせてあげたいのです。今考えると、注射はダイアモックスの注射剤だろうと思います。便利な内服薬もあり、予防薬として旅行には持って行きやすいのですが。<br /> すっかり元気を取り戻した私ですが、クスコからリオデジャネイロへの飛行機では面白い経験をしました。ここでは、飛行機の座席指定券がないので、乗客が一斉に走り出して競争です。早い者勝ちで座席を取りに行くのです。飛行機でなくバスならこんな風景も想像できますが、こんな経験は初めてです。今回の南米のフライトでも、こんな経験はこの路線だけでした。<br /><br />リオデジャネイロ<br /><br /> ここリオデジャネイロは単純に名前だけで一度は訪れてみたいと思っていました。歌で知っているコパカバーナ・ビーチ、イパネマ海岸、コルコバードの丘の巨大なキリスト像など見所がたくさんあります。死ぬまでに一度は見たいと思っているリオのカーニバルが終わった後でした。<br /> いつものように私のマイペースの旅行ですが、一歳半の赤ん坊を連れての旅で、しかもクスコでは軽い高山病にかかり、かみさんの顔には明らかに不満が隠れていました。でも、ある日突然満面の笑顔になりました。南米では有名らしいH.スターンというユダヤ資本の宝石店にツアーで連れて行かれたからです。<br /> さすがに、女性です。そういう店でウィンドウショッピングするだけでも嬉しいようです。ふてくされた顔から笑顔に変わりました。私のことですから、そんなに高い宝石は買ってやれませんが、それでも非常に喜んでくれました。きっと、彼女にとっては今回の南米旅行のハイライトでしょう。<br /><br />三大瀑布の一つ、イグアスの滝<br /><br /> ここは行く前から非常に興味がありました。最初の海外体験(留学)地がナイアガラの滝の近くであり、今回の2年間のアメリカ留学中も友達を案内したりして何度も訪れている私にとって、ライバルであるイグアスの滝はぜひ見たかったのです。<br /> 共通点もあります。ナイアガラの滝がカナダとアメリカの国境をまたいでいるように、ここイグアスの滝もブラジルとアルゼンチンの国境をまたいでいるのです。今回のツアーでは、ブラジル側からのみの見学でしたが、ナイアガラよりはるかにスケールが大きく、一言で表現するとジャングルにある滝の群れのようでした。<br /> 有名なルーズベルト大統領の奥さんのエレノアのセリフ「あぁ、可愛そうなナイアガラの滝!」。全く同感です。その通りです。スケールで言えば、明らかにイグアスの勝ちです。<br /> 次回は、アルゼンチン側からも楽しみたいと思いました。ナイアガラも色々な角度から楽しめるのをよく知っている私ですから。<br /><br />泣かないでアルゼンチン<br /><br /> 一方、ここアルゼンチンは憧れている反面、何の具体的な知識もありませんでした。サッカーのマラドーナの国、パンパの大草原と美人とタンゴの国ということしか知りません。首都のブエノスアイレスも同様です。南米のパリと呼ばれている美しい町としか知りませんでした。<br /> ブエノスアイレスは首都なのに、すぐ郊外にパンパがあり、ガウチョ(アルゼンチンのカウボーイ)ショーを見に行きました。そこで当然の如く牛肉のステーキやソーセージを食べました。ここアルゼンチンはアメリカに比べてももっと牛肉が安いのです。でも、ステーキもソーセージも血生臭く、日本人の我々にはちょっと口に合いませんでした。ツアーで一緒のドイツ系の人はおいしいとパクついていました。たぶん、肉の処理がずいぶん違うのだと思います。いかにも殺してすぐの肉という感じでした。肉食人種との差を痛感しました。<br /> ここの買い物でも、かみさんの目の色が変わりました。当時、日本では高嶺の花だったカシミアのセーターが安いのです。といっても、ファッションに興味のない私は当時カシミアが何なのか、そんなに高級なのか全く知りませんでしたが。しかも、南米のパリといわれるだけあって、色のセンスが抜群です。これは私にもわかります。上品なピンク色のカシミアのセーターを買ったかみさんは終始上機嫌でした。このセーターは彼女が死んだ今も、我が家にはあります。サイズが合わないけど、娘が時々着ています。<br /> ある日、有名な大統領の奥さんのお墓へ連れて行かれました。それは貧民の家よりも立派な家のようなお墓でした。いかにも、貧富の差が激しい国だと感じました。周りのアメリカ人のツアー仲間はみんな感激していましたが、我々は蚊帳の外でした。<br /> でも、何年もしてミュージカルの『エビータ』を劇団四季で見たり、マドンナの映画『エビータ』を見て感激した私は、そのお墓がペロン大統領の奥さんのエビータのお墓だった後から知ったのでした。貧しい家に生まれ、大統領夫人にまで上り詰めたエビータはアルゼンチンの人々にとって、憧れの対象のようで絶大な人気のようです。「Don’t cry for me, Argentina!」のマドンナの歌がピッタリです。この映画で私はマドンナのファンになりました。<br /> ちなみに、最近アルゼンチンに女性大統領が誕生しましたが、エビータの再来ということが一つの人気の理由のようです。いずれにせよ、私にとってアルゼンチンはもう一度ゆっくり訪れてみたい国です。<br /><br /><br />【コラム】高山病の予防<br /> <br /> これは明らかに環境因子による病気です。症状としては、標高の高いところに急に上ると、低気圧・低酸素の環境に体が適応できずに、脳や排などの内臓を中心に浮腫状態になり、頑固な頭痛を中心に、吐き気や下痢などの消化器症状や、めまい、息切れ、倦怠感などの症状を来たします。従って、交通の便がよくなり、誰でも気楽に高所に登れるようになった現在の観光客が要注意です。日本人のツアー客に人気のある所としては、ヨーロッパのアルプス、南米のペルー(マチュピチュ)、チベットのラサ(天空列車)などがあります。<br /> 最初に強調しておきたいのは、この病気には安全かつ有効な予防薬があるということです。ダイアモックス(成分名、アセタゾラミド)という薬です。高所に行く前日から3日間、合計4日間の内服を日本旅行医学会では推薦しています。予防としては、250㎎の錠剤1/2錠を一日2回の内服です。参考までに、発病してからの治療薬としては、1錠を一日2回内服します。<br /> ただ、この薬に関しては一般の人にかなりの誤解があります。その根本理由として、日本の医療保険の適応がないということがあります。ですから、素人が処方箋薬の本で調べてもどこにも高山病の薬としてのダイアモックスは出てきません。国が決めた保険適応としてはあくまでも、緑内障、メニエール症候群、睡眠時無呼吸症候群、呼吸性アシドーシスなどです。一見、無関係の病名が並んでいます。<br /> でも、実際には高山病の特効薬です。その証拠に、多くの医師が使用する『今日の治療指針』の予防薬、治療薬の処方例としても記載されています。しかも保険適用外と注釈がついています。副作用に関しては、ほとんど問題になりません。割合に多いのが末梢の手・足の軽いシビレですがすぐに消失します。病名でいうと、「末梢神経炎」とオドロオドロしいので、重篤な副作用と誤解している人がいるようです。軽い多尿による頻尿を来すこともあります。<br /> これは医師の処方の必要な薬ですから、一般の薬局では売っていません。あくまでも、病院の医師の処方でしか手に入りません。しかも、保険がきかない自費診療扱いなので全額自己負担でやや高くなります。ちょっとややこしいので、もう少し詳しく説明すると、ED(勃起不全)に対する有名な薬バイアグラのような扱いです。国としては、安全性や有効性は認めるが医師の指導の下で処方して欲しい。ただし、病気とは認めないのでお金は自己負担でという考え方です。残念ながら、なぜかダイアモックスも同様の扱いになっているのです。たぶん、国内では「高山病」は珍しい病気で以前はほとんど問題にもならなかったからでしょう。<br /> しかも、保険適用外なので、困ったことに肝心の医者自身が高山病の薬としてのダイアモックスを知らないことが多いのです。そこで、日本旅行医学会では知識のある、処方できる医師の全国リストをホームページに記載しています(http://www.jstm.gr.jp/japan_map.html)。もちろん、日本旅行医学会としては、医師の間の啓蒙活動がこれからの課題です。<br /> 高山病にはリスクファクターがありません。つまり、誰が発病しやすいかはわかりません。若い人でも発病します。若い人のほうが発病しても無理をするのでかえって危険な面もあります。標高も1500m程度でも発病する人も稀にいます。但し、多いのは3000m以上くらいからです。4~5000mになるとかなり多くの人が発病する危険にさらされます。 <br /> 多くの場合は、軽症の急性山酔い(AMS: acute mountain sickness)ですが、重症になると高地脳浮腫(HACE: high altitude cerebral edema)で意識朦朧になったり、高地肺水腫(HAPE: high altitude pulmonary edema)で呼吸困難やチアノーゼになり死に至ることもあります。発病には必ずしも年齢は関係ないと書きましたが、いざ発病すると呼吸循環器系に持病の多い高齢者は重症化しやすいので、要注意です。<br /> 一般的な高山病予防としては、時間をかけてゆっくり登ることです。十分な水分、栄養補給も大事です。アルコールは利尿作用があるので逆効果です。時々大きな深呼吸をするのも有効です。同様に、可能なら酸素吸入は有効です。<br /> 以上の理由により、私自身の苦い経験もあり、少しでも不安な人は予防薬の内服を強くおすすめします。もし、予防は嫌だと思うのであれば、準備しておいて少しでも頭痛などの症状が出たらすぐに治療薬として内服する方法もあります。<br /> 国際山岳学会は必ずしも、ダイアモックスの予防投与を万人にはすすめていないようですが、これもよく読むと、過去に高山病になったことのある人は例外としています。そもそもこの学会は本格的なトレーニングを積んだ登山家のためのガイドラインであり、一般の旅行者を対象とした我々日本旅行医学会とは立場が違います。私は、一般のツアー客の高山病の予防としてすすめています。<br /> しかも、登山の専門家でもダイアモックスを使用しています。8000m以上のチョモランマに登頂したベテランの東京女子医大の女医さんにある学会で質問したら、彼女もふもとの4~5000mに行く時は一気に飛行機などで行くので、ダイアモックスを内服するそうです。<br /><br /><br />空飛ぶドクター(登録商標)<br />坂本泰樹<br /><br />

著書第6章 南米家族旅行(高山病のコラム付き)

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1988/02/12 - 1988/02/22

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空飛ぶドクター

空飛ぶドクターさん

著書第6章 南米家族旅行

いつもは年に4~5回は海外へ行くのですが、今年2020年は2月のエクアドル以来どこにも行けません。もちろん新型コロナウイルス禍のせいです。

それで、もう古いですが、自分の著書(坂本泰樹)の中の旅行記を紹介したいと思います。「「機内にお医者さんはいませんか?」空飛ぶドクターの海外旅行と健康管理」悠飛社。出版社が倒産したので絶版になっているので、アマゾンの古本くらいでしか買えません。特に、そのうち5つは発売直後に関西毎日放送のラジオ番組『ありがとう浜村淳です』(午前8時〜10時30分)の新刊書籍紹介のコーナーで5日間連続放送されました。2008年のことです。失敗談が多く、面白いと思います。 その第4弾です。第9章 油断大敵! カンクンにて、第10章 ベネズエラでの学会、第4章 新婚旅行 の続きです。

その代わり、写真はありません。表紙写真は2018年1月(30年後)にやっと再挑戦して行き着いたマチュピチュの写真です。


まずリマへ

 医者になってアメリカに基礎医学(生殖免疫学)研究で留学をし、その帰国前に憧れの南米旅行をしました。1988年の2月のことです。私としては珍しくツアーでした。アメリカン・エキスプレスのツアーでした。日本の慌ただしそうなツアーには興味ありませんが、アメリカのツアーなら少しは違うだろうと試してみたかったのと、ヨーロッパのように現地の事情がわからないので、さすがに少し不安だったからです。
 日本と同じく定番のツアーらしく、ペルーの首都・リマから古都・クスコへ飛び、空中都市・マチュピチュ見物。次に、ブラジルのリオデジャネイロ、イグアスの滝、そして最後が私にとって長年の憧れの国、サッカーの英雄マラドーナの国、アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスです。
 リマは南米の西海岸にあり、眺めのきれいな場所に連れて行かれました。私としては少し意外でした。アメリカのカリフォルニア州のようなきれいな景色があるとは期待していませんでした。しかし、街中は危険がいっぱいでした。私は世界中を回ったつもりですが、私が経験した中で間違いなく一番治安の悪そうな街でした。ニューヨークのマンハッタンよりはるかに怖い。昼間の商店街でも、周り中が泥棒の目です。命の危険は必ずしもありませんが、さすがの私もウィンドウショッピングもやめて、ホテルに戻りました。

(注釈:ペルー・リマの名誉のために追加しますが、2018年に再訪した時は全く変わっていて安全になっていました。その時のガイドさんに聞くと私の記憶は間違いなく、確かに以前はかなり危険な場所だったと教えてもらいました)

 貧しい国の常で、小さい子が物売りにレストランに入って来ます。当然、ウェイターからは怒られながらです。ショッキングだったのは、タバコを一箱ではなく、一本単位で売りにくるのです。いくら物価が違うとはいえ、哀れに思えてきます。でも、何の解決策にもならないので、私は一切買ってやりません。タバコも吸いませんが。

高地クスコへ

 リマから飛行機でいきなり標高3600メートル程度のクスコです。アメリカでシンシナティへ移る前に住んでいたアルバカーキは標高2000メートル程度でした。少し似たような気候で、日差しは相当強いのですが、空気は冷んやりとしているのです。
 日本の蒸し暑さとは全然種類が違います。むしろ、正反対といっていいでしょう。息苦しいとまではいえませんが、気のせいか少し歩くだけで息切れがします。風邪気味のせいかもしれません。何か体が宙に浮いてふわふわした変な感じでした。それでも、普通に昼間はクスコ市内を観光したのでした。
 完全におかしくなったのは、ホテルに夕方チェックインしてからです。珍しく、頭痛が始まったのです。コカインが入っているらしいマテ茶をすすめられて飲みましたが、何の効果もありません。ついには、ホテルに備えられている酸素もしばらく吸入しましたが、同じく全く効果はありません。
 その当時は、ほとんど知識がなかったのですが、高山病だろうとは気がつきました。標高も高いし、何となく空気が薄いのもわかります。そのうち、吐き気まで催してきました。かみさんは私ほどではないですが、やはり少し頭痛とお腹の調子がおかしいと言います。当時、一歳半のアメリカ生まれの長男は、もちろんはっきりした症状はなんか訴えませんが、やはり機嫌が悪い。
 ホテルに頼んで医者の往診を頼みました。頭痛などできつい反面、自身が医者である私はどんな医者が来るか、どんな治療をしてくれるか興味津々でした。
 年配の男性医者がやって来ました。しかし、予想に反して看護婦も連れずに、一人でやって来ました。英語はほとんど喋れず、従ってほとんど説明はわかりませんでした。私の片言のスペイン語では全く歯が立ちません。薬を取りに自分の診療所に戻ったようで、しばらくすると戻って来ました。また一人です。注射を受けました。それと内服薬です。当時の私にはどんな薬か想像もつきません。
 ペルーの高山病の治療に慣れているはずの医者を信用するしかありません。これも同じく当時の私には全く知識がなかったのですが、旅行保険などには入っていませんでした。
 でも、運が強いのです。ここペルーは物価も安く、保険もないのに医者に請求されたのは米ドルでたったの60ドルでした。往診で家族3人診てもらって治療を受けたのにです。
 どうも、睡眠薬を飲まされたようで、しばらくして熟睡しました。で、目が覚めたのは翌朝ですが、スッキリとしています。もう頭痛も吐き気も全くありません。嘘のように高山病が治ったのです。あのペルーの医者は名医です! でも、本来なら朝集合して、マチュピチュ行きの列車に乗るはずなのに、もう間に合いません。いまだに悔しくてたまりません。結婚して3年目くらいですが、新婚旅行以来、私の旅に対する執念を知っているかみさんはよっぽど高山病で私がきつかったのだろうと呆れていました。
 日本旅行医学会で高山病の予防薬のアセタゾラミド(商品名ダイアモックス)を知って以来、私は今度こそダイアモックスを内服して、準備万端で近い将来マチュピチュに行きたいと思っています。必ずしも、毎回高山病にかかるとは限りませんが、こんな苦い経験のある私ですから、リスクは取りたくありません。副作用の少ない安全な薬があるのですから。
 私が、現在日本旅行医学会のウェブサイトの認定医のリスト(http://www.jstm.gr.jp/japan_map.html)に名を連ね、積極的にダイアモックスの処方をしているのは、このような自分自身の苦い経験があるからです。もっと多くの人にこんないい予防薬があると知らせてあげたいのです。今考えると、注射はダイアモックスの注射剤だろうと思います。便利な内服薬もあり、予防薬として旅行には持って行きやすいのですが。
 すっかり元気を取り戻した私ですが、クスコからリオデジャネイロへの飛行機では面白い経験をしました。ここでは、飛行機の座席指定券がないので、乗客が一斉に走り出して競争です。早い者勝ちで座席を取りに行くのです。飛行機でなくバスならこんな風景も想像できますが、こんな経験は初めてです。今回の南米のフライトでも、こんな経験はこの路線だけでした。

リオデジャネイロ

 ここリオデジャネイロは単純に名前だけで一度は訪れてみたいと思っていました。歌で知っているコパカバーナ・ビーチ、イパネマ海岸、コルコバードの丘の巨大なキリスト像など見所がたくさんあります。死ぬまでに一度は見たいと思っているリオのカーニバルが終わった後でした。
 いつものように私のマイペースの旅行ですが、一歳半の赤ん坊を連れての旅で、しかもクスコでは軽い高山病にかかり、かみさんの顔には明らかに不満が隠れていました。でも、ある日突然満面の笑顔になりました。南米では有名らしいH.スターンというユダヤ資本の宝石店にツアーで連れて行かれたからです。
 さすがに、女性です。そういう店でウィンドウショッピングするだけでも嬉しいようです。ふてくされた顔から笑顔に変わりました。私のことですから、そんなに高い宝石は買ってやれませんが、それでも非常に喜んでくれました。きっと、彼女にとっては今回の南米旅行のハイライトでしょう。

三大瀑布の一つ、イグアスの滝

 ここは行く前から非常に興味がありました。最初の海外体験(留学)地がナイアガラの滝の近くであり、今回の2年間のアメリカ留学中も友達を案内したりして何度も訪れている私にとって、ライバルであるイグアスの滝はぜひ見たかったのです。
 共通点もあります。ナイアガラの滝がカナダとアメリカの国境をまたいでいるように、ここイグアスの滝もブラジルとアルゼンチンの国境をまたいでいるのです。今回のツアーでは、ブラジル側からのみの見学でしたが、ナイアガラよりはるかにスケールが大きく、一言で表現するとジャングルにある滝の群れのようでした。
 有名なルーズベルト大統領の奥さんのエレノアのセリフ「あぁ、可愛そうなナイアガラの滝!」。全く同感です。その通りです。スケールで言えば、明らかにイグアスの勝ちです。
 次回は、アルゼンチン側からも楽しみたいと思いました。ナイアガラも色々な角度から楽しめるのをよく知っている私ですから。

泣かないでアルゼンチン

 一方、ここアルゼンチンは憧れている反面、何の具体的な知識もありませんでした。サッカーのマラドーナの国、パンパの大草原と美人とタンゴの国ということしか知りません。首都のブエノスアイレスも同様です。南米のパリと呼ばれている美しい町としか知りませんでした。
 ブエノスアイレスは首都なのに、すぐ郊外にパンパがあり、ガウチョ(アルゼンチンのカウボーイ)ショーを見に行きました。そこで当然の如く牛肉のステーキやソーセージを食べました。ここアルゼンチンはアメリカに比べてももっと牛肉が安いのです。でも、ステーキもソーセージも血生臭く、日本人の我々にはちょっと口に合いませんでした。ツアーで一緒のドイツ系の人はおいしいとパクついていました。たぶん、肉の処理がずいぶん違うのだと思います。いかにも殺してすぐの肉という感じでした。肉食人種との差を痛感しました。
 ここの買い物でも、かみさんの目の色が変わりました。当時、日本では高嶺の花だったカシミアのセーターが安いのです。といっても、ファッションに興味のない私は当時カシミアが何なのか、そんなに高級なのか全く知りませんでしたが。しかも、南米のパリといわれるだけあって、色のセンスが抜群です。これは私にもわかります。上品なピンク色のカシミアのセーターを買ったかみさんは終始上機嫌でした。このセーターは彼女が死んだ今も、我が家にはあります。サイズが合わないけど、娘が時々着ています。
 ある日、有名な大統領の奥さんのお墓へ連れて行かれました。それは貧民の家よりも立派な家のようなお墓でした。いかにも、貧富の差が激しい国だと感じました。周りのアメリカ人のツアー仲間はみんな感激していましたが、我々は蚊帳の外でした。
 でも、何年もしてミュージカルの『エビータ』を劇団四季で見たり、マドンナの映画『エビータ』を見て感激した私は、そのお墓がペロン大統領の奥さんのエビータのお墓だった後から知ったのでした。貧しい家に生まれ、大統領夫人にまで上り詰めたエビータはアルゼンチンの人々にとって、憧れの対象のようで絶大な人気のようです。「Don’t cry for me, Argentina!」のマドンナの歌がピッタリです。この映画で私はマドンナのファンになりました。
 ちなみに、最近アルゼンチンに女性大統領が誕生しましたが、エビータの再来ということが一つの人気の理由のようです。いずれにせよ、私にとってアルゼンチンはもう一度ゆっくり訪れてみたい国です。


【コラム】高山病の予防
 
 これは明らかに環境因子による病気です。症状としては、標高の高いところに急に上ると、低気圧・低酸素の環境に体が適応できずに、脳や排などの内臓を中心に浮腫状態になり、頑固な頭痛を中心に、吐き気や下痢などの消化器症状や、めまい、息切れ、倦怠感などの症状を来たします。従って、交通の便がよくなり、誰でも気楽に高所に登れるようになった現在の観光客が要注意です。日本人のツアー客に人気のある所としては、ヨーロッパのアルプス、南米のペルー(マチュピチュ)、チベットのラサ(天空列車)などがあります。
 最初に強調しておきたいのは、この病気には安全かつ有効な予防薬があるということです。ダイアモックス(成分名、アセタゾラミド)という薬です。高所に行く前日から3日間、合計4日間の内服を日本旅行医学会では推薦しています。予防としては、250㎎の錠剤1/2錠を一日2回の内服です。参考までに、発病してからの治療薬としては、1錠を一日2回内服します。
 ただ、この薬に関しては一般の人にかなりの誤解があります。その根本理由として、日本の医療保険の適応がないということがあります。ですから、素人が処方箋薬の本で調べてもどこにも高山病の薬としてのダイアモックスは出てきません。国が決めた保険適応としてはあくまでも、緑内障、メニエール症候群、睡眠時無呼吸症候群、呼吸性アシドーシスなどです。一見、無関係の病名が並んでいます。
 でも、実際には高山病の特効薬です。その証拠に、多くの医師が使用する『今日の治療指針』の予防薬、治療薬の処方例としても記載されています。しかも保険適用外と注釈がついています。副作用に関しては、ほとんど問題になりません。割合に多いのが末梢の手・足の軽いシビレですがすぐに消失します。病名でいうと、「末梢神経炎」とオドロオドロしいので、重篤な副作用と誤解している人がいるようです。軽い多尿による頻尿を来すこともあります。
 これは医師の処方の必要な薬ですから、一般の薬局では売っていません。あくまでも、病院の医師の処方でしか手に入りません。しかも、保険がきかない自費診療扱いなので全額自己負担でやや高くなります。ちょっとややこしいので、もう少し詳しく説明すると、ED(勃起不全)に対する有名な薬バイアグラのような扱いです。国としては、安全性や有効性は認めるが医師の指導の下で処方して欲しい。ただし、病気とは認めないのでお金は自己負担でという考え方です。残念ながら、なぜかダイアモックスも同様の扱いになっているのです。たぶん、国内では「高山病」は珍しい病気で以前はほとんど問題にもならなかったからでしょう。
 しかも、保険適用外なので、困ったことに肝心の医者自身が高山病の薬としてのダイアモックスを知らないことが多いのです。そこで、日本旅行医学会では知識のある、処方できる医師の全国リストをホームページに記載しています(http://www.jstm.gr.jp/japan_map.html)。もちろん、日本旅行医学会としては、医師の間の啓蒙活動がこれからの課題です。
 高山病にはリスクファクターがありません。つまり、誰が発病しやすいかはわかりません。若い人でも発病します。若い人のほうが発病しても無理をするのでかえって危険な面もあります。標高も1500m程度でも発病する人も稀にいます。但し、多いのは3000m以上くらいからです。4~5000mになるとかなり多くの人が発病する危険にさらされます。 
 多くの場合は、軽症の急性山酔い(AMS: acute mountain sickness)ですが、重症になると高地脳浮腫(HACE: high altitude cerebral edema)で意識朦朧になったり、高地肺水腫(HAPE: high altitude pulmonary edema)で呼吸困難やチアノーゼになり死に至ることもあります。発病には必ずしも年齢は関係ないと書きましたが、いざ発病すると呼吸循環器系に持病の多い高齢者は重症化しやすいので、要注意です。
 一般的な高山病予防としては、時間をかけてゆっくり登ることです。十分な水分、栄養補給も大事です。アルコールは利尿作用があるので逆効果です。時々大きな深呼吸をするのも有効です。同様に、可能なら酸素吸入は有効です。
 以上の理由により、私自身の苦い経験もあり、少しでも不安な人は予防薬の内服を強くおすすめします。もし、予防は嫌だと思うのであれば、準備しておいて少しでも頭痛などの症状が出たらすぐに治療薬として内服する方法もあります。
 国際山岳学会は必ずしも、ダイアモックスの予防投与を万人にはすすめていないようですが、これもよく読むと、過去に高山病になったことのある人は例外としています。そもそもこの学会は本格的なトレーニングを積んだ登山家のためのガイドラインであり、一般の旅行者を対象とした我々日本旅行医学会とは立場が違います。私は、一般のツアー客の高山病の予防としてすすめています。
 しかも、登山の専門家でもダイアモックスを使用しています。8000m以上のチョモランマに登頂したベテランの東京女子医大の女医さんにある学会で質問したら、彼女もふもとの4~5000mに行く時は一気に飛行機などで行くので、ダイアモックスを内服するそうです。


空飛ぶドクター(登録商標)
坂本泰樹

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