1992/09/22 - 1992/10/02
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空飛ぶドクターさん
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いつもは年に4~5回は海外へ行くのですが、今年は2月のエクアドル以来どこにも行けません。もちろん新型コロナウイルス禍のせいです。
それで、もう古いですが、自分の著書(坂本泰樹)の中の旅行記を紹介したいと思います。出版社が倒産したので絶版になっているので、アマゾンの古本くらいでしか買えません。特に、そのうち5つは発売直後に関西毎日放送のラジオ番組『ありがとう浜村淳です』(午前8時~10時30分)の新刊書籍紹介のコーナーで5日間連続放送されました。2008年のことです。失敗談が多く、面白いと思います。 その第2弾です。前回の第9章 油断大敵! カンクンにて の続きです。
その代わり、写真はありません。
美女が多く、ミスコンで有名な国ですが、この頃(1992年)もクーデターがあり、今は多くの国民が国外へ逃げ出している有様です。私がAFS高校留学のボランティアで関わったバルバラも家族でパラグアイに逃げ出したそうです。残念です!
ビザなしでベネズエラへ
1992年の秋、私はルンルンとした気分で南米のベネズエラの首都、カラカスで行われた世界不妊会議へ出かけました。ところが、今回はハプニングだらけの学会旅行でした。
この年の4月に大学の医局、大学病院へ戻った私でしたが、秋にベネズエラで学会があると知って、すぐに準備にかかりました。もちろん、学会に演題を発表しないとそんな遠くに行くことはできません。ちょうどいいことに、1986年から1988年にかけてアメリカ留学した時の研究成果のデータが未発表でした。内容的には、基礎的な実験データで自信がありました。無事に演題が採択され、学会に参加できるようになったのでした。
その当時のいつものアメリカ方面の旅行のように、航空券やホテルの手配は東京のアメリカの航空券の端末を持つ旅行会社に頼みました。ベネズエラという国はさすがの私も未知の国であり、行ったことのある知人が治安が悪いと言っていたので、南米でもあるし用心して、私にしては珍しく高級なインターコンチネンタルホテルを予約しました。
今回の学会は珍しく学会の費用が大学からかなり出るのもケチらなかった理由です。そこの旅行会社で聞くとベネズエラはビザ不要だとのことでした。
南米といえば、当然玄関口のアメリカのフロリダ経由です。私のAFS高校留学時のホストシスターの Janice がフロリダ半島西海岸、セントピーターズバーグ近くのブラデントンに住んでいます。久しぶりに会いに行くのが楽しみです。アメリカ方面での学会では、必ず近くの一ヵ所を選んで学会ついでに友達や知人に会いに行くのが、私のいつものパターンであり、楽しみなのです。
マイアミ経由でカラカスの空港に着きました。個人的には南米は大好きですが、日本からはかなり遠いのが欠点です。私の長年の夢は、中国大陸とアメリカ大陸を入れ替えてアメリカ大陸を近くに持ってくることです。でも、そんなことできるわけありません。残念!
なぜか空港の中の税関のところにまで学会の関係者が来ています。ところが、大変! 実際はビザが必要な国だったのです。学会から派遣されている若い女性は南米の人らしく。大丈夫! ケセラ・セラ! の世界です。ビザくらいなくても私が何とかしてあげるという感じです。
確かに、学会の説明にも学会がビザの手配はするとは書いてありましたが、もう空港に到着しているわけですし。さすがの私も不安でいっぱいでした。こんなところまで来て、「日本に帰れ」ではあんまりです。学会発表もできません。
幸いに、時間はかかったものの確かに何とか入国は許されました。ちょっと気にかかる点はあったのですが・・・・。
カラカスに着いて見ると、小ぎれいな都会で私の基準では全然危ない感じはしません。清潔な地下鉄もある百万都市という感じです。学会場のヒルトンホテル近郊も公園もあり、なかなかきれいな町でした。ミスコンなど美人で有名な国でもあり、街中には健康的な美人もたくさんいます。気に入りました!
ドクター・サカモト
学会初日は壮観でした。壇上には、学会の大御所とともに何とベネズエラの大統領まで列席しているのです。こういう開発途上国ではこういう大きな世界的学会は外貨獲得の絶好のチャンスとなるので、大統領まで出席となるのでしょう。実際、世界中から医者や学者が集まり、家族連れで来る人もいますから。日本人の元東大産婦人科教授の坂元先生も壇上にいました。横文字では同じ Sakamoto です。えっへん! 隣の外国人の参加者が私の名札を見て、お前のお父さんかと聞くので、適当にそうだと答えておきました。
入国はできたもののずっと気になっていることがあります。私はスペイン語も遊び程度に少しかじっているのですが、入国のスタンプのところに 72 horas と書いています。たぶん、72 hours の意味です。どう考えても72時間つまり3日間だけの入国許可としか思えないのです。
幸い、ここは首都のカラカスですから、日本の大使館があるはずなので調べて行きました。あまり期待はしていなかったのですが、噂通り本当に大使館は役に立ちませんでした。ここでは、ビザは出せないと言うのです。そのくせ、ビザが不要だと間違えた旅行会社の名前を教えろと言うのです。どうせ偉そうに厳重に注意するだけでしょうから、私は教えませんでした。私に言わせれば、そんならあんたらは何のために外国で働いているのと言いたいくらいです。無駄な労力でした。
それで、学会の受付に行って交渉すると、パスポートを預けろと言うのです。ちょっと不安でしたが、何とかしてくれると言うのを信じるしかありません。大統領が出席したくらいの立派な学会を信じるしかありません。さすがに落ち着かずに、毎日受け付けに行って、まだかまだかと催促しました。結局、ほとんどギリギリ最終日近くになってビザが発行され、違法ではなく堂々と滞在できるようになりました。
クーデター騒ぎ
ビザのことでは少し慌てましたが、学会自体は順調で無事に自分の発表もこなしましたし、私の留学時のボスの友人でもあるアメリカ人の著名な女性学者には質問もしました。少しは市内観光もしましたが、治安もそこまで悪くなさそうですし、普通にきれいな大都市という印象でした。
さぁ、今日はビザの心配もなくなったし、堂々と出国の朝です。フロリダ半島のマイアミへ飛び、乗り換えてジャニスの住むブラデントンへ遊びに行く日です。テレビをつけると銃を持った兵隊さんが映っています。少し不安がよぎります。でも、バスでカラカス国際空港へ向かいました。
空港へ着くと、どうも様子が変です。銃を持った兵隊さんがたくさんいます。スペインの駅を思い出しました。でも、兵隊さんの数が多過ぎます。どうもただ事ではない雰囲気です。
英語のわかりそうな人に尋ねると、どうもクーデター騒ぎらしいです。学会初日に壇上にいたあの大統領が拘束されたらしいのです。しかも、空港は閉鎖され、飛行機は朝から飛んでいないらしいのです。私は命の危険は感じませんでしたが、やばいなぁと感じていました。こんな所で足止めを食ったら、フロリダで遊ぶ時間がなくなってしまう。後で、日本人の学会参加者から聞いたら、空港へ行く途中空爆が見えて怖かったと言っていました。
しばらくすると、学会場で見覚えのあるアルゼンチンの美人医師がいました。英語がわかるはずなので空港再開の見通しを彼女に聞くと、「さぁ、一ヶ月くらいじゃない?」と呑気な話です。さすがに、ラテンの人は気が長い。冗談じゃないよとさすがの私もあせりました。そして、珍しく日本にいるかみさんに電話しました。「大変なことになった! クーデターで空港閉鎖になったので出国できなくなった!」これが、大間違いでした。
空港近くの安ホテルへチェックインしましたが、当然のことながらテレビはスペイン語の放送だけです。相変わらず銃を持った兵隊さんが映っていますが、何が起こっているのか皆目わかりません。
さすがに、しばらく考えて、一泊数万円もする普段なら一考だにしない高級ホテル、シェラトンホテルにチェックインしなおしました。もちろん、英語のCNN放送を見るためです。少しでも、クーデターの情報を知りたかったのです。せっかくプール付きの高級ホテルに宿泊したのですが、さすがに気分的に泳ぐ気にはなれません。
無事に出国し米国へ
翌日は、確信はないものの、一応ホテルはチェックアウトして、空港で待つことにしました。CNNの放送でも、クーデター解除とかいう状況ではなさそうです。相変わらず空港には銃を持った兵隊さんがいます。あきらめている人が多いのか、意外と空港内は平静で混雑はありません。
少しずつ、状況がわかってきましたが、幸いアメリカ系の飛行機から少しずつ、運航を再開したようです。私のチケットは、アメリカン航空のカラカス・マイアミ便です。5~6時間待ちましたが、何とかこの日のうちに無事に出国できました。やったぁ~、後はクーデターがどうなろうと私には関係ありません。
マイアミまで着けば、こちらの計画通りです。一日半遅れましたが、マイアミからタンパまで飛び、いつものようにレンタカーでジャニスの待つブラデントンへ行きました。6年ぶりの再会です。2人の子供たちも大分大きくなっています。男兄弟、しかも兄しかいない私にとっては、ジャニスは実の妹のような大切な存在です。だんなの Doug も同じ高校(留学先)でしたから、その頃からよく知っています。
東大名誉教授を電話で叱ったかみさん
再会を堪能した私は帰国の途へつき、乗り換えの西海岸の空港から珍しく家へ電話しました。単なる気まぐれで、お土産に何を買おうか相談しようと思ったからです。ところが、電話がつながるなり、いきなりかみさんから怒鳴りつけられました。
「どれだけ心配したと思っているの!」
そうでした。クーデターで出国できなくなったと電話したきり、フロリダに着いて安心して遊び回っていた私は、一度も家に無事だという電話をしていなかったのです。さすがに、今回は100%私が悪いので平謝りです。
後日談ですが、かみさんは私の電話でベネズエラがクーデターと知り、日本の新聞にも爆撃シーンの写真も出ていたそうで安否を心配したそうです。いつものように、私の滞在先のホテルなどの情報は何も残していなかったので、心配して大学の医局にも聞いたそうですが、誰も知りません。私からそれ以降連絡がないので、本当に心配して、あちこち手を尽くして学会場のヒルトンホテルに国際電話したそうです。
すると、そこには日本人のDr.サカモトがいて電話がつながったそうです。心配していた彼女はいきなり怒鳴りつけたそうです。どれだけ心配したか! と。ところが、しばらくするとどうも私とは違うことに気がついたそうです。そうです。彼女が怒鳴りつけた相手は何とあの学会の壇上にいた坂元教授でした。
ちなみにこの教授は東大在籍時に美智子妃殿下のお産を取り上げられた高名な方でした。いくら私が全面的に悪いとはいえ、うちのかみさんはこういう高名な方に一方的に国際電話で怒鳴りつけたのでした。人違いでしたが。
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坂本泰樹
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