2020/10/19 - 2020/10/19
1235位(同エリア17084件中)
ばねおさん
フランスのバスク地方に流れるアドウール川沿いに20世紀を代表する彫刻家たちの作品が置かれた秘密の庭園があるという。
所有者はポール・エム(Paul Haim)という美術商。
名前を聞いてもそれは誰?となるだろうが、日本の多くの美術館が彼の手を経て彫刻作品の購入をしているという。
箱根の彫刻の森美術館にあるピカソ館は彼の尽力によって生まれたとも言われている。
芸術家たちとの親交でもたらされた作品の数々が、広大な庭地に配され、未公開のためごく限られた人々にのみが接することができるという。
そして今、それらの作品がオークションにかけられるためにパリに運ばれ、初めて世に披露されることになった。
ポール・エム夫妻が亡くなり、あとを継いだ娘さんは両親の情熱や思いをしっかりと踏まえながらも、庭園の置かれている自然環境の変化に維持をし続けることの困難さを悟り、売却することを決意したという。
扱うのは美術品オークションで知られるクリスティーズ( Christie's)。
オークションに先立ってパリ7区にあるケリング( Kering )の本社で内覧会を催すという。
ケリングという名を聞いてもまったくピンとこなかったが、グッチやイヴ・サンローラン、バレンシアガといった有名ブランドを擁する複合企業の総本山であるという。
その場所を聞いてびっくり。
ボンマルシェに隣接して何やら由緒ありげな建物群があり、通るたびにいつも気にかけていた場所なのだが、そこがケリング本社であるという。
これを知るまでは、ずっと病院だと思っていた。
出入りの様子をみて、ずいぶんとセキュリティが厳しい病院だなとは思っていたのだが、17世紀の病院を今では社屋として使用していることを初めて知った。
それでは一般の出入りを許すわけはないはずだ。
秘密の庭園のコレクションも見てみたいが、その場所にも大いに興味がある。
そうと知った以上は、何を措いても行ってみたいという気持ちが急速に膨れ上がった。
気持ちはそうなのだが、あいにくとクリスティーズにもケリングにもまったく縁のないわが身。
とりあえず何日か設定されている公開日(内覧日)を片っ端から申し込んでみたのだが、すべてアウト。
その他あの手この手と考えたのだが、どうにも決定打が思い浮かばない。
ところがである、念ずれば通ずとはこのことか、日をおいて再度申し込みをしたところ何とセーフ。
正直、自身の目を疑ったくらいだが、思わず小躍りしたくなった。
という次第で、正しくは『秘密の庭園のコレクションを、秘密ではないけれど立ち入りができない魅力ある場所でお披露目にあずかった私的興奮記』が本旅行記のタイトルである。
さらに、まるで語呂合わせのようであるが、ちょうどケリングと背中合わせに在っててひそかに「パリの秘密の庭園」と呼んでいるカトリーヌ・ラブレ庭園とその間にある不思議のメダイ礼拝堂のことなどなど...
〔表紙写真はクリスティーズカタログより。作品はジョアン・ミロ(1893-1983)の La Caresse d'un oiseau 〕
- 交通手段
- 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
内覧会場のケリング本社。
クリスティーズの宣伝写真ではこうなのだけど、実際にこの撮影地点にまで立ち入ることはできないので、これはカタログの写真を拝借したもの。 -
10月19日、晴天。
今回の入場券入手といい、この久々のお天気といい、やはり日常の行いをどこかの神様が認めてくれたのかな。
食事の前やトイレに行ったら手を洗います。
テイッシュは2度使いしません。
どこでも構わずに座ったり寝ころびません。
カフェで唾を飛ばし合いながら大声でおしゃべりしません。
むやみやたらに抱き合ったり、肩を組んだりしません。
外履きと内履きを分けています。
もちろんマスクは正しく着用しています。
およそフランス人の生活習慣を真似しないことがコロナウイルスによる感染を防止する有効な手立てであると、心得ているので、それをいずれかの神様が評価して下さったに違いない。 -
セーヴル通り40番地。
通りからは、敷地内にある礼拝堂らしき建物と、立派な尖塔が見える。 -
今までずっと病院と思っていたのは、ファサードに刻まれている病院名があったから。
その名は、Hôpital Laennec。 -
でも、たしかによく見れば出入り口横の壁面上部に控えめにKERINGの文字が、
その下にはBALENCIAGAも記されている。
ヤジロベエみたいなマークは何を意味しているのだろうか
ただ申し訳ないが、ケリングはもちろん有名ブランドだというバレンシアガすら知らないので、目に入っても何かの記号ぐらいにしか思わない。 -
荷物検査(といってもバッグの中を一瞥しただけだが)を通過し、予約者であることが確認され、晴れて入場証のワッペンシールを交付された。
対応はいたって丁寧。
マスクも用意してあるとのことだが、まさかここまでマスクなしで来ることは考えられない。 -
出入り口から一歩構内へ
正面には展示作品のモザイクタイル画があるのだが、同時に後方の建物にも目がいってしまい、焦点は分裂状態。 -
Zao Wou Ki (1920-2013) とDominique Hideuxの手による作品。
手前の人物と比較すると大きさが分かる。 -
奥へと進む前に左右をみれば、右にロダン
-
左にマイヨール
さて、どちらを先にすべきか -
まずはロダンの作品を拝してから一歩前に
写真右手の金属プレートにはBALENCIAGAの文字があるので、こちら側が同社の入り口か。
あとで知ったことだが、この400年前の歴史的建造物を含めた周辺をケリングの創業者が買い取って修復と保存に力を注いだのだという。
そういうことであれば少し見直さなければ
少なくともヤジロベエみたいなマークと名前はしっかりと覚えました。 -
角度によって、あるいは天候によって変化する造形
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こうした大きな立体作品が、秘密の庭園に置かれていた姿がカタログで紹介されていた。
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まさに置かれるべき場所にある、といえるのでは。
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美術館に展示されると無機質にしか感じないものが、自然の中ではずいぶんと印象が異なってくる。
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こちらはサモトラケのニケを連想させるような
MATTA (1911-2002)の作品。 -
秘密の庭園ではこのような位置に収まっていたという。
何となく動きが感じられるような雰囲気だ。 -
深夜のルーヴルでニケが、ずっと同じポーズでいることに飽きてしまった少女像とともに館内の名画鑑賞を始める、そんなフィクションを思い出す。
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ALEXANDER CALDER(1898?1976)の作品
風を受けて動きが変化する -
こちらが庭園に置かれていた姿。
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ブールデル ÉMILE-ANTOINE BOURDELLE (1861-1929) のトルソ
巨匠の作品を前に言うのも失礼な話だが、つい想起してしまうのは先日パリ郊外の学校で起きた教師の斬首殺人事件。
授業の教材に『シャルリー・エブド』襲撃事件の原因となったイスラム教預言者ムハンマドの風刺画を用いたことから発生したものとされ、殺された教師は「国葬」をもって扱われた。
マクロン大統領は表現の自由を強調し、イスラム過激派との断固たる戦いを演説したが、どうも違和感だけが残ってしまう。
その前には旧シャルリエブド社屋の前で同社とは無関係な人たちが襲撃されるという事件も起きている。
シャルリエブド襲撃事件後も、今回の教師殺人事件後も表現の自由とテロには屈しないという運動が全土に広まったが、お題目はその通りであるにせよ当の風刺画自体の評価があいまいな気がする。
フランスには優れた風刺の伝統があり、そのエスプリには脱帽するばかりだが最近の風刺画には感じるものが少ない。
聖職者や教会の堕落を風刺画という形で皮肉り、諧謔を弄してきた歴史はあるが、それはあくまでキリスト教内のこと。
他の民族の宗教を風刺することは度を過ぎると、愚弄や挑発としか受け止められないと思うのだが。
マクロンさんどうしちゃったんだろう。 -
礼拝堂内に入り、今度は内部陳列。
こちらもブールデルの作品
表題は「ダンス」
ブールデル美術館は、今の住居から5分くらいの距離にある。
初めて訪ねたのはずいぶんと昔だが、圧倒された時の情景を今でも鮮明に覚えている。 -
フェルナン・レジェ FERNAND LÉGER(1881-1955)
作品名は「子供の庭」 -
こちらもレジェ
-
レジェはル・コルビュジエと知り合ってからは、コルビジェの設計した建築物の壁画をいくつか制作している。
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コート・ダジュールのBiotにあるフェルナン・レジェ美術館。
2012年に南仏を周ったときに訪れたときの外観。 -
どれかひとつお持ち帰りになってもいいです、といわれたらこれだな。
ミロ JOAN MIRÓ (1893-1983) の「巻貝」Conque -
この形、どこから眺めても飽きない。
自分の写真では表現できないが、光の加減で変化する色合いも面白い。
ただ重量はかなりありそうだ。 -
こちらもミロの作品?
よく見ると JoanMiró(1893-1983)et Heidi Melano(1929-2014)とある。
ハイジ・メラノはホドラーの孫娘である。
これ絶対に飾りたい一品。
お値段は... 60,000ユーロ~ スタートらしい
果たしていくらで落札されるか
これを書き始めた時点ではすでに全品落札されており、こちらは125,000ユーロ (レート125円として、1562万円)となった。
お手頃価格ではないか!
と、売れたあとにはじめて言えるセリフ -
ついでにホドラーの作品をひとつ
オルセーに展示されている「木を伐る男」
必ず立ち止まらざるを得ない作品だ -
礼拝堂の聖画の横に並べられたのはエドゥアルド・チリーダ EDUARDO CHILLIDA (1924-2002) の Mural G-336という名の作品。
-
川べりにこのように置かれていた。
表面には苔らしものが付着していて、このまま自然と同化しそうな雰囲気である。
それはそれでよいのだが
但し、値段を聞くまでは -
やはり芸術作品といえども商品なので
すっかりお色直しをされて、このように綺麗な姿になりました。
参考までに、落札価額は2億円を超えていた。 -
今回、展示されていたのは41点
大きさも形もさまざまだが、それぞれに買い手がついて世界中に散っていくのだろう。
そして、いつの日かどこかで再会したいものだと思う。
その時、どんな場所でどんな風に展示されているのか楽しみだ。
ちなみに、今回の最高落札額となったのは表紙絵になっているミロの作品で約6億円 -
こちらがポール・エムと夫人
庭園はもともと夫人の力で整備されたとも聞いているので、秘密の庭園のコレクションは夫妻のものだった、という言い方が正しいのかもしれない -
庭園はとても日本的で、かつ手を入れすぎず、とても自然豊かな状態であった様子がうかがえる。
近年の気候変動によるものか、アドゥール川の氾濫などによって地形が変わり、作品たちもいつまでも同じ場所で暮らし続けることが叶わなくなったのだという -
ロダンも
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マイヨールも
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ニキ・ド・サン・ファル Niki de Saint Phalle (1930- 2002)の作品も水を得た魚のように喜んでいるようにみえるのだが、今度はどこで目にすることができるのだろうか。
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パリでニキの作品をもっとも目にすることができるのは、ポンピドゥー・センター横にある噴水だろう。
日本でもニキの回顧展が2015年に新国立美術館で催されたが、ずいぶんと盛況であった記憶がある。 -
秘密の庭園のコレクションを観覧を終え、やってきたのは、カトリーヌ・ラブレ庭園。
ボンマルシェの二つの建物の間を通り、左折してバビロンヌ通り沿いにある長い塀の切れ目に入り口がある。 -
ここがバビロンヌ通り沿いの庭園入り口の入り口。
ぼんやりしていると通り過ぎてしまうほど目立たぬ入り口で、ここが一般公開されている場所だと知らずにいると、なおさらである。
奥に見えるのはモンパルナスタワー。 -
植栽を進んでいくと、庭園の入り口がある。
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こちらの扉を開けて入場。
小鳥の巣箱もあちらこちらに置かれ、門扉にはクロウタドリのイラストがある。 -
庭園は十字架の形に通路が作られていて、四面の大きな芝生がある
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この庭園の一番人気はブドウ棚のトンネル。
下には距離を置いたベンチがあり、読書やら静かな語らいで時を過ごす人が多い。 -
こちらは庭園の管理倉庫。
建物に沿っているのはブドウ。 -
もともとは修道院の野菜・果樹園であったということで、今でもブドウやリンゴ、さまざまなスグリ、ヘーゼルナッツやズッキーニなどの野菜類がみられる。
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ラブレ庭園を奥に進むと、もうひとつ別区画の空間が現れる。
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ケリング社のちょうど裏手に出る形になり、礼拝堂の庭に展示されている作品が遠望できる。
どうせなら、塀のこちら側に持ってきて、ずっと置いておいてほしいものだ。 -
ラブレ庭園にはもうひとつの出入り口があるのが、これはきわめてわかりづらい。
ヴァノー通りから入るのだが、通り沿いではなくちょっと奥まった行き止まりの先に横に抜ける通路がある。
それがこちら。
プライベートな建物に進入するようで、一見しただけでは、まさかこの先に開放されている庭園があるとは思わないだろう。 -
鉄格子の間を通り左へ曲がると
建物の下に通路がある。 -
その通路をくぐり、左に曲がると庭園の一隅がのぞいている。
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出たところはこんな感じ。
いきなり緑の広い空間に出会うので嬉しい驚きになる。 -
ところで庭園の名のカトリーヌ・ラブレ(1806-1876)は、聖母マリアのお告げによってメダイユを作製し、いくつもの奇跡が認められカトリック教会の聖人に列せられている。
その遺骸はマリアのお告げを受けた聖堂に安置されているのだが、その場所がボンマルシェ横の「奇跡のメダイユ教会」。 -
ボンマルシェの隣にある小さな聖堂は、巡礼者だけでなく、観光客にも人気の場所だ。
お目当ては奇跡のメダイユ。
何種類かあって、これを「寄付」という形で購入すると、たちどころに素敵なお土産になるという優れもの。
寄付の価格はきわめて安く、この時点ですでに奇跡が起きているくらいの気持ちになる。
もっとも最後に立ち寄ったのは数年前なので、今はどうなのかは確かではないのだが。
近いうちにぜひ訪れて、コロナウイルスに対するお守りを得てこようと思うようになってきた。
(聖堂の写真は2016年撮影時のもの)
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