1987/12/20 - 1987/12/24
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空飛ぶドクターさん
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いつもは年に4~5回は海外へ行くのですが、今年は2月のエクアドル以来どこにも行けません。もちろん新型コロナウイルス禍のせいです。
それで、もう古いですが、自分の著書(坂本泰樹)の中の旅行記を紹介したいと思います。出版社が倒産したので絶版になっているので、アマゾンの古本くらいでしか買えません。特に、そのうち5つは発売直後に関西毎日放送のラジオ番組『ありがとう浜村淳です』(午前8時~10時30分)の新刊書籍紹介のコーナーで5日間連続放送されました。失敗談が多く、面白いと思います。
その代わり、写真はありません。
メキシコのユカタン半島、カンクンへ
私は、メキシコのユカタン半島へ3~4回行ったことがあります。日本人にはあまり知られていませんが、大きなアメリカ大陸の東海岸の人々にとっては、西海岸の人々や日本人にとってのハワイのような存在です。誰もが憧れるビーチリゾートです。私もアメリカ旅行のついでやアメリカに住んでいる時に行きました。日本からわざわざ行くことに比べれば、相対的に安くて気楽に行けるからです。
1987年の冬でした。私の親友Fがシンシナティの私のところに2週間ものゆったりした日程で遊びに来ました。前の年も、同じく2週間アルバカーキに遊びに来た無二の親友です。それで、一緒に避寒地のカンクンへ遊びに行きました。シンシナティの冬は厳しく、毎日氷点下の気候で時には零下20度でした。
ある日、暑い日ざしの下で冷たいものを飲みたくなり、珍しい米のとぎ汁のようなドリンクを飲みました。不思議な味で少し甘くておいしいのです。当時まだ1歳の長男も一緒で、いつものように私がアメリカ式のキャリアーにおんぶしていました。あまりにおいしいので、Fが赤ん坊にも飲ませてやろうと言い、哺乳瓶に入れて飲ませました。
その夜から全員下痢が続きました。私はまだ軽かったのですが、かみさんとFは夜中中トイレの奪い合いだったそうです。赤ん坊はパンパースに下痢しています。その時住んでいたシンシナティにはパンパースで有名なプロクター&ギャンブル(P&G)の本社があります。何度も紙おむつを替えなければなりません。もちろん、犯人は昼間のあのドリンクに間違いありません。すすめる友人も友人ですが、それに乗せられて哺乳瓶にまで移し替えて飲ませる親はもっとアホでした。後で冷静に考えると、生水で薄めたようなドリンクで危険でした。全くの油断でした。
後日談ですが、数日で自然軽快した我々大人3人と違い、赤ん坊の長男の下痢は1週間以上続いています。もうとっくにシンシナティに戻っています。
留学生で、日本人の小児科医に相談すると日本の常識では脱水が心配なので点滴する言います。ただ、赤ん坊は機嫌もよく脱水には見えませんので、冷静な(かみさんに言わせれば、冷たい)私は様子を見ていました。医学部時代の乏しい小児科の知識で、乳幼児では症状が表現できないので、機嫌がいい、元気があるということは大事な所見だと覚えていたからです。でも、1週間以上たつし、アメリカの医療事情を見てやりたいとも思ったのでシンシナティ大学病院の関連病院でもあるすぐ近くにある子供病院へ連れて行きました。
結論から言うと、医者の私の予想通りでした。まず診察してくれたのは、いかにも若い研修医でした。診察の後、便の培養検査は出しましたが、薬もなく点滴もありませんでした。1週間後に便培養検査の結果を聞きに来いと言われました。1週間後に行くと、私の予想通り何も菌は生えず、もちろんその頃までには下痢も治っていました。
【関連コラム】旅行者下痢症
こういう病名があるように、旅行中にはかなりの頻度で下痢をします。でも、大腸菌やノロウイルスなどの細菌やウイルスによる感染症は半分程度です。例えば、ヨーロッパの水はカルシウム、マグネシウム分の多い硬水で慣れない人が飲むと下痢しやすい。また、ただ単に脂っこ過ぎる食事によって下痢することも多いようです。
ストレスも原因の一つです。旅行中はミネラルウォーターが無難ですが、国によっては栓が開いているような「ミネラルウォーター」は疑ったほうがいい場合もあります。水道水を詰め替えている可能性もあるからです。氷が特に要注意です。もちろん、原料の水が問題だからです。中華料理の油も要注意です。
旅行中だけでも、乳酸菌製剤を予防的に服用することを私は強くおすすめします。ヤクルトやヨーグルトでもいいのですが、持ち運びが難しいので、錠剤や顆粒になった薬をおすすめします。病院でも整腸剤として処方されているビオスリーやラックBのような乳酸菌製剤でも構いませんし、一般の薬店で売っている新ビオフェルミンS錠(武田薬品工業)やパンラクミン錠(第一三共)のような乳酸菌系整腸剤でも構いません。胃酸に弱いので、食間や食前の内服がすすめられます。本来は整腸剤として「便秘」に対する効能が強調されていますが、「下痢」の予防にも非常に有効です。
これには、私の外科医の友人の話が参考になりました。高齢者の中国ツアーで、自分の患者さんに乳酸菌製剤を処方してあげたところ、その患者さん以外全員現地で下痢をしたそうです。
一方、もう一人の外科医の友人は、学会でインドの高級ホテルの食事しかしていないのに下痢したそうです。私の推測では、生水で洗った生野菜にあたったのだろうと思っています。私自身の経験でも、インドで何でも食べましたが下痢はしませんでした。その時気がついたのは、飲み物のラッシーはもちろん乳酸菌飲料ですし、その他インドのデザートはほとんどヨーグルトを使ったものでした。
私は現地のものを食べるのが一番合理的であり、安上がりだという信念ですが、乳酸菌飲料をたくさん摂取するというのがインドの生活の知恵だろうと思っています。インドやパキスタン方面によく行くという若い女性3人にモニターしてもらったところ、全員下痢はせず順調でしかも普段は便秘気味なのにすこぶる調子がよかったと喜んでいました。
そして、この下痢予防のための乳酸菌製剤は高齢者により強くおすすめします。なぜなら、腸内のビフィズス菌(いわゆるお腹にいい菌)の数は年齢とともに減ってくるからです。
乳酸菌製剤とはいえ、薬は嫌だという人には、昔ながらの「梅干」をおすすめします。市販のものはダメです。ちゃんと、昔ながらに塩とシソで漬け込んだ梅干は殺菌作用もあります。昔から、「日の丸弁当」で有名なように腐るのを防ぐ殺菌効果があります。これは、知人の料理人の大将から仕入れた情報です。旅行中は一日一個梅干を食べるとお腹の調子がすこぶるいいそうです。
もし万が一下痢をした場合の対処ですが、軽い場合は脱水にならないように水分(できればポカリスェットなどのスポーツドリンク)を十分に補給することです。もちろん、水で溶かす場合はミネラルウォーターか一度沸騰させて冷ました水を使うべきです。特に、中高年以降の人は下痢による脱水が脳梗塞や心筋梗塞の引き金になると指摘されています。ですから、とりあえずは脱水にだけ気をつけて下さい。現地でも病院を受診するべき下痢は、熱を伴う場合や血便が出た場合です。コレラや赤痢などの重篤な感染症の可能性があるからです。
東南アジアの屋台は不潔なので、ツアーなどでは行かないように指導しているようです。でも、私の個人的な意見では東南アジアから安くて美味しい屋台を取り上げたら、食べる楽しみが半減します。
博多の屋台と同じです。外国に行く楽しみは、少しでも珍しいものを見つけ、珍しいものを食べることだと私は思っています。ですから、多少のリスクはとってもいいというのが私のスタンスです。
旅行業者や医者の立場としては、責任問題を考えたら禁止した方が楽ですが、私は一部の批判を覚悟してでも、屋台を楽しもうと言いたいです。学会のためタイのバンコクへ行った時も、迷わずホテルの周りの屋台で色々な麺を楽しみました。
安くて、早くて、美味しい。最高です。インドのニューデリーでは、一杯7円のミルクティーを毎日何杯も飲みました。普段はコーヒーしか飲まない私ですが、初めて美味しい紅茶を飲みました。
余談ですが、高級レストランでは美味しくないリプトンのティーバッグが40円です。値段はともかく、庶民的な店のミルクティーの方がはるかに美味しいのです。発展途上国ではこんなことがよくあります。私が行くような店は決して清潔ではないのですが、よく観察していると牛乳と水にたっぷりの砂糖を入れ、紅茶の葉もふんだんに入れますが、ぐつぐつと沸騰させます。ですから、私は細菌の心配は全くないと確信しています。
ただし、普通のレストランと違って気をつけなければいけないのは事実です。暑い国が多いですが、屋台では冷たい飲み物は厳禁です。私がカンクンで油断して失敗したのも冷たい飲み物でした。まして、哺乳瓶に入れて赤ん坊に飲ませるなんて、親失格でした。生野菜や果物も生ものですから要注意です。
でも、華僑(要するに中華)の多い東南アジアでは強火で炒めた料理が主流ですから、それは食べてもほとんど大丈夫だと思います。国内では消費期限切れの食品が問題になっていますが、それはともかく自分の目、嗅覚などの五感を信用する常識が大事だと思います。屋台は見えるところで調理していることが多いですから、しっかり見て、安全かどうか常識で考えればいいと思います。そして、すこしでも不安があれば食べなければいいのです。
空飛ぶドクター(登録商標)
坂本泰樹
- 旅行の満足度
- 4.0
- 同行者
- 家族旅行
- 交通手段
- 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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