八幡浜・佐田岬旅行記(ブログ) 一覧に戻る
宇和の卯之町から次に向ったのは八幡浜。随分以前に読んだ津村節子の「海の星座」の中に出てくる佐田岬とそれに抱えられるようにして浮かぶ宇和海の真珠の筏。そんな小説の中の情景をいつかは見たいと思ってやってきた。卯之町を横断する県道を少し進むと、国道56号線に合流する。この辺りから左側に線路が見えてくるが、松山と宇和島を結ぶ予讃線だ。だが、走っている電車は見えない。1日に数本、運行電車も少ないのだろう。暫く56号線を進むと、すぐに又分岐になって、右方向が大洲、松山、左方向が八幡浜となっている。当然左に進むが、線路も同じように左にカーブしている。今の新幹線と違って、昔の鉄道は人口の多い町を結ぶようにして敷設されていたので、今でもそうだが、当時の八幡浜はこの地方では有力な町、線路もぐるっと大回りして八幡浜経由で建設されたのだろう。<br /><br />暫く田園地帯の真っすぐな直線道路を進むと、道路は山間部に入り込む。このまま田園が尽きる所が八幡浜の海辺かと思っていたが、そうではなかった。県道25号、八幡浜ー宇和線は山間部のカーブの多い山道をドンドン下っていく。ここへ来て初めて卯之町がかなり標高の高い土地だったのが分かった。鉄道や車の無いころ、人々は重たい荷物を背負うか、荷車に載せ、この坂道を往復したのか・・。卯之町がそうした山中の集積地、宿場町として発展してきた理由が分かるような気もした。信濃追分は明治になって高原の避暑地として発展してきたが、同じような高原のこの町卯之町は明治のままで時間が止まってしまって、箱庭のように残されていた。<br /><br />山間の道路を抜けると、もう直ぐそこは八幡浜の郊外。と言ってもほんの数分走らせるだけで町の中心部の三差路交差点に出て、道路標識に従って港に向かう。フェリー乗り場方面と出ているので、直ぐに分かった。と同時に佐田岬の中ほどにある港、三崎港までは50数キロと出ている。岬の先端までは100キロ超はあるだろう。途中の伊方原発も見てみたかったが、時間的に今回は諦めるしかない。取り敢えずはフェリー乗り場に向かい、宇和海を眺めることにした。<br /><br />八幡浜から対岸の大分にフェリーが出ていることは以前から知っていた。それは徳島から対岸の和歌山に出ているのと同様、ぐるっと陸地を回って行くよりかは、随分と時間的にも経済的にも助かるからだ。ただ問題なのは、人口減少下の現在、そうしたフェリーがまだ運航されているかどうかだった。港に着くとフェリー乗り場前の大きな駐車場には数台のトラック、乗用車がフェリーが着くのを待っていた。<br /><br />目の前に広がる海、右手に延びる佐田岬、その半島の脊梁の山の峰いっぱいまで広がっている段々畑。これが八幡浜の段々畑のミカン畑だ。耕作地の少ない瀬戸内の島々で良く見られる光景。バリ島の段々畑、フィリピン北部イフガオの段々畑。それ等はどこも水田で広大で、上から見下ろす景観は畏敬の念を抱かせるが、ここ八幡浜も人々の弛まぬ努力に対し、頭が下がる。あんな空に届くような場所までミカン農家は肥料を運び、剪定し、採ったミカンを下ろしてくるのだ。今朝明石寺で買った大きなはるかかポンカンかデコポンのミカンがあるが、今晩はホテルで感謝しつつ大事に食べよう。<br /><br />沖の方から大きな真っ白のフェリーがやってきた。海上を音も立てずに滑るように近づいてくる。桟橋に近づいてきて、ボーっと汽笛一笛短く鳴らし、ガラガラとアンカーを下す音が大きくこだまし、フェリーは着岸した。吐き出された乗用車もトラックも、駐車場に並んでいるそれ等と同じ位数少なく、あっという間に吐き切って、続いて駐車場の車両がゆっくりと動き出した。豊後水道を渡って対岸の大分まで僅かに2時間。今治からしまなみ海道を渡り尾道に出て、それから更に広島、山口、北九州と、多分10時間以上は掛かるだろう陸路と比べ、何と至近な海の道。そうこの二つ、宇和と大分は海の道で結ばれているのだ。<br /><br />名前は忘れたが、誰か歴史家か松本清張だったか、古代の九州、半島からやってきた民族は、九州福岡で二手に分かれ、一方は反時計回りに熊本、宮崎に達し、もう一方のグループは関門海峡を通り抜け、大分まで達したと。宮崎の宇土神宮、大分の宇佐神宮がそれを表していると。・・うーん、ここでも又出てきた。豊後、トヨの国のウサの明神。宇佐は当然八幡神を奉る。ここは八幡浜。ウ?ンン、何かがある・・。宇和の隣に今は合併されて西予市の一部になっているが、鬼北という町もある。鬼、オニ、どこの誰の何が鬼だったのか・・。

愛媛(伊予一国)ドライブ巡礼(25)八幡浜。

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2020/06/21 - 2020/06/27

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ちゃお

ちゃおさん

宇和の卯之町から次に向ったのは八幡浜。随分以前に読んだ津村節子の「海の星座」の中に出てくる佐田岬とそれに抱えられるようにして浮かぶ宇和海の真珠の筏。そんな小説の中の情景をいつかは見たいと思ってやってきた。卯之町を横断する県道を少し進むと、国道56号線に合流する。この辺りから左側に線路が見えてくるが、松山と宇和島を結ぶ予讃線だ。だが、走っている電車は見えない。1日に数本、運行電車も少ないのだろう。暫く56号線を進むと、すぐに又分岐になって、右方向が大洲、松山、左方向が八幡浜となっている。当然左に進むが、線路も同じように左にカーブしている。今の新幹線と違って、昔の鉄道は人口の多い町を結ぶようにして敷設されていたので、今でもそうだが、当時の八幡浜はこの地方では有力な町、線路もぐるっと大回りして八幡浜経由で建設されたのだろう。

暫く田園地帯の真っすぐな直線道路を進むと、道路は山間部に入り込む。このまま田園が尽きる所が八幡浜の海辺かと思っていたが、そうではなかった。県道25号、八幡浜ー宇和線は山間部のカーブの多い山道をドンドン下っていく。ここへ来て初めて卯之町がかなり標高の高い土地だったのが分かった。鉄道や車の無いころ、人々は重たい荷物を背負うか、荷車に載せ、この坂道を往復したのか・・。卯之町がそうした山中の集積地、宿場町として発展してきた理由が分かるような気もした。信濃追分は明治になって高原の避暑地として発展してきたが、同じような高原のこの町卯之町は明治のままで時間が止まってしまって、箱庭のように残されていた。

山間の道路を抜けると、もう直ぐそこは八幡浜の郊外。と言ってもほんの数分走らせるだけで町の中心部の三差路交差点に出て、道路標識に従って港に向かう。フェリー乗り場方面と出ているので、直ぐに分かった。と同時に佐田岬の中ほどにある港、三崎港までは50数キロと出ている。岬の先端までは100キロ超はあるだろう。途中の伊方原発も見てみたかったが、時間的に今回は諦めるしかない。取り敢えずはフェリー乗り場に向かい、宇和海を眺めることにした。

八幡浜から対岸の大分にフェリーが出ていることは以前から知っていた。それは徳島から対岸の和歌山に出ているのと同様、ぐるっと陸地を回って行くよりかは、随分と時間的にも経済的にも助かるからだ。ただ問題なのは、人口減少下の現在、そうしたフェリーがまだ運航されているかどうかだった。港に着くとフェリー乗り場前の大きな駐車場には数台のトラック、乗用車がフェリーが着くのを待っていた。

目の前に広がる海、右手に延びる佐田岬、その半島の脊梁の山の峰いっぱいまで広がっている段々畑。これが八幡浜の段々畑のミカン畑だ。耕作地の少ない瀬戸内の島々で良く見られる光景。バリ島の段々畑、フィリピン北部イフガオの段々畑。それ等はどこも水田で広大で、上から見下ろす景観は畏敬の念を抱かせるが、ここ八幡浜も人々の弛まぬ努力に対し、頭が下がる。あんな空に届くような場所までミカン農家は肥料を運び、剪定し、採ったミカンを下ろしてくるのだ。今朝明石寺で買った大きなはるかかポンカンかデコポンのミカンがあるが、今晩はホテルで感謝しつつ大事に食べよう。

沖の方から大きな真っ白のフェリーがやってきた。海上を音も立てずに滑るように近づいてくる。桟橋に近づいてきて、ボーっと汽笛一笛短く鳴らし、ガラガラとアンカーを下す音が大きくこだまし、フェリーは着岸した。吐き出された乗用車もトラックも、駐車場に並んでいるそれ等と同じ位数少なく、あっという間に吐き切って、続いて駐車場の車両がゆっくりと動き出した。豊後水道を渡って対岸の大分まで僅かに2時間。今治からしまなみ海道を渡り尾道に出て、それから更に広島、山口、北九州と、多分10時間以上は掛かるだろう陸路と比べ、何と至近な海の道。そうこの二つ、宇和と大分は海の道で結ばれているのだ。

名前は忘れたが、誰か歴史家か松本清張だったか、古代の九州、半島からやってきた民族は、九州福岡で二手に分かれ、一方は反時計回りに熊本、宮崎に達し、もう一方のグループは関門海峡を通り抜け、大分まで達したと。宮崎の宇土神宮、大分の宇佐神宮がそれを表していると。・・うーん、ここでも又出てきた。豊後、トヨの国のウサの明神。宇佐は当然八幡神を奉る。ここは八幡浜。ウ?ンン、何かがある・・。宇和の隣に今は合併されて西予市の一部になっているが、鬼北という町もある。鬼、オニ、どこの誰の何が鬼だったのか・・。

旅行の満足度
4.5

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  • 卯之町からは山間部の県道を下って八幡浜の海辺に出る。

    卯之町からは山間部の県道を下って八幡浜の海辺に出る。

  • 宇和の海。佐田岬に守られ、波静かな海だ。

    宇和の海。佐田岬に守られ、波静かな海だ。

  • 沖からフェリーがやってきた。

    沖からフェリーがやってきた。

  • 数千トンもあるような大きなフェリーだ。

    数千トンもあるような大きなフェリーだ。

  • 着岸し、車両を吐き出し、再び載せて、直ぐに出て行った。

    着岸し、車両を吐き出し、再び載せて、直ぐに出て行った。

  • フェリー事務所。この着岸時間に合わせ、巡回バスがやてきたが、フェリー事務所前から乗る乗客はいなかった。

    フェリー事務所。この着岸時間に合わせ、巡回バスがやてきたが、フェリー事務所前から乗る乗客はいなかった。

  • 八幡浜のミカン畑、段々畑。人々の弛まぬ努力の結晶。

    八幡浜のミカン畑、段々畑。人々の弛まぬ努力の結晶。

  • 佐田岬、半島の先までは行けないが、ここから宇和海を眺め、真珠筏の代わりにミカンの段々畑を見ただけでも良しとしよう。

    佐田岬、半島の先までは行けないが、ここから宇和海を眺め、真珠筏の代わりにミカンの段々畑を見ただけでも良しとしよう。

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