2019/11/04 - 2019/11/06
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SamShinobuさん
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成都と重慶を旅した思い出を①「初めての成都」②「再びの重慶~そして春秋航空日本、欠航の顛末記」と2回に分けて記します。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
- ホテル
- 4.5
- グルメ
- 3.0
- ショッピング
- 3.0
- 交通
- 3.5
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 鉄道 観光バス タクシー 徒歩
- 航空会社
- スプリングジャパン
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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2019年11月4日(月)
春秋航空日本との出会いは衝撃的だった。
前回、重慶を訪れた際は、成田~重慶往復航空券がなんと27,000円台だった。時間帯も悪くなく、そしてシートピッチが少し広いレッグシートを指定しても、この価格だ。もちろんLCCなので、機内食や飲み物は有料である。そんなものは大した値段ではないし、なんなら持ち込みだってアリだ。また、春秋航空日本のCAのプロ意識は高く、所詮LCCだからと、たかをくくられたくないという心意気さえ感じられる。ブランケットやシートモニターは無くても、人的なサービスで十分それを補っており、CAのフレンドリーな対応から生まれる居心地の良さは、意外にもフルサービスキャリア以上だった。
今回はなんと成田~重慶往復チケットが全て込みで25,077円。それも往復とも例のレッグシート指定料(1,200円×2)を含めてだ。
という訳で、今年6月に続いて成田~重慶往復便を予約したが、今回は重慶から列車で成都まで足を延ばした。そしてサイバーパンクシティの重慶もぶらぶらしてみたかったので、成都2泊、重慶1泊の旅程を組んだ。
すると予期せぬハプニングが起こった。なんと春秋航空日本の復路が欠航になってしまったのだ。そのため重慶でさらに1泊することになり、結果的に4泊5日の旅になった。 -
成田空港第3ターミナル、春秋航空日本の搭乗ゲートは何故か監獄のようだ(笑)。ここからバスで沖止めのIJ357に向かう。そういえば前回は重量制限が5kgだったが、今回は7kgに増えていたので、荷造りは楽勝だった。
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IJ357便は9時05分成田空港発、14時20分重慶江北国際空港到着予定だが、1時間の時差があるので6時間15分のフライトだ。6月に同じ便に乗った時は5時間15分だったので、1時間も余計にかかる。これは西からのジェット気流と呼ばれる偏西風が特に冬場は猛烈に吹くからで、逆に復路は追い風となり4時間10分しかかからない。往復で2時間以上も差が出るのだ。本日の出発時間は9時00分。離陸したのは9時19分だった。
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シートは3C。春秋航空のビジネスクラスと僕が勝手に呼んでいるレッグシートだ。春秋航空日本は、ボーイング737-800をJA01GR~JA06GRまで6機保有しており、当機はJA03GRである。前回6月の重慶便もJA03GRで、座席も3Cだったので、同じ機体の同じシートに5ヶ月ぶりの再会である。ほぼ満席にもかかわらず、僕の隣り2席は空席だったため、左翼側の窓からの景色を独り占めすることが出来た。
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10時に機内販売が始まり、赤ワイン(500円)とすき焼き弁当(800円)を購入。フードとドリンクをセットで注文したので50円引き。
シートモニターはないのでウォークマンで音楽を聴いていたら、朝ワインが効いてきていい心持ちになってきた。12時05分にすき焼き弁当完売のアナウンスが流れる。時計の針を1時間戻したので、飛行機は中国時間の13時40分に着陸し、到着時刻は予定より30分早い13時50分だった。 -
重慶江北国際空港第3ターミナル
降機後、入国審査では左右5本の指紋登録があり、入国の目的、滞在期間、中国ではどこに行くのか、過去に中国に来たことはあるか、その時は何処に行ったか等いろいろ英語で質問される。中国でこんな厳しい入国審査は初めてである。そして人民元に両替。1元=約18円だった。
それからauの世界データ定額アプリを開き、「利用開始」をタップ。これだけでデータローミングが24時間980円で利用出来る。しかも最初の24時間は無料だ。空港でルーターを借りたり返したりの手間もなく、あるいはSIMカードを買って設定したりする面倒は全くない。これでgoogle mapやLINE、wechat、翻訳アプリまで何でも使える。実に便利だ。 -
空港地下の地下鉄乗り場に急ぎ、前回大活躍だった重慶のSUICA「暢通カード」に券売機でチャージしようと思ったら、肝心のカードを家に忘れてしまった。仕方がないので券売機で切符を購入。切符と言っても、こちらは使いまわしのカードだが。
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「江北機場T3航站楼」から「重慶北駅北広場」までは6駅あって、4元(70円)。22分かかったが、バックパック1個なので、移動は楽だ。
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重慶北駅
地下鉄の重慶北駅北広場駅からで中国高速鉄道の重慶北駅までは、歩いてすぐ。ここから高速鉄道で成都に向かう。今回の旅で心配だったのは、この高鉄のチケットだった。当日だと満席の可能性があるので、中国では事前購入が望ましいのだ。日本からでもTrip.comで予約が出来ることを知り、リスク回避のためにネットでチケットを注文しておいた。Trip.comは上海のCtrip社が運営している中国企業だ。手数料としてチケット1枚につき20元(360円)かかるが、仕方がない。Trip.comの日本語ページだと料金も円表記である。手数料込みで二等座2,361円、一等座3,779円。ただ、せっかく事前にチケットを取っても、もし飛行機が遅れたら元も子もなくなる。そこで時間に余裕を持って、18時23分重慶北発、20時12分成都東駅着のG8520に決め、行きの重慶北→成都東は一等座、帰りの成都東→重慶北は二等座を予約した。 -
ところが飛行機が30分も早く着いたし、入国もあっという間だったので、かなり時間が余ってしまった。このままだと3時間以上も重慶北駅で時間を潰さなくてはならない。そこで、もっと早い列車に変更出来ないかチャレンジしてみることにした。ネット予約の引き換え窓口である「互聯网取票」に並び、10分くらい待ってようやく僕の番になる。窓口の女性に予約時に案内された引換番号を見せて、この高速鉄道をもっと早い時間に変更して欲しいと、拙い中国語で話してみる。こちらの意図は伝わったようだが、彼女の返答は早口でまくし立てるので全然わからない。そこで英語が通じるか再度試してみると、彼女はスマホを取り出して何か話し始めた。英語ができる職員を呼んでいるのかなと思いきや、どうもそうではないらしく、そのスマホを僕の方に突き出して画面を見せた。そこには英語で
「ここではチケットの変更は出来ません。一階に上がって右に行くと、変更専用窓口があります。」
と表示されていた。翻訳アプリを使っていたのだ。なるほど便利な世の中である。 -
1階に上がると、重慶北駅前の広場が目の前に広がる。広場から駅を振り返ると立派な駅舎が。
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駅を背にして右の方に歩いていくと、チケット売り場があって、そこに「改?窗口」というカウンターがあった。きっとここだろう。しばらく並んで僕の番になったので、再度チケットの変更を申し込むが、今度は僕の中国語が全然通じない。そこで英語に切り替えると、ここでも窓口の女性がスマホを出してきた。英語に対しては、翻訳アプリ対応がデフォルトになっているのだろうか。いずれにしても、そのお陰で何とか会話が出来る。それでもかなり時間がかかって、後ろに並ぶ中国人達の罵声が飛び交う。それは完全に無視していたが、僕と彼女のやり取りに興味津々の人が窓口に集まって来て、やいのやいの言うのには参った。君達、暇か?
すぐに乗れる高速鉄道は満席で、空席がかろうじてあったのは16時50分発のG8752だった。それでも予定より2時間ほど早く成都に着ける。また、11月6 日に成都から重慶に戻るチケットも、引換番号を見せて一緒に受け取る。 -
チケットが無事に変更できた達成感に、こういうのが面白いと内心ほくそ笑む。それでも正直疲れたし、発車までまだ1時間以上あったので、駅構内のスターバックスに入った。一息つこうと、29元(522円)のアイスカフェラテ(トールサイズ)を注文。高っ!
急速に発展し続ける中国の交通インフラは、日々変更の連続なのでネット等で最新情報を常にチェックしていないと怖い。「地球の歩き方」のような印刷物のガイドブックに頼れる時代は終わった。 -
高速鉄道G8752(重慶北→成都東)
駅に入るときに手荷物検査でパスポートを見せるが、改札を通る時も再度パスポートが必要だ。どんだけ厳重なんだ。 -
ほぼ満席の列車は定刻通り16時50分に発車し、18時24分に成都東駅に到着。
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今回は試しに一等座にしてみたが、快適さは二等座とさほど変わらないので、これからは二等座で十分だろう。
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成都東駅
成都東駅は広いが、地下鉄駅の成都東客駅と直結しているので便利だ。ここから地下鉄2号線で6駅乗り、春煕路駅で下車。13分、3元(50円)。 -
春煕路
重慶の銀座が解放碑なら、成都のそれは春煕路だろう。一流ブランドショップや高級レストランが並ぶ成都一賑やかな大都会だ。ここには伊勢丹やイトーヨーカ堂もあり、パンダのよじ登るIFS(国際金融中心)ビルが街のランドマークになっている。 -
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成都拖板鞋青年旅舍 (フリップフロップ ホステル)
地下鉄、春煕路駅E1出口を出て紅星路四段を南に進み、東升街を左折すると紅星菜市の隣りに今夜の宿はあった。地下鉄出口から5分くらいか。ホステルの入口が判りづらいが、市場の野菜が並んでいるすぐ横だ。 -
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3Fフロントでチェックイン。英語が通じるのがユースホステルの利点だ。
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客層は欧米人が多いため、西洋風なインテリアが落ち着く。
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フロント奥はPOOL BARになっている。
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3、4階が客室でその上が屋上テラスになっている。テラスの横には洗濯機と物干しが有り、長期滞在者は重宝するだろう。その奥には卓球台もあり、さすが中国という感じ。
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50歳を過ぎてユースホステルに目覚めたエセバックパッカーの僕は、さすがにこの歳で相部屋のドミトリーは無理だが、一泊3,000円程度の安宿でも十分快適に過ごせる。部屋はこじんまりとしているがクリーンで問題ない。
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山の橋
さて、夕食をとる店を探しがてら、夜の街歩きをしよう。ポツリポツリと雨が降ってきたので、あまり迷っている暇はない。成都は日本料理店がブームのようであちこちに日料という看板を見かける。しかしどこもなんちゃって和食で、本物の日本料理など食べたことがない中国人相手に、中国人が作っているんじゃないかな。でも何故かそんな店に惹かれる。ホステルから5分くらい歩いた所に、その店はあった。さすがに怪しさ満載の店構えだと入るのに躊躇するが、この店の外観は日本の和食店と変わらない。店内も清潔そうだ。成都の最初の夜に、何故日本料理なのかは自分でも分からないが、そういう気分だったのだ。 -
4人席に案内されたが、料理人が見えるカウンターが良かったので、そちらに移る。目の前の水槽に大きくて活きのいい鰻が泳いでいる。まさに中国産の鰻だ。ではその鰻を注文しようではないか。写真付きメニューで鰻の蒲焼き48元(860円)を見つけたが、何故か日本語では「あさりのグリル(ソース焼き)」と表記されている。やらかしてるなあ。写真付きが唯一の救いだ。中国ではよくあることなので御愛敬だし、肝心なのは味だと自分に言い聞かせて、アサヒスーパードライ18元(320円)を飲みながら、焼けるのを待つ。
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運ばれてきた鰻の蒲焼きは、見た目は丁寧な盛り付けで美味しそうだ。では実食。一口いただくと、何かが違う。身が柔らか過ぎて歯ごたえがなく、肝心のタレも甘すぎる。素材はいいのに残念な感じ。うーん、やはりこれが実力か。
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次に、天ぷらの盛り合わせ48元(860円)を注文。海老が3本に野菜いろいろ入って、かなりのボリュームだ。こちらのほうの味は悪くない。
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女性店員にメニューの日本語表記が間違っていることを指摘すると、熱心に何が違うのかメモを取っていた。聞くと、日本語を話せる店員はひとりもいないそうだ。彼女の給料は月3,000元(54,000円)、休みはほとんどないと言っていたので、一日100元(1,800円)くらいか。飲食店の店員としてはいい方だろう。中国の経済発展は目まぐるしく、収入も以前に比べたら随分と上がってきている。
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蘭桂坊成都酒吧街
あいにくの雨の中、観光地というより、成都の若者に人気のバーストリートを歩いてみる。 -
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九眼橋酒吧街
九眼橋は成都のランドマークで、過去にネットやテレビで見かけたことがあった。 -
いい感じのバーがあったら入ろうと思っていたが、若者の音楽ガンガンに鳴らしている店が多く、ピンとくる店が無かったので、帰ってホステルのバーで飲むことにした。
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フリップフロップ ホステルのBAR
フロント横の冷蔵庫から勝手にバドワイザーを取って、フロントで15元(270円)支払った。そして奥のBARに持ち込み、ソファで旅行の備忘録を書きながら飲む。もちろんBARで酒を注文しても構わないし、僕みたいに持ち込んでも文句は言われない。 -
回りを見ると何も頼まずに座ってる人もいるので、かなり自由度は高いようだ。ビリヤードに興じている中国人グループや、トランプで遊んでいる欧米人もいる。僕はここでしばし寛ぎ、部屋に戻ってからもコンビニで買った2.5元(45円)のハルピンビール350mlを飲んだ。
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2019年11月5日(火)
朝食
早朝の散歩のあと、ホステルで朝食を取ることにした。7時オープンと書かれていたので、7時ちょうどにフロントに行くと、料理人がまだ来ていないと言う。すぐ来ると思うと言うので、とりあえずトーストセット22元(400円)とアメリカンコーヒー20元(360円)を注文して、フロントで支払う。適当なテーブルに着くと、中国人のおばさんが慌てて厨房に入って行くのが見えた笑。 -
紅星菜市
食後はホステル横の市場を見学する。中国の市場は面白い。たまにドキッとするような食材が売っていて、思わず食文化の違いを目の当たりにすることがある。 -
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ホステルの横の公園で体操や卓球するおばちゃんたち。
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HiPanda SHUTTLE BUS(景区直通車)
観光地に直行してくれる観光バスは、地鉄春熙路駅C出口近くの成都IFS(国際金融中心)前から出ている。ここから武侯祠博物館まで5元(90円)だが、武侯祠博物館入場料込みのチケットもあり、それだと50元(900円)である。元々、武侯祠博物館の入場料は50元なので、このバス代が無料になる計算だ。 -
チケットの購入は例によって現金はダメだと言われたが、窓口の彼女が代わりにウィチャットペイで払ってくれるとのこと。そこでお礼を言いつつ彼女に50元を渡すと、スマホのQRコードを僕に見せて、この写真を撮れと言う。ええー、どういう意味?戸惑いつつも言われるままに撮影すると、そのQRコードの上に表示されている番号を指差して、それが僕のバスのナンバーだと言う。なんだ、そういうことか。先にそう言ってよ。彼女は親切にも僕がバスを間違わないように、バスのナンバーを教えてくれていたのだ。
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そしてバスのり場に行ったが、そのバスがいない。係の人が武侯祠に行く人はいませんかと大声で呼んでいるので、申し出ると、違うナンバーのおんぼろバスを指差し、あれに乗れという。そのバスの行き先は広漢と書かれているので、違う違う、僕の行きたいのは武侯祠だと伝えると、彼は英語で一言、「チェンジ」と言った。バスが変更になったということなのか、まだ不安だったので、他の乗客にも聞いてみると、その人も武侯祠に行くと言うので、やっと安心してバスに乗れた。それにしても写真まで撮ってバスのナンバーを教えてもらったのに、あっさり変更なんて。中国らしいぞ。
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係の人が乗客全員のIDカードを確認しカードリーダーで読み取っている。僕は外国人だというと、パスポートを提示させられた。中国は、この数年で徹底した監視社会が確立しつつあると実感した。
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武侯祠博物館(武侯祠)
バスに15分ほど揺られると、三国志ファンの聖地に到着。何しろ成都といえば、三国時代(魏、呉、蜀)に蜀の都で、その蜀を建国したのが劉備玄徳だ。武侯祠博物館は、劉備の墓と、諸葛孔明や関羽、張飛の廟などがある。元々は劉備が亡くなった223年に恵陵という陵墓が造営されたが、その後ここに諸葛孔明や関羽、張飛らの祠もできた。因みに諸葛孔明の墓は、本人の遺言により陝西省漢中市にある。 -
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入口の大門をくぐり、緑の中の石畳を歩いていくと、次の二門が見えてくる。
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この二門に続く左側の回廊に、有名な前出師表(ぜんすいしのひょう)がある。これは諸葛孔明が魏に出陣する際に、亡き劉備の子、劉禅に奉った文書である。劉備は死の直前、孔明に「もし我が子に才がなければ、蜀はお前が奪え」と遺言するが、孔明は劉備のダメ息子を蜀の二代目皇帝にして最後まで支えた。前出師表では、孔明がまだまだガキの劉禅に、私がいなくても今が「危急存亡の秋(とき)」なんだから、回りの言うことをよく聞いてしっかりやれと檄を飛ばしているのだ。
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しかし、この劉禅、孔明の死後は宦官の黄皓に惑わされてダークサイドに落ち、魏に攻められて蜀を滅ぼしてしまう。そのためか、ここ武侯祠に劉禅は祀られていない。実はかつて劉禅の像はあったそうだが、何度も破壊されてしまい、とうとう無かったことにしたみたい。劉禅の幼少名の阿斗は、中国では馬鹿の代名詞にまでなっているとは、なんとも可哀相な気がする。きっとそんなに悪い子じゃなかったと思う。父親が劉備で、おじき達が関羽、張飛、孔明、趙雲なんて中で育ったら、どんなに出来る子でもぼんくらにしか見えないんじゃないかな。まして野心のない普通の子だったら、回りからの重圧に耐えかねて歪んだ大人になりそう。前出師表を眺めながら、勝手な妄想をする浅学三国志ファンでした。
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また、武将廟、文臣廟には三国志に登場する蜀のヒーローが飾られている。
僕が一番好きな関羽。 -
張飛、インパクト強すぎ。
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諸葛孔明。
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劉備玄徳。
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恵陵は劉備が亡くなった223年に造営された墳墓である。周囲180m、高さ12mの盛土でできた墓は、1800年もの間、盗掘の被害に遭っていないそうだ。
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恵陵の奥に美しい竹林に囲まれた紅い壁の道が続き、このインスタ映えする場所で、皆大胆なポーズで写真を撮りまくっていた。いい歳のおばちゃんでも何の恥じらいもなく、モデル気取りかとツッコミたくなるような格好で写真を撮るのは、中国らしくて微笑ましい。
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素敵な小路
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錦里
武侯祠博物館に隣接する明清代の建物を再現した商店街で、2004年にオープンした。 -
ここで「撒尿牛丸」10元(180円)と言う小吃を食べた。直訳すると尿を撒き散らす牛のだんごという意味だが、酷いネーミングだと思う。
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牛肉のつみれだが、中から更に牛肉のミンチが出てきた。名前はともかく、味は結構美味しかった。
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これ食べる人いるの?
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タクシー
上海や北京では配車アプリのせいで流しのタクシーが全く捕まらなかったが、ここ成都ではまだ空車が走っている。錦里を出てぶらぶら歩いていると、すぐに空車タクシーがやって来た。ここから杜甫草堂博物館まで、18元(320円)。 -
張飛牛肉草堂店
杜甫草堂博物館入口のすぐ横にあった食堂。張飛のコスプレをした客引きが店頭に立っており、ぼーっと見ていた僕の横で突然大声を出したから、びっくりして飛び上がった。それで思わずこの店に入ってしまった。張飛の思う壷か。 -
辛くない張飛牛肉米線15元(270円)を注文し、テーブルに着く。
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ほどなく運ばれてきたライスヌードルには、パクチーと赤身の牛肉が載っている。スープは透明で濁りがなく、一口飲むと旨味が全身に染み渡る。次に名物の張飛牛肉を試してみる。柔らかいビーフジャーキーのような食感だが、味はコンビーフの方が近い。これも旨い。
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僕の正面にひとりの青年が座り、太麺の張飛牛肉面を注文。彼が辣油を入れるのを見て、僕も試してみると、これはこれでパンチがあって旨かった。
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杜甫草堂博物館
「きみに微笑む雨」という韓国映画がある。恋愛映画の名手と言われるホ・ジノ監督が、成都を舞台に2009年に撮った作品だ。中国人女優の高圓圓(カオ・ユアンユアン)演じるメイは、杜甫草堂で外国人向けの英語ガイドをして生活している。韓国から出張で成都を訪れたドンハ(チョン・ウソン)は、ここで10年ぶりに彼女と再会する。二人はアメリカ留学時代に出会い、お互い惹かれあってはいたものの気持ちを打ち明けられなかった。映画は彼女の故郷である成都で再び出会った男女の機微を、ひたすらもどかしく描いている。言ってしまえば、男女の機微しかないようなホ・ジノらしい映画だ。
しかし、この映画の魅力は何と言っても杜甫草堂をはじめとする古都の美しさにある。寛窄巷子のような観光地から何気ない古びた路地裏まで、カメラは旅人目線で街の風景を捕らえており、それゆえ僕は激しく旅情をかきたてられた。さすがに成都パンダ基地まで出てきた時には、「観光PR映画か」とツッコミたくなったが、それから成都と聞くといつもこの映画を思い出し、特に杜甫草堂が思い起こされた。という訳で、成都に行くならまず杜甫草堂に行ってみたかった。 -
武侯祠に比べると人も少なく、のんびりと敷地内を散策できる。ただ広すぎて、ガイドの高圓圓を探しながら歩いていたせいか、迷ってしまった。
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杜甫草堂は2008年の四川大地震で大きな被害を受け、その修復には莫大な費用がかかったそうだ。
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かっこよすぎの杜甫。杜甫草堂とはその名の通り、「国破れて山河あり」の飲んだくれ詩人、杜甫が760年から4年間暮らした場所である。杜甫の有名な詩に「曲江」というのがある。「朝回日日典春衣」から始まる律詩だが、つい笑ってしまうので現代語訳だけを一部書いてみる。
「朝廷での勤めが嫌で、今日も服を質屋に入れて、曲江のほとりで酒を飲む。飲み屋のツケは至る所にあるが、所詮70歳まで生きるのは稀なんだから、かまやしないさ」
科挙の試験に落ち続け、47歳にしてようやく朝廷の仕事に就いたものの、今度は世渡り下手で左遷が決まった杜甫。この酒飲み文人の愚痴が可愛くて、「詩聖」とまで評された唐の大詩人に妙な親近感を覚えてしまう。ちなみにこの最後の部分の原文は「人生七十古来稀」といって、数え70歳の「古稀」という言葉の出典である。 -
毛沢東がこの前で写真を撮ったことで有名。
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「きみに微笑む雨」のモチーフになった杜甫の「好雨時節」の石碑。
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金雨閣理療養生館
やはり中国に来たらマッサージは欠かせない。この店は、フリップフロップ ホステルの向かいに建つ蜀源大厦西楼805号室にある。全身マッサージ45分、薬草の温湿布15分で128元(2,300円)。ここは、「大衆点評」という中国の食べログと言われるアプリで見つけた。「大衆点評」はレストランのみならず、ショッピングやホテル、マッサージまで網羅している。そこでこのアプリで宿に一番近くて良さげなマッサージ店を検索すると、ここがヒットしたのだ。マッサージはなかなか上手で、旅の疲れが癒えた。施術後は、ほんのり甘い小豆汁を出してくれた。 -
寛窄巷子
ホステル前でタクシーを拾い、寛窄巷子に向かう。14元(250円)。ここは寛巷子、窄巷子、井巷子という3本の並行する路がある。 -
清代からある町並みらしいが、リノベーション加減が半端なくて、北京の南鑼鼓巷のようなオシャレな観光地として賑わっていた。
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MUG(馬格鮮?啤酒館)というBARで飲んだクラフトビール19元(340円)が実に旨かった。まだ17時だったので、広い店内に客はほとんどおらず、まったりできた。
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地下鉄「人民公園」
寛窄巷子から地下鉄の人民公園駅まで歩いてすぐだった。人民公園駅から春煕路駅まで2駅、2元(36円)。さっそく切符を買おうと券売機に行くと、なんと全ての券売機で現金が使えないではないか。チャージは出来るが、現金で切符を買うことはできない。仕方がないので、駅員に現金で買いたいと伝えると、券売機を開けて中からカードを取り出していた。そんな面倒なことをするなら、1台くらい現金が使えるようにしておいたら? -
台北愛情小站
四川省に来たのに、頑なに四川料理を食べない僕は、ホステルの近くのお洒落な台湾料理屋に入った。 -
台式排骨面30元(540円)と台湾ビール18元(320円)を注文。店主に台式排骨面を辛くしないでとリクエストすると、出来るけど、それだと美味しいか分からないといった顔をしている。出来上がりを見ると、なんと汁無し面だった。よく混ぜて食べてみると、確かに甘ったるくて、ぼーっとした味だ。でもうっかり少しでも辛くしようものなら、全く食べれなくなるので、これでいいのだ。
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女性店主も感じがよく、とても雰囲気のいい店だった。
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山の橋
またこの店の前を通ると、急に日本酒が飲みたくなったので、暖簾をくぐった。松竹梅48元(860円)をお燗してもらい、ポテトサラダ18元(320円)は間違いないだろうと注文。 -
締めにタコ炒飯36元(650円)をお願いした。タコ炒飯って何だろうと期待していると、出てきた炒飯にはタコは入っておらず、何故かほんのり鰻の味がする。思わずメニューを見直すと、日本語表記では確かにタコ炒飯と書いてあるが、中国語では鰻魚炒飯となっている。やられた。こういう事態は当然予測できたはずなのに、集中力に欠けていた。鰻炒飯なんて美味しい訳ないよね。涙目になりつつ、一応昨日の店員に、このメニューも間違っているよと、教えてあげた。
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2019年11月6日(水)
朝食を食べに出た。まだ薄暗い朝の7時に、ホステルのそばの万州面屋に入ってみる。人の良さそうなおじさん、おばさんがやっている店だ。 -
清湯抄手(1両)8元に卵焼き2元をトッピング。合計10元(180円)。
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このワンタンがめちゃくちゃ旨かった。
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人民公園
1911年、辛亥革命の年に開園。かつてこの公園はニューヨークタイムズに世界で最もうるさい公園として取り上げられたことがあるそうだ。音楽を爆音で流して集団で踊る広場舞いのメッカだったのだろう。また合唱団や楽器を持ち寄った素人楽団が、音量を競うようにあちらこちらで狂騒を繰り広げていたに違いない。そうなると静かに公園を散歩するどころではなくなり、数年前に80デシベルを超える騒音が禁止になった。 -
少人数で踊るおばちゃんがいたが、小さなボリュームで音楽をかけていた。
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鶴鳴茶社
公園内にある、1920年代に建てられたオープンエアの茶館。9時開店だが、あっという間に客でいっぱいになる。 -
ここで蒙頂山甘露26元(470円)という緑茶を飲む。
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蒙頂山は四川省の有名なお茶の産地で、蒙頂山甘露は手摘み新芽だけを使った高級茶葉だ。
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なるほど、香り、味共に爽やかな甘さを含み、青空茶館で嗜む一服の中国茶によって至福の時に包まれた。
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大きなポットを置いていってくれるので、お茶は何杯でも飲めるが、トイレが近くなるので困った。
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お茶を飲んでいると、ヘッドライトを付けた耳掃除屋が各テーブルを回って来る。特殊な器具を使って器用に耳かきをしているが、見ているだけでくすぐったくなってくる。
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ホステルをチェックアウトし、春煕路駅に向かう。
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春煕路駅前のパンダビルの前は、伊勢丹。その後ろにはイトーヨーカ堂が控えている。
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レンタル自転車もスマホでモバイル決済。
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成都東駅
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印象川之味
昼食は成都東駅で食べようと思い、良さげな店を探す。どこも真っ赤な看板が辛さを競っているようで恐ろしい。そんな中、辛くなさそうな店を発見。ここは好きなおかずをトレイに取って、最後にレジで精算して貰うシステムのようだ。店頭で呼び込みをしている女性に、現金で大丈夫か確認することを忘れない。 -
豚バラとピーマン炒め、鶏肉とセロリ炒め、青菜、ライスと取ってレジへ。合計62元(1,110円)。おかず取りすぎたか。それにしても高速鉄道の駅だけあって、かなり高い。街中の食堂ならこの半額以下で食べられると思う。味のほうは、これぞ中華料理の王道で、どれも美味しくあっという間に完食した。
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高速鉄道G8709(成都東→重慶北)
高速鉄道の二等席3号車05D。一昨日乗車した一等座とさほど変わりはないが、客層はわちゃわちゃしており、ほぼ満席。13時07分に発車した列車は14時49分に重慶北駅に到着。 -
エピローグ
僕はNHK BSプレミアムの長寿番組「桃源紀行」が大好きで、ずっと見ていた。「7つの幸せ」や「君住む街で」等、シリーズは変わっても、中国各地を現地の女性が案内するスタイルは同じだ。中国以外の国や日本の観光地が紹介されることもあるが、その時は見ていない。
また同じくBSプレミアムの「世界ふれあい街歩き」という番組も好きで、中国が舞台の時は欠かさず見ている。「桃源紀行」や「世界ふれあい街歩き」のテーマ音楽はどちらも村井秀清さん作曲だ。番組のオープニングで彼の曲が流れて来ると、何故かいつも胸の奥の方に切なさを覚え、同時に遥か異国の街への憧憬に心が踊った。
これらの番組のおかげで、中国の様々な街を家にいながら旅することができた。2013年に放送された「桃源紀行 7つのしあわせ 成都」では、人民公園の茶館でガイドの四川美女がお茶を飲んだり、カンフースタイルでお湯を注ぐパフォーマンスに挑戦したりしていた。豊かな成都平原の青空の下、たゆたう時の流れの中で、地元のご老人に混ざってしばしお茶を楽しむ。ああ、いいなあ。いつか機会があったら訪れてみたいなあと、この茶館は心の中の行きたい場所リストにこっそり仕舞われていた。
そして今回成都に行くにあたり、「成都」「人民公園」「茶館」で検索してみると、すぐに「鶴鳴茶社」がヒットした。いとも簡単に6年越しの思いを叶えることが出来たのだ。
成都は四川省の省都だが、元々は四川省だった重慶と街の雰囲気は全く違う。時間の流れ方も、歴史の街成都と爆裂発展都市重慶では違う気がする。そのふたつの街を歩いて、中国の奥深さを実感した旅になった。
引き続き、飛行機の欠航により、期せずして2泊もすることになった重慶編もお読みいただければ幸いである。
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この旅行記へのコメント (7)
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- KRNさん 2020/07/06 13:24:34
- ご投票ありがとうございました。
- 私も桃源紀行や世界ふれあい街歩きは大好き!
あんな感じで街歩きをしたいと思っていたのに先日の成都ではただひたすらぐうたらしてしまいました。
市場も好き、中国の食も大好き。
なのに当分は行くことが出来そうになく非常に残念です。
上海旅行記の昔懐かしの風景も楽しませていただきました。
私の初めての中国、上海もあんな感じで裏通りは生活感漂う活気のある町でしたが今は減ってきてしまっているのでしょうね。
春秋航空の欠航バタバタ劇も出会いありで良い思い出、そして良い経験でしょうか。
中国の空港&航空会社は英語がイマイチなのでいつも緊張しています。
海南航空での欠航も心細かったですが、中国語が出来る米国人や片言の日本語が出来る日独ハーフのドイツ人との出会いがあり良い思い出です。
ネガティブなイメージを持つ方が多い中国ですが、私にとっては人情味があり、日本人にはないアグレッシブさがあって大好きです。
何と言っても歴史に全く明るくない私ですが、それでも「歴史ってすごいな」と思わせてしまう街を歩けばすべてが世界遺産登録されてしまいそうなものの数々にいつも圧倒されています。
早くC19が収束しますように。
- SamShinobuさん からの返信 2020/07/06 15:36:05
- Re: ご投票ありがとうございました。
- KRNさん
コメントありがとうございます!
「暮らすように旅をする」いいですね。それこそまさに私の理想です。
KRNさんの成都旅行記、とても面白かったです。
今年は中国どころか海外に出るのも厄介になりましたね。
最近は4トラの皆さんの旅行記を読んで、旅心を慰めてます。
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- fudekagePaPaさん 2020/06/28 17:42:04
- 🐽
- 豚の鼻の写真、大笑いしました。
ちなみに私も桃源紀行の中国バージョンだけ見ています。
SamShinobuさんと同じ行動パターンですね。
- SamShinobuさん からの返信 2020/06/28 19:29:46
- コメント有り難うございます!
- fudekagePaPaさん
初めまして。
fudekagePaPaさんの旅行記の文章が面白くて楽しませて貰ってます。
しばらくはコロナで訪中を諦めてますが、その分4トラで情報収集しながら来たる日に向けて準備してます。
また楽しい旅行記をアップして下さい!
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- Weiwojingさん 2020/06/09 20:12:52
- いくつもご投票をいただき、ありがとうございます。
- SamShinobu さん、初めまして。
本日は私の旅行記に幾つもご投票をいただき、ありがとうございます。
SamShinobu さんの旅行記を拝見しました。まだ全部は見ていませんが、重慶と成都旅行記を見させていただきました。どちらも訪ねたことはありますが、成都だけしか旅行記を作っていません。2年前に2週間ほど行って来ました。成都からかなり離れたチベット村へ出かけてみました。
旅行記がありますので、見ていただけると、うれしいです。成都市内もまとめてみました。SamShinobu さんが行かれた同じところも見て来ました。
また見させていただきます。次は台湾旅行記を見てみたいと思います。
ありがとうございました。
Tamegai
- SamShinobuさん からの返信 2020/06/10 07:08:05
- コメントありがとうございました!
- Tamegaiさん、初めまして。
いくつかTamegaiさんの旅行記を拝見させていただきましたが、実にいい旅をしていますね。憧れの旅人です。
7時間もバスに揺られて訪れた美人谷など、とても羨ましく思いました。
引き続き拝読させていただきますが、取り急ぎお返事まで。
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- km45さん 2019/11/16 23:35:54
- 鶴鳴茶社
- はじめまして
鶴鳴茶社でまったりしましたね。私は2008年のメーデーの日、菊花茶10元でした。他の、食品類の価格と比べると、値上がり率が低いです。同じ年、「王婆蕎麺」青石橋店の基本メニュー「牛肉蕎麺」(牛肉蕎麦麺)は6元でしたが、現在は12元です。
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